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私が今までおかしてしまった間違いを他の人がやって同じようなことで悩ませないために作った“体験的NG集”です。このサイトでは足にピッタリとフィットするトウシューズを見つけるところまでで、その先のこと、つまり立ち方や技術的な問題には敢えて触れていません。しかしトウシューズを選んでいくうちにピッタリとフィットするものは間違った立ち方になってしまうという矛盾点がでてくる場合があります。
ここに出てくる間違いは、バレエに一生懸命になるあまり多くの人がおかしてしまいやすい間違いであるとも言えると思います。トウシューズのせいで起こる問題もありますが、トウシューズとは関係なく起こる問題もあります。技術的なことは本来先生から教わるものです。しかしその最低限のことを教えてくれない先生や、間違った事を教える先生もいるようなので、ここでは最低限これだけは絶対に間違いだと私でも分かること、体験的に分かったこと、痛めてから気付いたこと、今までの経験から体のタイプによってはやらない方が良かったと思えたことなどをまとめていきます。項目は順次増えていくと思います。
私はテクニックについて何か言えるレベルではありませんので、参考程度にして下さい。でも、バレエ向きではないからこそ分かるということもあります。
前のめり(乗りすぎ)な立ち方
足の形にピッタリとフィットしたトウシューズを履いたらこんな立ち方になってしまった!
どうしてもこのような立ち方になってしまう場合、そのトウシューズは履いてはいけないということになります。足を痛めますのでそのトウシューズを履くのは諦めましょう。
甲が出る人、足首がとても柔らかい人、指の付け根が柔らかすぎる人などが柔らかいトウシューズや、前バランスのトウシューズをはくとこうなりやすいと思います。また、サイズや幅が大きすぎる場合もこのようになってしまうことがあります。どうして大きいとそうなるかはそのうち絵に描いてアップする予定です。
よくカタログなどでこんな立ち方をしているのを見かけますが、あれはカタログ用に甲を美しく見せるためわざと大袈裟に立っているだけで、決して正しい立ち方ではないので真似しないようにしてください。いわばアート写真のようなものです。
このような立ち方を続けていると、爪の痛み、甲の炎症、足首の靱帯の伸ばしすぎを引き起こすことがあります。先生が「甲を出して!」というので、頑張るあまりこうならないように気を付けましょう。大切なのは甲を出すことではなく、引き上げて真っ直ぐに立つこと。プロだってみんな甲が出ているわけではないのです。
このような立ち方をしていても全く注意してくれない先生もいらっしゃいますが、自分でこうなっていると気付いたら他のトウシューズを探しましょう。またこういう立ち方をしていると、小さい子供やあまり見る目のない方から「甲が出るね」とお褒めいただけることもありますが、本当に甲が出ているのか、ただ単に乗りすぎているのか、自分でよく見極めましょう。たぶん、こうなってしまったらどうあがいてもそのトウシューズではまっすぐに立てることはないと思います。でも特定のトウシューズが悪いというわけでなく、単に自分のバランスの位置に合っていないだけです。自分がこうなってしまっても他の人が同じようになるとは限りません。
これがいいと思っている人は結構いらっしゃると思いますが完全にNGです。図はピンクの方が正しい例です。図1は立っているときの足の形、図2はそのままの形で90度回転させたものです。(床でのストレッチの姿勢)
正しい立ち方の形ではつま先は床から浮きます(図2)。青い方のように床に付くまでストレッチした形だと、立った時図1のようになります。《前のめり》の事項とも関連してますが、とても恐ろしい立ち方になってしまいますね。つま先が床につくほどストレッチすると足首、指の付け根が伸ばしすぎになります。甲にも過大な負担がかかります。(矢印で示した部分)
