聖封神儀伝・0 記 憶 の 扉
第 5 章  過 去

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 宵闇、月の光に照らされて、赤い薔薇が数多に大輪の花を咲かせている。
 むせ返るような甘くねっとりとした香りが溢れるこの場所には、記憶が疼く覚えがあった。
 愛優妃の庭園。
 天宮の片隅にあるほかに比べればこじんまりとしたこの庭には、愛優妃が好きだったという赤い薔薇を中心に他にも多種多様な花々が冬を除いて咲き乱れる。中央には噴水と白い東屋。そのほかにも散歩道のところどころに小さな休憩所が設けられている。
 しかし、主を失って久しいこの庭は悲しむ統仲王によって入り口を封じられ、そう、聖が産まれた後に誰も立ち入れないように閉鎖されてしまっていた。
 それ以後、統仲王はもちろん、兄、姉達も入る術を持たず立ち入ってはいないはずだった。
 ううん。むしろ温かな母の温もりがたくさんつまった庭には入れなかったのかもしれない。
 そんなことも知らず、ごくたまに天宮に預けられることがあった聖が、四方高くそびえ囲む赤レンガの壁に気づかなかったわけがない。
 あれ?
 その後どうやってこの庭が愛優妃の庭と知ったのだろう。
 〈渡り〉を覚えたばかりだったから嬉々として自ら入り込んだのだろうか。
 それとも、母を恋しがった聖が龍兄に連れてきてもらったのだったか。
 とにかく、この庭は聖と龍兄との秘密の庭だった。
 主を失って荒れゆく庭。意匠の凝らされた東屋は歳経るごとに一つ、また一つと倒壊していく。
 統仲王がその実情を知らなかったわけはないだろう。
 あの人はただ、愛しい主が帰ってくるまでその庭に何人の手も加えたくなかったのだ。
 だから、一人になりたいとき、龍兄に会いたいとき、こっそり庭に来ることはあっても、聖は荒れた庭を整えてあげようとは思わなかった。
 仮にそんなことをしたら、わたしが愛優妃の庭に入っていると統仲王に知られてしまう。知られたらきっと、〈渡り〉でも入れないように結界を張られてしまう。何より、真実龍兄と二人っきりで逢えるのはここだけだったから失うわけにはいかなかったのだ。
「それで緋桜、よりによってどうしてこんなところに出てくるわけ?」
 恋の甘さと、叶わなかった想いの苦さが漂う庭。
 事情を知る緋桜が、まさかそんなところでみんなを待たせているわけがない。
 かすかな苛立ちを感じて振り返った後ろには、さっきまでいたはずの緋桜の姿はなくなっていた。
「緋桜……?」
 茂みの向こうにもどこにも、声も気配も感じない。
 まさかまた置き去りにされた?
「はぁ」
 わたしは胸を圧迫していく思いを思う存分吐き出して月を見上げた。
 一体いつの時代の庭なのだろう。
 この程度の荒れっぷりなら、見たことがある。
 過去、だったりするのだろうか。
 聖の思い出に導かれるように赤薔薇のゲートをくぐり、緑の小径を辿ったその先、わたしは聞き覚えのあるやや棘のある少女の声を聞いた。
  「誰?!」
 その声に打たれて全身が一瞬緊張する。
 が、すぐに緑の茂みの向こうの気配は和らいだ。
「……龍兄?」
 寄る辺を失ったように細く儚げな少女の声。
 わたしは、恐怖心と好奇心との狭間に揺れながら小さな広場へと通じる最後の赤薔薇のゲートをくぐった。
「聖」
 その先にいたのは、予想通り、私、だった。
 タイミングを計ることなくわたし達は同時に見つめあう。
 こんな記憶、聖の中にあっただろうか?
