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コラム Page2

洗脳

 靴やトウシューズを試着したときブカブカとしていても、日本人の場合なかなか「靴の幅が広すぎるのかも?」という風に考える人は少ないようだ。ブカブカとしているとすぐ「サイズが大きい」という風に考えてしまう人が多いようだ。トウシューズを選んだことがある人なら「幅」を意識している人は多いだろう。意識しているはずなのに自分の足が「広いのかも?」と考える人は大勢いるのに「狭いのかも?」と考える人はほとんどいないようだ。
 やっぱり「日本人の足は幅広」という意識が日本人の頭の中にしっかりと刷り込まれているようだ。

 今、通販のカタログ、デパート等の広告、靴屋の店頭などを見ると「幅広パンプス」「4Eパンプス」「ゆったりラクラク」「甲高幅広の日本人に合わせました」「足入れがラクラク」などという謳い文句をそこら中で目にする。私も「日本人の足は幅広」というのは昔ファッション雑誌で見て「ああ、そうなのか〜」と思った。
 私もトウシューズを履くまでは靴の幅のことなんて考えたこと無かったが、何も知識が無いところにそういう情報を目にしてしまえばすんなり納得してしまうのも無理が無いだろう。そういうのを小さいときから目にして耳にしているわけだから、これはもう「洗脳」といっても過言ではない。洗脳されているから、「足幅が狭いのかも」って考える人がほとんどいないのだろう。

'02/8/20

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意外と細くないかもしれない欧米人の足

 欧米人の足は幅は狭いかもしれない。でも甲が高いから測ってみれば意外と細くないのではないかと最近思い始めた。少なくともダンサーに限っては。(特に外国の国立の学校出身者は初めからバレエ向きの骨格の人が選ばれているため)

 アメリカの某メーカーのカタログと、日本の某メーカーのカタログは、どちらもそれぞれの国のダンサーがモデルをしているようだが、よ〜く観察してみると、アメリカ人の足囲はけっこう太さがありそうだなあと思う。それから、ワガノワバレエ学校のポアントワークのビデオを見ると彼女達の足の凄さに驚く。何が凄いかって甲の高さだ。テーピングの方法のところで足がアップで映るのだが、上から見ると細いが、横から見ると指から足首まで一直線で、思わず「ワ〜ッ!!!」って言ってしまうほど甲が高い。甲の部分の傾斜が急で、まるで90°/45°/45°の三角定規のようだ。さすがに45°までは無いかもしれないが、とにかく凄い角度だ。

 だいたい欧米人は足首(くるぶし)の位置が高いのだ!足首の位置が高いという事は、爪先から足首を結んだ線の傾斜がきついという事だ。という事は当然、中継点のトウシューズの履き口に来るあたりも高いということになる。日本人と全くバランスが違う。あれだけの高さがあると、けっこうトウシューズも太さが無いと入らないと思う。最近分かってきたことだが、足囲自体が細くても甲が高く土踏まずのくりが深い人はどうも足囲のわりに幅広のトウシューズでないと入らないようだ。欧米人は日本人と比べて土踏まずのくりが深い人が多い。欧米製のトウシューズのヴァンプが高いのもあの足を見れば納得できる。土踏まずのくりが深くて足事体は薄い人もいるが、高さで稼いでいるだろう。

 また、欧米人は日本人より全体的に骨格がしっかりしている。立体的な形なので陰影もはっきりして目の錯覚で細そうに見える事もあるだろう。目の錯覚というのもバカにできない。メイクで顔に陰影をつけるのはなぜだか考えれば「のっぺり」と「影クッキリ」のどちらが細く見えるかは容易に想像がつくだろう。人間の目なんていい加減なもので、ちょっとした陰影やラインに簡単に騙されるのだ。

 目の錯覚で驚かされた経験は他にもある。ある人がグリシコのフェッテのXXを履いていた。ものすごくフィットしていて美しかった。その人は足幅が日本人の中で広めで甲も高めの人だ。私にはフェッテはXでもゆるかったから、靴だけで見るとXXは細くは見えない。でもその人が履いて立ったとたん、ものすご〜く細い靴に見えるのだ。フェッテはロシア製の靴だ。メーカーのHPを見るとフェッテはXXXが普通幅に設定されているのでXXXを履いている人がロシアでは一番多いと予想される。XXXが一番多いということは日本人が想像するほどロシア人の足は細くないということ。でもロシアのバレリーナの足はとてもほっそりと見える。でも、XXXがピッタリという時点で日本人の中で広めの彼女の足よりも広いということになる。

 バレエ雑誌があれば欧米人ダンサーと日本人ダンサーの足元を比べてみると面白いと思う。一人ではなく何人ものダンサーを比べるのだ。アテールの時もフルポアントの時もいかに日本人の甲が薄いかがわかるはずだ。日本人の中でも甲の低い人と高い人といるはずだが、日本人の中で甲高の方でも欧米人と比べるとそうでもなかったりする。日本人の中で甲高の人と、欧米人の中で甲の低い人は、そう変わらないのではないだろうか。

