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自分の足と合いそうなトウシューズを探し出すには、ものの形を立体的にとらえる多少の“観察力”を要します。またボックスを潰して履く場合、潰した後はどんな形に変化するのか“想像する力”も必要です。このページでは、「ワイズの広さとプラットフォームの広さとの違い」「ボックスの上から見た形」「横から見た形」さらには「踏んだ後の形の変化」などを、本文だけではいまいちイメージ出来ないという人でも分かるように図で解説していきます。これを読めばあなたも立体に強くなります(?)
■ C O N T E N T S ■
ワイズの広さ・プラットフォームの広さ
「先細・四角」「幅狭・幅広」
クラウンの高さ・傾斜
構造上の前バランス後ろバランス(エッジの角度)
足への圧力
直線的・曲線的
引き紐とかがりの違い
ワイズの広さ・プラットフォームの広さ
ワイズとは・・・
左図の矢印の部分の幅、及び周り寸法の太さのこと。
プラットフォームの広さは関係ありません。トウシューズのワイズはこの部分の幅に合わせて選びます。この部分の幅に合わせると指先がきついという場合は、「形が合っていない」、又は「小さい」可能性があります。もう一度自分の足のタイプにそのトウシューズが合っているか、タテのサイズが合っているかなど、見直してみて下さい。プラットフォームの広さとは・・・
左図の矢印の部分の幅、及び広さ(面積)のこと。
ワイズは関係ありません。爪先がきついからといって、むやみに広いワイズを試す前に、形が合っているかどうか見直してみて下さい。爪先が窮屈でないくらい広いものを選ぶと、履き口がブカブカという場合は、形が合っていません。ワイズもピッタリ、履き口もピッタリ、指先も窮屈ではないというのが理想です。ここはきついのに、あそこはゆるいというものは形が足に合っていません。
「先細・四角」「幅狭・幅広」
先細のボックスとは・・・
ワイズの広い狭いに関係無く、B部分の幅に対してA部分の幅が狭いもの。四角いボックスとは・・・
ワイズの広い狭いに関係無く、B部分の幅に対してA部分の幅が広いもの。幅狭・幅広とは・・・
先細・四角などボックスの形に関係なくワイズが狭い(細い)もの、又は広い(太い)もの。「先細を幅狭」「四角いものを幅広」と言う人が、ものすごく大勢いますが、プラットフォームの広い狭いと、ワイズの広い狭いは違います!
例えば……
先細でも幅広のものがあります。逆に四角くても幅狭のものがあります。
クラウンの高さとは・・・
下図のピンクの点線の部分の高さ。
ピンクの丸はボックスを点線部分で切った断面のイメージです。一番右の丸はクラウンの高いものを踏んだ時のイメージ。黒の点線が元の形です。幅が広がり高さが低くなります。プラットフォームは踏んでも潰れませんので平たくなりません。
ヴァンプの傾斜具合
横から見たときのヴァンプ部分の傾斜具合に注目してください。高いクラウンのものは、角度が急で、低いクラウンのものは角度がなだらかです。自分の足を横から見たときは、どちらが近いでしょうか?日本人の場合、全く踏まずにぴったりする人は少ないと思いますので、ほとんどの人が潰して履くことになると思います。踏み率がなるべく少なくて済むものを選ぶことが、型くずれおよび足への負担を最小限にすることにつながります。
角度はなだらかでも、プラットフォームから全体的に厚みがあるものもあります。甲は低いけど全体的に厚みがある足の方はそういうものを選ぶといいと思います。
また、足自体は薄くて細くても、甲がかなり高く、土踏まずが深い人は、角度が急な方がしっくりくるかもしれません。
ボックスを踏むと・・・
クラウンの高いものを履く時は、踏んで低くすることが多いですね?踏むといったいどんな形になるんでしょう?甲が低い人でも踏めば全て解決でしょうか???
