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なんちゃって解剖学・力学講座 骨格の簡単な説明と、足の変形などを解剖学的・力学的に考えて解明していこうというページです。ただし、私は専門家ではなく、理数系にも弱いので、これは素人的・感覚的な解剖学・力学です。あくまでも“なんちゃって”だということを前提にお読み下さい。
足の骨格 足の骨格はこんな風になってます。キャー、こわい!? ※これは、模型ですのでご安心を・・・(^^;) とはいえ、本物からかたどって作られた模型のようです。このモデルになった人は、ちょっと変形しています。親指の先が曲がっていまね。ちなみにこの足はギリシャ先広型ですね。(ドイツ製です)
足の変形 横アーチのくずれ
足には2つのアーチがあります。縦のアーチは誰もが知っている「土踏まず」のことです。指の付け根にもう一つ、横のアーチがあります。足は、親指の付け根、小指の付け根、踵の3点で体重を支えています。
右図は中足骨の先端(指の付け根部分)を正面から見た様子です。正常な足は、筋肉や靱帯などで支えられ、アーチの形が保たれています。ところが、足に無理をかけ続けると、アーチを支えている靱帯や筋肉が弛んできて支える力が弱くなり、アーチが落ちてきて平になってきます。さらに無理がかかると逆カーブになってしまいます。真ん中3本の指の付け根は本来地面に接することが無いので、このようになると、立っているときに痛みが生じます。指の付け根の裏が痛い人、その部分に常にタコが出来る人は、横アーチがかなり崩れている可能性があります。
靱帯が弛み横アーチが崩れるということは、例えていうならゴムでしっかりと束ねてあったものがゴムが伸びてしまうと弛んで不安定になってしまうようなものでしょう。ですから横アーチの崩れは外反母趾などの変形をしやすい準備ができたものといえるでしょう。
横アーチが崩れ始めると同時に、中足骨はだんだん横に広がってきます。横に広がってしまった状態を開帳足(かいちょうそく)といいます。そして、開帳足でかつ柔らかく、中足部のあたりを手で握ると縮んで足囲が狭くなるタイプの足のことを俗にこんにゃく足といいます。
図に注目して下さい。外反母趾は、付け根だけが出っ張るのではなく中足骨も横に開くということが分かります。内反小趾(ないはんしょうし)も同様に、小指の中足骨が横に開いています。そして、足幅が本来よりも広くなってしまっています。こんにゃく足の人は、中足部を握ると本来の足に近い形になります。
痛みが生じてきた時点で早い段階で正しい靴を履き、しっかりと支えて矯正すれば軽いものなら治り、ある程度の変形があってもそれ以上進むのを防ぐことが出来ます。靴はギプスやコルセットのような役割もあると思います。足に合ったものを履けば足は守られますが、緩い靴や合わない靴を履き続ければ、進行していきます。
変形しないために・変形してしまったら
では、変形しないためには、また変形してしまったらどうしたらよいのでしょうか。外反母趾で幅広になってしまったからといってそれに合わせて幅広の靴を履いても、快適とは感じないようです。特にこんにゃく足の人は、骨が開いてしまった今現在の足囲よりも細いワイズの靴が履けるはずですし、その方が気持ちよく感じるでしょう。今、開帳足で広がってしまっている足囲は本来の足囲ではありません。元々の足囲に近づけた方が、快適に感じるようです。人間には自然治癒力があり、常に元の形に戻ろうとする力があるのだと思います。合わない靴を履き続け、無理な負荷をかけ続けることをやめない限り、さらに変形していくばかりで元に戻ることが出来ません。しかし、本来の幅に戻る条件さえ揃えてやれば、完治は無理でも本来の幅や形に近づけることは出来るようです。
たとえば捻挫などで関節が弛んでしまった場合、包帯を緩く巻くでしょうか?ブカブカのサポーターをするでしょうか?また、折れそうな木の枝を縄で補強するとき、ブカブカに巻くでしょうか?弛んでしまったものをしっかりと支えるためには、緩み無くきっちりと巻くはずです。靴も足を守るコルセットやサポーター、矯正具と考えると、ぴったりと緩み無く支えられるものの方がいいようです。そして、足にぴったりと合わせたものを履いていると、広がっていた中足骨の間隔が狭まり、次第に元に戻ってきます。作った靴が段々緩くなっていき(革が伸びるわけではなく。足に合った靴は履き慣れてもあまり無惨な形に変形しません。)、作るたびに細い木型になっていきます。これは、オーダー靴を履くようになってから実際に私が体験しています。