 私は外国のどのメーカーのトウシューズでも一番細いものでないとピッタリしないものがほとんどだ。いや、一番細いものでさえゆるかったりする。私の足は確かに日本人の中で甲が低い方で足囲も細い方だが決して特別細いように見えるわけではない。でも、自分の足とロシアのバレエ学校の生徒などと比べるとロシアの子の方がずっとほっそりと見える。でもブカブカのトウシューズを履いている人はいない。だから日本人の足囲は、欧米人と比べてそれ程変わらない、それどころか細い人の方が多いのではと思ってしまうのだ。

'02/8/4

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外反母趾対応靴

 まず一言。こんな言葉に騙されてはいか〜ん!!!
 「外反母趾対応靴」「外反母趾予防」こう謳ってあるパンプスタイプの靴を最近よく見かけるようになった。どういう靴かというと、たいていは「EEE」や「EEEE」で、「アーチクッション」が盛り上がっていて、「滑りにくい中敷き」を使ってある。「ゆったりラクラク」とか「アーチクッションが土踏まずに優しくフィット」とか「足が滑らない!」などともっともらしく書いてあると、外反母趾の痛みを感じているけど、不細工な健康靴はど〜しても履きたくない!という人は思わず買いたくなってしまうことだろう。

 しかし、その前に「外反母趾にならない靴」とはどういうものか考えていただきたい。『日本人の足は本当に幅広?』を読んだ方には分かっていただけることだろう。読んでない方は今すぐ読んでからこちらを読んでいただきたい。「外反母趾にならない靴」とは、特別な靴ではなく「足に合った靴」だ。幅も長さもピッタリとフィットし、履き心地のいい靴のはずだ。幅や長さがピッタリと合っていれば特別な素材を使わなくても前滑りする事もない。また、アーチクッションがついていることが悪いわけではないが、土踏まずがピッタリフィットしていれば、アーチクッションなどついていなくても土踏まずを支えてくれるし、靴は周り中から足を支えてくれる。

 人によって足の形や足囲、甲の高さなどが違う。だから外反母趾にならない靴というのは人によって違うはずなのだ。誰でも外反母趾にならない靴などあり得ないはずなのだ。だから、その心優しい外反母趾予防靴くんが、実際にその外反母趾予防能力を発揮できるのは、その靴にピタリと合う足を持った人に履かれた時だけだ。そのような人に履かれたならこの外反母趾予防靴くんも使命を全うできて幸せだろう。でも実際にはEEEやEEEEの人はかなり少ないようだ。でも、外反母趾の悩みを持つ人は、幅狭の人から幅広の人までさまざまだ。だから外反母趾予防靴くんが能力を発揮できることは少ないと言える。ところがこういった商品は、あたかも「誰の足にとっても優しい」というようなイメージで売られている。各会社、販売店は「ゆったり」を強調する。どうしてそうなってしまうのか・・・。

 こういう靴は実は2つの間違ったコンセプトの元に作られているのだ。
「日本人には幅広・甲高の人が多い」
「ゆったりとした靴は足に優しく外反母趾にならない」

 まず一つ目の「日本人は幅広・甲高の人が多い」は、実際に何千人、何万人と現代人の足を測ってみればそうではないことが分かるだろう。そういうことが分かれば少しはマシな状況になるかもしれない。でも、二つ目の「ゆったりした靴は足に優しい」という間違いに気付かなければ実は根本的解決にはならない。なぜなら、「ゆったりとした靴が足に優しい」が正しいと仮定すると別の間違った考えも浮かんでくる。「大は小を兼ねる」だ。きつい靴は良くないが、ゆるい分にはなんら問題が無いとついつい考えてしまうのだ。細い靴は細い人しか履けないが、広い靴なら誰でも履ける(足が入る)。だからターゲットの狭い細い靴はメーカーが作りたがらないだろう。たしかに真っ平らでヒモでしっかりと締めるタイプなら多少ゆるくてもそれほど問題は起こらない。しかしパンプスとなると話は別だ。パンプスはヒールがあり、甲を押さえてくれる部分が無いためピッタリとフィットしていなければならないのだ。大は小を兼ねるというわけにはいかない。

 でも、いくら足にいいとはいっても、不細工な健康靴はおしゃれを楽しみたい人にとっては許せないだろう・・・。(私だって履きたくない!)パンプスが手放しで健康にいいとは言わない。パンプス向きの人とそうでない人もいるかもしれない。でもパンプスだって選び方を間違えさえしなければそれ程ひどいことにはならないはずだ。足の弱い人でも一日中歩き回るなどしなければ大丈夫だろう。(足に合わないパンプスはたった5〜10分でも痛くなるが)でも、外反母趾対応靴を買おうと思ったら、「外反母趾予防」という特別な機能はひとまず置いといて、その靴は本当に自分の足にフィットするのかどうかを考えていただきたい。『靴の選び方』で紹介した6つの条件を満たし、なおかつ履き心地が良ければどうぞお買い上げ下さい。でも合わなかったら絶対に買ってはいけない。その靴はあなたにとって「優しい靴」ではないからだ。

'02/6/30

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トウシューズはサポーター
(トウシューズと外反母趾)