 あった……かもしれない。
 いまいちまだ聖の記憶は曖昧で、わたしには探しきれないものがたくさん隠されているような気がするけれど、確か平凡な顔立ちの少女が目の前に突っ立っていたような……。
「平凡な顔立ち?」
 元自分の発言に対してカチンと来たわたしは、彼女を見据えながら低い声で聞き返していた。
 聖はびくりと肩をすくめて息を呑み、後ずさる。
「どうして……? あなた、まさか他人の心が読めるの?」
 あらかた見当はつけていたとはいえ、心の中を見透かした発言に驚いたのだろう。
 確かに分かる。分かりはするけど、でも、次が読めない。
「まさか。そんなことはできないよ」
 あまり大事になる前に去ってしまったほうがいいかもしれない。
 こと、相手は本物の聖だ。
 さっき幼い自分に会ったのとはわけが違う。
 下手するとわたしの運命まで更に変な方向へ曲げられかねない。
 わたしは一度両拳を握ると、そのまま回れ右をして聖に背を向けた。
「待って」
 掠れた声にわたしは耳を傾けなかった。
 すぐそこに今くぐってきてしまったばかりの薔薇のゲートがある。
 あれをくぐって右でも左でも曲がって茂みの中に身を隠してしまえばこっちのものだ。
 早足だったのが急く気持ちに駆け足になる。
 その足で薔薇のゲートをくぐったところで、左の方から緋桜らしき少女の悲鳴があがった。
「緋桜?」
 まさかあの緋桜があんな甲高い悲鳴をあげるなんて。
 大概失礼なことを思いながらわたしは向かう先を左に定め、すぐそこの十字路を左に曲がった。
「いやぁぁぁっ、こないでぇぇぇぇっっ」
 泣いているのが目に見えるような緋桜の悲鳴は、複数の足音と共に次第にこっちに近づいてくる。
 これは、前にも進まないほうがいいということだろうか。
 あのレリュータを前にしても、闇獄界の魔物と対峙しても飄々としていた緋桜が泣き叫んでいるのだから、多分、おそらく、わたしの手に負えるものではないに違いない。
「やっぱりわたしも逃げよう」
 そもそも聖のいた時代の神界にそんな恐ろしいものが存在しているわけがないのだけど、やっぱり緋桜を泣かせるなんて尋常じゃない。
 けれど、再び回れ右をしたところですぐ後ろには息切らし、青ざめた聖が追いついてきていた。
「絶体絶命?」
 笑いと恐怖を含んだ声で呟いて、左右を見回す。
 両脇とも薔薇の茂み。
 棘や枝を気にしなければ飛び込むことも可能だろうけど、わたしが飛び込んだのでは大穴が開いて、そこからすぐに追いつかれてしまうのは目に見えている。
 そんなことを考えながら、聖と睨み合いながらじりじりと後ろに下がっていた時だった。
「おっ嬢さぁぁん、逃げないでくださぁぁぁい!」
 緋桜の悲鳴の更に後ろから、これまた聞き覚えのある男の子の声が被さるように続いてくる。
 なんだろ。
 急に頭痛がしてきた。
「いやぁっ、やめて、こないで、ほっといて!!」
 振り向けば死に物狂いで逃げてくる緋桜。
 その後ろからは、予想通りの人影。
「そんなこと言わずに! 俺様とちょっとお茶してくれればいいんです! 俺様の願いはたったそれだけなのに、ああ、どうして叶えてくれないんだ、マイ・セニョリータ!」
 着ているものは明らかに岩城学園の校章の入った白いシャツ。緩められてただ巻きついているようにも見えるネクタイの色は高等部のモスグリーン。前髪の多くは後ろに撫でつけられていて、陽気ながらも女の子を追いかけてぎらぎらする目がよく見える。
「誰がマイ・セニョリータよっっ!!」
 ほんとに半泣きになっていた緋桜は、棒立ちになっているわたしを見つけるなりその後ろに回りこんだ。
「樒ぃ、一生のお願い。助けて、何とかして。〈渡り〉使っても先回りして追いかけてくるのよぉぉぉ」
