+ 合間2 +

 研究者たちをさんざんあちこち駆け回らせへばらせたオニシバが悠々と帰ってくると、タイザンはすでに3階の高さまで飾り付けを終えていた。
「上出来みてェですね、ダンナ。ここらで一息いれやせんかい」
「そうだな。オオスミと怒鳴りあってのどが渇いた。何か買いに行くか」
 タイザンは木を下り、オニシバを神操機に戻すと正面入り口に向かった。休日なので電源が切られている自動ドアに手を触れ、
「………………」
 ふと、動きを止めた。少し開け、すぐに閉め、しばらく考える。
「式神、降神」
「霜花のオニシバ見参! 一休みはやめにするんですかい?」
 小首を傾げるオニシバを真顔で見つめ、「オニシバ、ひとつ聞くが」とタイザンは言った。
「私が天流討伐部長になれたのは、なぜだと思う」
「なんですかい、その唐突な質問は。……まあ、流派章の位が高いとか、下のもんを使うのがうまいとか、どこぞから持ち出した古文書が大鬼門建造の役に立ってるとか、いろいろあるんじゃありやせんかい」
「いや、違う。よく考えろ。この時代の地流は、このとおり一企業という体裁を取っている。その内情も同じだ。賞与、減俸、左遷に昇進、有給休暇に福利厚生まで整っている。医者にかかれば保険が利くし、ゆくゆくは年金までもらえる予定だ。その年までここにいる気はないが」
 そこで咳払いをし、
「話がそれたな。つまり、現代の地流で出世するには、現代の一企業で出世できる能力が必要だということだ。オニシバ。現代の企業において、社員に求められるものは何かわかるか?」
「さあ、あっしにはとんと」
 そうだろうな、とタイザンはうなずいた。
「教えてやろう。仕事の効率化だ。時間・労力・経費の無駄を省き、浮いた分を更なる仕事に回す。神操機を振るしかできぬ部下どもと違い、私は仕事の効率化をつねに心がけてやってきた。だから出世できたのだ」
「はあ、なるほどねえ」
 オニシバはうなずいて納得する。
「この地位を保つためには、今後も効率化を念頭において業務を進めねばならぬ。時間や労力のロスなど愚の骨頂だ。……オニシバ、私の言っていることがわかるか」
「へい。一休みはなしで一気にやっちまおうってことですね」
「違う」
 タイザンはいきなりオニシバのコートの袖をつかんだ。
「外は寒いが天流討伐部長室までコートを取りに戻るのも面倒だからお前のを貸せと言ったのだ!」
「ダンナそいつァちょっとひどいんじゃちょっとダンナ聞いてやすかい!」
 1分後、地流の制服の上にコートをはおったタイザンが、悠々と正面玄関から出発した。 06.12.21




前          6へ