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NOVEL

くもりときどきあくま2 第11回〜第15回

 
 
 
ここが保健室で、

ぼくが大声出せないのをいいことに

ミツルはずんずんつめ寄ってくる。



「くんなって言ってんだろ!」



もう、ベッドのはじ。

逃げるとこがなくなった。



「あれ?」



ミツルの動きが止まった。



「なんだよ」



「ワタル、なんか顔赤いね」



そう言われて、ほっぺたに手を当ててみた。

そしたらすっごく熱くって

顔が真っ赤になってるのが

自分でもよくわかった。



そりゃ、あんなこと言われたら

赤くもなるよ………



「熱、はからないと」



ミツルがベッドからおりて

先生の机の上から体温計を持ってきた。



こんなの、勝手に使っちゃいけないのに。



「じゃ、じっとしててね」



「だからなんでそんなにくっつくんだよ!」



ミツルがぼくの後ろから

がばって抱きついてきた。

そのまま両手をぼくのこしにまわす。



熱はかるのになんでこんなことするのか………

それともやっぱり、

このあと昨日みたいなことするために

くっついてきたのかな。



「はなせっ!」



いやなのに、心臓がどきどきする。



ミツルの手をふりほどこうとするんだけど、

力がはいらない。



てゆうか、力を入れようって気にならない。



「おとなしくしてよ」



「!」



耳元でもう言われて、

いっしゅんびくってなったあと

ぼくの身体が固まった。



また……あれだ、

おとなしくしないとバラすって………



「へぇ、素直じゃん」



言うとおりにしたらしたで、

ミツルはまたむかくつことを言ってくる。



「じゃ、熱はかるね」



「なっ………!」



びっくりした。



だって、熱はかるって言ったのに

ミツルはぼくのズボンに手を伸ばしてきたんだもん。



「ね、熱はかるんだろ!?」



その手をおさえながら言う。



「そうだよ」



いたってフツウなミツルの返事。



「だったらなんでズボンさわるんだよ!」



「だってズボンおろさないと熱はかれないじゃん」



「意味わかんねぇことゆうな!」



ぼくがそう言う間にも、

ミツルはぼくのズボンをおろそうとしてくる。



ぼくもおろされないように抵抗するんだけど、

ミツルは思ったよりずっと力が強い。

もうボタンが外されてチャックがおろされて、

パンツがちょっとだけ見えてきた。



「おしりの穴でワタルの体温はかるんだよ」



「わきでいいだろっ!!」



そういえば、おしりのとこでも

体温がはかれるって聞いたことある。



でも、べつに今おしりを使うことないじゃん!



「ねぇ、ちょっと想像してみてよ」



「なにを!?」



「昨日、おしりをいじられて気持ちよかったこと」



ミツルがぼくの耳元でささやく。



でもたったそれだけで、

ぼくの頭ん中には昨日のことが

すっごくせん明に浮かびあがってきた。



昨日、おふろ入ってる時にも

思い出しちゃったこと。



おしりになにか入れられるなんて、

初めてだった。



最初は、痛いだけ。



でも、指でおしりの中を

ぐちゃぐちゃにかきまわされて、

指を抜いたり入れたりされると

ちんちんがびくびくしてくる。



そしてカッちゃんのふえ………



カッちゃんに悪いって思ったのに、

ぼくはそのふえをおしりに入れられながら

いっぱい射精しちゃった。



すっごく、気持ちよかった………



「どう? またおしりいじって欲しくなった?」



「そっ………」



ミツルの言葉で、

頭の中に広がってた昨日の光景が一気に消えた。



「そんなわけ………」



ないって、言えなかった。



あんな恥ずかしいの、もうぜったいいやなのに

ぼくはそれを否定できない………



そんな自分が、ちょっと恥ずかしかった。



———する………



「あ………」



ぼくがちょっと考えごとしてるうちに、

ミツルにズボンをぬがされた。



このままおしりをいじってほしいって気持ちと、

やっぱり恥ずかしいからやだって気持ちが、

ぼくの心ん中でたたかってる。



「昨日の夜は出してないんだよね?」



「ひっ………」



ぼくの両足を思いっきり広げて、

ミツルが両手をぼくのパンツの上に置いてきた。

もちろん、ちんちんでふくらんでるとこに。



「あうぅ………」



そのまま、両手が動き出した。



パンツの上からちんちんをさわられる。

直にさわられるのとおんなじくらい

恥ずかしい。



でも、直にさわるのとおんなじくらい……

気持ちいい………



「もう勃ってきた」



だめだ……このままじゃ

ぼくはほんとにミツルのどれいみたくなっちゃう………



でも、でも、身体が動かない。



このままここにいて、

いっぱい気持ちくしてもらおうって気持ちが、

ぼくの身体を動けなくしてる。



「はぁ……はぁ………」



パンツの上からちんちんの形を確かめるように

ミツルの指が動く。



ちんちんの側面をぎゅっと押さえられると、

パンツにくっきり

ぼくのちんちんの形が浮かび上がる。

それをミツルが、

後ろから楽しそうに見てる………



「ねぇ」



また、意地悪なことゆうんだろなって思った。



「このままパンツの上から触ってるのとさ、

 パンツ脱いで直接触るのとどっちがいい?」



やっぱりだ………

こんなの、答えられるわけないのに。



「ねぇ…」



「いあぁぁ………」



耳に、そおっと息を吹きかけられた。

全身がぶるぶるふるえた。



「ま、脱がないとおしりはいじれないけどね」



「へ………」



「そりゃそうでしょ?」



そう…だけど………



ってことは、

もしおしりをいじってほしかったら

パンツをぬげってことなのかな………?



「どうやったらおしりをいじってもらえるか、

 ワタルでもわかるよね?」



ミツルの、こうゆうところがやだ。



ただぼくをハダカにしたりするだけじゃなくて、

ぼくに自分から恥ずかしいことを

言わせたり、させたりしようとしてくる。



「ほら、パンツの上からじゃ入んないし」



「ううぅ…」



指でちょっとだけおしりの穴を突つく。

でもパンツの上からだから、

当然なかに入ってきたりはしない。



「ねぇ、どうする?」



恥ずかしい………けど、

気持ちくしてほしいって気持ちが勝ったみたい。



「ぬ………」



「え?」



「ぬぐ………」



ちっちゃい声でそう言ったあと、

ぼくは目をつぶった。



目をあけてらんなかったんだ。

目をつぶってれば、

こんな恥ずかしいことを言っちゃったってことを

感じなくていいような気がして。



「何を脱ぐの?」



「えぇ!?」



わっ…わかってるくせにっ………!



「おしりをいじってほしいワタルは、

 何を脱ぐの?」



ミツルの手の動きが止まった。



さんざんさわられたちんちんも、

ちょっとだけ突つかれたおしりのあなも、

そのまま放り出された感じ。



ぼくには……

ミツルの意地悪な質問に答えるしか、

道はのこってなかった。



「パンツを……ぬぎ……ます………」



言っちゃった。



「へぇ、ここ学校だよ?

