武田英文議員の質問(図書館関連部分)
次に、読書と図書教育についてお尋ねいたします。
本県は平成十四年十一月に「県民の読書推進計画」を全国に先駆けて策定し、注目を集めました。
「読書は、生涯学習にとって中心的な活動である。子どもたちの心を育み、豊かな人材を育成するために読書活動は不可欠であり、豊かな人生を送るために様々に学習を行う中で読書はなくてはならない活動である。」と、計画策定の趣旨を述べております。
この計画の基本理念として「子どもにとって読書活動は、感性を磨き、表現力を高め、想像力を豊かにするなど、人生をより深く生きる力を養うとともに、論理的な思考力を高め、自ら学び考えることの土台を築く活動である」と高らかに謳いあげております。
県のこうした考え方や取り組みに賛同するとともに高く評価するものであります。
このところ連日のごとく、いじめ問題が報道され、いじめを苦にした自殺が連鎖反応を呈したかのように多発しております。政府はいじめ対策は緊急性が高いとして、実態調査や相談員の拡充などを補正予算案に盛り込むとしております。
いじめの問題は、いくつもの要因が重なり合って生じているのですが、その根底には相手を思いやる心が欠如しているからだと多くの人が指摘しております。相手を思いやる心を育むにはどうすればよいのか。私はその方策の一つが読書であり、最も有効な手段だと思います。
皇后陛下美智子様の著書「橋をかける―子供時代の読書の思い出」の中に次のような記述があります。
「私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。何よりも、それは私に楽しみを与えてくれました。そして、その後に来る青年期の読書のための基礎を作ってくれました。
それはあるときには私に根っこを与え、あるときには翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ拡げて育っていくときに、大きな助けとなってくれました。
読書は私に、悲しみや喜びにつき、思い巡らす機会を与えてくれました。本の中には、様々な悲しみが描かれており、私が、自分以外の人がどれほど深くものを感じ、どれだけ多く傷ついているかを気づかされたのは、本をよむことによってでした。」
本を読むということが、人間形成に与える影響をわかり易く教えてくれる一分だと思い引用させていただきました。
子どもたちが本を読む環境を整えるのは、私たち大人の責務であります。
学校には図書館を必ず設けなくてはならないと規定されております。それは、学ぶことの中心となる場だからです。そして、
そこには図書資料を扱う職員が必要です。職員が“いる”と“いない”とでは、図書館の利用率に大きな差が出るといわれます。すなわち専任の職員がいるところでは一日の平均利用者が42.5人に対し、兼任のところでは23.4人、そして職員不在のところは6.2人に過ぎません。同様に年間一人平均貸出冊数は、それぞれ13.4冊、5.9冊そして2.0冊となっております。
そして、その職員には本来専門家である司書がなるべきでありましょう。ところが本県では司書の正規採用はなく、すべて臨時職員がその職を担い、司書教諭と協力し合って運営しております。司書教諭は教科を教える教師が本務であり、図書館と学校全体を結ぶコーディネーターであります。図書館には生徒がいつ来ても開いていて、図書館資料について何でもわかる状況が必要で、そのためには専門性・継続性が重要であります。兼務の臨時職員がそこまで本を知り尽くすことには無理があります。
知事は「学校教育で司書も大切な位置づけであるということについて検討させていただきます。司書教諭を兼務にして臨時職員で
やっていくという単純な構図ではなく、司書のあり方をどう捉えて教育の向上につなげるか、その視点でもう少し検討したい。今まで
司書をやって、それなりに成績を上げて来た人に対してはどのような扱いをするか、おそらく学校の先生よりも、そっちの萌芽優秀かも
しれない。今、ここで司書を全部採用しますという約束はできないけれども、司書が地区に何人必要かという話も出て来ると思うし、臨
時職員の扱い、能力があったら身分を安定させてとか柔軟に考えていく必要がある。」と述べておられます。
知事は学校教育の中で図書館の位置づけと効果をどのように考えておられるのかお聞き致します。そして又、司書のあり方をどの
ように捉え、これまで長年にわたって臨時職員として学校司書の役割を担ってこられた方々の身分も含め、今後どのように取り扱ってい
くつもりなのかお聞かせください。
これで私の質問は終わります。
ご清聴ありがとうございました。
知事の答弁(図書館関連部分)
学校図書館は、児童生徒の学習活動や特別活動に大いに役立っているとともに、児童生徒の健全な教養を育成することを目的とする、読書センター、学習・情報センターとして、単に本を貸し出すというだけではなく、人間形成に広く関わる重要な場所と考えております。
そのため本県では、直接生徒の授業を担当している司書教諭を中心に、図書部の教員や庶務的業務を担当する臨時職員が協力して、学校図書館の充実や活性化を図っているところであります。
臨時職員の中には自らの専門性を高めて、学校図書館のために尽力されている方々がおられることは承知しておりますが、業務量からしても正規職員化は難しい状況です。しかしながら、今後学校図書館の充実を進めて行く中で、一部の高校において非常勤職員にすることによって専任・専門化を図るなど、改善に向けての方策を、教育庁において検討しているところであります。
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