+ 大雪09 小話2+
「フフフ、ずいぶん無駄な時間をすごしてしまったな」
タイザンは、熱心な推敲の跡が見える猫犬バージョン十二支検討用メモを丸め、ゴミ箱に放り込みつつ言いました。
「年賀状は今日中に目鼻をつけると決めていたのだった。お遊びもほどほどにしなくては」
ダンナ、お遊びどころか本業以上に真剣でしたぜ。などと言うほどオニシバは真っ正直ではなく、黙って契約者にぶ厚い紙の束を差し出しました。先日タイザンが仕事帰りに買った、今年分お年玉つき年賀はがきです。
うむ、と受け取りかけたタイザンは、その動きをふと止めました。
「待て、まずは片付けるべきことから片付けるべきだろうな」
そしてデスクの引き出しを開け、かなり長いことその中を引っ掻き回し、やがて底の底から一枚のはがきを取り出しました。
『平成20年 お年玉つき年賀はがき』と印刷され、ネズミのイラストが描かれているそれを、タイザンは満足げに眺めたのです。
「このために取っておいたおととしの年賀はがきだ……。ふふふオオスミめ、平成22年元旦の朝にこれを送りつけられたらどんな顔をするか」
ダンナ、どこでそんな陰険かつ不毛ないやがらせを覚えたんですかい。すっかり感化されちゃァいやせんか。
というセリフを言うか言うまいか決めかねて、オニシバはしばらく視線をさまよわせたのでした。
09.12.08