職員室から

園長から

2010年11月24日

子どもたちといっしょにクリスマスの準備を始める時期になりました。
クリスマス会までのこの時期は、子どもたちの生き生きと輝く瞳が幼稚園中に 溢れると言っても過言ではありません。私たちが大切にしているのはまさにこ の準備の毎日。当日どんなことになっても、子どもたちにとっては喜び、楽し みながら『待つ』この時期こそほんとうのクリスマスではないかとさえ思います。
 日頃私たちは自分の都合で子どもたちに待たせることが多くあります。
「ちょっと待って…。」「あとでね」と言われて待っている子どもの気持ち をどれだけ考えているでしょうか。子どもはなかなか納得できないことでしょう。
ところが、「クリスマスを待つ」「イエスさまのお誕生日を祝う」 「誰かが喜ぶことを考える」クリスマスは、特別の『待つ』なのです。
プレゼントを待つのが第一の楽しみかもしれません。この楽しみはこれからも 当分続くことでしょうし、成長に伴い形をかえながらも大人としては出来る限り 続けてあげたいもの…、心豊かに育つため、大切なことですから。
 ところで、イエスさまの誕生は2000年以上も前の出来事です。しかも今は、 目に見えない、それでも子どもたちは喜んで祝う、その日を楽しみに待てる。 それは、一つに、毎年家族から祝っていただく自分の誕生日の幸せ感、幼稚園の 先生やお友だちから「おめでとう!おめでとう!」と祝ってもらう嬉しさの体験 が、一人ひとりの心にあたためられているから だとおもいます。
そしてもう一つ、それは毎日のお祈りを通して、目にはみえないけれどいつも 一緒にいてくださる神の子イエスさまのイメージが、心の中に育っているから… ではないでしょうか。
 その意味でクリスマスの『待つ』はやはり特別なのです。

 ご両親と家族のかたがた、クリスマスには是非お出かけ下さいますように、 けれど、もっと大切なこの『待つ』時期を、お子さんと一緒にクリスマスの意味を 味わいながら過ごしていただけたら、子どもたちはいっそう嬉しいのではないで しょうか。
お願いした献金は、そのためにもよいきっかけになると思いますが。

小さい花12月号より


2010年10月25日

岩坂先生、お母さん方
おいしい給食をありがとう!!

 紅葉はだめかと思われていたこの夏ですが、今あちこちで美しい秋が 燃え始めました。
子どもたちの姿にも『実り』という言葉が相応しい成長を感じます。
その成果の影にある大きな力、その一つが日本一ともいえる、 幼稚園のおいしい給食です。子どもたちの元気な「いただきます」 「ごちそうさま」を聞く度に、おかわりに何回も給食室まで往復するのを 見る度に、どれほど感謝することでしょう。
去年の秋、インフルエンザ大流行の中にあって一人も感染しなかったのも、 バランスのとれたおいしい給食が一役買っていたと思わずにいられません。 長い年月にわたる岩坂先生が、一日、一時も心と手を抜かないで献立や調理 に当たってくださっていることには、いくら感謝をしても足りません。
また、今年新しいかたちで始めた通年給食、給食役員の方々の外には 見えないご苦労も日々感じています。
一応の体験がおわり、今はお誕生会以外毎日お母さん方の善意で当番が 行われているのだと考える時、私としては身の引き締まる思いです。
こんなに素晴らしいことが実現している!何と幸せな子どもたち、そして お母さんの深い愛情と底力に頭の下がる思いです。心を込めて作った食事を クラスに運べば、子どもたちの喜ぶ顔が見られ、声もかけてもらえるでしょうに 敢えてそれをせず、給食室の窓から園庭で遊ぶ様子を見るだけで、片付けまで して下さっていることにもありがたい気持ちでいっぱいです。
 何を食べるか、おいしいかまずいか、なるべくお金をかけずに・・・など 考えるのは当然ですが、それ以上に、誰が、どんな思いを込めて用意したか、 作ったか、ということこそ大切ではないでしょうか。
料理が得意でも苦手でも、食材が豊かな時も乏しい時も、このことがあれば 感謝して食べられるし、欠乏にも耐えてゆけるのでは?そしてこのような思いと 日々の努力こそが心も体も健康な子どもに育つ秘密といえましょう。