 誰かに見つかっちゃうかもしんないのに?」



これは、意地悪すぎると思った。



「うっ、うるさいなぁ!」



だから叫んだ。



ベッドをかこむ黄色いカーテン、

ぼくたちをかくすのはこれしかない。



もし保健の先生が帰ってきたときは

寝たふりをしなくちゃならない。

声なんかぜったい出しちゃだめ。



だから……すごくキケン。



キケン…なはずなんだけど………



「じゃ、脱いでみて」



ぼくは、ミツルが言ったとおり、

自分でパンツをぬいでた。



「やっぱりぴんぴんだね」



ミツルがぼくのちんちんをながめる。

だから、両手でかくした。



「じゃ、ワタルがしてほしくて

 しょうがなかったこと、ね」



ぼくをベッドの上に体育すわりさせて、

ミツルはぼくの正面にすわった。



ぼくのは正確には体育すわりじゃなくて、

足をちょっと広げて両手を後ろについたかっこう。

だから、ちんちんもおしりのあなも

正面にいるミツルには丸見え。



「……………」



やっぱり、ぼくは目をあけてらんなくなった。



「じゃ、まず体温チェックね」



つめたい体温計の先っぽが、

おしりのあなに当たった。



———つぷ………



「あぅ………」



そしてなかに入ってくる。



指やカッちゃんのふえよりずっと細いけど、

おしりのなかが突き上げられてくるかんしょく。

昨日感じたのと、おなじ………



「どう?」



やっぱりミツルは楽しそうな顔。



「ど、どうって………」



そしてまた、にやっと笑った。



「ごめん、気持ちいいに決まってるか」



そう言って、また体温計の方に目をもどした。



———ぬぷぷ………



「ちょ、ちょっと!!」



「え?」



思わず声が出ちゃった。



だって、入れるのは

先っぽだけでいいはずの体温計が、

もっと奥まで突き進んできたから………



「そ、そんなに入れたら

 他の人が使えなく………」



そこまで言って、ぼくはくちをつぐんだ。



ぼくをじっと見つめるミツルを見てたら、

それ以上しゃべれなくなったんだ。

もしかしたら、これからミツルが言うことを

想像できちゃったからかもしれない。



「だってこれだけじゃ満足できないでしょ?」



当たった。



ミツル、きっとこう言うと思ってた。



「おしりが大好きなワタルは

 もっと奥まで入れてもらわないと

 満足できないんだよね」



ここまでは想像できなかったけど。



「そうでしょ?」



まただ……

また、意地悪な質問………



ぼくに恥ずかしいことを言わせる、

ってことだけを目的にした、

ただ意地悪なだけの質問。



「せっかくパンツまで脱いだのに、

 こんな先っちょだけでいいの?」



「あぐ………っ!」



ミツルが体温計を動かす。



でも、奥に入れるんじゃなくて、

そのまま縦に動かしたり横に動かしたり………



おしりのかべが広がってるのはわかるんだけど、

こんな……入りぐちのとこだけじゃ………



「うう………」



せっかくミツルが

奥まで入れてくれようとしてたのに、

なんで止めたりしちゃったんだよっ……!



「もっと……」



ぼく、また恥ずかしいこと言っちゃう………



なんで…こんことになっちゃったんだろ………



「もっといれて………」



目をつぶると同時に、

おしりにもきゅっと力が入った。



「奥まで入れてほしいの?」



「………」



目をつぶったまま、

ぼくは首を縦にふった。



———ぬぷ………



「いあぁ………」



体温計って、どんどん太くなってるんだ。



先っぽだけのときは

ちょっとしか感じなかった。



でも、ミツルの手でどんどん奥に進められて

その太くなった部分が入ってくると

おしりのあなが広げられてる、

あの感覚がまたぼくの身体によみがえってきた。



「おしりで体温はかるときって、

 入れるのは先っぽだけでいいんだけどね」



ミツルが言う。



言い返してやりたいことは山ほどあるけど、

今はそんなこと言ってる余裕なかった。



「おしりは僕にまかせて、

 ワタルはこっちをやんなよ」



そう言って、

ミツルは後ろについてたぼくの右手を

ぼくのちんちんのとこを持ってきた。



「………?」



これがどうゆうことなのか、

ぼくにもよくわかってたけど

ぼくはミツルの顔を見た。



「ワタルがおしりいじられながら

 オナニーするとこ、全部見ててあげるから」



にっこり笑った。

言ってることはぼくにとって極悪なのに。









ぼくの右手は、

ぼくのちんちんの上に乗ってる。



すごくあったかい。



体温計でおしりをいじられたせいか、

ちょっとだけかたくなってもきてる。



半ダチ……だっけ、こうゆうの。



「どしたの?」



体温計をかきまわしながらミツルが言う。



「はやくしなよ、

 保健の先生、帰ってきちゃうかもしんないよ」



そうだ………

ここ、学校の保健室なんだ………



いつもとはちがう。

先生に見つかっちゃうかもしんない。



しかも、ぼくの目の前にはミツル………



「ん?」



ミツルと目があった。



でもミツルはまたすぐに

ぼくのちんちんとおしりのあなの方へ

視線をもどす。



昨日みたいに、

ちんちんにはさわってない。

おしりにささった体温計を

入れたり出したり、タテや横に動かしたり。



タテ横に体温計を動かしたら、

あなが細長く広がる。

そこを、ミツルは面白そうにじっと見てる。



そしてちんちんの方も見て、

かたくなってきてるか確かめてるんだ。



「はぁ……はぁ………」



ぼく、なんでこんなことしてるんだろ………



ミツルの前でパンツぬいで、

こんなに足ひろげさせられて………



それなのに、それなのに

ぼくの体はそこから逃げ出そうとしない。

いま、ぼくが置かれてる状況を考えたら

どんどん身体が熱くなってくる。



「あぁ………」



異変を感じて、

ぼくは両手でちんちんを覆いかくした。



それを見て、ミツルが笑ったように感じたのは

ぼくの気のせいなんかじゃなかった。



「勃っちゃったんだ?」



「ちっ、ちがうっ………!」



ぼくは必死にちんちんをおさえて首をふる。



でも、かちかちになって

上を向いちゃったちんちんは

ぼくの手の中からはみ出そうだった。



「昨日が初めてだったのに、

 もう見られて感じるようになっちゃったんだね」



「へ……?」



ミツルの言葉は、

一回聞いただけでは意味がわかんないことがよくある。



「それ、硬くなったのは

 おしり弄られてるせいだけじゃないよね?」



「うぅ………」



目をつぶって歯をくいしばった。



ミツルに、ぜんぶ見抜かれちゃうことが

くやしくって恥ずかしい。



ほんとならだれにも知られずに

かくしておきたいことが、

ミツルの前だとぜんぶあばかれちゃう。



「僕の前でこんなカッコになって、

 僕の見てる前でオナニーしなきちゃならないって

 今の状態を考えたら、

 自然にココが硬くなっちゃったんだよね?」



「さわんなっ!!」



手からはみ出てたちんちんの先っぽを突つかれた。



「でも、別にいいじゃん」



「は……はぁ?」



体温計の動きを止めて、ミツルがしゃべり出す。



「そんなエッチなのがワタルなんだからさ。

 もう僕の前でオナニーするのも

 恥ずかしがんなくっていいんだよ」



「……………」



言い返せない………



たとえぼくが何か言い返しても、

勝てる気がしない。



「ね?」



「そんなこと言ったって………」



おなにぃなんて、くちに出して言うのも恥ずかしい。



ぼくがこんなことしてるなんて、

学校のだれにも、カッちゃんにも言ってない。

それくらい、ヒミツにしておきたかった

ことなのに………



ミツルはそれを、

自分の見てる目の前でやれってゆう。



ちんちんをにぎって、

かわをいっぱい動かして、

そして精液をいっぱい出して………



そんなこと、

できるわけないじゃんかぁ………



「ワタル、いつもやってんでしょ?」



「……………」



「昨日、あんなに気持ちよさそうにしてたのに」



ぼくが答えるのを待たずに

ミツルがさらにしゃべる。



どうせ、ぼくは答えることなんか

できなかったんだけど。



「おしり弄られながらのオナニーって、

 どれだけ気持ちいいかわかってんでしょ?」



うぅぅ……うるさいうるさいうるさいぃぃ!!



