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みちくさ日誌 2018
みちくさあんの収穫、採集、農工作業の記録です(各植物は草リストを参照してください)

  二〇一八年一二月  例年のごとく、12月は忙しく過ぎていきました。特に今年は藁関係の企画展があったため作品が足りなくなり、「締め切りに追われる」というめったにない経験をしました。

 その企画展とは、かまわぬ浅草店で行われた「藁の道」です。(詳しくはこちら。)古い藁製の民具の他、現在藁細工を制作している作家さんの作品やお正月飾りが展示・販売されました。古い民具は、自分や家族のために作られた素晴らしいものばかりでした。売るために作っている自分の「作品」とやらが恥ずかしく思えます。「ナンノタメニツクルノカ」を問いかけられた気がします。

 藁細工の体験講習会もいくつかありましたが、講師の方に話を聞いたら、箒作りに参加者が一人しかおらず、卵ツトやトウガラシの飾りなどの簡単なものはすぐに締め切りになったそうです。後者の方が講習料も高いにも関わらず。都会の人たちの「ものづくり力」が低下しているのではないでしょうか。

 いろいろなことを考えさせられた展示会でした。良い経験をさせていただきました。
   
 一二月のみちくさ庵
栽培収穫:ウイキョウ葉、大豆
採集(食):アブラナ葉・花
採集(材):スズメノヒエ、シノダケ(アズマネザサ)
保存食:アブラナ茎塩漬け
農作業:木灰
家仕事:縄綯い、繕い物、糸績み、もじり編み、縄綯い、お正月飾り、羊毛糸紡ぎ

冬のおもなおかずはもっぱらアブラナの葉っぱです。さすが千葉県の花、もう咲いてるのもありますよ!→
 
 二〇一八年一一月  11月前半は「箕・来」展のクライマックス。岩手県面岸から箕作り職人の延原有紀さんを迎えて、実演、お話会など催し物がたくさんでした。
この展覧会の間に、お客さんや実演者さんたち、展示された箕から多くの事を学びました。みちくさ庵にとって分岐点となる重要な企画でした。
驚いたのは、意外と「箕を作りたい」という人が多かったこと。
将来、新しい箕を作る企画展が何かできないかな、とぼんやり思っています。

後半は毎年恒例の「竹・藁細工講習会」。もう9回目になりました。
今年は自由度を上げて、参加者に好きな〆飾りを作ってもらうというものにしました。
人それぞれの作品が出来上がってきて、大変面白い!みんなで同じものを作っても面白くない、といつも思っていましたが、これからこのような方法も有効であることが分かりました。
さて、来年は10周年。どんなふうにしようかな?


→写真左上:面岸の箕実演、右上:延原さんとのお話会、左下:真澄農園のハウスにゴザを敷いて 右下:藁クズは土に還る
 
 一一月のみちくさ庵
栽培収穫:ジャガイモ、大豆、タカキビ、、花柚子、落花生、和棉菊芋
採集(食):アブラナ葉、キミガヨラン
採集(材):スズメノヒエ、シノダケ(アズマネザサ)
保存食:キクイモ乾燥、花柚子蜂蜜漬け、アブラナ茎塩漬け、キミガヨラン柿酢漬け
農作業:小麦播き
家仕事:縄綯い、シノ伐り、ヒゲへゲ、繕い物、糸績み、もじり編み、縄綯い、お正月飾り

早めにシノダケ伐りを始めました。場所を変えたり、一年、二年、三年物を採って見たり、試行錯誤です。
→写真は左上から時計回りに、シノダケ(上=一年物、下=二年物)、シノコガシ(皮を落す)、シノサキ、竹仕事で破けた軍手を繕う
 
 
  二〇一八年一〇月 ギャラリーに箕がやって来た 箕・来展」が始まりました。
1週目は考古学者の國井さんが福島県小高の箕の実演をしてくださいました。
集まってくるお客さんも個性派ぞろい。ご自分でも作っている方もいて、どでかい箕や、どこかの地方の笠を復元したものを見せてくれたり。

 好評だったのが、「コノコダレノコクイズ」。小さな箕の産地を当てると言うもの。ただ展示を眺めるだけでなく、素材をじっくり観察するきっかけになった、と喜んでいただいてます。全問正解者にはプレゼントがあります!