ところが、そううまくは行きません。履き口のあたりは低くなりますが、プラットフォームは固いので踏んでも平たくなることはありません。幅もつま先の幅は変わらずつま先以外のところだけ広がるので、四角っぽかったボックスでも、台形に変化し、全体のシルエットは菱形っぽくなります。踏み率が高いほど激しく変形します。足は菱形をしているでしょうか?していませんね。この状態で履くと脇がパカパカとあき、引き紐を締めたくなります。また、付け根がゆるくつま先が一番きついという状態になり、指先への負担が大きくなります。
エッジの角度(プラットフォームの角)とは・・・
「エッジの角度」というのは図の部分の角度のことで私が勝手にそう呼んでいるもので正式な名前ではありません。鋭角(エイカク)なもの、90度のもの、鈍角(ドンカク)なものがあります。
★「鋭角」と「鈍角」は字が似ていて紛らわしいので以下はカタカナで表記します。
バランスの感じ方は人それぞれ
何足かのトウシューズを履いたことがある方なら分かると思いますが、トウシューズによって重心の位置が違います。履くとグッと前に行くような感じのするもの、逆に前に行きにくいもの、ちょうど真ん中のものとあり、これが俗に言う「前バランス」とか「後ろバランス」というものです。
トウシューズの前バランス、後ろバランスというのは同じトウシューズでも履く人によって感じ方が随分と変わるようです。ですからこのサイトの他のページでは、あえてバランスには触れていません。先入観を与えてしまっては困るからです。
構造上「前バランス」「後ろバランス」とは・・・
しかしながら、トウシューズの話をする上で「前バランス」「後ろバランス」という言葉が使えないと不便なことがあります。前バランス、後ろバランスというのはある程度、外見的な条件でトウシューズ同士で相対的に比較、分類することが出来ます。(「あの靴よりも、この靴の方が前バランスだ」というような比べ方)
トウシューズはよく観察してみると、アテールに置いたときにプラットフォームが上向き(A)、正面向き(B)、下向き(C)とあります。
(A)プラットフォームが上向きなもの(エッジがエイカク)→構造上前バランス
(B)プラットフォームが正面向きのもの(エッジが90度)→構造上中間
(C)プラットフォームが下向きなもの(エッジがドンカク)→構造上後ろバランス
★ソールの反り方が激しくて、中間や前バランスでもアテールに置くと下向きに見える場合もあるので注意。その場合、反りを真っ直ぐにした場合どうかで見て下さい。
ここでいう、「前バランス」、「後ろバランス」というのは、トウシューズのプラットフォームの角度で分類したもので、私が履いてどうだったとか、他の誰かが履いてどうだったかという主観的なものではありません。ですから、「構造上後ろバランス」でも、履く人によっては前バランスに感じるということもあります。
構造上バランスを知るメリット
履きやすいトウシューズの条件でこの「バランスの位置」というものは、多くの人にとってものすごく重要で、誰もが非常に気にかかる部分のようです。しかし、人によって感じ方が違うので、人の感想を参考にすると振り回されることになり、期待はずれという事も多く起こり得ます。
何足かのトウシューズを履いているうちに、履きにくいもの、履きやすいものと出てくると思います。「履きやすいもののエッジは90度で、履きにくいものはエイカクだった」などという特徴が見つかるかもしれません。そういう特徴が分かってくると、バランスの位置での失敗が減ってくると思います。
ただし、バランスの位置というのは、上達度などによって快適な位置というのがかなり変わりうる部分です。ですから自分は「前バランスでないとダメ」と思っている方でも変わってくることがありますので、あまり固定観念を持たずに時々違うタイプのバランスも試してみると良いと思います。
ドンカクなトウシューズ、エイカクなトウシューズの種類が知りたい方→→エッジの角度情報
きつめなのに快適・ゆったりなのに痛い
