RocketWorker

NOVEL

daisy-chain page1

 
 




最近、僕は朝がきらいになった。







朝になったら、学校へ行かなきゃならない。

学校へ行ったら、アイツらに会わなきゃいけない。

そしてアイツらに会ったらまた・・・・・



夜、遅くまで起きてたらお母さんに怒られるから

いちおうふとんに入るんだけど、

そこで僕はいつもなかなか寝ないように、ってしてる。

寝ちゃったら、朝になるから。



でも寝ないようにしてたって、結局朝はやってくる。

どうしようもなく昇ってくる太陽が、僕はきらい。







僕、いじめられてるんだ。

今のクラスになった時からずっと。



桐谷くん、って人をリーダーにしたみたいな5人グループから

いつもなぐられたりパシリにされたり...

いじめは、いじめられる側にも問題があるとかって言うけど、

僕はなんにも悪いことなんかしてない。

僕にあんなことしてる桐谷くんたちの方が、よっぽど悪いと思う。



クラスに友だちはいるけど、

その友だちも最近は僕をさけるようにしてるみたい。

いじめのほこ先が自分にも向いたらイヤだって思ってるんだろな。



僕、ひとりになっちゃうのかな。



もう、学校なんか行きたくないな・・・・・











あ、まただ・・・・・







最近僕のうわばきが、ちゃんとげたばこに入ってるってことがほとんどない。

きっと桐谷くんたちのせい。

朝、学校に来たらいつも僕のうわばきは

どっか床に投げ出されてる。



「笹原悠吾」って書かれたうわばきが床に転がってるのを見て、

それを拾った時、いつもため息が出る。

こんないじめ、いつまで続くんだろうって。

もちろんこれから授業中とか、休み時間とか、下校するときとか、

僕が家に帰るまでずっといじめられる。

どんなことされるんだろう、って怯えながら、

僕は今日も教室へ行く。





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———がらっ!



教室の戸を開けて、僕はすぐ桐谷くんたちが来てるか探す。

もし休みだったら今日はいじめられなくてすむから。



「よぅ、悠吾」



「あ、おはよ・・・」



桐谷くんが、僕に声をかけてきた。

いつもの、僕を見下してるような目で。

他の、桐谷くんと一緒に僕をいじめてる人たちも、

みんなニヤニヤしながら僕を見てる。



はぁ・・・、これでまた今日も・・・・・





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「だからここで2をYに代入して・・・」



数学の時間。



数学の松永先生、教え方とかもあんましうまくないし、

それですぐ怒ったりするから、クラスでもあんまり人気がない。

僕もこの先生はそんな好きじゃないけど

今やってる単元は得意だから数学の時間はけっこう好き。



「じゃ、この問題をノートにやってみろー」



あ、この問題楽勝。

さっそくシャーペンを持って、ノートに問題の答えを書き始めた。



———カリカリカリ・・・・・



先生の声とかもなくなって、

みんながシャーペンを走らせてる音だけが響いてすごい静か。

僕も、もう少しでこの問題が解ける。

でもそんな時に・・・・・



———ちくっ!



「いたっ!」



なんかいきなり後ろから首すじを針みたいので刺されて、

僕は思わず大声をあげちゃった。



「ん? どうした?」



そんな僕に、先生やみんなの視線が集まる。



「い、いえ、なんでもないです・・・」



「静かにやれよー」



「はい、ごめんなさい・・・・・」



誰がこんなことしたのかは分かってるんだ。

後ろの席の桐谷くんがコンパスで僕のこと刺してきたんだ。

もう何回かやられてるから、後ろを見なくてもわかる。



授業中も、なにされるか怯えてなくちゃならない。

学校にいるかぎり、僕は安心してることができないんだ・・・





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休み時間には、昨日お母さんに怒られてムカついたから、

っていうムチャクチャな理由でなぐられて、

給食のおつゆの中にはガビョウが入ってた。



でも、今日はマシな方。

昼休みになにもされなかったのは久しぶり。



そして、下校時間になった。





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僕はアイツらはみんな帰る方向がいっしょ。

ホントは一緒になんか帰りたくないんだけど、

いっつもげたばこの所で待ち伏せされて、一緒に帰ることになっちゃう。



僕へのいじめは、学校を出てからも続く。



「あー、数学の松永、ムカつくなー」



桐谷くんが言った。



そういえば今日、数学の時間に松永先生の出した問題に答えらんなくて

怒られてたっけ・・・・・

そん時、ちょっとだけざまぁみろ、って思った。



「あーくそ、ハラ立つ!」



———ぼすっ!