目をつぶっても暗闇の中にミツルの顔が浮かぶ。



何も言い返せなくて、

何もできなくなってるぼくを見て

にやにや笑いがとまんなくなってるミツルの顔。



「ほら、もう手ぇどけなよ」



ミツルの手に導かれて、

ちんちんをかくしてたぼくの手は

シーツの上に持ってかれた。



そのときの手には、もう力が入らなかった。



ミツルに逆らうことなんてできなくて、

もうミツルの前でオナニーしちゃうしか

道が残ってないことが、

そうさせてたのかもしれない。



「はやく!」



はずむミツルの声。



「……………」



おなにぃー………



今からちょっと前に、

ちんちんをずっとさわってたら

気持ちよくなるってことを覚えて、

それからずっとやってた。



でも、しばらくしたら、こんな気持ちいいこと

ぜったい身体に悪いんだった思うようになった。

お父さんのやってるタバコやお酒だって、

気持ちよさそうだけど

やりすぎたら身体を壊すってよく言われてる。



だから、こんなこともうやめようって

何度も思った。



思った。

思った………けど、やめらんなかった。



3日ぐらいたったら、

ちょっとさわっただけでも

ぼくのちんちんはかたくなってきちゃって、

さわるだけじゃすまなくなった。



そしたらもう止められない。



あの、気持ちいいのがやってくるまで

ちんちんから手を離すことなんかできなかった。





そして、保健体育の授業が始まってからは

やめようなんて思うこともなくなった。

ほとんど毎日、やってた。



それが………いま、こんなとこで裏目に出た。



ミツルの前でびんびんになっちゃったちんちん。



じんじんして、

ほんとなら今すぐにでもさわりたい。



でも、ミツルはぼくがそうするのを

楽しそうに待ってる………



「誰にも言わないって」



「へ……?」



「ワタルが保健室でオナニーした、

 なんて絶対誰にも言わないから」



あ、当たり前じゃんか……



そんなの言いふらされたらぼく、

もう学校来れなくなっちゃうよ………



「それにさ、

 どうせ僕には昨日見られちゃってるんだよ?」



「……………」



「ワタルのちんちんとか、

 ワタルのおしりの穴とか、

 射精しちゃうワタルの姿とか」



いちいちぜんぶ言わなくていいっ!!



「だから、別に恥ずかしがることもないじゃん」



「そ、そうだけど………」



確かに、ミツルには昨日

ぜんぶ見られちゃったけど………



それと、見てる前でオナニーするってのは

やっぱりちがうと思う。

だからぼくはできないんだし。



「あ、そっか」



———する………



ミツルがそう言ったあと、

おしりの体温計がぬけていった。



———ずぶぶ………



「あうぅっ……!!」



やっと閉じるとこができたおしりのあなに、

すぐさまミツルの指が入ってきた。



体温計なんかよりずっと太い指は、

おしりの中をずんずん広げて

ようしゃなく奥へ突き進んでくる。



「ごめんね、

 ワタルは体温計なんかじゃ物足りないよね」



「あ…ぐっ………」



あっとゆうまに根元まで入っちゃって、

そのあとはいろんなカタチに指が曲がる。



昨日初めて味わった、

ちんちんが奥から突き上げられるかんじ………



「どう? まだできない?」



ど、どうしよう、どうしよう……

もう、がまんでき



———ちゅうぅ………



ぼくがちんちんをにぎろうか迷ってたとき、

くちびるにあったかいのがふれた。



目をあけてみたら

すぐ前にミツルの目があって、

またチュウされてるんだってわかった。



「ふ、ぐうぅぅ………」



片方の手はぼくのおしりに、

もう片方の手はぼくの頭をおさえて

キスからぼくが逃げられいようにしてる。



完全に、ミツルのされるがままだった。



———れろ………



くちの中に、自分のじゃないべろがある。



しかもそのべろは、

ぼくのくちの中でぼくのべろよりもよく動く。



さんざんぼくのべろに絡みついたあと、

今度は歯を一本一本なめていく。

ぐいっと奥の方まで伸びてきて、

歯の裏っかわのとこをなめていく。



身体が熱いんだけど、

どんどん力がぬけていく。

肩からぶらさがった両手は、

身体を支えるのがやっとになってた。



———ちゅ………



ミツルのくちが離れた。



「ほら、はやく」



———ちう………



それだけ言って、またぼくのくちをふさぐ。



くちの中を

めちゃくちゃにかきまわされながらも、

なんとかミツルの言った意味はわかった。



もう…いいや………



こんなんされたら、

だれだってがまんできないよ………

たぶん。



———きゅ



にぎりたいけどにぎれなかったちんちんを、

ぼくはやっとにぎった。



その途端、

ミツルの笑う声がちょっとだけ聞こえた。

ぼくにキスしながら、

ぼくがおなにぃするとこ

ずっと見てるんだろな………



なんでコイツ、こんなに余裕あんだろ………



「ふむうぅ………」



ミツルにさがれたくちの中で、

思わず声がでちゃった。



さんざんじらしたせいか、

ミツルにいろいろやられてるせいか、

そのどっちとものせいなのか、

よくわかんないけど

声がでちゃうほど気持ちよかったんだ。



———ぢゅっ………



「うわ、もう先のとこ、ヌルヌルじゃん」



ミツルにそう言われるのと、

ぼくの手にそのぬるぬるがふれるのと

ほとんど一緒だったと思う。



ぼくのちんちん、昨日みたいに

とうめいなヌルヌルが出てたんだ………



「うぅ、あうぅぅ………」



おしりに指入れられて、

キスされながらおなにぃ………

そう考えただけで、体がぞくぞくした。



ぼくの頭をおさえてたミツルの手が

どこかへ行った。



ぼくは目をつぶってたからわかんなかったけど、

もうぼくが逃げることはないって

わかったんだろな。



にげ……られないんだもん。

男子と男子でキスなんてヘンだけど、

今はそれすらも気持ちよくってしょうがないんだ。



ぼくのつばがミツルに吸われて、

ミツルのつばがぼくの方に流れてくる……

それがまたぼくの身体を熱くさせてる。



———つん



「いぃあっ……!!」



むねのあたりが、突然びくん!ってなった。



ミツルの指が、上着の下から入り込んで

ぼくのちくびを突ついてた。

ぼくの頭をおさえてたミツルの手は、

いつのまにかこんなとこに行ってたんだ。



「むうぅ………」



ミツルはもう何も言わない。



ぼくはただ、ミツルにふさがれたくちの中で

声をもらしながらちんちんをいじるだけ。



———……………



どのくらい時間がたったんだろう、

保健の先生が

帰ってきちゃうかもしれないってことなんか

すっかり忘れちゃってた。



ちんちんの奥から、

あの気持ちいい感覚が、

もうすぐ精液がでちゃうって感覚が

昇ってきたとき、

ぼくはようやく我にかえったかんじだった。



それくらい、何も考えられなくなってた。



「あぅ、あぁぁ………」



ぼくの方から、くちをはなしちゃった。

そしてちんちんをにぎる手の動きがはやくなる。



「もう出る?」



めずらしく優しかったミツルの問いかけに

ぼくは首をたてにふった。

そして、今度はぼくの方から

ミツルのくちをふさいだ。



その時も、やっぱりミツルは笑った。



「あ、あ、あ………」



勝手にくちが開いて、身体が後ろに反っていく。



———びゅっ、びゅるるっ!!