 面岸の箕や塵取り箕も予想外に売れて、嬉しい悲鳴を上げています。

 少し技術的なことに偏ってしまったので、二週目からは箕振りの実演と体験をやってみました。
学生さん、大学教授、主婦、みんな「楽しい!」という感想。
縄綯い同様、これは国民的所作ではないかと思います。
日本人(アジア人)の潜在意識の中に刷り込まれている動きとリズム。
箕という物質同様に失いたくないものです。


→写真
上左:國井さんの小高箕実演
上右:コノコダレノコクイズ挑戦者
中左:DVD上映会
中右:箒と塵取り箕
下左:箕振り体験。面岸の箕で選別された小豆は「マナグ」と呼ばれる隙間を通って落ちる。
下右:箕振り体験。竹とフジの箕で米を選別。


11月はいよいよ岩手県面岸の箕作りさんをお迎えして、実演・お話し会など盛りだくさんの催し物があります。


 
 一〇月のみちくさ庵
栽培:緑米、紅吉兆(古代米)、和棉菊芋、落花生
採集(食):栗、ニラ、柿、コマツヨイグサ花、アブラナ
採集(材):アカメガシワ葉・皮、カザスゲ皮、ススキ、スズメノヒエチカラシバ、椿の実
家仕事:塵取り箕、縄綯い、鶴亀、繕い物
 
展覧会のため、草摘みの時間がありません。冬に向けて保存食を確保しなければならないのに・・・
 
 二〇一八年九
 10月から始まる「箕・来」展に向けて準備が忙しくなってきました。日本全国の箕を写真撮影し、カタログを作り、DMはがきの宛名書きなどなど・・・コンピューターの作業が多く、右腕が腱鞘炎になりそうです。
 当初は南千住の市川商店さんに箕の販売をお願いしていましたが、売れ筋の小さな箕が揃わないということで、取りやめに。私は木積(千葉県匝瑳市)の小箕を塵取りとして使うことを推進しようと、箒職人さんに箒も頼んだというのに・・・なので、意を決して自分で作ることにしました。材料に限りがあるので数は作れませんが、ぎりぎりまで頑張ります。木積の箕の良い所を活かしつつ、塵取りとして使いやすいように少しアレンジを加えました。本展限定です。お楽しみに!


→左上より時計回りに
織りあがったイタミ
立上げる
腕木を取り付ける
出来上がり
 
九月のみちくさ庵
栽培:紅吉兆(古代米)、和棉
採集(食):栗、ニラ
採集(材):アカメガシワ葉・皮、アシ花・茎、イガガヤツリカザスゲ、カヤツリグサ、葉、皮、スズメノヒエチカラシバ、椿の実、メリケンガヤツリ
家仕事:塵取り箕、糸作り、縄綯い
 
アカメガシワとクワの皮はまだまだ剥けます!稲藁も収穫。縄はお正月仕様で左縄が多くなってきました。
今年は柿が全滅の代わりに栗が豊作。毎日茹で栗をほじくってます。
 二〇一八年八月  梅雨時から8月にかけては、 毎年のように夏草の採集で大忙し。今年の夏は「ムキムキの夏」でした。樹皮・草皮剥き剥きです。

 みちくさ庵は九十九里海岸近くの平地に位置しており、周りは田園地帯で、木や森はほとんどありません。あるのは竹林と植林の杉林。材料採集の主力はイネ科などの草、カラムシヤブマオなどの草皮。

 そんな貧しい植生の中で、ようやく見つけた木がアカメガシワクワ。鳥が種を落して、あちこちに若い一年枝がにょきにょき生えています。あまり群生しているものではないので、散歩の途中で見つけたら1ー2本折って持って帰る程度です。でもそんなことの積み重ねが積もりに積もって。写真上→

 樹皮があると、草より一回り大きな容れ物が作れます。
写真中左:クワの整理箱 中右:アカメガシワの蓋物→
それと、何より樹皮の感触が何とも言えず好きなのです。ただ、大きな木は切れないし、下手すると生態系を壊してしまう可能性も。足で歩き、手で摘める程度のおすそ分けをいただくだけで十分です。

