+ 大雪09 小話9+


 カーテンの隙間から差し込む朝日に、タイザンは目をこすりながら起き上がりました。
 お参りから戻り、雅臣さんとだらだらとだべって、いつの間にかコタツに入ったまま眠ってしまっていたようです。向かい側では雅臣さんが、やはりコタツに入ったまま寝ていました。とりあえず肩をゆさぶって起こすと、雅臣さんも「あれ、いつの間にか寝てたな」などと言いながら目を覚ましました。
「あー、今すごくいい夢見てた」
 雅臣さんは伸びをしながら弾んだ声音で言いました。
「あ、そうか初夢か! 今年の初夢はよかったよ。幸先がいいぜ」
「ほう」
 本当は初夢とは1月2日の夜に見た夢だが、まあこやつが楽しそうだからよいか。そんな胸中を声に出さず、ただ相槌を打ったタイザンに、雅臣さんは少し切なげな瞳になりました。
「ずっと、願っても願ってもかなわなかった夢だけど……今年はこの夢がかなうってことかな、なあタイザン」
「だといいな。……どんな夢だ?」
 ついたずねたタイザンに、雅臣さんは中空を見上げ、夢を追う瞳になりました。
「富士山みたいに山盛りになって、タカの絵のついた丼に入って、ナスのおしんこがついてる牛丼の夢さ! いやー、最高の初夢だなあ」
「……雅臣、初夢は明日の夜だ。それはただの夢だから忘れろ」

10.02.12



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ずーっと考えてたんですけど、
除夜の鐘関連のネタが思い浮かばなかったので、
元旦の朝にワープしました。
……思いついたら追加したいなあ……。