いっしゅん、こしが浮いたのと同時に

精液が勢いよく飛び出してきた。



その時はもう

ちんちんをにぎる力すら残ってなくて、

放り出されたちんちんが

一人で精液を飛ばしつづけてた。



制服についちゃうのに、

これからもまだ授業あるのに、

それを気にしてる余裕なんてなかった。



「はあぁ………」



身体がベッドの上に倒れていく。



ベッドにあおむけになってしばらくしたころ、

ぼくはようやく目をあけて周りを見ることができた。



———あ、あれ………?



あんなに出したはずのに、精液がない。

上着の上にいっぱい飛び散ってると思ったのに、

制服はきれいなままだった。



「ほら」



そんなぼくの目の前に、

ミツルが自分の手のひらを差し出してきた。



「!!」



昨日とおんなじ。



その手はぼくの出した精液まみれ。



ミツルは、ぼくの精液を手で受け止めてたんだ。



「すごいね、

 たった一日でこんなに出るんだもん」



なんでコイツ、こんな汚いの

わざわざ手でさわったりするんだろ………



ミツルは手についたぼくの精液をみて

ブキミにほほ笑む。



その笑いの意味が、ぼくにはわかんなかった。





ムダに暗い、ある一室。



「………それで、ノコノコ帰ってきた……と?」



低く野太い、魔王バラモス的な声が響き渡った。

部屋じゅうが闇に覆われているため、

その声の発信源を目にすることはできないが。



「は、はい………」



続いて、少し緊張気味に震える甲高い声。

中性的と聞き取れるそれは、

声変わりを未だ迎えない少年のもののようだ。



「情けない………」



それと同時にため息をもらすバラモス声。



「ご、ごめんなさい………」



闇に覆われたこの部屋だが、

目をこらしてよく見ると

この可愛そうなくらいに怯え切っている

声の主の姿を確認することができた。



年齢でいうと、10歳か11歳くらいだろうか。

なんとか130cmに届くであろう身長に、

綺麗にカットされた前髪と大きな瞳。

ふと見ただけでは、性別を判断することも

難しいかもしれない。



何か悪いことでもしてしまったのだろうか、

そんな幼い人物がこのバラモス声の主を

怒らせてしまっているようだ。



「トオル、そんなことで

 悪魔が勤まると思っているのか?」



そう、今"トオル"と呼ばれた少年がいるのは

アクマの世界。

第1回以来久しぶりに登場した

アクマ界の魔王室だ。



「まおうさま、じゃあぼくはどうすれば………」



トオルが言ったように、

彼が話しているのは魔王様である。



「そのことだが………」



ここで、トオルが魔王様に

お叱りを受ける原因となった失敗談を紹介しよう。



実のところ、彼は今13歳。

先刻述べたように、その容姿から

彼を年相応に見る者はほとんど存在しないのだが。



既にお忘れかもしれないが、

第1回で述べたようにアクマ界の少年は

12歳になると"精の搾取"を目的として

人間界へ旅立たねばならない。

そこで魔王様が指定した人間に憑りつき、

新鮮な精をしこたま奪ってくるのだ。



しかし、トオルが人間界に向かったのは

彼が13歳になった時。

これは、とおるのアクマとしての成績が

ずば抜けて悪かったこと意外に他ならない。



通っていた学校での成績はどれもビリっけつ。

運動ももちろんダメ、

何か係の仕事をやらせようものなら

ドジの連発でクラスの皆に

迷惑をかけまくっていた。



だが、そんなトオルが誰からも煙たがられずに

クラスのマスコット的存在となっていたのは、

極めて純粋無垢な性格と、

前述した外見のせいだろう。

この大きな瞳を潤ませて謝られたとき、

許さずにおれる者がいたら見てみたい。



そんな、能力的には全くいいトコなしな彼にも

ようやくアクマとしての仕事が任されたのだ。



魔王様に指定された人間のところへ行き、

その人間の精を奪い取ってくる………

……………はずだった。



はずだったと言うのは、

その立場が全くの逆になってしまったのだ。



運が悪いことに、

トオルが憑りつこうとしたその少年は

ウソのように性経験が豊富な少年。

当然と言うべきかどうかはわからないが、

そんな少年に

実経験のないトオルが適うはずがなく、

あれよあれよといううちに

責め受けが逆転してしまったのだ。



精を搾取するどころか、

逆に搾取されて帰ってきたアクマなど

前代未聞も存在である。



「特にお前に罰を与えるつもりはない」



予想外の答えに、トオルははっと顔をあげた。



「だが、このままというわけにもいかない」



そしてまたしゅんとなるトオル。



「お前にはまだ指導してもらう者が

 必要のようだからな」



そんなの必要ないです!

