師走の散歩道
冬の小道を歩いて(市境界〜本郷ふじやま公園)
畑の脇に大根が一列、頭をそろえてぶら下がっている。師走の風を受け、乾しあがれば早々に樽の中へという風情だ。
幼いころ故郷では、あたり前のように眼にしていた風景だが、いまどき横浜の一角でこの様な懐かしい眺めを眼にできるとは・・・。
垣根を兼ねた畑脇の蜜柑の木に、黄金の実が陽を受け輝いている。今日は朝から気温も和らぎ良い天気。とても、師走の陽気とは思えない日和だ。
山の畑から尾根にでると、時たま吹いてくる風が火照った体に心地よい。
市境界の尾根道を歩くのは、久しぶりかもしれない。このところ体調も優れず、少しばかり心の内にも変調を来たしていたのかもしれない。
月一回の検査の結果も思ったように推移してくれず、おちこむ日もあった。
地表から頭を出した笹竜胆(ササリンドウ)の標柱。 笹竜胆は鎌倉幕府を樹立した源頼朝の家紋。鎌倉市との境界を表すこの標柱のところで尾根の下りに掛かった。
そして、尾根からの下り道で眼にしたのは、この紫式部の実である。枯れ葉に纏われた木の実は幾分しなびているものの、冬枯れの迫る風景の中で色鮮やかだった。
頭上でヒヨドリの鳴き声が響き渡った。
むらさきしきぶ 熟れて 野仏 やさしかり 河野南畦
尾根を下り、何時もの散歩道の一部である川沿いの小道までやってきた。空は上天気、青空が広がっている。
天気予報では午後から曇り、夜には雨が降りだすかも知れないと言っていた気がするが、とてもその様には思えない陽気である。
陽を浴び銀色の光を放つ尾花の穂先から、棉を纏った小人たちが大空に飛び立っていた。
草々の呼びかはしつつ枯れてゆく 相生垣瓜人
環状四号を渡り住宅街を縫い急な坂道を登りきった頃には、額に大粒の汗が吹き出していた。
枯れ草の上に腰を下ろし大きな深呼吸。タオルで汗をぬぐい、見晴るかす先には丹沢山塊の山並みが霞んで見える。
まもなく今年も終わる。暮れ、そして正月はどう過ごそうか。体調が許すようであれば、数年ぶりに冬山に入って雪の感触を味わってみようか。
風が吹いて、汗で濡れた体が晒され、冷えてきた様だ。そろそろ、昼食に戻ろうか。
久しぶりに、腰のベルトに付けた歩数計を覗いてみれば、一万歩を遥かに超える数値を示していた。