+ 合間3 +
「あの柊使いといい、イゾウといい、うちにはまともな社員はおらぬのか」
グチ混じりのタイザンは3階の高さまで登り、飾り付けを進めていた。
「ずいぶん高くになりやしたね」
「……ああ」
オニシバの指差すのはまっすぐ横、正面玄関の方だ。カーテンが引かれている正面玄関の上は、吹き抜けの一番上まで広く総ガラス張りになっていて、タイザンたちのいるツリーの中ほどからでも、本社前広場が一望のもとにあった。
「ああ、お前の仲間が歩いているぞ」
広場の中ほどを、飼い主に連れられて一匹のプードルが歩いている。きれいにトリミングされ、赤い服とリボンをつけていた。指差すタイザンはといえば、なんとなく意地の悪い微笑を浮かべている。
オニシバは軽くため息をついた。
「……冗談が過ぎますぜダンナ」
「ふふん、そうか?」
「あんな上品なお嬢ちゃんを、あっしみてェなやくざモンと一緒にしちゃァいけやせん」
「…………そ、そうか。悪かったな」
タイザンがあんまり動揺したふうなので、素直に「あっしァ犬じゃありやせん」と怒ってみせてやったほうがよかったかなとオニシバは思った。
07.1.11
|