+ 最後 +

 タイザンは大きく息を吐いて、目の前にそびえるツリーを見上げた。
 今朝はただのもみの木だったが、いまや全体にオーナメントをぶら下げて、威風堂々とした立派なツリーだ。
 飾りの配置も申し分ない。タイザンはもうひとつ、今度は満足の息を吐いた。
「ようやくできあがりやしたね、ダンナ」
 オニシバもどこか達成感のにじみ出た声音だ。タイザンは額の汗をぬぐうと、
「いや、まだだ」
と宣言した。
「そっちに一つ箱が転がってるだろう。それと、あっちにあるコンビニの袋を持ってついて来い」

 2人はもう一度木に登った。今度は五階の高さの一番上、もみの木の頂上までだ。
「箱を落とすなよオニシバ……よし、そこへ置け」
「へい。こいつァずいぶんと軽い箱ですね」
「ああ。ひとつしか入っていないからな」
 タイザンは箱を開ける。中に入っていたのは、一抱えもある金の星だ。
「総仕上げだ」
 オニシバに向け、軽くあごで木のてっぺんを示し、タイザンは枝に足をかけ手を伸ばした。落ちねェでくだせェよ、とオニシバの声をBGMに、幹の一番上に金の星をすえつける。星はぴったりとその場所に収まった。
「……できあがりやしたね、ダンナ」
「ああ」
「ちぃと大変ではあったが、終わってみりゃァなんとも気分のいいもんじゃありやせんか。ああ、ずいぶんといい眺めだ」
 オニシバは手庇を作って、ガラス越しに見える公園とその向こうに顔を向けた。
「そうだな」
 タイザンは薄く笑い、
「せっかくここまで登ったのだ。このまま降りるのも芸がない」
 オニシバに持たせていたコンビニの袋を受け取った。中からは細長いボトルが出てきた。
「コンビニの安物シャンパンで、グラスではなく紙コップだから締まらぬが仕方あるまい」
 オニシバは笑った。
「こいつァいいや。ダンナにしちゃ珍しい遊び心じゃありやせんか」
「まあ、こんなくだらぬことをさせられればそんな気にもなるさ」
 2人は枝の上に腰を下ろし、ボトルの栓を開けた。
「お疲れさんでござんす、ダンナ」
「ああ。……ずいぶんと甘いな、これは」
 ちびちびと紙コップのシャンメリーをなめながら、ツリーの一番高い枝の上で、タイザンはぷらぷらと足を振った。 07.1.21


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