 草の方は、久方ぶりに草リストに新しいお友達が追加されました。「ワセオバナ」。ススキに似ていますが、早めに開花する大型のイネ科植物です。
 綿毛は落ちやすいので、取ってしまいました。写真下左→
茎を取り囲む葉鞘は、ちょっと何かできそう。写真下右→

 さあ、何を作ろうかな〜♪でも、冬の間ゆっくり乾燥して、ちょっと我慢。

 それにしても、年取って外に出られなくなった時のために今のうちに!なんて思っていたら、なんだか採集ばっかりして製作が進まない・・・
 
八月のみちくさ庵
採集(食):ウイキョウ、スベリヒユニラ
採集(材):アカメガシワ葉・皮、アシイガガヤツリカザスゲ、カヤツリグサ、カラムシ皮、スズメのヒエチカラシバ葉、ネズミノオ、メリケンガヤツリ、ヤブマオ、ワセオバナ
家仕事:苧引き、糸作り、縄綯い、草鞋、アシナカ、繕い物
 
 二〇一八年七月  ナチュラル&ハーモニック・プランツで「ヘンプフェア2018」に参加しています。29日は「東ヨーロッパ木綿以前の事」というタイトルで、ブルガリアとルーマニアの大麻布について、服飾家のスワラジさんとお話し会をしました。久しぶりにブルガリアの資料を引っ張り出し、文献を読み、なんだかまた行きたくなってきました。
 
参加者は皆染織や大麻関係の方が多く、面白いお話しが続々と。一つの例は、私が紹介したブルガリアの大麻に関する慣習で「嫁が実家に帰る時、麻の種を持たせる」というのがあったのですが、参加者の一人が「福島でも同じような習慣があり、それは違う土地の種を混ぜることで種を強く保つという意味があるらしい」というお話し。なるほど!そのような実質的な意味があったのかもしれませんね。


 今回のタイトルは、木綿という新しい素材が昔からの素材を駆逐してしまった歴史は、古今東西共通している、ということを意味しています。木綿を必要以上に敵視するつもりもないし、自分も木綿を栽培していますが、世界中みんな同じものを着るようになったら面白くない、ってことなんです。今、実際にそうなっている。みんなTシャツとGパンを着て、スマホをもって下を見ながら歩いている。民族衣装は山ひとつ、川一本隔てると全く違う模様や形になる、だから面白いのです。

 これを機に、バルカン民族文化の発信を続けていこうという話が出てきています。皆様、次のお知らせを乞うご期待!

→2012年「自然素材展」で作った大麻のおmenが久しぶりに登場しました。
久しぶりの作品販売もあります。販売は8/20までです。

 
七月のみちくさ庵
採集(食):ウイキョウ、スモモ、ハナハッカ、スベリヒユニラメマツヨイグサ花、ヤブカンゾウ
採集(材):アカメガシワ葉・皮、カザスゲガマ葉・穂、 カラムシ葉・皮、セイタカアワダチソウ皮、ハギ皮、ヘラオオバコ真竹、メリケンガヤツリ、ヤブマオ、ヨモギ
野良仕事:草取り
保存食:梅干し、スベリヒユ酢漬け
家仕事:織物(お財布)、苧引き、糸作り、縄縫い、縄綯い、草鞋とツマゴ、繕い物
 二〇一八年六月  行って参りました、N.Y.。悪夢のような4日間。時差ボケと喧騒でほとんど眠れず。肝心の展覧会は想像と随分違っていて、帰国後もギャラリー側とすったもんだあったりして、なかなかハードな経験でした。詳細については近いうちにバスケタリーニュースに寄稿する予定です。