「ぐぁ!!!」



桐谷くんが僕のおなか、なぐってきた。

いきなりだったから僕は後ろによろけて、地面にしりもちをついてしまった。



「げほっ!」



おなかをおさえながら、なんとか立ち上がったら、



「あの先コー、やったらオレたちを目のカタキにしてるよな」



———がすっ!



「あうっっっ!!」



今度はキック。

そんで桐谷くんだけじゃなくて、他の人たちも加わってリンチが始まった。



僕、なんにもしてないのに・・・

抵抗しようとしても、僕のちっちゃい身体だとどうしようもないし・・・

いたい・・・、だれか助けて・・・・・







「う・・・あ・・・・・」



地面にうずくまって、両手で顔を押さえながら

なんとかパンチとキックの嵐に耐えてる僕。

なんだか自分がすごくみじめに思えてくる。



はやく・・・はやく終わって・・・・・

ただそれだけを思いながら、必死に痛いのをがまんする。



「あっ・・・」



ちらっと目を開けたら、こっちの方を見てる人がいた。

背が高くて、僕らよりもたぶん年上だと思う。

もしかしたら助けてくれるかも・・・・・



「ぐぁ!」



そんなこと思ってたら、顔を蹴られた。

目に砂が入って、手でこすってる間も背中を蹴られた。

そしてなんとか目を開けられたころには、

もうその人はいなくなってた。



「おい、もう行こうぜ。

 ムカつくのは松永なのに、コイツなぐっててもしょーがねぇし」



桐谷くんがそう言って、ようやくリンチが終わった。

そしてその場に雑巾みたいになった僕だけが残る。



とりあえず、やっと今日のいじめが終わった、って

思いながら僕は歩き出した。



でも、さっき僕のこと見てた人も助けてくれなかった・・・

そりゃ、関わりたくないよね、きっと。

やっぱり僕はこのままずっといじめられるのかなぁ・・・・・





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———はぁ・・・・・



今日もまた、

僕は教室に入ってすぐにため息をついた。

やっぱり今日も、桐谷くんたち学校に来てたから。

教室の後ろのロッカーんとこに、

いつも5人でたむろってる。



自分の席へ向かってるあいだ、

桐谷くんたちの視線がずっと僕の方へ向いてるのがわかる。

きっと、今日はどうやってイジメてやろうか、

とか考えてんだろな。



席について、かばんから教科書を出して机にしまってる時も

ずっと見られてた。

別になんかされてるわけじゃなくて、

ただ見られてるってだけなんだけど、

この視線がすっごくイヤだ。



威圧されてる気がして、

そして僕はそれに怯えて・・・・・



こんな日がいつまで続くのかな・・・・・





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桐谷くんたちは、あんまりみんなの前では

おっぴらに僕をいじめてこない。

学校にいる時は、昨日されたみたいに

授業中に後ろからこっそりコンパスの針で刺してきたり、

誰にも気付かれないように給食のおつゆにガビョウ入れたり・・・。



パシリにされたり、なぐられたりとかは学校が終わってから。

だから先生たちは僕がいじめられてることに気付かない。

クラスの人たちの中には、気付いてる人もいるみたいだけど

誰も助けてくれない。



あ、今日の給食のパンには絵の具がかかってる・・・、

また残飯バケツ行きだな・・・・・。





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下校時間。



今日の帰りも桐谷くんたちといっしょ。

一人で早く帰りたいのに、今日もまた待ち伏せされた。



