+ 大雪まつり10 1+


 最初にそれを見たのは、持ち帰り仕事を終え、さあ寝支度するか、という時刻だった。飲み終わったコーヒーカップを手に、タイザンはデスクを離れ、冷えたドアを開けた。その時、キッチンに続く暗い廊下に、萌黄の何かが見えたのだった。
「―――――――?!」
 タイザンは息を呑んだ。それはかすかに光りながら闇を駆けて(姿かたちははっきりしなかったが、駆けていったとタイザンには感じられた)、すうっと閉じたままの玄関から出て行った。……ように見えた。
『どうしやした、ダンナ』
 立ちすくんでいる契約者に、デスクに置いたままの神操機からオニシバが声をかけた。
『そんなとこに突っ立ったままで、寒くありやせんかい』
「……オニシバ」タイザンは我に返った思いで言った。「今、そこに何かいたか」
『へい? いや、あっしにァ何も感じられやせんでしたが』
「………………」
『賊でも入りやしたかい。降神してくだせェ、見てきやすぜ』
「……いや、いい。私の気のせいだ」
 タイザンは一度デスクに戻り、神操機を取って懐に入れてから再度キッチンに向かった。そうでないと、あの萌黄の影を追いかけたいという、どこから沸いてくるのかわからない欲求に押し流されそうな気がしたのだ。

10.12.07



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