 救いは、アメリカンインディアン博物館に出会ったこと。バスケットやテキスタイルがたくさん展示され、キャプションもイラスト入りで素材についても詳しく表示してあります。サイトも充実している。ミュージアムショップもみちくさ的に素敵なものがたくさん。インディアンブレンドのハーブティーやセージのスティック、安眠枕、ワイルドライス(真菰の一種らしい)など、お土産はほとんどここで。
 もう一つ、自然史博物館にも民俗資料がたくさんありましたが、だだっ広くて、見たくない展示の部屋を通らないと目的地に行けない。歩くだけで疲れてしまいました。おまけに、繊維関係の資料がたくさんある部屋は冷蔵庫のように寒く、ゆっくり見ることができませんでした。インディアンだけでなく、アフリカ、アジア、オセアニアなど世界中の民族のものが少しずつあるので、なんだか中途半端な感じ。日本はアイヌのものが少し。やはり自国のインディアンの展示が一番充実しており、農業の様子を再現したイラストやフィギュアもあって、そこだけは見ごたえありましたよ。
 インディアンと言っても北と南で全然使う素材も違ってきます。北は、樺の皮を使ったり日本の東北とも似ています。南の方では葉脈繊維や竹の類を使ったバスケットもあります。ガマやアシなど日本と同じような素材もあります。
 特に注目したのがやはり箕です。国は違えどやることは同じ。米や麦を選別するためにインディアンや他の民族も箕を使っていました。これについてはFacebookの「箕のページ」で書こうと思います。バスケタリーニュースにも寄稿する予定です。(写真は博物館で見た各地の箕→)
 
 長かったような、短かったような4日間でしたが、往復の飛行機の中で見た映画が一番印象に残ったかもしれません。普段映画を見る時間がほとんどないので、フライト中見まくり。特に「Letteres from Iwojima」は気になっていたものの一つ。お世話になっている福島県喜多方市の桶屋さんが、硫黄島で従軍していたことがある方で、当時の経験を良く話してくれたことがあるのですが、想像だけの世界を視覚化してくれたような。でも残酷なシーンが多すぎて気分が悪くなりました。アル・ゴアの「An inconvenient sequel」は、彼のプレゼンのうまさに驚き。しかし、砂漠の上や、藁ぶき屋根の上に設置されたソーラーパネルには違和感を覚えざるを得ません。30年後に出る大量の廃棄パネルをどうするのか、訊いてみたい。TVのドキュメンタリー番組では、レイチェル・カーソンに関するもの、ミック・ロンソン(ギタリスト)に関するもの。特に後者は、ボウイーならともかく、脇役に光を当てたレアーな番組。残念ながら見つけたのが着陸1時間前で、全部は見られませんでしたが。それにしてもアメリカの映画はドンパチと血が多いなあ・・・それが無ければ映画が売れないかの如く。

 ともあれ、食わず嫌いだったアメリカという国を、少しでも見られてよかった。食ってもやっぱり・・・ということもあるけど。さまざまな人種が共存しているのが当たり前と言うがどういうことなのか良く分かりました。そして、自己をはっきりと主張しないと人は決してわかってくれない事。「言わなくてもわかるだろう」はなし。
 そして、社会全体が総スマホ化していて、スマホが無ければサービスを受けられないことがしばしば。人に訊く必要がないのでコミュニケーションが少なくなっている。これは全世界の大都市に共通の傾向でしょうが。
 
 次はもっと自然が豊かな土地に行きたいな!



六月のみちくさ庵
採集(食):ウイキョウ、小麦、ジャガイモ、スモモ、桃、の実、ドクダミニラ真竹筍、ユキノシタ
採集(材):アカメガシワ葉・皮、アップルミント、カラムシ、キウイ葉、葉、葉・皮、ハギ、ヘラオオバコ、メリケンガヤツリ
野良仕事:田植え、大豆播き
保存食:真筍柿酢漬け、桃塩漬け
家仕事:織物(スマホカバー)、カバン直し、縄綯い、糸作り
 カラムシ苧引き 
 二〇一八年五月  6月の渡米に向けて、パスポートもESTAも保険も宿も取った。あとは持って行く物。たかが4日の滞在のためにガチャガチャと旅行グッズを買うのはばかばかしいので、なるべくあるものを利用したり作ったりすることにしました。

 まず大事なのが靴。普段草鞋履きなので、街用の革のブーツは履き慣れておらず、それに暑い。古い革靴を引っ張り出して柿で染めました。鉄漿を掛けて、かなり良い味になりましたよ。
 しかしこの靴は、手紡ぎの靴下を履くときつくて爪先が痛くなってしまう。仕方なく薄いフットカバーなるものを買いました。棉100%のものが見つからず、「オーガニックコットン87%」というのを買ってみましたが、ポリウレタンの3%の方が断然自己主張が強く、なんだかねばねばした感触だし、足が蒸れる。何のためのオーガニックなんだか。やっぱり自分で作ろう。ネットで室内履きの編み方を調べて、ありあわせの木綿糸でなるべく組織をスキスキにして編んでみました。なかなかいいぞ。