でも今年あまり当番ができないと思っていらっしゃるお母さん、どうか心配 しないでください。
今は進んで奉仕してくださる方に感謝して好意を受け、できるときが来たら 喜んで沢山お手伝いいただくのが一番かと思います。
実りの秋、給食の実現に心をかけてくださる全ての方に感謝して

小さい花11月号より


2010年9月22日

 子どもたちの つぶやき から

 夏休み明けも連日の猛暑、子どもたちは元気ですが汗びっしょりの毎日でした。
そんなある日、ゆり組みのKちゃんがトイレの帰りだったのでしょう、手洗い場の 前の廊下で北向きの出口の階段に腰掛け、つぶやくのを耳にしました。 『ああ 涼しいー!』
みると、すっかりくつろいだ姿勢で気持ちよさそうに首をのばし目を細めて、 わすかな北風を受けているのでした。こんな小さな子どもが、こんなわずかな 涼風を肌で感じることができるのは、なんと素晴らしいことでしょう。 今の世の中でどれだけの子どもがこんな経験をしているだろうか。 自然の恵みを味わい、それをそのまま言葉に出せるだろうか。
幼い日のこの幸せの感覚を失うことなく大人になって欲しい、 そう願わずにはいられない一日でした。

 また先週すみれ組の子どもたちと、有明にある老人ホーム、孝穂館を訪ねた時のこと、 沢山のお年寄りに喜ばれ、見送られて施設を出る前に、トイレを使わせて いただきました。その時手を洗った水道の水の冷たかったこと!私がいたのは男の子の トイレでしたが、そこでほとんどの子どもが口々に発したのは、『おお冷たい!』 『なんでこんなに冷たいの?』との驚きの言葉でした。
子どもたちのこの驚きを職員の方に伝えると、『そういうことを感じるこの子たちは たいしたもんだ。素晴らしい。』と言ってくださったのでした。うかがえば、井戸水を 汲み上げているとのこと、その冷たさ、心地よさは、お年寄りとの交わりを楽しみ、 興奮気味だった子どもたちの指を通して、小さな体のすみずみまで沁みわたったに 違いありません。この子どもたちもまた健やかな感性に恵まれているからでしょう。
感謝で心が豊かになった帰り道でした。

小さい花10月号より


2010年7月23日

 先週の大雨の日の朝でした。ばら組のMちゃんとお母さんに、街の中で会いました。 Mちゃんは登園の途中、私は出張で松本駅に向かっていました。
激しい雨のなか、お母さんもMちゃんもしっかり雨具を着て傘をさし、寄り添うように 歩いています。「まあ、この雨の中を歩いてえらいこと!」思わず出た言葉に、 お母さんがにこにこして話してくださったのです。「わたしは車で行こうといったのですが、 毎日見ているツバメのあかちゃんをどうしても見たいというので・・・・」と。
土砂降りの雨の中でもかわいいツバメを忘れないMちゃんもMちゃんなら、そのMちゃんの 気持ちを受け留めて一緒に歩かれたお母さんに頭が下がりました。
Mちゃんはどんなにうれしかったか、そしてこういう経験の積み重ねこそが感性を育み、 いのちの尊さを体で感じて育ってゆくことに繋がるのがと、確信をした朝でした。 商店街の軒先をしばらくの宿としているツバメの親子もまた、Mちゃんの毎朝の立ち寄りを 待っているかもしれません。

もうひとつは、この春1年生になった卒園生のこと。
授業参観に行っての出来事を、お母さんが伝えてくださいました。
妹がスミレ組みにいるMちゃん、妹もお母さんに同行していたそうです。
そのクラスではめいめいが『心のノート』をもっていて、時々大切なことを書くそうです。
その日は先生からのテーマで書いた『私の宝もの』の発表があったとのこと。
Mちゃんのノートも読まれました。
何と!『私の宝ものは「いもうと」。』その時の妹のうれしそうだったこと、 勿論お母さんの喜びはどれほどだったことか。 「その後の姉妹の関係にも何か変化があったようで・・・。」と心からの喜びに 笑顔のとまらないお母さんでした。

