+ 大雪09 小話5+
12月31日の夜のことです。
タイザンはふと通勤用鞄をあけてみたのち、全身の血の気を引かせておりました。
「……オニシバ、今日は大晦日だな」
『へい、年の終わりのおおつごもりでさァ』
「…………なぜ…………私の鞄の中に、この間書いた年賀状が入ったままになっているのだ?」
『……そりゃ、ダンナが書くだけで安心しちまって、今日の今日までぽすとに放り込むのを忘れてたからじゃァありやせんかい』
「………………」
その通りなのでした。タイザンは言葉もありません。几帳面な性格を生かして12月中旬には完成させていた年賀状だというのに、完全に出し遅れたのでした。今からポストに猛ダッシュしたところで、元旦に届くことはないでしょう。
そう、三歩下がって影も踏めない宗家ミカヅチや、同僚ではあるけれども実質目上な3部長らの家に、元旦に賀状が届かないのです。
「くっ……! 背に腹は代えられぬか……」
タイザンは苦鳴をもらすと、部屋のすみのゴミ箱をひっくり返しました。奥のほうに押し込んであった包みをひろいあげ、一度ほどいた跡のある、クリスマス用ラッピングをはがします。
「来年の干支が犬ならばよかったが、違うからな……。これに頼るしかあるまい」
中からは、パーティグッズ売り場でよく見かける、サンタガールコスチュームが出てきました。先日開かれた天流討伐部クリスマス会のビンゴで当て、そのままゴミ箱に直行させた品物でした。
「名づけて、『オペレーション・遅刻しちゃったサンタさんに見せかけよう計画』だ。
式神―――!」
『ダンナ、親分さんがたの家まで走って、今夜のうちに賀状を届けてくるってのはやりやすから、そいつを着てってのだけは勘弁してくだせェ』
10.01.08