+  将来に使うとして 続き  +


「この間の老後の話で思い出したのだがなオニシバ」
 仕事の手を止めて、意地の悪い笑みを浮かべながらタイザンが言いました。
「最近の老人入居施設では、アニマルセラピーが取り入れられているらしいぞ」
 ペットの一言で大体どんな方向性の話なのかは理解できたのですが、契約者への付き合いで『あにまるせらぴーたァ何ですかい』とオニシバは尋ねたのでした。
「老人たちが犬猫とふれあうことで心を癒すのだ。施設に活気が生まれ、認知症の改善にも効果があると言うぞ」
 そこで机の中から施設の名前や所在地が書かれた表を取り出し、
「見ろ、これがミカヅチグループの運営している老人入所施設だが、犬マークがついているのがアニマルセラピーを導入している場所だ。これだけたくさんの場所で犬猫が人のこころを癒している。最近の犬猫はえらいものだな」
『へい、見上げたもんでさァ』
 ここぞとばかりにタイザンはにやりとしました。
「どこぞの戦うしかできない犬とは大違いだな?」
 やっぱりそうきたかと思いつつ、
『じゃァダンナ、あっしもちょいとあにまるせらぴーで働いてみることにしまさァ』
「え?」
 目が点になっている契約者をおいて、オニシバはとことことミカヅチ社本社ビルを出たのでした。

「若い頃はもう食うや食わずでねえ。あの頃は本当に辛くって、でも子どもにだけは食べさせようと思って」
『姐さん、大変なご苦労をなすったんですねェ』
「なのに年をとったら子どもたちは見舞いにも来ないし……毎日待ってるのにねえ」
『そいつァ寂しいもんでしょう』
「そうなのよ。出世して忙しいからだってのはわかってるけど、子育て失敗したのかと思うと涙が出ちゃって」
『姐さんが立派に子育てをしたから、出世するような立派な御仁に育ったんでさァ』
「ああ、そう言ってもらうと救われるわねえ。ところであなた、新しい職員さん?」
『へい、あっしァあにまるせらぴーをやるぼらんてあでさァ』
 施設のデイルームで老婆の話を親身に聞くオニシバを物陰から見ながら、
 ……オニシバ、アニマルセラピーとはそういうものではない!
 胸中で叫びつつも出て行けないタイザンに、施設職員が不審者を見る目を向けておりました。
12.12.15

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降神してないのに見えるんかいとは聞かないでください。