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そのいち ハヤトの場合 +
「ハヤトだよ。よろしく、トリス」
初めて会う誓約者は、明るい色の髪をした、優しそうな男の人……男の子だった。あたしと変わらないくらいの年の。
男の子にしては小柄なのに、腰に下げているのはフォルテやルヴァイドが使うような大剣で、なんだか不釣り合いにさえ思えた。カイナが前に、誓約者は鬼神も一刀両断する剛剣士だって言っていたけれど、とてもそんな風には見えない。
「カイナから話を聞いて、一度来てみたいと思ってたんだ。その木の所まで、連れてってくれるか?」
そしてあたしとハヤトは、大樹へと向かった。
じっと大樹を眺めていたハヤトは、しばらく右手で大樹の幹をなで、それから幹に額をつけて目を閉じた。
「……生きてるよ。ネスティさんはこの中にいて、眠っている」
「ネスが生きてるの?!」
「ああ」
ネスが生きてる!
信じられないくらい嬉しかった。もう少しで泣き出しそうになるのを必死に抑え、
「お願い、ネスを助けて! どうやったらネスを取り戻せるの?!」
叫ぶように尋ねると、ハヤトは幹から額を離して申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん、それは俺にも……」
「…………そう……」
落胆を顔に出してしまったらしい。ハヤトは悲しそうにあたしを見て、それから少し考え、不意にぽんと手を打った。
「トリス。俺のいた世界に、こんな昔話があるんだ。
むかしむかし、おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。
おばあさんは桃を拾って家に持って帰り、包丁でまっぷたつにしました。
すると、中から元気な赤ちゃんが出てきたのです」
………………。
「というわけで」
「ってなに大剣構えてるの?! レオルド、アメル、来てーーーっ!」
『BATTLE!! 聖なる大樹の森にて VS誓約者ハヤト
勝利条件 誓約者の撃退
敗北条件 大樹まっぷたつ』
レオルドとアメルと三人がかりではがいじめにした結果、聖なる大樹まっぷたつだけはどうにかさけることができた。
ネス、誓約者は魔王より強かったよ……。
04.01.23