+ 電化製品に使うとして +
もうじき冬のボーナスが出ようかという日の仕事帰り、タイザンはふらりと電器屋に立ち寄りました。
「夏のボーナスはまだ残っていたな」
『へい、そっくりそのまま』
タイザンはうなずいて、まっすぐデジカメコーナーへ向かいます。
「いらっしゃいませー! デジカメお探しですか? 予算おいくらぐらいですかね?」
はっぴ姿の店員が早速声をかけてきます。普段は店員の声かけをうるさがって遠ざけるタイザンですが、このときは、
「値がはってもかまわないから、できる限り性能のいいものがほしいのだが」
と返事をしたのでした。珍しいことです。
「それでしたらこのあたりの一眼レフはいかがですか?」
「よさそうだな。これで撮ったものはネットで公開できるのか?」
「はいはいできますよ! ブログかSNSでもやってらっしゃるんですか?」
「いや、まだだ。これから、ペット写真のブログを始めようかと思っている」
「ああーいいですねー! ワンちゃんネコちゃんかわいいですからねー」
手を打ってニコニコする店員に、タイザンは軽くうなずき返します。そこへ、
『ダンナ』
オニシバは神操機の中から声をかけました。
『あっしは式神ですから、かめらにァ写りやせんぜ』
「案ずるな、オニシバ。これだけ科学が発達しているこの時代だ。カメラも式神くらい写せるようになっているに違いあるまい」
『……いやダンナ、本当にあっしを撮るつもりだったんですかい。あっしァ軽い冗談のつもりで……』
「はい? 何かおっしゃいました?」
「いや、こっちの話だ。それでこのカメラの性能だが……」
『ダンナ、無理ですって。聞いてやすかいダンナ』
神操機からの訴えに耳を貸さず、タイザンは店員のセールストークに熱心に付き合うのでした。
12.12.07
陰陽放映当時はフェイスブックとかありませんでしたが、
部長は社内で必要とあれば如才なくアカウントくらいは作ってそうな気がします。