+ 大雪09 小話8+
「よおっし!」
と言って雅臣さんがいきなり身を起こしました。いつの間にかコタツに入って、なんとなくテレビを見ながらうつらうつらし始めていたタイザンはびっくりします。
「そろそろ除夜の鐘だな。タイザン、起きた起きた。お参り行こうぜ!」
「私は行かんぞ。行きたいなら勝手に行け」
「またまた〜。これがなくちゃ一年が終わらないぜ」
持ち前の明るい強引さで、雅臣さんはタイザンをコタツから引っ張り出します。その手の勢いでは、タイザンはなかなか雅臣さんに勝てないのでした。いやいやながら出かける支度を整えます。
「一般客にも除夜の鐘つかせてくれる寺、ちゃんとリサーチ済みなんだぜ」
雅臣さんはすっかりその気のようです。意気揚々と出発する彼の後にしぶしぶ続きつつ、タイザンはふと、
「そういえばオニシバ、除夜の鐘というのは、108回つくものだな」
懐の神操機に向けて言いました。
『へい』
オニシバの返事にうなずき、それから思案深げに、
「その108回目、ちょうど最後の108回目をつこうと和尚が撞木を振り上げた瞬間に、たとえばお前が鐘を銃ですばやく撃ったとしたら、たぶんゴーンといい音がして、それが108回目になるな。そしておそらく急にやめることもできぬだろうから和尚もそのまま撞いてしまって、合計109回ついてしまうことになるな?」
『……いや、あっしがこのチャカで撃ったら、鐘そのものがふっとんで無くなると思いやすぜ』
「そうか。ではこの案はなしだな」
『…………ダンナ、一体ェ何がしたいんで?』
10.01.25