 そして、一番守るべきはパスポートとカード。昔はシークレットベルトみたいのをお腹に着けていたけど、結構煩わしい。サルマタの内側に取り外し式のポケットを着けました。ホックの片方だけ付けておけば、他の服にも取り付けられます。金属を服に付けるのは好きではないけれど、4泊5日のがまん。
 上着やカラムシの貫頭衣もついでに柿と鉄漿で染め直したら、生き生きと美しい色になりました。染めることは洗うことでもあるようです。

 この柿汁は、9月頃って青い実を採って絞り、冷凍しておいたものです。ラベルを見たら2011年!でも美しい緑色を保っていました。電気に頼ってしまうことにうしろめたさを感じながらも、柿のありがたさに感謝。

 ああ、たかが4-5日のために、えらい騒ぎだ。なんてこった。12年ぶりの海外ですから、何せ。

五月のみちくさ庵
採集(食):ウイキョウ、小梅、南高梅、グミ(不作)、アマドコロ根、の実、コマツヨイグサ葉、スイバ花、ドクダミニラノビル根・ムカゴ、繁縷真竹筍、マツヨイグサ花、ユキノシタ
採集(材):アカメガシワ葉、イチゴツナギカラムシ葉、葉、スイカズラ花、ツバナハルガヤ孟宗、ヨモギ
野良仕事:稲種播き、アマドコロ植え、コリアンダー移植
保存食:小梅・南高梅仕込み、真筍柿酢漬け
家仕事:編み物(靴下類)、織物(スマホカバー)、縫物、柿渋染(靴、服)、カバン直し、縄綯い、糸作り
 

梅干し仕込み完了。5月中に全て終わったのは初めてです。偶数年なので豊作。小梅5kg、南高梅18kg。
今年のカラムシ採集第一陣は苧引きをせず、鬼皮のままで保存することにしました。鬼皮の方が消耗が激しく、足りなくなりそうだからです。さぼっているわけでは決してありません!(自白してる)
 二〇一八年四月  今月は、NYの展覧会のことでおおわらわ。無事作品を送ったものの、送られて来た写真はパッキングで髪の毛がぺったんこになったおめんたち。これは自分で行って直すしかない。というわけで6月に4泊5日のNY行をバタバタと決めました。航空券を買って、宿泊を予約したけど、まだ肝心のパスポートを取っていない。只今GW真っ最中で、長蛇の列だそうで。おまけにアメリカは2009年からビザの代わりの様なESTAという制度ができて、14$払わなければならない。ホテルはものすごく高い。なんだか内向きなというか排他的なと言うか、そんな空気を感じます。不安と期待の入り混じる初NYです。作品はまた当地に行ったときにでも。
 
 箕研(箕の研究会)が盛り上がっている機運に乗って、小箕を二つ作る。一つ目大失敗。二つ目はまあまあですが、一つ目の失敗すれすれ。いつになっても上達しない。もっとたくさん作れるほど材料が取れればなあ・・・

 研究会は盛り上がっているのですが、肝心の作り手の方は減る一方。ここ数か月の間に亡くなったという情報2件、やめたという情報3件。今この瞬間にも同様の事が起こっているのでしょう。

 福島県三島町で編み組みの研修生として活動している方とお話しました。あれだけ編み組みのブランドみたいにもてはやされているのに、実態は50%近い高齢化、材料の枯渇、若者がいない、という状態らしいです。「若い人をどんどん呼んで、どんどん編み組品を作らせて売るという政策では、地元をダメにするだけだ」というのがその方のご意見。
 
 「村おこしは人のためにするのではなく、自分たちのためにするのです。”内向き”でよいのです。」というのは藁の権威、宮崎清さんのお言葉。まずは自分のために、自分のものを作る、人間の生の基本。忘れがちではあるけれど。

四月のみちくさ庵
採集(食):アマドコロ新芽・根、虎杖コマツヨイグサ花、スイバ花、杉菜、土筆、菜の花、ノビル繁縷マツヨイグサ花、メマツヨイグサ根、
採集(材):葉、ツバナハルガヤヨモギ
野良仕事:宇宙芋、モロヘイヤ、コリアンダー、ラベンダー、当帰、ホーリーバジル、モロヘイヤ、タカキビ、落花生、和棉、紅吉兆、緑米、神丹穂
保存食:柿酢絞り、筍・土筆酢漬け、虎杖塩漬け
家仕事:糸作り、機織り、縄綯い、繕い物、小箕

