+ 大雪09 小話12+
「さて、腹も膨れたところで」
お雑煮とお節の朝ごはんを食べ終え、お茶で一服すると、雅臣さんはタイザンに向き直りました。正座に座りなおし、
「あけましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いいたします」
と深々と頭を下げたのでした。右手のひらを上にしてこちらに差し出しながら。
「ああ、よろしく頼む」
そっけなく返したタイザンに、
「タイザンお兄様、なにか正月に必要なものをお忘れではありませんか」
雅臣さんは頭を下げた姿勢のまま、ますます強く右手を差し出してきます。そこに何か、厚みのあるものをのせろといわんばかりに。
「…………ショウカクのことだがな」
不意にタイザンが言いました。
「前に食わせてやったホットケーキをよほど気に入ったようで、あれが食べたいあれが食べたいと、何かにつけ言ってくるのだ。式神共々な」
「はあ。いや、ショウカクのことはいいんだよ」
抗議の声を無視し、
「で、せっかくの年始だしと思って、昨日のうちに、ショウカクが今朝目覚めたら、枕元にホットケーキがつんであるように細工をしておいた。今頃大喜びでほおばっているはずだ」
「はあ、まあ喜ぶだろうな、あいつ」
「ああ。で、その中に一枚だけ、生地がココア仕立てで見た目からして違うものを混ぜておいた。当たりというやつだな。お年玉だし、こういう遊び心も悪くあるまい」
「いや、だからそのお年玉を俺にも……」
雅臣さんの言葉をさえぎり、
「その当たりホットケーキの中に、おまえ用のお年玉がどこに隠してあるのかを書いたメモをひそませておいた。食われていないとよいのだがな」
言ったタイザンに雅臣さんはひきつりました。
「え、それって……。うわあああショウカク! 食べるな! 食べるなよ!」
一目散にダッシュして玄関を飛び出していきます。その叫びがどんどん遠くなって聞こえなくなるまで待ち、
「……ようやく静かになったか」
『ダンナ、相変わらず素直にお年玉を渡せねェんですね』
オニシバのぼやきは聞こえないふりで、タイザンはため息をついたのでした。
10.04.25