+ おまけ +
翌朝。
月曜日である。急ぎ足でミカヅチ本社へと向かう平社員たちの中、タイザンはあくび交じりに歩いていた。
『昨日の疲れが残ってるみてェですね、ダンナ』
「かもしれぬな……。くそ、いまいましい」
周りの一般社員に気づかれぬよう、独り言めかして会話しながら、タイザンはあくびをもう一つ。
「まあ、仕方あるまい。それなりの成果は残せたのだからな」
薄く笑い、タイザンはミカヅチ本社の正面玄関を抜けた。目の前には昨日完璧に飾りつけたツリーが、見事な調和をもってたたずんで……いなかった。
「この闘神石も飾っちゃいましょ。ああ、あとその実験廃液、試験管に入れて飾ったらきれいなんじゃないかしら?」
「トウベエ、おまえの首飾りを貸しなさい。きっとよく映えまする」
「タイザン部長……たった一人でこれだけの仕事をするとは……! うおおおおおおーーーっ!!」
「へへっ、ここいらのオーナメントの一つや二つ、こっそりもらって帰ってもばれやしねえだろ。これとこれとこれと……」
「こうしてこうして……と。うむ、やはりツリーには靴下がなくてはな。ところでナンカイ部長、それは何ですか」
「おお、孫が描いたワシの似顔絵じゃ。幼稚園児とは思えん天才的な絵だろう? こうしてつるしておけば皆が見れるじゃろうと思ってな」
ツリーに群がる人、人、人……。手に手にどこからか持ち寄った飾りを持って、それぞれにくくりつけている。無秩序を絵に描いたようなその有様。
タイザンは立ちすくんだ。そして一秒、二秒。震える手を内ポケットに差し込んだ。
「貴様らそこへ直れ!! 式神……!」
『ダンナここで降神はまずいですぜ!』
「うるさい! 兌離兌離!!」
その日の午前中めいっぱい、ミカヅチ本社では、タイザン部長指揮のもと社員総出でツリーの飾りなおしが行われたという。
07.1.29
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