参考項目:『コラム』《トウシューズはサポーター》、『オーダー靴リポート!』のページを合わせてお読み下さい。
日本人でバレエを踊る方なら誰もが憧れる甲高の足ですが、バレエと縁の無い方の多くは、甲の高さについて認識違いをしていることが多いようです。よく耳にする言葉で、「日本人の足は甲高・幅広」というものがありますが、ここではっきり申し上げておきます。日本人の多くの人の足は、甲高ではありません。実際には写真の上の模型のような低い甲の人が多いです。それは、多くの日本人バレリーナが甲高の足に憧れるということからもお分かりいただけるでしょう。下の模型のような甲高の足は、欧米人でも極端な例ですが、一般的に日本人と比べ欧米人の方が甲が高く、横幅は狭いようです。日本人は横幅はありますが(※)高さがありません。しかし最近は高さもなく、横幅も狭い極細足の日本人がかなり増えているようです。このような足は、外国製の各メーカーの一番細い幅を履いてもブカブカで、確実に欧米人の平均よりも細いように思えます。
※横幅があっても足囲が広いとは限りません。現代の日本人は平たく薄く、周り寸法で考えると細い人が大勢います。骨格の違い
写真は足を親指の部分で切った模型です。気持ち悪いですが、興味のある方はお付き合い下さい(^^;) 2つの写真を比べると高い甲と低い甲では骨格が随分と違いますね。中足部の骨の形が随分と違います。甲高の足は、甲も土踏まずもきついカーブを描いています。また、踵の骨の大きさも随分と違います。甲高の足と低い足でも、個人差は大きいので一概には言えませんが、構造的に甲の低い足の方が踵の骨が小さくなりやすいようです。この辺に最近の日本人の踵が小さいことの秘密があるかもしれません。甲高の足は、指の付け根から急激に高くなっているので、靴の履き口にその分高さがないと足が引っかかって入りません。甲高足のダンサーの多い欧米製のトウシューズが日本人にとって厚いというのも納得がいきます。また、この模型はそうでもありませんが多くの場合、甲高足の人は低い人と比べ、足関節(足首のこと)の位置が高い(床から遠い)ようです。その場合、甲のカーブはもう少しなだらかになります。
※ピンクの線は甲高足のシルエットです。
甲高の足がトウシューズ向きと言われる理由(仮説)
甲高の足はなぜ、トウシューズ向きと言われるのでしょうか。これは私の仮説ですが、その理由は中足部の角度にあるのではないかと思います。甲の高い足と低い足では、中足部の角度に大きな違いがあります。甲の低い足はなだらかですが、甲高の足は角度が急です。甲高足の中足部は初めから角度がついているので、踵をちょっと上げれば、脚の前面から甲までが一直線になります。甲高足の多くは足関節の位置が高いと前の項目で述べましたが、くるぶしの位置が高ければ高いほど、足首の回転率は少しでバランスをとれる点に達します。また、足関節が高い人ほど、少ない力で立つことが出来ます。ところが、甲の低い足の人が一直線になるには、踵を多く上げなければならないことになります。甲の低い足は踵を多く上げないと、バランスをとれる点に達しないのです。
甲高足の方が、構造的に立つのが楽なのでトウシューズに向いているのではないかと思います。また、あらゆるスポーツに言えると思いますが、高いアーチの方が衝撃吸収力が高く構造的に強いので、運動に向いているということもあると思います。しかし、甲の低い優れたプロダンサーなどいくらでもいますし、優れたスポーツ選手もいくらでもいるでしょう。何かコツがあるのだと思います。ですから甲の低い足でも「向いていない」嘆く必要はないと思います。
甲が出る・出ないについて バレエを踊る人は、よく「甲が出る」とか「出ない」という言葉を使いますね。甲とは本当に“出る”ものなのでしょうか?また、甲を“出すこと”は本当に重要なのでしょうか?その事について考えてみましょう。
甲とは“出る”もの?