………と、アクマとしてのプライドが

言わせるところであるが、

前科のあるトオルにはそう言う権利がない。



「そこで本編からスペシャルゲストを呼んでおいた」



「ゲスト?」



トオルが問いを投げたと同時、

彼から数メートル離れた場所に

紫の霧が立ち上った。



「ゲストって……だれですか?」



その紫の霧の奥に人影が見えるようだが、

それが誰なのかを確認することはまだ不可能だ。



「見ていればわかる」



魔王さまがそう言ったように、

紫の霧がはれてきた。



「……え………?」



少し顔を突き出して、

霧の中から現れた人物を見つめるトオル。



「何の御用でしょうか」



非常に落ち着いた声が聞こえてきた。



その声もトオルと同じく

声変わりを迎えていない中性的なものだったが、

彼のものとはトーンが全く違う。



「ミツル!?」



驚いたトオルが大声をあげた。



どうやらいま霧の中から現れた少年、

ミツルとは知り合いのようだ。



「ミツル、お前に頼みたいことがある」



ひとり驚きがおさまらないトオルだが、

魔王さまはミツルに語りかける。



「お前、いま二人の人間に憑りついているな?」



「そうです」



二人の会話をぽかんとしながら聞いているトオル。



いま、ここに呼ばれたミツルは

第2回〜第12回において

人間の宮部渉(ミヤベワタル)に憑りついていた

あのミツルだ。

そろそろもう一人のターゲット、

八木克也(ヤギカツヤ)にも手を伸ばそうと

していたところを呼び出され、

少々ご機嫌ナナメなようだ。



「面倒かもしれないが、

 このトオルと一緒にやってみてくれないか」



「お断りします」



「は?」



思わず魔王さまも

素っ頓狂な声をあげてしまうほど、

ミツルの返答は速く、そして素っ気無かった。



「僕の計画は順調です。

 ここでこんな落ちこぼれに邪魔されると

 その計画が狂ってしまいます」



「お、おちこぼれって………?」



言うまでもなく、

ミツルの言う落ちこぼれとは

いま言葉を発したトオルのことだ。



「そんなこと言わずに、

 優秀なお前を見込んで頼んでるんじゃないか」



魔王さまもミツルが苦手なのか、

やや口調が乱れてきた。



「いくら僕でも足を引っ張る者がいては

 可能なことも可能ではなくなってしまいます」



譲る気を全く見せないミツル。



「……………」



二人のやりとりを聞きながら、

何も言うことができなくなっているトオル。



「まあな………」



タバコでもふかすかのような息をもらす魔王さま。



「お前にとっちゃ

 ウザいだけかもしんないけどさ、

 トオルもこのままだったら

 いつまでたっても成長しねーし、

 助けると思って頼まれてくんね?」



魔王さまの口調がますます乱れてゆく。



頼んでも態度を変えないミツルに

そうとうイライラきているようだ。



「はぁ………」



とうとうミツルが諦めのため息を吐いた。



「わかりました」



「マジで!?」



その返事に魔王さまの声も弾む。



「ただし、僕は僕のやり方でやります。

 ワタルとカッちゃ……ヤギカツヤの

 二人に憑りつくという任務も

 続けさせてもらいます」



「おう、好きにしろ」



落ちこぼれアクマ、

トオルの厄介払いができたということで

魔王さまも嬉しそうだ。

しかし一方で

当然のごとくトオル自身は面白くない。



「ぼ、ぼくだってやだよ!」



トオルがはじめて意思表示をした。



「あ、何が?」



問う魔王さま。



「ぼくだって、

 ミツルなんかと一緒にするのイヤです」



実のところ、

特にミツルを嫌う理由などなかったトオルだが

ここまでボロカスに言われては

すんなり魔王さまの言う通りに

するわけにはいかない。



「じゃあ拷問室で悶絶調教四十四日の方がいいか?」



「う………」



その悶絶なんたらも見てみたい気がするが、

トオルはおとなしくなってしまった。

それほど恐ろしい罰なのであろう。



「じゃ、ミツル、後は頼んだぞ」



そう言い残して、魔王さまは気配を消した。







「……………」



ミツルと二人部屋に残され、

トオルは何をすればいいかわからなくなっている。



とりあえず、ミツルの任務に同行する

ということになったらしいが、

当のミツルはトオルを眺めるだけで

何も言おうとはしない。



「……………」



「……………」



「……………」



「……………」



「……………」



「……………」



無言が続く。



「あ、あの………」



たまらずトオルがくちを開いた。

この後に続ける言葉も見つかっていないのに。



「使えるな………」



「へ?」



トオルの言葉を待たず、

ミツルがトオルを眺めたまま喋り出した。



「僕が今、二人の人間に憑りついていることは

 さっき魔王様からも聞いたな?」



「う、うん………」



「お前には僕の指示に従って、

 八木克也の方に憑りついてもらう」



「お、"おまえ"ってなんだよ!」



トオルも先刻からの落ち着きすぎたミツルの態度に

腹が立っていたのかもしれない。

おとなしい彼には似合わない大声を

ミツルにぶつけた。



「ぼくの方が年上なんだから、

 そんな、"おまえ"とかゆうのは………」



そういえば、トオルは13歳でミツルは11歳だから、

トオルの方がふたつも年上なのだ。

外見からは微塵も感じられないが。



「言いたいことはそれだけか?」



「へ………?」



せっかくのトオルの大声も、

ミツルには全く通じない。



「じゃ行くぞ、トオル」



そう言ってミツルが歩き出す。



「あ、待ってようー」



その後ろをちょこちょことトオルが追いかける。



その様は誰がどう見ても

ミツルが"優秀なお兄ちゃん"で、

トオルが"ダメな弟"となっていた。







いっちばん最初は、ぼくんちでやられた。



その次は、学校の保健室でやられた。



次はまたぼくんちで。



学校のトイレ、学校の裏にある物置、

ぼくがよく行くゲームショップのトイレ………。



場所はちがうけど、あれから毎日

ぼくはミツルにへんなことをされ続けた。



アイツはただ、

ぼくを自分の言いなりにしたいだけみたい。



ぼくはミツルに………

弱みをにぎられてるから、逆らえない。

それをいいことに

ぼくに恥ずかしいことをさせて

ミツルはそれを見てよろこんでる。



もちろん、

ミツルにこんなことされるのはすっごくイヤだ。



でも、それ以上にイヤなのは、

ミツルにされることを

気持ちいいって思っちゃってる自分。



ミツルにへんなことされてる時は

頭がぽーってなって、

フツウの考えじゃなくなる。



ちんちんとかおしりとか、ちくびとか

ミツルにさわられてると、

身体がびくびくして

恥ずかしいんだけどやめてほしくないって思っちゃう。

一人でしてる時じゃぜったいならない気持ち。



ミツルがハダカになったぼくを

ぎゅって抱きしめてきて、

ぼくの肌とミツルの肌がくっつくと

なんだかすごく心地いい。

だいっきらいなミツルなのに。



そしてミツルがぼくにいろいろしてくるうち、

ぼくの方も気持ちいいから

もっとしてほしいって気になって、

ぼくにこんな気持ちいいことしてくれるミツルが

(ぜったいかんちがいなんだけど)

ちょっと愛おしくなって

ぼくの方からもミツルをぎゅってしちゃう。



おかしいんだ。



普通だったらぜったいできないハズのことが

ミツルにえっちなことされてる時はできてしまう。

てゆうか、勝手にしちゃう。







………それが、後になってぜんぶさめる。



いっぱい射精して力がぬけて、

はぁはぁ言ってるうちに正気が戻ってくる。



なんであんなことしちゃったんだろうって、

後悔する。



大後悔。



しかも毎回。



次はぜったいぼくの方から

ミツルを抱きしめたりしないって思うのに、

その時になるとやっぱりぼくはおかしくなる。



こんなこと続けてたらぜったいダメだ。



やめないと、って思う………。



思う………けど、ミツルは相変わらずだし

ぼくはどうすればいいんだろ………











「え、休み?」



朝、カッちゃんが言った言葉に、

ぼくの声は裏返った。



「うん、なんか用事があって

 今日は遠いとこ行ってるらしい」



「ふーん………」



よかった、

それなら今日はえっちなことされない………。



でも、それもちょっとさびしいかも………

ってこんなこと思っちゃダメなのに!