 このコーナーの『本来の幅』で書いたが、私の筋肉や靱帯は柔らかく弱い。柔らかすぎるということは、骨を支える力が弱い=脱臼などしやすいということだ。固い人は握っても骨は動かないかもしれないけど、私は握ると細くなるので、トウシューズもキュッと横から締められる感じじゃないと安定しない。外反母趾というのは要するに脱臼、もしくは亜脱臼だ。(外れるまでは行かないがずれること)同じ条件下におかれても、筋肉が柔らかく弱い人の方が外反母趾になりやすいだろう。私は筋肉が柔らかく弱いので、ゆるめのトウシューズを履いていると骨がどんどん横に広がって外反母趾が進んでしまう。たまに指の付け根がゆるいトウシューズを履くと、すぐに親指の付け根が痛くなる。

 ゆるいトウシューズの方が足にいいように思っている人が多いようだが、外反母趾はゆるい程進むようだ。ゆるいトウシューズは骨が横に広がる余裕を与えているようなものだろう。

 私が外反母趾が痛くなるのは決まってゆるいトウシューズを履いたときだ。普段の靴もそうだ。昔、私は小さいサイズを間違えて買うことが多かったので昔はよくきついトウシューズを履いていた。(タテに合わせると幅がブカブカになので、きつい、ゆるいの感覚で選ぶとどうしても間違えてしまうのだ)きついトウシューズがいいというわけではないが、きついトウシューズを履いていて外反母趾が痛くなったことは一度も無い。きついのは決して良くないが、骨が横に広がる余地も無いので広がらないということだろう。(ついでにきついと足が中で動いて擦れることがないのでマメもできにくかった。)

 はじめて外反母趾の痛みを感じたのは、あるトウシューズを履いたときだが、それはプラットフォームが狭く、クラウンが高くできているものだった。爪先はきついのに、指の付け根がブカブカだった。厚みもあまっていた。爪先が狭く親指が中心に寄せられているということは親指の中足骨(*注)と親指の骨はまっすぐな位置関係になく、くの字に曲がった位置関係にあるということだ。その状態で垂直に力がかかったら・・・それでさらに指の付け根がゆるかったら・・・物理の時間を思い出して欲しい。2つの骨がくの字の関係にあって上下(上からと床から)から力が加わったら関節は横へ出っ張るのは想像できるだろう。

 私はこのトウシューズを履いたときから、指の付け根部分がゆるいトウシューズは外反母趾を進行させるのではと気づきはじめた。だからそれからは履き口のところをかがって指の付け根部分にゆとりを与えないようにぴったりとフィットさせて履くようになった。指の付け根をピッタリとさせるととても楽なのだ。だから外反母趾もそれ程ひどい状態にはなっていない。もし、そういう事をせずにゆるいトウシューズを履き続けていたら、私のこの柔らかい足はきっと見るも無惨な外反母趾になっていただろう。

 人間の足は、本来つま先で立つように出来ていない。つま先で立つように出来ていないのにつま先で立とうと思ったら、何かサポートが必要になる。つま先で立つためにはもちろん筋力が必要だ。爪先が固く平らになった靴も必要だ。でも爪先が固く平らなだけでは不十分なので底が固いトウシューズを履くというわけだ。だからトウシューズはつま先で立つためのサポーターとも言えるだろう。

 サポーターはけがの再発予防などの目的で圧迫・固定するものだ。
 例えばある人がひねって靱帯を伸ばして関節が不安定になってしまったので、サポーターを使うことにしたとしよう。不安定な関節が再びずれないようにするサポーターが、もしゆるかったらどうなるだろう?ゆるいサポーターをして運動すれば、またたちまち関節がずれてしまうだろう。サポーターがゆるかったらまったく関節をサポートしてくれない、関節を守ってくれない。サポーターはある程度の締め付けによって効果を発揮するのだ。
 また、骨折をした人は、骨を正常な位置に戻したあと、骨が固まるまでギブスで固定する。ある程度快復したら松葉杖などを使って日常生活をする。その時のギブスがブカブカだったらどうなるだろう?ずれてしまって変な位置で固まってしまうかもしれない。ギブスはピッタリと合わせるから効果を発揮するのだ。

 このことを考えるとトウシューズにも適度な締め付けが必要だという事が分かる。ある程度の締め付けによって足はサポートされるのだと思う。ゆるいトウシューズではサポートが得られないのでトウシューズの中で自力で立っているようなものだ。
 でももちろん、ただきついのがいいと言っているわけではない。「窮屈」ではなく「心地いいきつさ」「気持ちいいきつさ」というのがあるのだ。「心地いいきつさ」というのは、一体感がありサポート感がある。
 私のトウシューズの中には「履いているときの方が楽」というものさえある。そのトウシューズを履いている間は、足が横からしっかりとサポートされ、広がった骨が正常な位置に戻されているようだ。疲れなどで靱帯がゆるんで外反母趾が多少痛い時などは、そのトウシューズを履くことによってかえって楽になるのだ。そのトウシューズはまさに"サポーター"の役目を果たしている。

(注:中足骨=足の甲のてっぺんから指の付け根までの骨)

'02/6/21


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