しばらくの間慌ただしい日々が続き、考える時間もなく過ごしていた。健康第一に生活していたはずなのに、精神的に目一杯の状態になっていたようだ。
今日は天気も良く、心地よい風が吹いていた。木陰に入れば、シャツを濡らした汗もすーっと引いていく。畑仕事には、絶好の日だった。ずーっと気になっていた、カボチャ畑の草刈りに行ってきた。カボチャはすくすく育ち、まだ雄花だけだが花芽も見えた。カボチャの畝の周りは、背の高い牧草だらけ。そのお陰でカボチャは上につるを伸ばしていた。牧草をカマで刈り、刈った草をカボチャの株元に置いて行く。単純作業だが、一畝30分位かかる。その作業をしていると、いろんな事が頭に浮かぶ。今日は自分のやりたい事、生き様のような事を考えていた。
都会生活をしていると時間に追われ、なかなか考える暇もなく流されていってしまう。自分はそうだった。お金は確かに稼げたけど、何か違うんじゃないかと思い続けていた。北海道に住むようになって、お金はないけどこれだと思える生活が見えてきた。その一つが仕事に対する考え方。今まではお金を稼ぐ事が仕事だった。今は違う。自分が生きていて楽しい事が仕事だと思えるようになった。お金は入らなくても、健康に生きて行ければそれでいい。食料を作り、加工し、保存し、冬を乗り切る力を身につける、それが仕事だ。お金を払う事でサービスや品物を受け取る事も大事な事だ。その為にお金を稼ぐ事も大事だ。だけど、それに頼って生きるのはどうかと思う。自分で出来る事は極力自分でやって、どうしても出来ない事やわからない事はお願いする、その位で生きて行けたら楽しい。仕事は与えられる物でなく、自分が生きるために必要なことをすることだ。自分にとって必要な物から順番にやっていけばいい。必要だと思った事でも、いやになったらやめてしまった方がいい、精神的に楽だ。お金なんて、一ヶ月に3万円あれば家族3人生きて行ける、それだけ稼げりゃ十分だ。そんないい加減な生き方をしていこうと、草刈りをしながら考えていた。
今年も熊が近くの畑にいるらしい。足の大きさ35センチだって、農林課のおじさんが教えてくれた。早朝と夕方の作業はやめよう。熊とトラブルがあったら、間違いなく熊は殺されてしまう。そんな事は出来るだけ避けたい。
明日も鈴とラジオを持って草刈りだ。明日はどんな事が頭に浮かぶかなあ。
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