「ワタルと二人だけでがっこ行くのもひさびさだよな」



そう言って、カッちゃんはちょっと笑顔になった。



そして、ぼくもうれしくなった。



やっぱりそうだ。

(気持ちいいけど)ミツルにヘンなことされるより、

カッちゃんと二人でいる方がいいに決まってる。



今まではずっとぼくらの間にミツルがいて、

しかも最近は

ぼくがミツルに付きまとわれ続けてたから

カッちゃんといっしょにいることの

大事さを、ちょっと忘れかけてた。



ミツルの言ったことを

またぼくが言うのはくやしいけど、

やっぱぼくはカッちゃんが

すき………なのかもしれない。











ところが、次の日からへんなことになった。



ミツルがいつまでたっても学校に来ない。



先生に聞いてみても理由は教えてくれない。



ミツルがいなけりゃ

ぼくにとっては都合いいはずなんだけど、

ここまで続けて休んでたら

さすがにちょっと気になる。



もう1週間経つんだもん。





そして、それよりもっと大事なのがカッちゃん。



ミツルが学校に来なくなったころから、

カッちゃんの態度がおかしくなってきた。



ヘンだな、って思いはじめたのは………

ミツルがいなくなって2、3日後だから

5日ぐらい前になる。



ヘンだなって思ってたのが、

確実にヘンだ、に変わったのはおとといごろ。



体育の時間とか休み時間とか給食の時、

あんなにでっかい声出してはしゃいでた

カッちゃんが、おとなしいんだ。



普通に声をかけたら話してくれるんだけど、

ポケーっとしてる時が多い。

何度か声をかけないと返事をしてくれないことも

よくあった。



そして、

これはぼくだけしか気づいてないと思うんだけど、

カッちゃん、ちんちんをよくさわってる。



って言ってもナマでさわってるんじゃなくて、

授業中とか上着のすそを

ズボンのとこまで引っ張って

その上からごにょごにょさわってる。



こんなこと、今までなかったのに………



それを発見したとき、

ミツルがカッちゃんに何かしてるのかと思った。



ぼくもミツルにえっちなことされてた時は

学校とかでも

ミツルにされたことを思い出しちゃって、

ちんちんがムズムズすることはよくあった。



まさか、ミツルが………

って思ったけど、その可能性はうすそう。



だって、学校にも来ないで

カッちゃんにヘンなことするなんてムリだと思う。

学校行かなかったら

お母さんに怒られるだろうし、

もしナイショでそんなことやってたとしても

もう1週間も経つんだから

バレてなきゃおかしい。





そして放課後、

ぼくがいっしょに帰ろうって言ったら

カッちゃんは用事があるから先に帰るって言う。

その用事の内容は教えてくれない。



じいちゃんが入院したから、とか

しんせきの家に行かなきゃならない、とか

いろいろ理由つけてるけど

どれもウソくさい。



長い付き合いなんだから、

カッちゃんがウソついてることぐらい

ぼくはすぐに見破れちゃうんだ。



それでも、

カッちゃんは用事があるって言い張って

終わりの会が終わったら

超ダッシュで教室を飛び出してっちゃう。



昨日なんか、ぼくに用事がある

ってことすら言わなかった。



ぼくのことなんか、

眼中にないって感じだった。







カッちゃん、どうしちゃったんだろう。



せっかくミツルがいなくて、

二人で遊んだりできるのに。



そのミツルも行方不明だし、

最近はヘンなことばっかりだ………。







「……………」



一人で帰る。



カッちゃんと二人で帰ってたころ、

そしてミツルと三人で帰ってたころすらなつかしい。



一人で帰るって、

こんなにさびしいとは思わなかった。



用水に草とか流して競争させてみたり、

ジャンケンして負けたら

次の電信柱まで二人ぶんのランドセル持ったり………



そんなこと、一人じゃできない。



カッちゃんは学校に来てるのに、

ジャマなミツルもいないのに、

ぼくはこの道を一人で帰る。



カッちゃんが先に帰っちゃう理由がわかんないから、

余計にさびしいってゆうか、

なんかスッキリしないってゆうか………



他の、

だれかといっしょに帰ってる人たちを見ると

すごくうらやましくなる。



次にぼくがカッちゃんといっしょに帰れるのは

いつのことなんだろ………。







「ただいま」



家にはだれもいなかった。



お母さんは夜勤の日だから

ごはんだけ作ってもう仕事に行っちゃってる。

お父さんは相変わらず帰りが遅いし。



台所でお茶をコップに一杯入れて、

自分の部屋へ向かった。



「はぁぁ………」



ランドセルをほっぽって、

じゅうたんにねっころがった。



ため息ばっかりが出る。



たぶん、なにか他に

すっごくうれしいことが起こったとしても、

カッちゃんのことが引っかかって

100%うれしいって思えないんだろな。



「……………」



ベッドの下に、

カッちゃんがどっかから拾ってきたエロ本があった。

ちょっと前までなら

だれもいない時にこの本を見ながら

一人でしちゃうこともあったんだけど、

今はぜんぜんそんな気になれなかった。











———……………







———……………







———……………







———……………







———ゆめ……………?







どうやら、寝ちゃったらしい。



目の前がまっくら。

だけど意識はある。



身体が暗闇の中に浮かんでるような………

なんか妙なカンカク。







———……………







———……………







———……………







『ふふっ』







———………!!!







まっくらな中から、笑い声が聞こえた。



この、なんかすっごくイヤミっぽい笑い方は………

ミツルだ!







『久しぶり』



その声と同時に、

闇の中にミツルの姿が現れた。



ミツルの身体も宙に浮かんでるみたいに

ふわふわしてる。



『どお? 最近』



なんだ、こいつ………



それにしても、夢にしては

妙にはっきりしゃべるなぁ、このミツル。



『僕にエッチなことしてもらえなくて淋しい?』



———なっ…! んなわけあるか!



心の中でそう叫ぶと、

それがそのままぼくの声となって

闇の中にひびきわたった。



『ふふっ』



また、ミツルが笑う。



『まあ、答えられるわけないか』



ニヤニヤ笑いを止めないミツル。



『ところでさ、最近カッちゃんがヘンじゃない?』



———!!!



な、なんでミツルがそのこと………



いや、これは夢なんだから別にどうでもいい。



『いっしょに遊んだりしてくれなくて、

 カッちゃんが大好きなワタルは

 ちょっと淋しいんだよね』



夢ん中でも相変わらずにくたらしいな、こいつ。



『……………』



ぼくの顔をじっと見つめる。



『僕、理由知ってるよ』



———えっ!



思わず、声が出た。



てゆうか、心ん中で思ったことが

そのまま声になっちゃうんだから………



なんてコワイ夢なんだろ、

えっちなこと考えられないじゃん。



『そうそう、特にエッチなワタルは気をつけなよ』



———しまった………



『ま、そんなことはどうでもよくてさ』



———どうでもいいんかい。



『ワタルもカッちゃんがおかしくなった理由、

 知りたいでしょ?』



———そりゃあ、知りたいけど………



『じゃ、教えてあげるよ』



———うわっ……!!!



ミツルの身体が、突然光を放った。

それがあまりにもまぶしくて、

ぼくは思わず目をふせた。







「……………」



目が……覚めた…………?



気がついたら、ぼくの部屋だった。

あの暗闇は、きれいサッパリなくなってた。



ただ、さっきの夢の中で

身体がふわふわ浮いてたカンカクが、

今もまだ残ってる。



目が覚めて自分の部屋にいるはずなのに、

まだ夢の中に半分足を残してきてるようだった。



「じゃ、行こうか」



「わっ!」



いきなり後ろから声がして、

振り向いて見るとミツルが立ってた。



「な、なんでここにいんだよ!

