+ 4 宗家 +


 背後で微笑んでいた青い上着の少年は、服こそ違ったが、全体の雰囲気がまるで変わっていなかったので、すぐ彼と同定できた。たとえどれだけ場違いなところにいようと。
「なぜここにいる! 天流宗家!!」
「え、だって、リクはボクの友達だし」
 ソーマが当たり前のように言った。
「い、いや、確かにそうだが……なぜ天流の宗家がうちの制服を着ている?」
 若き天流宗家は、青い地流幹部服の表面をなで、照れたように笑った。
「僕、今ここでバイトしてるんです。クリスマスにおじいちゃんにプレゼントを贈りたくて、でも中学生を雇ってくれるところなんてないし、ソーマ君に相談したらうちにおいでよって言ってくれたから……」
「いや、だからといっておまえは天流の宗家だろうに……。しかもその服を着ているということは、中学生の身でうちの部長職にあるということか?」
「いえ、これはただの気分です。社食でごはんよそってます」
「どんな気分だそれは。白衣を着ろ白衣を」
「リクはよく働くって、パートのおばちゃんからの評判も上々なんだぜ〜」
 なぜか雅臣が自慢する。リクは恥ずかしそうにほほをかき、
「タイザンさん、働くって楽しいですね。社員さんたちみんな、おいしかったよって言ってくれるんです。こんなに楽しいのにバイト代までもらえるし、それをためてプレゼントを買ったら、おじいちゃん、きっとすごく喜んでくれると思うんです。嬉しいことだらけです」
 野辺に咲くすみれの花のような、はにかんだ笑顔を見せた。
「タイザンさんも、仕事に復帰したらぜひ食べに来てください。平安生まれのタイザンさんの口に合うもの作ってもらえるように、調理師のおじさんに頼んでおきます」
「いや、その、気遣いはありがたいが。天流はあれから大変だろうに、宗家としての仕事はいいのか?」
 多少良心が痛まないこともない。天流を壊滅状態に追い込んだ天流討伐部を指揮していたのは、だれあろう自分だ。
 だがリクはそんなことを気にもしていないような顔で、雨上がりの空から一番最初に降ってくる陽の光のように笑った。
「大丈夫です。そのあたりは全部ヤクモさんがやってくれてますから。ぽっと出の僕より、天流の伝説的闘神士であるヤクモさんのほうがみんなの信頼あるんですよね」
「それでいいのか宗家」
「それに僕、今式神と契約してないので、天流のみんなの前に出ても、いまいち威厳にかけますし」
 さらりとすごいことを言った。
「待て、式神と契約していないと言ったか! 丸腰ということではないか、わかっているのか、ここは地流の本部だぞ。友好路線に切り替えたとはいえ、それを良しとしない地流闘神士がいつお前の首を狙うか……!」
「大丈夫です」
 リクは笑って小首をかしげた。同時に、ばたばたばたと高速で近づいてくる足音が聞こえた。。
「そのあたりもヤクモさんがやってくれてるんで」
「悪いっ! 遅刻した!」
 いきなり社長室の扉が開いて、茶色い髪の少年が駆け込んできた。
08.12.12


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リクのイメージが、「時を越えた再会」のラストの笑顔で固まってるようです。