+ 大雪09 小話1+
「そろそろ年賀状の準備をせねばならんな」
タイザンはパソコンの前に腰をすえ、住所印刷ソフトを起動しつつ言いました。
「そういえば来年の干支は何だった」
『寅でさァ』
「トラか。……白虎……天流宗家の式神に、飛鳥ユーマのランゲツか」
タイザンはちょっといやな顔になりました。
「いい思い出がないな。誰が十二支を作ったのか知らぬが、虎を入れるくらいなら猫を入れればよかったのだ」
『ハハ、ダンナ、かわいらしさで選んだわけじゃァねェと思いやすぜ』
「別にかわいらしさで言ったわけではないぞ。年賀状の絵面やらなんやらを考えてだ」
さらに笑いそうになったのを危うくこらえたオニシバでしたが、タイザンはそれにすら気づかない様子で、
「そう考えると、他のものも再考に値するな。
ネズミ……まあ悪くはないが……やはり犬や猫のほうが良いな。大きさ的にチワワが妥当か。
牛も……ちょっと大きすぎるからセントバーナードくらいに縮めて……」
そして三時間後。
「できたぞオニシバ! 完璧な犬版十二支と猫版十二支だ!
いいか聞け、まず犬版からだが、ネズミの代わりにチワワ、牛の代わりにセントバーナード、トラの代わりにポメラニアン、なぜトラの代わりがポメラニアンなのか不思議だろうが、これには深いわけがあってな、つまり……」
ダンナ、そんなことしてる間に日がとっぷりと暮れやしたぜ。
と内心でツッコミつつ、オニシバはおとなしく契約者の熱弁に耳を傾けたのでした。
09.12.07