「おい悠吾、なんか飲みもん買ってこい」



コンビニの前を通りかかったとこで、桐谷くんが言った。



「え?」



「早く行ってこいよ、炭酸の入ってるヤツな」



「あ、オレも」



「オレもー」



桐谷くんの一言で、全員がおんなじこと言い始める。



今までもパシリにされることは何回もあった。

このコンビニの前を通ると、時々なんか買ってこいって言われる。

もちろん桐谷くんたちはお金なんか払ってくれない、

5人分、ぜんぶ僕のお金・・・。

最近はおこづかいがぜんぶこれでなくなっちゃう。

僕だって欲しいゲームとかあるんだけど、

それも全然買えない。



またため息をつきながら、僕は一人コンビニに向かった。





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「ありがとうございましたー!」



500mlペットがいつつで大体750円・・・、

これで今月のおこづかいがぜんぶなくなっちゃった。



もう先に歩き出してた桐谷くんたちを走って追いかける。

そうしないと、またなぐられるから。



「はい、買ってきた・・・」



ちょっと息を荒くしながら、

桐谷くんたちにコンビニのふくろをさし出した。

それを桐谷くんは何にも言わないで乱暴に奪い取る。



「おい」



「はい?」



すっごく恐い目で、桐谷くんににらまれた。



「オレ炭酸の入ってないヤツ買ってこい、って言っただろ」



「え? でも、たしか炭酸の入ってるやつって・・・、

 だからコーラ買ってきたんだけど・・・・・」



うん、ぜったい炭酸の入ってるやつって言ってた。

桐谷くんウソついてる・・・。



「なぁ、オレ炭酸入ってないヤツって言ったよな?」



後ろを振り向いて、

桐谷くんがもうジュースを飲み始めてる4人に聞いた。



「さぁ? 多分そう言ったんじゃねぇの?」



どうでもいいよそんなこと、って感じでその人たちが答える。

そんな・・・

僕、ぜったい炭酸の入ってるやつって聞いたのに・・・・・。



「ちゃんと言ったの買ってこいよ!」



———ぼすっ!



「ぐぁ!!!」



いきなり、おなかにキック。

僕はおなかを押さえてうずくまった。



そっか、桐谷くんはただ僕をなぐりたかっただけなんだ。

その理由なんか、きっと何だっていいんだろな。

今みたいなムチャクチャな理由でも・・・、

ただ僕をなぐれればいいんだ。



「ほんっと、パシリにも使えねーヤツだな、コイツ」



そう言って、他の人たちも僕をなぐってきた。



昨日とおんなじ。

昨日リンチされたから、今日はだいじょうぶだと思ってたのに・・・。



いたい、いたい、やだ・・・、

なんで僕がこんなこと・・・・・。

そんなこと考えながら、僕はまた必死に耐える。







———あ・・・



一瞬、目を開けたらだれかこっちを見てる人がいる。

背が高くてケンカも強そうな人。

助けて・・・くれないかな・・・・・






助けて・・・ほしいけど、

たぶんここで声なんかあげたら、もっとなぐられる・・・・・。



けっきょく、何の抵抗もできなくて、

僕は耐え続けてた。



「おい」



それからしばらくして、突然パンチもキックも止んだ。



———・・・・・?



そっと目をあけてみると、

さっきこっちを見てた人が、何か桐谷くんに話しかけてる。



「お前ら、なに一人をいじめてんだよ」



「はぁ? 何言ってんだ、あんた?」



え? もしかして、ほんとに助けに来てくれたのかな、

でも、この人もかなり恐そうなかんじ・・・。



「あんたには関係ねぇだろ!」



桐谷くんがその人の肩をどんって押したら・・・



———がすっ!