昨年柿が豊作だったおかげで柿酢がたくさん。でも人力で絞るのは一苦労です。→
 
 二〇一八年三月   6月からNY のCavin Morris Galleryのグループ展に参加することになり、4月の郵送に向けてラストスパートかけています。
 出品作品を選ぶのにはかなり苦労しました。私の作品の多くは花や種がついており、輸入禁止である可能性が高いからです。2000年代にたくさん出品していた海外公募展に出さなくなったのも、これが理由です。でも、せっかく出すからには大好きな作品を出したい、最初に選んだのはこちら。植物防疫所に問い合わせたら、案の定いくつかの草がアウト。やはり皮や繊維だけを使ったものにした方が無難だな、と、帽子タイプのおmenを出品することにしました。
 しかし、これらはおmenに没頭していた頃の作品。今の自分の最重要課題である「日常」と関係づけたい。なのでクズとカラムシの布を織って作品の下に敷くことにしました。糸づくりからですから、思いついたからと言ってすぐにできるわけではありません。久し振りに必死でスパートをかける。おりしも季節は春。土筆も出る、繁縷も出る、もう虎杖も出ている。気だけが焦ります。
写真は左上から時計回りに
カラムシ績み、クズ布、カラムシ経糸整経、葛糸撚り掛け

 年度末ということもあり、今年のお仕事が続々と(でもないけど)入ってきます。今年はどうやら身体よりも、ない頭を使う事の方が多くなりそうです。
 
 
三月のみちくさ庵
採集(食):アブラナ葉・花・蕾、虎杖、羊蹄、杉菜蒲公英、土筆、繁縷ヤブカンゾウ
野良仕事:ジャガイモ植/ムベ播ノラボウナ播/柿酢絞り/アピオス植え
保存食:金柑干し、アブラナ酢漬け、柿酢絞り
家仕事:糸作り、機織り、縄綯い、繕い物

採集植物が華やかな季節です!世間では桜、桜と上を見る傾向のようですが、みちくさ庵は下ばかり見ています。

写真は左上より時計回りに
花ニラ、ハルノノゲシ、ヤブカンゾウ、ジャガイモの芽
 
二〇一八年二月   「箕の研究会」が発足しました。メンバーは博物館学芸員などの研究者+竹職人、竹商人などが少し、計12人。学者先生たちの箕に対する思い入れに驚く。千葉大工学部の先生は、アクド(箕の奥の方の、深くなっている部分)の角っこの形がとても好きだそうで、すごいマニアックな箕フェチ。皆さん、箕について話し始めると止まらない。どんんどん深みに落ち込み、ブラックホールに吸い込まれてしまいそう。
 
 私はと言えば、この人たちの情熱をブラックホールから引き出し、世間に広めることはできないか、と思案中。死にゆく箕を「今のうちに」と、撮影したり聞き書きしたりするのも大事だけど、このまま滅びるがままにさせておいていいものでしょうか。取材される側にしてみれば、少しでも宣伝になって、商品が売れたり、後継者ができることに結びつけばという思いで取材に応じてくれるのだと思う。今回、うずもれている貴重な資料がどれだけたくさんあるかを知り、愕然としました。自分が学者先生の中に仲間入りさせてもらっている意味を考え、何ができるか思案中です。


 箕の世界が面白いのは、地域性が材料や形に明確に出ること、絶対数が少ないので対象を追い易いことでしょうか。私は形や素材と言うより、とにかく片方が開いている籠、ということで、日々の農作業、籠や布などのものづくり作業にとても便利な道具として、魅力を感じています。塵取りもすべて箕です。そして何より、穀物を「簸る=実と殻を分ける」という動作。この、魔法のような技術を習得したい。私の場合は自分で作ることが条件なので、シノダケとフジを使った木積の箕しかもっていませんが、今後は他の産地のものも使ってみようかな。
(家で使っている箕はこちらのページ最下段をご参考ください)
 