足にぴったりとフィットしているというのは、どういう状態の事を言うのでしょうか。どういうときに「快適だ」と感じるのでしょうか。
足のどの部分にも同じくらいの圧力がかかっている状態にあるとき、「快適だ」と感じるのだと私は考えています。このような状態にあるとき、少しきつめのトウシューズであっても、窮屈ではなく「包まれている」とか「支えられている」という感じで、一体感があり非常に気持ちが良く、不思議ときついとは感じません。足が周り中から支えられ非常に楽に感じます。また、シューズが非常に軽く感じ、同じ固さのソールでもゆるい場合と比べ、柔らかく感じるようです。
反対に、ある部分がきついのに、ある部分はゆるいというように、足にかかる圧力がアンバランスな状態にあるとき、全体的にはゆるくても「きつい」と感じたり、「痛い」と感じたりするようです。また、アテールでは全体的にゆるく、どこも当たるところが無くても、立つと事情が変わってきます。では、イメージ図で説明していきましょう。
フィットしているトウシューズ
前から見た図
幅やシューズの後半部分がぴったりとフィットしていると、足は周り中から支えられます。横方向からも支えられるので、1本の指が長い人でも、体重のかかり方が分散し、つま先ばかりに負担がかかることがありません。図のように1本の指が長いタイプの人は、2〜3本指の長さが揃っている人よりも、横からの支えで、指への負担を軽減させることがより重要になります。横から見た図
フィットしていると、指が曲がることがありません。無駄なゆとりが無いと、足の力がすぐに靴に伝わります。すぐに伝わるということは、それだけ一体感があるということです。
また、ルルヴェするとき、足の甲が靴底を引っ張り上げる力(※注)が働くので、ソールは勝手に足の裏にぴったりとついてきます。足の裏側からもしっかりと支えられていると感じると思います。このような状態になっているとき、ソールは柔らかく感じます。無理に曲げたりしなくても、自然に足の裏にフィットします。(※注)ルルヴェする際、足の甲がヴァンプを押し上げ、その力が靴底を引っ張る力となります。ゆるい場合、アテールの時に甲の上に空間がある分、より大きく足を動かさなければ、靴に力が伝わりません。
前から見た図
幅がブカブカのものを履いた場合、横からの支えが得られず、体重は全てつま先に集中します。このように、横や足裏からの支えが無い状態にあるとき、1本の指に体重が集中して痛いのは、力学的に考えると極めて自然なことだと思います。引き上げや、上手い下手云々という問題ではありません。これは、トウシューズの中で自力で立っているようなものです。誰でもトウシューズ無しで立てば痛いはずです。パッドを詰め込めば痛みは多少軽減しますが、全部同じ圧力にすることは不可能で、フィットしているトウシューズのような快適さは得られません。ただ単に窮屈になるだけで、横方向から支えられているのとは違います。横から見た図
立つと指が曲がります。アテールの時は履き口の側に隙間が空きますが、立つと足はヴァンプの側に寄るので、足の裏側に隙間が出来、ソールにはほとんど体重が乗りません。その分体重は、爪と、曲がった指の関節や指の付け根に集中します。また、足の裏に隙間が出来ていると足の裏からの支えは得ることが出来ず、ソールは固く感じます。また、前のめりの原因にもなります。
力のかかり方を考えてみる
ゆるいトウシューズと、ぴったりしたトウシューズは、ただ立っているだけ(静止状態)でも、つま先や靴底への体重のかかり方に違いがあります。運動をすると更に体重の何倍もの力がつま先にかかります。ゆるくて靴の中で足が動くような状態にあると、運動時、更に大きな力がかかったときに、フィットしている靴と比べ、非常にダメージが大きくなります。
たとえば、ゆるい幅のトウシューズは、動くたびに靴の内部で指が伸びたり、沈んで曲がったりが繰り返され、トウシューズの内部で擦れます。皮がむける確率は非常に高くなります。また、つま先は、ただでさえ大きな負担がかかっているのに、動くと更に体重以上の大きな力がかかり、爪へのダメージはかなり大きくなります。