いきなりその人がなぐりかかって、桐谷くんがふっ飛んだ。

僕も他の4人も、あっけにとられて

ただそれを眺めてることしかできなかった。



桐谷くんもすぐ身体を起こしたけど、

桐谷くんもびっくりしてるみたいで、

その人のことをただずっと見てる。



この人、背がすごくでっかい。

桐谷くんクラスでかなり大きい方だけど、

その桐谷くんを完全に見下ろしてる。



「・・・・・」



「・・・・・」



「・・・・・」



「・・・・・」



しばらく、誰もしゃべらなかった。



「・・・・・ちっ・・・・・・・」



しばらくして、桐谷くんが舌打ちしてその場を去って行った。

他の4人もそのあとを追うみたいにして、走って行く。

去って行く、って言うよりは

この人から逃げて行ったって感じかな。



「・・・・・」



そして今度はその人が僕の方を見た。

長い前髪と鋭い目つきが、やっぱりちょっとこわい。



「・・・・・」



「・・・・・」



———あ、お礼言わなきゃ・・・・・



「あ、ありがとうございます・・・・・」



「・・・・・」



ちっちゃい声でそう言ったけど、

その人はずっと僕のことを見つめてるだけ。

も、もしかして、僕もなぐられるのかな・・・・・



「・・・・・」



「あ・・・・・」



そんなこと考えてたら、

その人はなんにも言わずにどっか行っちゃった。



声をかけることもできなくて、

僕はただその後ろ姿をずっと見てるだけ。

しばらく見てたら、曲がり角をまがって行って

その姿は完全に見えなくなってしまった。



あの人・・・なんだったのかな。

なんで見ず知らずの僕のこと、助けてくれたんだろ。

とにかく、今度会ったら

もっとちゃんとお礼言わなきゃ・・・。



落ちてたかばんを拾って、僕も家の方へ歩き出した。











今日、桐谷くんたちなんにもしてこなかった。



2日続けてリンチしてきたから今日は許してくれるのかな、

そんな優しい人たちじゃないんだけどな・・・。



なにもしてこないのが、かえって不気味だったけど

その日は平和なまま終わった。

給食をまともに食べられたのもひさびさ、

友だちとしゃべれたのもひさびさ。





イジメのない学校って、こんな楽しいものだったんだな。

このままイジメが終わってくれればいいのに・・・

なんてことまで考えてた。





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下校時間。



学校にいる時なんにもされなかったけど、

やっぱりちょっとびくびくしながらげたばこへ向かった。



のぞきこむみたいにして、自分のげたばこの辺りを見る。

桐谷くんたちはいない。

やっぱり! 今日は桐谷くんたちと帰らなくてすむんだ!



そそくさーってクツをはきかえて、僕はげんかんを出た。



もしかしたら、桐谷くんたちが追ってくるかもしれない・・・

そんなこと思って、ちょっと後ろふり向いたりしながら、

早歩きで校門を目指した。

そしてちょうど校門を通り過ぎたところで、



「おぃ」



誰かに声をかけられた。



「あ・・・」



声のした方を見たら、

昨日僕が背が高くてケンカが強そうって思った人がいた。

おんなじ学校だったんだ・・・じゃせんぱいだな。



「なぁ」



「は、はい!」



僕がもじもじしてたら、先に声をかけられた。



「おまえ、名前は?」



「え、えっと、笹原悠吾っていいます・・・」



な、なんか、僕のことじっと見てる・・・、

まさか、僕もなぐられたりしないよね・・・・・。



「僕になにか・・・?」



目つきとか、長い前髪とかで、ちょっと恐そうな感じがする。

僕とは全然合わないような感じの人だけど、

何の用があるのかな。



「おまえ、イジメられてんだろ?」



「えっ・・・」



いきなりそんなこと言われて、びっくりした。

やっぱりわかっちゃうよね、あんなとこ見られたんだもん・・・。



「はい・・・」



ほんとは、イジメられてることなんかあまり言いたくないんだけど、

なんか逆らったら恐そうだから正直に答えた。



「なら、オレが助けてやろうか?」



「え?」



な、なんでこんなこと言ってくるんだろ。

昨日ちょっと会っただけなのに、

なんで僕なんかを助けてくれるんだろ。

恐そうだし・・・、信じていいのかな・・・・・?










や、やっぱりこのせんぱい、こわい・・・、

失礼かもしれないけど、

ついて行ったら何されるかわかんないと思う。

逃げよう・・・・・。



「あ、あのっ! 昨日はありがとうございました!

 ボク、ちょっと用事があるんで・・・、ごめんなさい!」



そう言って、ダッシュで逃げようとしたんだけど・・・



———がしっ!



