+  もしも旅行に行くとして  +


「旅か。あまりしたことがないな。この機会に行ってみるか」
『悪くねェんじゃありやせんかいダンナ』オニシバも言います。『あっしも旅の空は嫌いなほうじゃねェや』
「そうだな……たまには遠出も悪くないかも知れぬ」
 ミカヅチ社の旅行事業部からツアーのパンフレットをどっさりもらい、机の上に広げました。
『ダンナ、これなんかいいんじゃありやせんか。でっけェ滝ですぜ、あっしァちょいと見てみてェや』
 オニシバはどこかわくわくした顔で“カナダ・ナイアガラの滝”と題されたパンフレットを指差します。タイザンはそれを一瞥し、
「海外ではないか。日本語の通じぬ場所になど誰が行くか」
『保守的ですねェダンナ。じゃ、この“宮古島・青い海で過ごす休日”はどうですかい』
「宮古島とは南方の離島だろう。飛行機でなくてはいけぬではないか」
『……そういえばヒコウキはこわ……、』危ういところで単語を飲み込み、『嫌ェでしたっけね。じゃ、この“平泉・奥州藤原氏の栄華を偲ぶ旅”なんかは』
「平泉……東北か。電車で何時間かかるのだ?」
『シンカンセンならそう遠かありやせんぜ』
「新幹線だと? あれは優雅さがなさすぎる」
 100キロ以上出る乗り物は嫌だ。という意味だろうなと、オニシバは思いました。
『じゃ……この“ネズミの国・園内ホテルに泊まるわくわくホリデイ”とかも……』
「人の多いところは好かぬ」
『”ライトアップ・東京タワーナイトツアー”でも行きやすかい』
「高いところも落ち着かぬ」
 言い放ち、あきれ返ったようにため息をつきました。
「まったく、どれもこれも、何時間も乗り物に乗ったり、人の多い場所に行ったりするものばかりではないか」
『いやダンナ、旅ってェのは大概そういうモンで……』
「そうでもなかろう。こんなものしか提供できぬとは、うちのツアー企画部門も質が悪いな」
『……おむすびこさえて近所の公園でも行きやすかい?』

08.07.22



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タイザンも雅臣さんと一緒で、
乗り物嫌いだと思ってます。
電車は必要があって乗れるようになったけど、
自動車は(乗らなきゃいけないんでしょうが)かなり嫌いかと。