参加者は20〜50代の働き盛り世代。箕の未来は明るい。
二月のみちくさ庵
採集(食):アブラナ葉・花・蕾
採集(材):シュロ、フジ、アズマネザサ、真竹
野良仕事:じゃがいも植え付け
保存食:味噌仕込み、アブラナ酢漬け
家仕事:シノキリ、シノコガシ、シノサキ、ヒゲへゲ、フジ伐り、ゴザ編み、もじり編み、竹籠、おめん、縄綯い、繕い物


冬場の採集物はもっぱら竹と箕作り用のフジとシノダケです。カゴ編みや靴下などの編み物はこの時期にやることが多いのですが、今シーズンはあまり時間もなく、何もかも中途半端になってしまう。4月になって本格的に野草摘みが始まる前に、やっておかねば、と、気ばかり焦ります。

小麦の種播きに失敗したので、久しぶりにじゃが芋を植えました。

やっと糀が届き、味噌を仕込みました。昨年はカメムシの害で、あまり収穫は上がらず。3割ほど他の大豆を混ぜました。今年こそ!今年も杉の桶で。一年後が楽しみです。

自転車の籠がボロボロになったので、思い切って竹籠を取り付けてみました。ちょっと粗目すぎたかな。今のところ順調ですか、雨の多い季節になったらカビるかな・・・命名「みちくさ号」。

写真→:左上より時計回りで
シノコガシ=シノダケの皮(葉鞘)を取る
シノ割り
みちくさ号
フジを土に埋める
 
二〇一八年一月   ブルガリアのことを調べることがあって、古い写真やビデオを整理していました。ミニDVカセットを今のうちにPCに移しておかなければ、と思い立ち、ビデオキャプチャー を買って作業開始。ブルガリアにいた頃や、原始布をめぐる旅の映像を見直して、思い出に浸っていました。

 一番の思い出は、ブルガリアのトゥリヤという村に住むマリヤばーちゃん。山羊、鶏、野菜を育て、家族の服を編む。朝から晩まで働く。ばーちゃんのお母さんの時代は、何でも手作りで、糸を紡ぎ、染め、機を織っていた。ばーちゃんも娘のころは布を織っていたそうです。糸を取るため大麻を植えていたという発言も。何でも自分で作る、理想の生活。自分も頑張ろう!と、発奮しました。

 2003年、私の原始布元年の映像もあり、忘れていたこと、新しい発見も。15年間自分のやり方でやって来たので、ちょっと初心に戻ることも大切ですね。

 でも、思い出したくない思い出も。ブルガリア人の作家たちと企画した日―ブル交流展は、派手に宣伝して、わーっと盛り上がり、最後には私は裏切られ、泣いたのでした。人間て、自分の都合の良いように記憶を作り変えているものです。ビデオで正確に記録しなくてもいいんじゃないかと思うことも有ります。ただ、これを見たくないために、長い間ビデオに触っていなかったのだと思いますが、今は比較的冷静に過去を振り返ることができるくらい成長したかな。

 最近、インスタグラムを始めて、毎日何かしら更新しています。以前、ブログでやっていたことですが、ブログサービスの廃止と共に中断していました。特別なことが無くても、自分の考えや好きなものを継続的に発信し続けることは大事だな、と思うこの頃です。いつまで続くかわかりませんが・・・インスタをしていない方も、Facebookにも共有していますので、お楽しみください。
 この「みちくさ庵」サイトでは、SNSでは書けない事を掘り下げて書いていきたいと思います。私にとっては、やはりこのサイトが芯となっています。

→写真はトゥリヤ村のマリヤばーちゃん(手前)と娘のドンカ母さん。(2003年9月撮影)
 一月のみちくさ庵
収穫:
採集(食):アブラナ葉・花・蕾、麦門冬
採集(材):
野良仕事:からむし移植
保存食:菊芋乾燥、麦門冬梅酢漬け
家仕事:シノ切り、シノコガシ、シノサキ、ヒゲへゲ、縄縫い、縄綯い、繕い物


12月に播いた小麦が、遅すぎて発芽せず。7月に大豆を播くまでに収穫できるものは・・・と、久しぶりにじゃが芋の種イモを購入するも、まだ寒すぎるかな。例年この時期はもっぱらアブラナ摘みだけです。

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