後ろのえり首をつかまれた。



「ひっ!!!」



ぜったい、なぐられると思った。



「おまえ、オレのこと恐がってるだろ?」



「へ?」



今までとは全然ちがう、すごい優しい声でそう言われて

ふり向いてみたら、せんぱいはちょっと笑顔だった。



「そんな恐がることねーだろ、

 おまえがイジメられてるみてーだから

 力になってやれれば、って思っただけなのによ」



あ・・・、"こわい人"ってのは

僕が勝手にそう思ってただけなのかも・・・。



「ご、ごめんなさい・・・」



「オレんちすぐそこだから」



って言って、せんぱいは先に歩き出した。

僕もその後ろをついて行った。







「あ、あの、せんぱい」



「あ?」



「なまえ、なんってゆうんですか?」



「馳智也」



「へぇ・・・」



本当にこの人に守ってもらって、

イジメがなくなるかもしれないって、僕は考えてた。





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せんぱいの家は、アパートだった。

こんなこと言っちゃ悪いけど、

あんまし立派とはいえない。

建てられてから結構経ってると思う。

階段を使って、2階までのぼった。



———がちゃ・・・



やっぱり、せんぱいは無口なんだと思う。

名前を教えてくれた後、一言もしゃべってくれなかったし

今だって自分の家の戸を開けて、

僕に何も言わずに先に入って行っちゃった。



「おじゃましまーす・・・」



他の人の家に来るのは久しぶりだったから、

ろうかを歩いてる時、ちょっときんちょうしてた。



せんぱいの部屋、なんだか殺風景な感じがした。

ベッドはあるんだけど、その他は本だなぐらいしかない。

テレビとか、CDプレイヤーとか、ゲーム機が

いっぱいある僕の部屋とは大ちがいだった。



せんぱいがベッドにこしかけたから、僕も床に座った。



「どんな風にイジメられてんだ?」



いきなり、聞かれた。



「えっと・・・」



本当なら、こんなことあんまり言いたくないけど、

せんぱいならきっと力になってくれると思ったから、

僕は今までのイジメのことを話した。



「授業中コンパスで刺されたり、

 給食にイタズラされて食べれなくされたり、

 パシリにされたり、リンチされたり・・・・・」



そこまで言って、僕は口をつまらせた。



「ん、どうした?」



「・・・・・」



はずかしくて・・・、その先は言えないと思った。



「・・・・・」



「・・・・・」



「言えよ」



「えっと・・・、その・・・・・、

 イジメられてる人たちの前で、その・・・・・

 おな・・・にぃ・・・・・させられたり・・・・・・・・」



すごい、はずかしかった。

でも、これで助けてもらえるんなら、いいと思った。



「へぇ・・・」



今、顔をあげてせんぱいを見たら、

なんかにやって笑ったような気がした。



「悠吾、おまえソレここでやってみろ」



「へ・・・?」



ぜんぜん予想もしなかったことを言われて、

僕は理解ができなかった。



「ソレとおんなじこと、

 今ここでやってみろって言ってんだよ」



にらまれた。

もしかして僕、

とんでもない人のとこへ来ちゃったのかも・・・・・。



「助けてやったんだから、言うこときけよな」



一番最初に会った時に感じた、すごい冷たい目線。

そんな・・・、

この人なら僕を助けてくれるって思ったのに・・・・・。



「はやくしろよ」



逃げられないと思って、

僕は立ち上がってズボンのベルトに手をかけた。

どうやっても、僕はイジメから逃げられないんだって思うと、

なんだか自分がすごくみじめな気がした。



———するっ・・・



パンツも脱いだ。

それでもせんぱいはだまったまんま。

それが、よけいに恐かった。



また床に座って、ちん×んに手を伸ばした。

もうせんぱいの視線に耐えらんなくて、僕は目を閉じた。



桐谷くんたちの前でやらされたみたいに、

足をひろげて右手でちん×んをにぎる。

もうコレやらされるの何回目になるのかな・・・。



「んっ・・・・・」



しばらく、くにゅくにゅってやってたら大きくなってくる。

その大きくなったのを見られてるって思ったら

もっとはずかしくなる。



「見られてんのに、そんなでかくなるんだな」



「んんっ・・・!」



そんなこと言われたら、なんか自分がヘンタイみたいに思えて、

ぎゅってきつく目をつぶった。



———くちゅっ・・・、ぐちゅっ・・・・・



なんか、ちん×んの先からヌルヌルしたのが出てきて、

ヘンな音を立てて、それがよけいにはずかしい。



「あ・・・・・」



今、ちらって目を開けたら、

やっぱりせんぱい、じっと僕の方見てる。

こんな・・・、

僕がおなにぃしてるとこなんか見たってしょうがないのに、

すごいじっと見てる・・・・・。



「なんだよ、すげぇよさそうな顔してるじゃねーか、

 見られて気持ちよくなってんのか?」



「そ、そんな・・・・・」



そんな・・・ワケないんだけど、なんだか手が・・・・・。



「ふぅんっ・・・」



桐谷くんたちの前でやらされてる時は

全然そんなことなかったのに、

なんだか手が止めらんなくなってきちゃった・・・・・



僕、そんなヘンタイとかじゃないのに・・・・・

ムリヤリやらされてるのに・・・・・。



———ぐちゅっ、ぐちゅっ・・・・・



さっきからずっとしてた音もどんどん大きくなって、

からだの奥からあの感覚がわき起こってきてるのがわかった。



「そろそろか?

 こんなオレの見てる前で出しちまうんだな?」



せ、せんぱいがやらせてるくせにっ・・・!

って言い返したかったけど、声が出せなかった。

それくらい・・・、いつもよりずっと気持ちよくなってた・・・・・。



「う・・・あぁんっ・・・・・!!!」



———びゅっ、びゅるるっ・・・!