いつの間にかの慢性捻挫
ストレッチをしていると「つま先が床につくのがいいんですって!」と言って勝手にぎゅうぎゅう押してくれるお節介な人がいたりするので気を付けましょう。元々柔らかい体質の人だとそれだけで靱帯を伸ばしてしまうことがあります。つまり軽度の捻挫です。靱帯を伸ばしすぎてしまうと戻りにくく、慢性捻挫になることがあります。足首は柔らかければ柔らかいほどいいというわけではありません。伸びすぎてしまうと関節が不安定になりコントロールが効きにくくなります。足首は柔らかければ柔らかいほどコントロールするのには強靱な筋力が必要になります。“立つ”だけなら柔らかいほど楽かもしれません。でも“踊る”には柔らかければその分強い筋力が無いとコントロールできません。「柔らかく」て「立てる」だけで踊れるわけではないのです。これが足首を柔らかくしすぎた私の実感です。足首が柔らかくなるにつれ、より強い筋力が必要、柔らかくするのであれば同時に強くする必要がある、柔らかさと強さのバランスが非常に大事だということがわかりました。
困るのは先生の中にもこれが正しい思っている方がいるということです。私はある日先生にぎゅ〜と押されてしまいました。元々柔らかい体質の私は痛みも無かったし、捻挫の知識も無かったのでその時は分からなかったのですが、今考えるとそれ以来足首の調子が悪くなったような気がします。今思い出してみると押されているとき、痛みまではいきませんがピリピリとするような感覚がありました。あれが靱帯が伸ばされる瞬間の感覚だったのかな?と思います。その後柔らかくなりすぎて不安定になりましたが痛みも腫れも無かったので捻挫だとは気が付かず、トウシューズを履いて踊っていました。踊るとポキポキ鳴るなどのはっきりとした「異変」が現れたのは数ヶ月後、「痛み」となって現れたのはその1年以上もあとのことでした。
つま先は骨盤の真下に
骨盤から真下に線を伸ばしたものをイメージして下さい。つま先が骨盤の真下にあるのが理想だと思います(胴の長さ、脚の長さ、足の形、骨格的な甲の高さなどで全体のバランスが多少変わると思いますが)。つま先がその線よりも前にあるとかかとから落ちやすくなります。つま先がその線よりも後ろに行ってしまったら前のめりになってしまい立っていることは出来ません。甲や指の付け根に過大な負担がかかります。この状態が図1の青い線の方です。甲が骨格的に低い人は床から浮きやすいので特に頑張ってストレッチしてしまうと思います。甲の低い人と高い人では、低い人の方がより大きく伸ばさないと床に届きません。ですから同じ床につくといっても甲の低い人の方が伸ばしすぎ度が高くなります。逆に言うと甲の低い人の方が足首をより大きく伸ばさなければ立てないということになりますが、床につくほどは伸ばしすぎです。
でも甲が高すぎる人も注意が必要です。甲が高い人は初めから床に近いと思いますので柔らかくしすぎると(可動範囲を大きくしすぎると)簡単に図1の青い線のようになってしまいます。甲が高くてしかも可動範囲が大きい人はコントロールするのには普通よりかなり強い筋力が必要になりますし、場合によっては膝を反らさなければなりません。柔らかさと強靱さを持ち合わせた人もなかなかいないようです。甲が高い人は特に柔らかくしすぎないように注意が必要だと思います。
伸ばしすぎの危険性
このように床に付くほど柔らかい人はあまりいないだけにその危険性を理解出来ない人、イメージ出来ない人が多いのではないでしょうか。バレエ関係の本などを見ても体を柔らかくする方法ばかりで、伸ばしすぎの危険性にはあまり触れられていません。先生の口からも一度も聞いたことがありません。特に元々体が柔らかいタイプの人や、子供はストレッチのしすぎで慢性捻挫にならないようにくれぐれも気を付けましょう。気を付けよう!
