+  趣味に使うとして  +


「そういえば、うちの若いのが誰か、ボーナスでサーフボードを買うと言っていたな」
『波乗りたァオツじゃありやせんか。ダンナもどうですかい?』
 タイザンは四谷怪談のお岩さんのような目でオニシバを見ました。
「私にサーフィンをやれと? 素裸とほとんど変わらぬような、あの品のない格好をしてか?」
 そいつァちょっと言いすぎじゃ……と言いかけたオニシバですが、サーフィンをするタイザンがリアルに頭に浮かび、そのあまりの似合わなさに寒気がしたので何も言えませんでした。
『ま、まァ、平安生まれのお人にァ合わねェかもしれやせんね』
 言ってから、あれッ、雅臣さんなら違和感ねェや、と気がついてしまい、咳払いをしました。
『ダンナは大雪の生まれだから夏の遊びは似合いやせんよ。近頃流行ってる、雪すべりなんざどうですかい』
 あの格好なら大丈夫そうな気がしたのです。が、タイザンはにべもなく、
「スノーボードか? あれは好かぬ」
 あ、そういや速いモンはお嫌いでやしたねェ。とオニシバはしばしたそがれました。
『まァ、波乗り雪すべりに限らず、趣味に使うってのはいい案じゃありやせんか。ダンナも趣味に使ってみたらどうですかい』
「趣味か。私の趣味……笛か?」
『笛……で散財たァ難しそうだ。他の趣味はどうですかい。なにかありやしたっけ』
 タイザンは口に手をあてました。
「……5分待て」
『5分も考えなきゃ出てこねェモンは、趣味とは呼びやせんぜダンナ。何かあるでしょうに。好きなこととか、よくやることとか』
「……そうだ、書なら得意だが」
『それァ特技でしょう』
「提出書類を完全に完璧なレイアウトにするのは好きだ」
『それァただの病気ですぜ』
「イゾウの出してきた領収書のあらを探して却下する」
『それァ何かの腹いせだ』
「大鬼門と四季門の開放」
『それァ仕事でしょうに……。
 あ、でも、女モンの着物きて見栄を切るってなァ、ある意味趣味かもしれやせんねェ』
「……だからあれは好きでやってるわけではないと何度言った!!!」

08.07.30



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部長の趣味って何でしょう。
ぜんぜん想像がつきません。
雅臣さんのほうは、いつだったかガンプラ作ってましたっけ。
雅臣さんならほかにもいくらでもありそうです。