これに対し、ぴったりフィットしたトウシューズは、体の一部のように常に足と一緒に動き、靴の内部で足だけがずれたり動いたりということが無いので、足へのダメージは最小限で済み、皮むけや爪のトラブル等は非常に起こりにくくなります。
* * * コラム《トウシューズはサポーター》は、これらの図を見ながらお読みになると、よく理解できると思います。
同じ幅、同じプラットフォームの広さでも・・・
トウシューズのボックスには、直線的なものと曲線的なものとあります。同じワイズ、同じプラットフォームの広さであっても、直線的なものと曲線的なものでは、ボックスの容積が違います。曲線的なものの方が容積が大きくなります。付け根のワイズが同じで、プラットフォームの広さが同じでも、その途中の部分の幅が違うからです。ですから、直線的なものの方が窮屈に感じやすいでしょう。(図:左側)
真ん中と右の図は、同じ人が直線的なもとと、曲線的なものを履いた場合です。付け根はぴったりとしていても、直線的な方は、親指や小指を収容する辺りの幅が狭いので、つま先の方が窮屈になります。直線的なタイプの方は、指を寄せなければ履くことが出来ません。
足先の形は先細の人と、先広の人といますが、直線的なものは先広型の人には特に負担が大きいことになります。また、エジプト型の人に直線的なボックスは、先細型・先広型に関わらず親指への負担が大きくなり、足が斜めに入る原因にもなります。ここに、単純にプラットフォームの広さだけで、トウシューズを決められない秘密があります。
生まれつき親指が曲がっている人はいない
そもそも足の形を考えると、どんなタイプの足であっても、直線的なものの方が人間の足には負担が大きいと言わざるを得ないと思います。先細のボックスであればあるほど、直線的なものの足への負担は大きくなります。というのは、親指の付け根はどんな人でも本来まっすぐ前を向いているのです。エジプト型・ギリシャ型に関わらず先細型の人であっても、親指の付け根からいきなり先に向かって細くなる人はいません。現在、外反母趾で親指に角度がついてしまっている人も、赤ちゃんの時はまっすぐ前に向かって生えていたはずです。
では、ボックスが全くすぼまっていなくて、完全に真四角なら良いかといえば、そうでもないでしょう。完全に真四角ですと、長い指以外の先の空間が大きくなってしまい、つま先で立ったとき、一番長い指への負担が大きくなりすぎてしまいます。ですから、他の指にも少しずつ負荷を分担してもらうために、多少はすぼまっている必要があります。厳密に考えると、全く足に無理の無いトウシューズというものはあり得ないということになります。しかし、直線的にいきなり細くなるのではなく、曲線的に少しずつ細くなっているものの方が、負担が少ないと言えると思います。
幅の緩さを解消したいとき、「かがり」は有効だが、「引き紐」を引っ張っても効果が無いとこのサイトでは解説しています。では、なぜかがりは効果的で、引き紐は効果が無いのでしょう。この2つの方法の足への力のかかり方の違いに注目してみましょう。
まず、引き紐を見てみます。引き紐を引っ張ったとき、前後方向への力が働きます。それによって青い矢印のような力が生まれます。引き紐を引っ張りすぎると、踵が痛くなるのはこのためです。しかし、横方向の力は全く働きません。だから、踵が痛くなるだけで、幅の緩さの解消には全くならず、横方向からのサポートは受けることが出来ないのです。
一方、かがる方は、履き口をかがることにより、横方向へ直接引っ張り合う力で、実際に幅を狭めたり、立った時に履き口が開いてしまうことを防ぐことが出来ます。また、かがることにより、青い矢印のような力が生まれます。シューズがピッタリとフィットしている時、足は常に横方向からのサポートを得ることが出来るのです。
引き紐を引っ張ることは、ほとんどフィットしているが、脇にほんの僅かにあいてしまう隙間をフィットさせる程度の微調整用と考えましょう。引き紐を引っ張らないでフィットしないものは、引っ張ってもフィットしないと心得ておきましょう。