「……それは化け物並みだね……」
 その呟きは緋桜に、というより主に目の前に突進してきた少年に向けたつもりだった。
 が、しかし、その人はわたしの言葉になど気づきもせずに、ただ緋桜をめがけて突進してくる。
 わたしは緋桜を庇ったまま一歩下がって彼の猛アタックを紙一重でかわした。
「うわぁぁぁぁっっっ」
 勢い止まらぬ彼は、その先にいた聖を何とかかわしてそのまま薔薇の茂みに突っ込んでいく。
「あーあ」
「あららら」
「せっかくの綺麗な薔薇が台無しですねぇ」
 茫然と薔薇の茂みにあいた大穴を見つめるわたしたちの背後から、更に三人の呆れた声が近づいてきていた。
「今度の秋の体育祭では最後のリレーのアンカー、夏城君ではなく三井君にしてみませんか? ゴールに可愛い女の子を置いて。あれなら、それまでどんなに負けてても絶対勝てますよ」
「維斗っ!」
「なかなか名案だね、工藤。生贄の選出に苦労しそうだけど」
「河山君まで……ほんとに、もうっ」
 絶体絶命と思わされた危機の正体は、クラスメイトでした。
 って、……笑えない。
 のんびりと三人揃って軽口を叩きながら歩いてきたのは、左から学級委員長の工藤維斗君、葵と共にいつもお菓子を差し入れてくれる草鈴寺詩音さん、それに学年を超えて女子から人気のある河山宏希君。
 三人ともわたしと同じ岩城学園高等部の一年生で、同じクラス、だったりする。
 ああ、そうそう。
 もう一人、さっき茂みに突っ込んだのは三井徹君。
 入学式の時、外部から入ってきたわたしを目ざとく見つけて、やっぱり「おっ嬢さーんっ、お茶してくっださーい!!」と時代錯誤な古めかしい文句を叫びながら追いかけてきた人だ。(その後、桔梗にひどい目にあわされていたけど)
 思い出して緋桜への同情を新たにしていると、三人のうち学級委員長がわたしに目を留めてにっこりと微笑んだ。
「おや、そこにいるのは守景さんじゃないですか。こんばんは。こんなところで奇遇ですね」
 奇遇も何もあったものではないはずなのに、癖なのか眼鏡をちょっと持ち上げて、暢気に軽く会釈してみせる。
「あ、どうも」
 目すらまともに合わせたこともなかったというのに、つられてわたしも愛想笑いを浮かべて頭を下げる。
 すると、三井君のことでまだ工藤君を睨んでいた詩音さんがわたしを振り返った。
「え、うそっ、樒ちゃん? あ、ほんとだ! 樒ちゃーんっ」
 嬉々とした声が弾丸のような勢いと共に飛びついてくる。
「詩音さん!」
「きゃーっ、元気だった? なんだかとっても久しぶりな気がするんだけど。そうそう、今日ね、ほんとはチョコムース作ってきてたんだけど、樒ちゃん具合悪そうだったでしょ? 届けに行こうと思ったら桔梗たちと講堂の外でちゃうんだもん。あ、具合はもういいの? あの時真っ青だったよね? そういえば桔梗と葵は? 絶対一緒だと思ってたのに」
「詩音、守景さん、明らかに気圧されてますよ。いくら嬉しいからってそんなに質問攻めにしたら……」
「うるさいなっ。女の子には女の子の友情の深め方ってもんがあんのよ! あんたは黙ってなさい! それで、樒ちゃん、どうしてこんなところに?」
 わたしは結局前の質問にはまともに答えられないまま、曖昧な笑みを浮かべてみた。
「ほら、困ってるじゃないですか」
「うっ」
「守景さんもあの地震で飛ばされてきたんですか?」
「あ……はい」
 工藤君の敬語に良心を突かれながらも、わたしは訂正することなくそのまま頷いていた。
「ほらね。ちゃんと丁寧に訊けば答えてくれるものなんですよ。それを詩音、あなたは自分の聞きたいことだけ全部一気に並べるから」