すごい勢いで、ちん×んの先っちょから白いのが飛び出してきた。

見られてはずかしいとか、そんなこと考えらんないくらい

からだががくがく震えてた。



「はぁ・・・はぁ・・・・・」



なんか、射精が終わったらっとはずかしさが込み上げてきて、

目を開けられなくなった。

僕がどうしようか、って思ってたら・・・



———パチッ!



いきなり、フラッシュが走った。

そして目を開けてみたら、

せんぱいがデジカメで僕のことを撮ってた。



「え・・・、うそっ!」



いきなりだったから、

もうなにがなんだかわかんなくなってた。



「これで悠吾はオレから逃げられなくなったな」



そのデジカメを持ったまま、せんぱいはちょっと笑った。



「そんな・・・」



どうしたらいいかわかんない。

ただ、ぼうぜんとするしかなかった。

ちょっと前、気持ちいいなんて思ってた自分が

すごいバカに思えてくる。



「今日はもう帰っていいぞ、

 でもオレがこの写真持ってるってこと忘れんなよ」



もう、何か言う力もなかった。

だまったままパンツとズボンはいて、

僕はせんぱいの部屋を出た。







家に向かってる時も、ため息しか出なかった。

桐谷くんたちからのイジメはなくなるかもしれないけど、

今度はせんぱいから・・・・・



なんで僕ばっかり・・・・・。





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今日も、桐谷くんたちは何もしてこなかった。



だから、普通の、他のみんなと変わらない

学校生活を送ることができた。



でも、今の僕は桐谷くんたちよりも

もっと大きな存在に怯えてる。



馳智也せんぱい。



「もうオレから逃げられない」って言われた。



なんで、僕にあんなことするのかはわからない。



わかってるのは、

昨日あんなことされて

本当に僕には逃げることができなくなった、ってこと。



もう、せんぱいのいいなりになるしかないのかな...



きっと、今日も.....