小さい花8・9月号より


2010年6月23日

 すみれ組の子どもたち、8日の特別養護老人ホーム福寿荘につづいて、昨日は山辺にある 市立の老人ホーム松風園を訪問しました。

 福寿荘のお年寄りのほとんどがベットの上だけか車椅子での移動しか出来ないことを知った 子どもたち、昨日は、自分の足で歩いてホールに集まってこられるお年寄りの姿に元気を 得たらしく、興奮気味でした。95人の在園者の中80人以上が会場に出て来られたこと からも、今回の訪問をこれほど楽しみにしてくださっていたのだと驚きました。
初めのうち少しかたかったお年寄りの表情も、子どもたちの挨拶の声にすっかり和らいで、 会場は笑顔と笑い声でいっぱいになりました。
園長さんと職員の方々がお年寄りと子どもたち両方をはげまし、共に楽しんでおられる姿に 心を打たれました。
ご希望で参加されたすみれ組のお母さん方が子どもたちと心を一つにしてお年寄りと関わって くださったことも大きな力でした。
子どもたちは、お年寄りでも良く分かって楽しんでいただけるよう、大きな声で動作もはっきり するよう練習しました。昔歌った歌が聞ければうれしいだろう、楽しい踊りはないか、と 先生たちも色々と工夫してこの日を迎えたので、手作りのプレゼントも含めとても喜んで いただけました。
それにもましてよかったのは、、目と目、手と手を合わせての1対1の交流でした。 出来るだけ沢山のお年寄りと手遊びが出来るよう、何回も繰り返しました。 子どもたちにとっては、準備に精を出した2週間の生き生きとした姿、そして当日も、 汗びっしょりになっての取り組む姿から、間違いなく貴重な体験であったろうとの確信が 沸いてきました。

 最後にお礼の中で言われた園長さんの言葉が心に残りました。『まだちょっと早いけれど、 皆さんの中から将来ここで働いてくださる方が出たら嬉しいのですが…。』 40年以上続けているこの訪問で、はじめていただいた言葉でした。
どっと笑い声が起こりましたがそれだけでは済まされない何かが心の中に沸くのをかんじました。
「ほんとうに誰か一人でもそんな子どもがいてくれたら…」この瞬間から私の願いとなりました。 同感いただけるでしょうか。

小さい花7月号より


2010年5月24日

 連休明け、楽しみにしていた給食が始まりました。12時を少し過ぎて、ゆりもすみれも食べ始めてとても静かです。ちょうどその 頃、ばら組の部屋からは「いってきます」との声とともに、ちいさな足音が職員室の前をいくつもかけぬけます。「あるいていきましょうね。」 先生の声は耳に入ったのかどうか、どうしても駆け足になってしまう、『おかわり』に向かうばら組の子どもたちです。
 お皿をしっかり両手に持ってゆっくりゆっくり戻ってくる子もいますが、「ただいま!」と勇んで部屋にかけこむ子もいます。あるときは大事 に大事にスープとにらめっこをしながら持ってきたのに、部屋の入り口でお友だちとぶつかってこぼしたり、うれしくて急いだとたん中身が滑り 落ちたり・・・、そんなところに出会うと、その表情は思わず噴出したくなるくらい、「しまった!」といったんは思うのでしょうが、すぐさま つまみあげ、何食わぬ顔でクラスに入るその姿は、幼いなりに食べることーすなわち生きることへの懸命さが感じられ、心を打たれます。子ども によっては2回、3回と全てのお皿をおかわりすることもあって、頼もしいこと。
先週サンドイッチの日に、また大笑いをしました。給食室から職員室の前まで戻ってきた○○ちゃんが、片手で持っているお皿はからっぽ、なん と、もう一方の手にあったサンドイッチはすでに半分近くかじりとられ、三角形の山の部分が噴火で飛ばされた火山のようでした。「あれ??? 」もぐもぐしながら私と目が合った本人の得意そうな顔といったら・・・よほどおいしかったのでしょう。そして給食室からばら組の部屋までの 道が長く長く感じられたのでしょう。

 様々な生活経験の場で、子どもたちはさまざまな思いを抱き、その思いを行動に移し、楽しみながら、失敗もしながら、日に日に大きくなっ ているのだと思います。
 私たちも、子どもたちのそんな心の動きに寄り添ってみるだけで、子どもたちの『神秘』ともいえる不思議な世界を、少しでも共有できるのでは ないでしょうか。今年、皆さんと楽しみたいとおもっている絵本のせかいは、こんな子どもたちとの心の繋がりを更に深めてくれることでしょう。

小さい花6月号より