「もう、いちいち文句言うことないでしょっ」
「何を言うんです。こういうことはちゃんとその場で反省を促さなければ身につかないものでしょう?」
「なによ! 別にあんたに言われなくたって後でたっぷりじっくり自分で反省すればすむことでしょうっ?」
「詩音が後で反省? 一日終れば全てその日のこと都合よく忘れてるあなたが何を自信たっぷりに」
「そもそも、あんたなんかに自分のこと心配されたくないわ!」
 呆然と二人のやり取りを見つめていたわたしを、促すように緋桜がつつく。
「あ……あの、詩音さんたちも、飛ばされてここに?」
「え? あ、あたし達?」
 工藤君と舌戦を繰り広げていた詩音さんは、口を開きかけたままはたとわたしを振り返り、そのまま貝の蓋が閉じるようにぱたんと口を閉じてしまった。
「ごめん、わたし何かまずいこときいちゃった?」
 慌ててわたしは言葉を挟む。
 詩音さんはあえて唇を噛みしめたまま愛想笑いを浮かべて首を振り、工藤君の方を振り返った。
「ええと、そう……ですね……」
 いつもHRでは滑舌よく喋る工藤君も、このときばかりも要領を得ない頷き方をしてみせる。
「他に、どこか行ってたの?」
「ううん、ううん、ここよ! ずっとここで迷ってたのよ、ね、維斗?」
「そうそう、そうなんです。ここったら出入口がないものだから迷ってしまって。三井君と河山君と合流したのはついさっきだったんですけどね」
 まるで構造を知っているかのような口ぶりに、わたしの心はわずかに緊張する。
「ほんとにずっと迷ってたの? お昼から?」
「ええ、本当ですよ。だからもうお腹が減っちゃって」
「何言ってんのよ、あたしの作ったお菓子あんなにたくさんほおばっていたくせに!」
「あんなにたくさんって、まるで僕が独りじめしたように言わないでください!」
「したじゃない! チョコレートもの、全部食べちゃったじゃない!!」
「そりゃ食べましたけど、だってあれは……」
 まるで工藤君が言いよどむのを待っていたかのようなタイミングで、その声は一瞬の静寂に割って入った。
「……聖」
 後方で茫然と呟いたその声は、三井君のものだった。
「聖?」
 続いて、ため息まじりに薔薇の棘に搦めとられた三井君を引っ張り出そうと奮闘していた河山君も、思い当たる節があるかのようにその名を呟き、己の背後を振り返る。
 その三井君と河山君二人の視線の向かう先、折れた石柱にもたれかかり、荒い呼吸を繰り返す聖がいた。
「どうなってんだ……?」
 間の抜けた声を発したのは三井君。
 一方、見つめられる聖も苦しそうながら、どこか冷静に彼ら二人を観察していた。
「あなたたちは……」
 一体何を掴んだというのだろう。
 聖は小さく驚愕を声にした後、青と黒、左右異色の瞳をひたとわたしに据えてきた。
 わたしはちょうど背を向ける格好になっていた詩音さんたちに気兼ねしながらも、聖のその視線を受け止める。
 それは、とても強いものだった。
 左右の瞳の色が違うというだけでもインパクトがあるというのに、彼女は加減することなく、驚き、疑問、その他思いの全てを両目に込めてわたしに投げかけぶつけてくる。
 自ら鏡を覗いていた時には気にもならなかったはずなのに、こうして相対してみるとあまりの強さにわたしは目のみならず心まで灼かれていくような気がした。
 その目が、一度深く瞼に覆い隠される。
 一瞬の安堵を与えた後、目を開いた聖はわたしに爆弾を投げつけた。
「有極神を知っている?」
 静かな静かな声だった。
 けれど、あまりに透きとおりすぎたその声は、わたしをも通り過ぎ、確実に背後の詩音さんたちにも伝わってしまったはずだった。
 背後に感じた気配の動きは風だったのか、それとも詩音さんたちだったのか。