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終礼が終わってすぐ、僕は教室を飛び出した。

今すぐ学校を飛び出せば、

せんぱいに会わずに家まで帰れるかもしれない。



そんなちょっとの可能性を信じて、

僕はげんかんを目指して走った。



———あ・・・・・



でも、そんな願いは

僕のげたばこんとこにいた人影を見て、

あっけなく消え去ってしまった。



「よう、早いな」



せんぱいが・・・、待ち伏せしてた。

なんだか友だちとしゃべってるみたいな口調で、

話しかけてきた。

でも、これがカリソメの姿だってことは、

昨日のことでよくわかってる。



「こ、こんにちは・・・・・」



せんぱいの顔見ただけで昨日のことを思い出しちゃって

顔がかあって熱くなった。

思い出したくなんかないのに、

あの光景がすんごくはっきりと頭ん中に浮かぶ。



「おい、まさか逃げようとしてたんじゃないだろうな?」



「え!? そ、そんなことは・・・・・」









僕が何も言えないでいたら、またせんぱいが少し笑った。



「行くぞ」



せんぱいが歩き出した。

僕はその後をついて行く。



素直について行ってしまってることが

なんだか完全に服従してしまったことを物語ってるみたいで、

ちょっとイヤだった。





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昨日も来たアパート。

ほんとはもう二度と来たくなかったんだけど、

せんぱいのあとについて、げんかんの戸をくぐった。



家の中はまたしーんとしてる。

誰もいないのかな、たしか昨日もそうだった。



「だれもいないの・・・?」



ろうかを歩いてる時、ちっちゃくそう言ってみたら、

せんぱいにすっごく恐い顔でにらまれた。

聞いちゃいけないことだったのかな・・・

このせんぱいの顔が、ほんとに恐かったから

僕もそれ以上聞くことは出来なかった。



———がちゃ・・・



せんぱいの部屋へ入る。



「おい」



昨日とおんなじように、

せんぱいはベッドにこしかけながら僕に言った。



「・・・・・」



僕は昨日のことを思い出すばっかりで、

なんにも言うことができない。



「オナニーしてみろ」



「っ・・・」



おなにぃ・・・

その言葉の意味は、いやってぐらいわかってる。

桐谷くんたちの前でもさんざんやらされた・・・

でも、そんなこと、慣れれるもんじゃないから、

僕はしばらく動けなかった。



「はやくしろよ」



また、せんぱいが僕をにらむ。



さいしょっからわかってたはずなのに、

その顔を見て逆らえないんだってことを思う。

ほんとにイヤなんだけど、逆らえないから、

僕はズボンのベルトを外し始めた。



———ずるっ・・・



ズボンとパンツをいっしょにおろした。

その瞬間から、せんぱいの視線が

僕のちん×んに集中してるのがわかる。

早く終わらせたいから、

手をちん×んのことに持ってこうとしたとき・・・



「普通にやるんじゃつまんねぇよな」



「え・・・?」



なんだか、すっごくイヤな予感がした。



「あそこでやれ」



そう言いながらせんぱいが指差したのは・・・



「え、えぇっ!?」



ベランダだった。



「そ、そんなことできないですっ!」



僕がそう叫んだら、

またあの目でにらまれた。



「・・・・・」



「・・・・・」



「・・・・・」



「・・・・・」



「だ、だって・・・、あんなとこじゃ

 だれかに見られちゃうかもしれないし・・・・・」



さっきのせんぱいの顔がすっごく恐くて、

大きな声を出すことができなくなって小さく言った。



「・・・・・」



それでもせんぱいは、じっと僕を見てるだけ。



「・・・・・」



「・・・・・」



「逆らうのか?」



「っ・・・・・」



「・・・・・」



それだけで、僕は何も言えなくなる。



「いえ・・・・・」



「じゃあ、早くやれよ」



下半身をはだかにしたまんま、

僕は言われたとおりにベタンダに出た。



外の空気はちょっとひんやりする。

こんなとこで、トイレするわけでもないのに

ちん×ん出して・・・

はずかしさで身体じゅうが熱くなってくる。



下を見下ろして見ると、せまい道が通ってた。

人通りは少なそうだけど、

もしだれか通ってこっち見たら・・・



「なにやってんだ、早くやれよ」



ずっと下を眺めてる僕を見て、

後ろからせんぱいが声をかけてきた。



「や、やっぱりムリです・・・、

 だれか通ってみられちゃったら、ボク・・・・・」



ムダだとわかってるんだけど、ひっしにお願いしてみた。



「しょうがねぇな・・・」



———え!? もしかして許してくれる・・・?



そんなことを考えた僕は・・・・・甘かった。



「じゃあ、オレがやってやるよ」



「えっ、えぇ!?」



———きゅっ!



「うぁあんっ!!!」



いきなり、せんぱいが後ろから

僕のちん×んを両手でにぎってきた。

その瞬間、身体がびくってなって、

立ってた足ががくがくふるえた。



「やっ、やめてくださいぃっ・・・!!!」



せんぱいの手が・・・、すごい速さで動きはじめた。

僕が自分でする時よりもっと速い。

右手でちん×んを強くにぎって、

それを前と後ろに動かして・・・・・



———にちゅっ、にゅるっ・・・



「や、やめて・・・・・」



見られてるだけではずかしいのに、

さわられるなんて・・・・・。

それなのに、僕のちん×んはどんどん大きくなってくる。



「騒いだら、誰か人が来るかもな」



「うぅ・・・・・」



抵抗すら、できなくなる。

僕は上の服の裾をつかみながら、

ただ下の道に人が通らないことを祈る。



「こんなにでかくしやがって」



「だ、だって・・・」



せんぱいの手、大きいから

僕のちん×んはせんぱいの手の中にすっぽりかくれちゃう。

こんなことでちん×んさわられて、

すっごくはずかしいのに、なんか・・・

ちょっとだけ気持ちよくなってくる・・・・・。



「ひぃんっ!!」



せんぱいの手の動きがすっごく激しいから、

先っちょの皮がむけて、そこに手の皮ふがあたる。



———ぐちゅっ、ぐちゅっ・・・



「ふぁ、あぁぁ・・・・・」



ヘンなお汁も出てきて、

手がもっと滑るようになってきた。

声出したらだれかに気づかれちゃうかもしれないのに、

その声が止まんない・・・・・



「やっぱりおまえヘンタイだろ?