 てゆうか、今までどこ行ってた!?」



びっくりしてる上に、

聞きたいことがたくさんありすぎて、

ぼくはすっかり取り乱してた。



「そんなことより、

 はやくカッちゃんのとこに行こうよ」



「はあ?」



勝手に人の家に上がりこんどいて、

なに言ってんだよ。



「カッちゃんが今何してるか、確かめに行こう」



ミツルがぼくの手をつかんだ。



「ど、どうやって?」



「簡単だよ、自分の身体見てみな」



「!!!」





やっぱり、これは夢なんだ………



ぼくはまだ、夢から覚めてないんだ………



これも夢の続き。

このミツルもぼくの夢の中のミツル。



だって・………

ぼくの手がないんだもん。



正確に言えば、"見えない"んだ。



確かにぼくはここにいるはずなのに、

鏡の前へ行ってもそこにぼくの姿が映らない。



そう言えば、ミツルの身体も半透明で

向こうの本だなとかが透けて見えちゃってる。



「ね、透明になってたら忍び込むのも簡単だろ?」



「そうだね……」



どうせ夢なんだからどうでもいいや。

ぼくもミツルに流されて返事した。



「じゃ、行こう」



ミツルがぼくの手をつかんだまま、

宙に浮いた。

それにつられてぼくの身体も宙に浮かんだ。



ぼくらはカベをすりぬけて外に出た。



すごい、空飛んでる。



このまま、カッちゃんの家まで一直線だ。







ま、夢なんだから

こんなことができてもいいよね。








学校へ行くときに通ってる道路、

やったら赤が長い信号、

この前の台風で折れ曲がったかんばん。

いつも見てるのと同じもののはずなのに、

空から見下ろすと

それがすべてちがうものに見える。



下で歩いてる人たちを見下ろしてると、

なんだか自分がすごくえらくなった気になる。



空を飛ぶのって、けっこう気持ちいい。



ミツルが出てくるのはイヤだけど、

こんな夢ならいいかな。



「……………」



ぼくの前を飛ぶミツルは

なんか考えごとでもしてるみたいで、

ぼくの方を振り向こうともしない。



そしてぼくも空を飛ぶ感覚に慣れたころ、

さっきミツルが言ってたことを思い出した。



最近、カッちゃんがおかしくなっちゃった理由を、

ミツルは知ってるって言ってた。

そんで、それを教えるために

ぼくをカッちゃんの家につれてくって……



そんなの、わざわざこんなことしなくたって

くちで言ってくれればいいのに。

いくら夢だからって

人の家に勝手に忍び込むなんて気がひける。



あ、でも、どうせ夢なんだからいいのか。



ここでカッちゃんが

おかしくなった理由がわかっても、

それは夢の中のカッちゃんのこと。

現実のカッちゃんがおかしくなった理由とは違う。



どうせ夢。



夢なんだから、なにしてもいいかな。

これはぼくの夢なんだから。



だったら、カッちゃんちに忍び込んで、

カッちゃんにとりついて

家でなにしてるのか、ずっと見ちゃったり………



「やっぱりそんなこと考えてんだ?」



「えっ!?」



しまった!

この夢ん中じゃ、心で思ったことが

そのままミツルに伝わっちゃうんだった!



「やっぱりね。

 透明なのをいいことに

 ずっとカッちゃんに憑りついて、

 お風呂入る時もついてくつもりでしょ?」



「ちっ、ちがっ………!」



どんだけくちで言ってもムダだって思った。



だってさっき、

カッちゃんのおふろがのぞけるって

思っちゃったんだから。



「いいっていいって、

 別にそれでワタルを軽蔑するつもりなんかいから」



なんだか、ぼくのぜんぶを

知り尽くされてるようで、気分が悪い。



なんでミツルは夢ん中でまで

ぼくににくたらしいことばっかするんだろう。



「ついたよ」



ミツルのその声で気づいた。



目の前にカッちゃんの家があった。

空から来るのなんか初めてだったから

わかんなかった。



「じゃ、さっそく行く?」



目の前に2階の部屋の窓がある。

これがカッちゃんの部屋。



ほんとに……入っちゃっていいのかな………



「どうせワタルの姿は見えないんだよ?」



せっかく、ぼくん中で

カッちゃんに悪いって気持ちが大きくなってたのに、

それをミツルが小さくさせる。



そう、どうせカッちゃんにはわかんないんだ。

ぼくがカッちゃんちに忍び込んで、

トイレからおふろとか

普通じゃぜったい見られたくないとこを

のぞいちゃったりしても、

カッちゃんは何も気づかないんだ………。



「行く?」



ミツルがニヤッと笑う。



「うん………」



しまった、またミツルのいいなりだ………

って思いながら、

ぼくはミツルに続いてカッちゃんちの壁ぬけをした。







「は!!??」



カッちゃんの部屋に入った直後、

ぼくは大声をあげた。



つい大声をあげちゃうような、

そんな光景がカッちゃんの部屋に広がってたんだ。



「はぁ……はぁ……く…うぅんっ………」



そこには、ズボンもパンツもぬいじゃって

シャツだけの姿になりながら

荒い息を吐き出してるカッちゃんがいた。



それよりもぼくをびっくりさせたのは、

カッちゃんといっしょに

ぼくが見たこともないヤツがいたこと。



男子で、背はカッちゃんよりもちょっと低そう。

そいつが、カッちゃんの足を思いっきり広げさせて、

カッちゃんのちんちんを……さわってるんだ。

ぼくが……いつも一人でやるときと

同じような感じで………。



「は…あ、あぁ………」



そのまま目をつぶっちゃうカッちゃん。



なにやってんだよ!

つーか、そいつだれ!?



びっくりしながらも、

ぼくは身体を動かせなくなってた。



カッちゃんが………

ぼくの親友のカッちゃんが、

ぼくの知らないヤツの前でこんなカッコして、

ちんちんさわらせちゃってる………



ぼくにはこんなことしてるって、

ぜんっぜん言ってくんなかったのに………



ものすごい怒りがこみあげてきて、

動かない身体がぷるぷる震えてるのがわかった。



「ワタル?」



「はっ!」



肩に手を置かれて、

やっと身体のぷるぷるが止まった。

ミツルだ。



「どお?」



すっごく楽しそうに笑う。



「ど、どおって言われたって………」



どう答えていいかなんてわかんない。



カッちゃんに、

あんなことする友達がいたなんて………



それだったら、それだったら、ぼくが………



「あいつ、誰だか知りたい?」



って言いながら、

ミツルはカッちゃんの友達を指差した。



そいつはまだカッちゃんのちんちんをにぎってて、

その手を動かすたんびに

カッちゃんが気持ちよさそうな声をあげる。



「知ってんの?」



「うん」



夢の中のミツルがうなづいた。



でも、なんでコイツがそんなこと知ってる?



「実はね、あいつ………」



心臓がどきどきする。



ぼくの予想だと………カッちゃんのいとこ?



「悪魔なんだ」



「は?」



その答えがあまりにもバカだったから、

心臓のどきどきがぴったり止まっちゃった。



「アクマ?」



「そう」



真面目な顔でミツルがうなづく。

とうとうおかしくなったんか?