「守景さん、お知り合いですか?」
「え……」
 答えかねてわたしは絶句する。
 工藤君はそれには構わず、真っ直ぐ聖の前へと向かっていった。
 聖の表情に厳しさが増す。
「すみません、ここの庭の持ち主の方でしょうか? よかったら僕たちに出る方法を教えていただけませんか? ずっと迷っていて困っていたんです」
 わたしに背を向けている工藤君の表情は分からない。
 でも、彼を見つめる聖の瞳は灼熱の炎を緩めはしなかった。
 見つめあうこと数秒。
 先に視線をそらせた聖は、再びわたしにそれを据えた。
「あなたが守景樒……私、なのね……」
 乾いた喉を、重く生唾がなぞっていく。
 詩音さん、工藤君、三井君に河山君、それにわたしをここに落とした緋桜。
 聖も加えて十二の目が、否応なくわたしに集まった。
 こんな記憶、やっぱりない……かも知れない。
 参考にならない過去の記憶なんか探ってたって仕方がない。
 過去と同じ通りに返事を返す必要なんかないのだ。
 わたしはただ、自分のできる範囲で自ら運命を切り開いていければいい。
「そうだよ。わたしが守景樒。あなたの来世……というか、記憶を受け継いだ者、だよ」
 お互いに確認しあうことの無意味さはよく分かっていた。
 きっと彼女もわたしに感じている。
 既視感。
 だからこれは、彼らへのデモンストレーションのようなもの。
 そして――
「待ってたわ……。そうね、待っていたのよ、貴女に会えるこの日のことを。だからわたしはここに来た」
「貴女はちゃんと転生してる」
「そう、その言葉を聞きたかったの……」
 彼女の計画を後押しするこの言葉を言わせるために、緋桜。あなたはわざとわたしをここに連れてきたんだね。
 視線を合わせず珍しくそっぽを向いているのがその証拠。
「聖刻城へ。そこで、あなたに頼みがあるの」
 いつしか息も絶え絶えになっていた聖は、肩を貸そうとする工藤君の手を払いのけ、石柱に殆ど身体を預けきって顔のみを上げてわたしに言った。
「有極神のこと?」
 弱り果てた聖の姿に、神の悪意に晒され続けた日々を思う。
「ええ。切り離すことができないならば、少しでいい。眠らせてしまいたいの。魔法石が二つあるなら、何とかなるんじゃないかって」
 うっすらと埃を被っていた記憶が疼きだす。
 全ては聖の記憶の通り。
「緋桜、この時代の聖刻城まで扉を開けてちょうだい」
「で……きるだけ、気づかれないように……龍兄が、いるかもしれないから……」
「分かってるよ」
 石柱のかわりにわたしは聖に自分の肩を差し出した。
 今度は払いのけることなく、聖は大人しくわたしに身体を預ける。
「ごめんね、工藤君。悪気はなかったはずなの。許してあげて」
「それは……そんなこと怒ってはいませんけど……」
 緋桜の開いた時空の扉を前に、工藤君は一度口を開きかけ、何か言葉を飲み込んでまた閉じてしまった。
「守景、お前……」
 何度となく聞いたような気のする台詞を三井君も河山君も呟いて、わたしを見つめる。
 けれど、二人はそれきり何も言わず、緋桜に手招かれるまま扉をくぐっていった。
「詩音、何をぼさっとしてるんです。はい、行きますよ」
 言葉を飲み込んで一息ついた後、明るく工藤君はそう言って様子がおかしいままの詩音さんを引きずって、恐れることなく扉をくぐっていった。
 最後に聖を背負ったわたしと緋桜が扉をくぐる。
 その先にあったのは見覚えのある聖刻城の一室と、さっき別れたばかりの桔梗や葵、それに光くんと織笠君と、夏城君の姿だった。









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