頼まれたのならまだしも、頼まれてもいないのに勝手に他人の体をグイグイ押すのは絶対にやめましょう!もし他人の足の靱帯を伸ばし過ぎてしまったときに責任が取れるかどうか考えてからにしましょう。靱帯の伸びすぎは医者にも完全に治すことができないということを頭に入れておきましょう。また、靱帯を伸ばしすぎて不安定になって困っている人、甲が高く出過ぎて困っている人に対して「羨ましい」などと言うことも絶対にやめましょう!本人にとっては深刻な問題なのでとても心無い言葉に聞こえます。柔らかければ柔らかいほどいいわけではないのです。『バレエとケガ』のページでも“捻挫”の項目がありますのであわせてお読み下さい。
また、捻挫について詳しく知りたい方はアスレチックケアというサイトが参考になります。(バレエ関係ではありません)
膝のしなった足はとても美しく憧れる人は多いと思います。甲を出すストレッチと同様、膝を反らすストレッチに励んでいる方も多いのではないでしょうか?私もその一人でした。しかし、気を付けないととても危険です。
私は、シルヴィ・ギエムのような足に憧れるあまり、膝の裏をむやみにストレッチしたり、引き上げることを忘れて後ろへ押しつけるようにして、膝を伸ばしていました。その結果、多少反るようにはなったのですが、靱帯を伸ばしすぎたようで膝関節が不安定になりました。骨と骨をつないでいる靱帯を伸ばしすぎてしまうと、支えが弱くなり不安定になります。整体では「過伸展(かしんてん)」と言われました。要するに関節が正常より伸びすぎな状態です。
ただ立っているときや、ストレッチで反らすことが出来ても不安定で弱いので、肝心の踊っている最中に膝を伸ばしきることが出来なかったりします。つまり、何のメリットもありません。私はアラベスクをしているときの軸足、普段長時間立っている時など、体重が足の骨の中心を通らずに、膝の裏側に集中してしまうため痛くなることがあります。過伸展になってしまったら周りの筋肉を相当強くする必要が出てきます。
人それぞれ骨格の違いというものがあるので、シルヴィ・ギエムの脚が医学的に見て過伸展なのかどうか私には判断できませんが、プロダンサーの中にも過伸展の方はけっこういるそうです。プロの場合は鍛えられていて、引き上げて使っているので過伸展でもしっかりしているのかもしれませんが、趣味で踊っているような人は、特に気を付けましょう。むやみにストレッチしすぎたり、引き上げずに押しつけるような伸ばし方をしないようにしましょう。既に過伸展になってしまった人は、膝周りを強化するエクササイズをしましょう。
膝の強化エクササイズについては、私には聞かないで下さい。先生やスポーツトレーナー等に相談するか、『おすすめ図書』で紹介している「ダンステクニックとケガ」(ジャスティン・ハウス、シャーリー・ハンコック 著 小川正三 監訳 白石佳子 訳 大修館書店 刊)等をご参照下さい。
〜ちょっとおまけ〜 “頑張った結果壊した”にならないように……
“バレエ”という踊りは西洋で生まれたものです。当然西洋人の骨格や筋肉にあった踊りです。日本人と西洋人では骨格や筋肉にかなりの違いがあり、西洋のメソットをそのまま当てはめると無理がかかり問題が生じることが多々あるようです。日本人には日本人に合ったレッスンがあるはずです。これ以上は私が踏み込める分野ではありませんが、“努力次第で西洋人のようになれるわけではない”ということだけは分かります。逆に言うと「甲が出ない」「内足」だというのも必ずしも努力不足というわけではないのです。努力次第でなんとでもなると思い闇雲に努力した結果壊してしまう人も結構多いのではないかと思います。ダンサーズ・セラピットというサイトが勉強になるのでオススメです。(リンクとバレエとケガのページでも紹介しています。)バレエのことで「努力しているのに何で?」と悩むことが多い方は一度立ち止まって考えてみましょう。
がんばり屋さんな人ほど気を付けましょう。自分の体は自分で守りましょう。お子さんにバレエを習わせている親御さんは、“危険な努力”をしないようにお子さんにどうか気を配ってあげて下さい。