とぼとぼ 鎌倉 (その11)

梅を観 北斎を観る



明月院にて
 今年ウグイスの初音を聴いたのは二月十三日だった。何時もより随分早い気がする。やはり、暖冬の影響なのだろう。

 月初めのある日、スギ花粉の影響でむず痒くなった鼻を擦りながら、とぼとぼと散歩に出かけた。

 散歩の目的地は八幡宮内にある鎌倉国宝館である。毎年正月明けから、この時期まで催されている氏家浮世絵コレクションを観るためだ。

 観梅を兼ねて北鎌倉から八幡宮に回ろうと、いつものように六国見山に登った。高野台から山頂に向う道は、しばらく前から手入れがされていたが、随分と立派な遊歩道になっていた。
 明月院通りへ下り北鎌倉に向う、この日は明月院で早春の花木を観ようと境内に入った。

 この冬の温かさで、ロウバイは少しばかり盛りを過ぎていたが、シナマンサク、紅・白梅など見頃を迎えていた。

 穏やかな陽射を受け散策の人出も増えてきた。鎌倉街道を歩いて八幡宮へ向った。

 賑う源氏池脇を抜け、流鏑馬馬場を横切ると人波も途切れた。右手の支倉造り風の美術博物館へ入った。

紅梅 早春の香
 静寂な時の流れる館内。ここ鎌倉国宝館は市内の寺社に伝わる中世の寺宝が保管・陳列されていることで知られているが、毎年この時期には肉筆浮世絵の優品が鑑賞できるのである。
 氏家浮世絵コレクションは氏家武雄氏と鎌倉市が協力して館内に設置した財団法人なのである。

 つん がこのコレクションを観るのは二度目だ。歌川広重、鈴木春信、喜多川歌麿 ・・・ 夫々に華がある。勝川春章の観梅美人図など、この季節と相俟って印象深いものがある。
 しかし、何といっても葛飾北斎の肉筆画が素晴らしかった。酔余美人図の他、魅入てしまう作品ばかりである。日本の優れた庶民芸術の華とは、これ等を云うのであろうと思った。

 結局この日はこの後、材木座海岸まで歩いた後に家へ帰った。

   つんの
とぼとぼ