+
聖なる大樹と誓約者と 入り口 +
鬼道の巫女、カイナが森へやってきたのは、あたしたちが聖なる大樹の番人になって1年もすぎるころだった。
平和と引き換えにネスが犠牲になってからまる1年……。
だけど、ネスを失ったショックから抜け出すことなんてできなかった。
あたしは魂の抜けた糸くずみたいになって、毎日毎日朝も昼も、ネスの樹のところへ行ってはぼんやりしたり、話し掛けたり、うずくまって泣いたりしていた。
一緒に暮らしてくれるアメルとレオルドがいてくれなかったら、あたしはとっくに空気に溶けて消えてしまっていただろう。
そんなあたしの青白い顔を見て、カイナはひどく辛そうに笑った。
「お久しぶりです、トリスさん。……少し、おやせになりましたか?」
「ひさし……ぶり、カイナ……」
後で知ったのだけれど、カイナはしばらく前から西のサイジェントという町へ行っていたのだった。
そのカイナが伴っていたのは、見覚えのない男の人が一人。
カイナは信頼をこめた瞳でその人を振り返り、丁寧な態度であたしにその人を示した。
「ご紹介します、トリスさん。この方が新たなるエルゴの王、誓約者の……」
「 ハヤトさんです 」
「 トウヤさんです 」
04.01.23