 こんなとこでオレにさわられてんのに、

 こんなに硬くしやがって・・・」



「ち、ちがいますぅぅ・・・」



「見られるかもしれないってことで興奮してんだろ?」



「そ、そんなわけ・・・・・ひぁ!?」



その時、せんぱいの左手が

下から僕の服の中に入ってきた。

そして、いきなりつめの先で、その・・・

僕のちくびをいじってきたんだ。



それだけなのに、なんでかわかんないけど

身体がぞくぞくってして、ふるえた。



「やっぱりヘンタイだな、

 こんなとこが気持ちいいなんてよ」



「き、きもちよくなんかぁ・・・・・」



ぼ、ぼくの身体ヘンだ・・・

ちくびの先っちょをこりこりってされるたんびに

電気が走ったみたいな感じになる。

こんなとこ・・・気持ちいいハズなんかないのに・・・・・

ぼく、どぉしちゃったんだよぉ・・・・・



「この際、誰かに見てもらうか?」



「やだ・・・、やだぁ・・・・・」



僕が首をふってる間も、

せんぱいの手の動きは止まってくれない。



右手はちん×んをにぎって激しく前と後ろに動いて、

左手はふたつのちくびを交互にいじってくる・・・・・



こんな・・・こんな・・・・・

だれかに見られちゃうかもしれないとこで

ちん×んとちくびさわられて、

イヤだし、はずかしいし、気持ちいいわけないのにっ・・・・・



「よっぽど感じてんだな、

 こんなにヌルヌルにしやがって・・・・・」



「ちがう・・・ちがうぅっ・・・・・」



それしか言えなくて、

僕は首をぶんぶん横にふった。



———あっ!!!



その時、下の道を下校とちゅうの小学生が通りかかった。



「ふぁ・・・!」



それを見て、せんぱいがいじわるく手の動きを速めた。



———やだ・・・、こっち見ないで・・・・・

はやく、はやく行ってぇ・・・・・・・



「アイツら、今のお前見たらどう思うんだろうな」



「・・・っ!!!」



目を閉じても、はしゃいでるその子たちの声が、

まだ近くにいるんだってことを知らせる。

こんなとこ見られたら・・・

きっとあの子たち、学校で話すんだろうな、

そして道でばったり会ったりなんかしたら

ヘンタイヘンタイ・・・とか言われて・・・・・



「はぁ・・・はぁ・・・・・」



なんか・・・なんか・・・・・、

まだあの子たちいるのに、

もう・・・出しちゃいそう・・・・・・



「おい、まだアイツらいるんだぞ、

 なのに出していいのか?」



「だって・・・、せんぱいが・・・・・」



せんぱいにも見破られてた。

でも、手の動き止めてくれないから、

押さえることもできなくて・・・・・



「くぅ、うぅんっ・・・!!!」



———びゅっ、びゅるるぅっ・・・!



こしががくがくふるえながら、

僕は白いのをいっぱいいっぱい出しちゃった。



おしっこの管を押し広げて、

せいえきがのぼってくるのがわかる。

それが何度も何度も続く。



なんでこんなに出るの、って思っちゃうくらい、

射精がいつまでたっても終わんない・・・



「ふふ、すげぇ量だな」



こんな僕を見て、後ろでせんぱいが笑ってる。

せんぱいが・・・せんぱいが悪いクセに・・・・・



———ぷるんっ



やっと射精が止まって、せんぱいがちん×んをふったら

先っちょにくっつていた精液が飛び散った。



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・」



その時にはもう、下の道にはだれもいなくなってた。



「ほら」



せんぱいが差し出してくれたティッシュで

飛び散らかしちゃったせいえきと、

ぬるぬるになってるちん×んをふいた。

でも、そん時にまたはずかしいって気持ちが生まれてきて、

今すぐここから消えたいって思った。





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「明日も来いよ」



部屋の中に戻って服を着てるとちゅう、そう言われた。



やっと今日は解放されるって思ったのに、

またぜつぼう的な気持ちになる。



早くこの部屋から出たいから、

シャツがちゃんとズボンの中に入ってなかったけど

そのまんまでカバンを持って立ち上がった。



———あれ・・・・・?



その時、カラーボックスの上にあった

写真立てが僕の目に飛び込んできた。



ちょっと遠いからはっきりとは見えないけど、

小さい男の子と大人の人が映ってる。

その男の子は、小さい時のせんぱいだと思う。

かみがたは違うけど、目とかは今のまんま。



・・・で、そのとなりにいるのは

お父さん・・・・・なのかな?



ちょっと、この写真のことを聞いてみたくなったけど、

またさっきみたいににらまれると思って

僕はそのまま部屋を出た。



なんか・・・、あのせんぱいが

写真なんかを飾ってるのはちょっと以外だった。

それとも、よっぽど大切な写真なのかな・・・・・?



帰るとちゅう、あんなはずかしいことされたのも忘れて

僕はそんなことばっかり考えてた。




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