「ワタルたちが住んでる人間界の他にもうひとつ、

 悪魔たちの住む悪魔界ってのがあるんだ」



やっぱりこれは夢だ。

でなきゃあんな頭のいいミツルが

こんなバカなこと言うわけない。



「その悪魔界ってのは

 人間の作り出す精がないと

 崩壊してしまうって言うのがこの話の設定で、」



設定ってなんだよ。



「人間界に派遣された悪魔が人間に憑りついて

 ああゆう風に精を搾り取るってわけ」



ミツルがカッちゃんを指差した。



目をつぶって歯をくいしばってるカッちゃんは、

今にも出ちゃいそうなのを

必死にこらえてるって感じだった。



「じゃ、今カッちゃんにあんなことしてるヤツが

 アクマってこと?」



「そう。外見は人間と変わんないけどね」



うん、どっからどう見たって人間だ。



「そんなん、信じられるか」



いくら夢だからって、人をバカにしすぎてる。

この世界にアクマなんてのがいるわけがない。



「あの悪魔、トオルって言うんだけど」



ぼくの言うことをムシしてミツルが続ける。



「ちょうど1週間前にカッちゃんに憑りついたんだ」



1週間まえ………?



「そ。ワタルがカッちゃんがおかしいって

 思い始めた時期とぴったり一致するよね」



「だ、だからって、

 それとカッちゃんがおかしくなったってのは………」



関係ないような気がする。



「まだわかんない?

 トオルがカッちゃんに憑りついて、

 今みたいなことを始める」



見たくないけど、

またカッちゃんの方を見ちゃった。



トオルってゆうアクマは、

片手をカッちゃんのシャツの中にすべりこませて、

ちくびをいじり始めてる。



「ワタルも僕にやられてわかってると思うけど、

 すっごく気持ちよかったよね?」



「……………」



答えられるわけがない。



「そしたらカッちゃん、

 それが大好きになっちゃってさ、

 毎日学校が終わったら急いで帰ってきて

 トオルにあんなことしてもらってるんだ」



また、カッちゃんの声が聞こえた。



カッちゃん、ちくびさわられて気持ちいいのかな。

わかるよ、そこはぼくも………



「じゃあ、ぜんぶアイツのせいってこと?」



「そうだね」



ミツルがアッサリ答えた。



しっかし、なかなかさめない夢だな。



「最近のカッちゃん、ヤバいよ」



「え?」



「ワタルにも見せてあげる」



ミツルがそう言ったあと、

目の前がまっくらになった。







「………ん……」



カッちゃんの部屋よりずっとがやがやしてる………



「あれ?」



ここ、学校の教室だ!



「そ。今日の学校」



すぐ後ろにミツルがいた。



「今日の学校って、

 今日はもう学校終わってるだろ?」



「だから、ちょっと時間をまき戻したんだ」



んなアホな………



「!!」



あの黒板、

今日の算数の授業で書いたのといっしょだ!

先生が問題を出して、

ぼくがその答えを黒板に書いたんだもん。

あれ、ぼくの字だ………

後ろの黒板に書いてある時間割も

今日のぶん………



ってことは、ここはほんとに今日の学校!?



「だから、時間をまき戻したって言ってるじゃん」



ミツルが言う。



みんなが立ち歩いてるってことは休み時間か。

算数は3限目だからその後の休み時間。



透明人間になったり空を飛んだり、

カベをすりぬけたり時間をまき戻したり、

ミツルは夢ん中じゃ

いろんなことができるんだなぁ………



「ふふっ」



ミツルが笑った。



「なに?」



「いや、ワタルは可愛いなぁって思って」



「なにがかわいいんだよ!」



かわいいなんて言われたってうれしくない。



「ま、とにかく僕についてきてよ」



って言って、ミツルが歩きはじめた。

一人で残されてもしょうがないから

ぼくのそのあとをついて行く。



けっこう遠くまで歩く。



そして、音楽室の横の

あんまり使う人がいないトイレに入って行った。



ついてぼくも入ってみたけど、

やっぱりだれもいない。



「ほら」



ミツルが指差した方を見ると、

ウンコの個室のドアがひとつ閉まってた。



「ちょっと上から覗いてみよう」



ミツルの身体が浮いていくのと同時に

ぼくの身体も浮いていく。



他人のトイレなんてのぞきたくないんだけど、

身体が逆らえない。



「なっ………!」



まさかと思ったけど、

そこにいたのはカッちゃんだった。



しかも、ウンコしてるんじゃない。



立ったままズボンとパンツをおろして、

ちんちんを………



カッちゃん、こんなとこでおな…にぃしてる………。



「な、なんで………」



「カッちゃんって、

 ワタルと同じくらいエッチなんだよね」



「はあ!?」



「だって、トオルにしてもらったのが気持ちよくて

 学校に来てまでも我慢できなくなってるんだもん」



カッ…ちゃ………

そうなん?

あのトオルってヤツにしてもらったこと、

学校でしたくなっちゃうほど、

ぼくといっしょに遊ぶことよりももっと大事?



「く…うぅっ………」



声が出ちゃわないように、

シャツのすそをかむカッちゃん。



ほんっとに気持ちよさそうで、

他のことなんか何も考えてないって感じだった。



「ほらもうすぐ出るよ」



耳元でミツルのささやく声。



ぼくの心臓もどきどきいってる。



カッちゃんが、

ぼくに見られてることも知らずに

おなにぃして射精しちゃう。



今、ぼくの手はカッちゃんをさわれない。



そんなの、いやだ。



あのトオルってヤツなんかより

ぼくの方がずっといいよ。



ぼくだって、

カッちゃんのちんちんさわったりしてあげたいんだ。

そんで、ぼくのもさわってほしい。



二人で、いっしょに気持ちくなれたら………



「あ…、あっ………!!」



———びゅっ、びゅるるーっ!



カッちゃんのちんちんから

白いのがいっぱい飛び出して、

ぼくの身体を突きぬけてカベに散らばった。



何度も何度も飛び出して、

何度も何度もぼくの身体を通りぬけてゆく。



今はなんだかそれが、むしょうにさびしかった。



「はぁ……はぁ………」



カッちゃんはグッタリ。



「じゃ、そろそろ時間戻そうか」



ミツルがそう言ったあと、また視界がまっくらになった。







「……………」



カッちゃんの部屋へ戻ってきた。



トオルはまだカッちゃんのちんちんを離さないでいる。



「どう? これで信じる気になった?」



「わかったわかった、信じるって」



もうどうでもよかった。



だから適当に答えた。



どうせ夢の中のことなんだから。



「え? ワタルはまだこれが夢だって思ってるの?」



「は?」



「これは夢じゃないよ、現実」



ミツルがあんまりり真面目顔して言うもんだから、

ちょっと笑い出しそうになっちゃった。



だって、ぼくは今透明になって

空を飛んでカッちゃんの部屋へ忍び込んでる。

こんなことが現実にできるわけないじゃん。



「ふふっ」



また笑った。



「悪魔ってのはね、人間よりずっと優れてるんだ」



まだアクマなんて言ってるよ、コイツ。



「姿を消したり、空を飛んだりなんて基本中の基本」



もう聞く気も起きない。



「人間を金縛りにして動けなくもできる」



はは……だからなんだってんだよ。



「人の心を読んだりもできる」



ちょっと、どきっとした。



「ワタルがカッちゃんのことを好きだ、

 ってことなんか簡単にわかっちゃう」



少し、身体も熱くなってきた。

どきどきもさらに速く。



「そして人間の男子に憑りついて、

 精液を奪っていく」



ま、まさか…そんな非常識な………ね。



「憑りつく人間は………

 そうだね、ワタルくらいの年齢がピッタリかな」



……………。



「もう、わかったよね」



信じたくない……信じられるわけがない。



「僕はワタルに憑りついた悪魔なんだよ」









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