大山阿夫利神社の獅子山
〜 空飛ぶ狛犬 〜 平成の獅子山建立    斎藤 良夫

大山阿夫利神社下社の境内に大きな獅子山が奉納されました。
狛犬(親子2対の獅子)を彫ったのは狛研の会員でもある岡崎の石工・綱川誠志郎氏。

この獅子山への狛犬設置の様子や経緯を斎藤良夫さんにレポートして頂きました。
                       (上の2枚の写真は 2012.12.31 阿由葉撮影)


大山阿夫利神社の獅子山は高さ約3m。
大山と、祭神が親子の関係にある富士山の石を積み上げた。
山頂には二頭の親獅子、中腹に二頭の子獅子。石材は小松石。
山の周囲を、中国の青石で彫った十二支親子が囲む。その年の干支が正面に並ぶ仕組みだ。

空飛ぶ狛犬〜厳重に梱包され空輸された2頭の親獅子


親獅子の大きさは120〜140cmで重さは600〜700Kg。
11月21日、2頭一緒に神社境内までヘリコプターで空輸された。
空輸前に参拝客らに対して目黒仁宮司がマイクで境内からの一時退避協力をお願いし、拝殿の扉などを閉鎖する厳戒態勢のもとで行われた。
厳重に梱包された親獅子は無事に着地し、獅子が姿を現すと参拝客らが一斉にカメラを向けていた。

移動は石工事担当の伊勢原市奥井石材店


神社神域にはかつて狛犬や灯篭など様々な石造物があった。
江戸時代から大山崇敬者が奉納したもので、名工による獅子像や獅子山もあり〈三大獅子山・坂東三獅子〉などと称されていたという。
そのほとんどが大正12年9月の関東大震災による山津波で流失した。
なんとか昔日の面影を…と、資料などをもとに建立されたのが平成の獅子山。
「日本三大獅子山 大山獅子」と命名された。
神域ばかりでなく参詣道にあって流失した多くの獅子・狛犬再興の想いも込められている。
干支の設置は、明治時代まで続いた阿夫利神社の「十二支講」を復活し、多くの人々の安寧を祈願するためという。


空輸され山の上へ置かれるのを待つ狛犬


空輸された親獅子は、獅子山の正面に置かれていて12月5日から山に上げられた。


チェーンブロックで山へ吊り上げられた

設置位置の調整

子獅子の設置中

設置工事の監修は石工の綱川誠志郎氏(右)


獅子山は細部の整備後、28日に竣工の清め祓いを行い、平成25年正月から披露される。
親獅子は威厳と信念と思いやりの心、子獅子は強靭な心身と純粋無垢な心などを表している。
「親子獅子の姿から、家族の絆など、皆さまが何かを感じて頂ければ…」と、目黒宮司は願っている。

                                               2012年92号より


<追加報告>
12月28日

神社恒例の師走大祓えの日、同時に獅子山の清め祓いが行われた。
清め祓いのあと、茅の輪をくぐった宮司を先頭に神官、崇敬者全員が獅子山を一周。


獅子山の銘板にもこの「由来の碑」にも石工名はありません。
が、冒頭に記したようにこの狛犬(獅子)の作者は品川神社の狛研奉納「くも狛犬」の作者でもある綱川誠志郎さんです。

綱川さんにこの獅子山狛犬についての思いを語って頂きました。こちらからどうぞ。