足の骨格はたくさんの骨で出来ていますが、動かすことのできるのは、足首と、各指の付け根と関節です。緑色で示した中足部と踵骨は、靱帯や筋でしっかりと固定されていて、アテールでも、ドゥミポアントでもポアントでも形が変わることはありません(※)。いかなる動きをしているときもこの形を維持したままです。ポアントしたときだけ出っ張るということはありません。ですから甲が“出る”という表現は厳密にいうと正しくありません。
(※扁平足で変わる人もいますが、それは正常ではなく、あまり健康な状態とは言えません。)上の写真で分かるように、甲高の足は、中足部が強いカーブを描いています。このカーブがポアントしたときも美しいカーブを形成するので、出ているように見えるというわけです。このカーブは骨格的なものなので、生まれつきのもので訓練を積んでも大きく変わるものではありません。ただし、甲の高さは生まれつきの骨格的なものによる部分と、訓練による部分があると思います。土踏まずのカーブは、運動不足や間違った靴を履き続けること、反対に運動で負荷をかけすぎること、その他寝不足、ストレスなどによって、靱帯が弛み土踏まずが崩れ、落ち込んでくることがあります。整骨院の先生に聞いたのですが、バスケットボールやサッカーをやっている人には土踏まずが崩れている人(扁平足)が多いそうです。(負荷がかかりすぎるのでしょうか。)バレエは非常によく土踏まずの筋肉を使いますので、小さい頃から正しい訓練をしていた人は、やらなかった場合と比べ、生まれ持ったカーブを崩すことなくしっかりした土踏まずが維持できると思います。また、バレエを小さい頃からやっている人は、足の骨が太くなるそうですので、やらない場合と比べしっかりとした足になると思います。またシンクロナイズドスイミングの選手も、非常に足の裏の筋肉を使うせいか、日本人でも土踏まずがしっかりとした人が多いですね。ただし、根本的な骨格は変わらないので、上の模型のような薄足の人が、訓練で下の模型のような足になるというような大幅な変化はありません。
甲を“出すこと”は重要?
甲高の足と、低い足ではバランスの位置に違いがあるようです。上の項目で、中足部と踵の骨は靱帯でしっかりと固定されていると説明しましたね。甲の部分の美しいアーチは元々の骨格の描くアーチによるもので、根本的な骨格を訓練で変えられるものではありません。もし、甲のストレッチをして甲が本当に“出っ張る”ようになったとしたらそれは骨格の崩れでありとても恐ろしいことですし、そうなったからといって立つのが楽になるとか、踊りやすくなるわけではありません。
いわゆる“甲が出る足”にはもう一種類あります。甲自体は低くても、足首の可動域が大きい−つまり足首が柔らかい−タイプです。甲の低い足はふつう、ポアントしたとき足首が伸びきらずバランスが後ろに行きやすいので、踵から落ちやすいということがあります。でも、足首が柔らかい人は、その分バランスが前になるので、簡単に立てます。しかし、簡単に立てる=踊れるではないので、過度な足首のストレッチは禁物です。(詳しくは『NG集』の《ストレッチのとき爪先が床につく》を参照して下さい。)
このように考えていくと、適度なストレッチは必要だと思いますが、甲や足首をただ“出そう”とストレッチをしてもあまり良い結果を生まないと思います。重要なのは、甲を出すことではなく、引き上げることだと思います。出すことを意識するのではなく、踵や体全体を上に上に引き上げることを意識した結果、足首が伸びて、甲が出ていたというのが正しいのではないでしょうか。「甲を出そう出そう」というイメージでいると、足にばかり意識が行ってしまい、甲や足首によけいな負担がかかります。でも、「引き上げよう引き上げよう」というイメージを持って練習すれば、体全体に意識が行き、足を痛める危険性も減り、良い結果が得られるのではないかと思います。
甲が低く足首が固いある人の話
私のレッスンメイトで、甲が低く足首もかなり固い人がいます。骨格的な問題で、どうしても踵が引き気味になるので、トウシューズを履き始めた頃は、すぐに踵から落ちてしまい、長い間立っていることが出来ず大変苦労をされていました。しかし、1〜2年訓練を続けているうちに、いつの間にかしっかりときれいに立てるようになっていました。足首は相変わらず固いままで、甲が出るようになったわけではありません。しかし、確かにきれいに立っているのです。訓練でポアントで必要な筋肉と、その他に何か“コツ”を掴んだのだと思います。甲が高い人や元々足首が柔らかく簡単に立てるタイプの人は、ボーッとしていても立てるために、逆に踊るのに必要な筋力やバランスやコツが身に付きにくいという難点もあります。甲が低く足首の固い人は、立てるようになるのに苦労しますし、初めから楽に立てる人は、筋力やコツを身につけるのに苦労します。そう考えると、どちらがいいのか分からないですね。
今後、「靴が土踏まずを支える原理(素人的見解)」「扁平足の足」「土踏まずの落ち」などをアップしていく予定です。