+  クレヤマ部長編  +


「タイザン、ミカヅチ様の秘書から小耳にはさんだのだが、今日が誕生日だというのは本当か」
「(ミカヅチめ個人情報の管理はどうなっている……)ええ、そうですクレヤマ部長」
「そうか……。日ごろの労をねぎらうなどと言ってはおこがましいが、(ごそごそ)これはなんというか誕生日の祝いだ」
「……いただいてよろしいのですか?」(予想外の事態に動揺)
「ああ、つまらんものだが。おまえには人員派遣の件でも世話になっているからな」
「……いえ、私の方こそお世話になりっぱなしで……ええっと、開けてもよろしいですか?」(イゾウを押し付けたのを思い出して良心痛み中)
「ああ、開けてみてくれ。気に入るとよいのだが。趣味や好きなものが何もわからんから迷ったぞ」
 (がさがさ)
「……あの、クレヤマさん、これは……」
「ソプラノリコーダーだ。おまえには笛を吹く特技があったことを思い出してな。おまえがよく吹いている種類の笛があればよかったのだが、楽器屋にみあたらなかったのだ。笛と言えば俺はこれしかわからんし……。名前シールもついているから落としても安心だと思うぞ。
 気に入らなかったか?」
「………………いえ。ちょうどほしいと思っていました。ありがとうございます」
「そうか! 喜んでもらえて俺も嬉しいぞ。おおもうこんな時間か。部の会議があるので失礼する。ではな」
(ガチャ、ばたん)

『……えらかったですぜダンナ。きかん気だったダンナが、相手の気持ちを思いやって礼を言えるまでになるたァね。あっしァ感服いたしやした』
「……その微妙な慰め方もやめろ。正直泣きたくなる」
05.12.7





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