N家では「奥さんが家づくりの牽引をした」の巻 II

 春の気配が漂い始めたある春の日の夕方、奥さんが単独で完成しつつあった家を見学してすっかり気に入ったため、彼女は自分に決定権があるとばかり、その家の設計者に設計を頼もうと内心決め込んで予備的な話しをつけたつもりでした。それを聞いたNさんは、それでは一家の主人としての立場をないがしろにされたという気持ちと、自分の目で見たことによる具体的なリアリティーがないため、不機嫌かつ不快な気持ちでした。

 Nさんを説得するには ”百聞は一見にしかず”とばかり、奥さんはくだんの家にご主人を連れて行かれました。それまで日光や家の中の光に飢えていたNさんは、自分が長い年月の間、心の中で潜在的に渇望していた大きなトップライトを活用した明るい室内を目の当たりにして、奥さんの意見に納得され、また計画は一段と進んだのでした。

 設計の打合せが進んだある段階で、設計者は工事予算が心配になり縮小した別案も用意しました。ご主人が穏やかに見つめられる前で、ご主人よりも図面の理解力が早く深い奥さんは、縮小するなんてとんでもないとばかり、前の原案を指してきっぱりと言ったのでした。「私はこの家が欲しいの!」。それは大きな計画が始まるゴングの合図のようであり、「ユニバーサルな家」の計画の道筋を決然と決めた瞬間でした。
 その昔、旧約の予言者は言いました。「天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。―こわすに時があり、建てるに時がある」と。(※)
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 現代の家作りは、ハウスメーカーがつくる標準化されたパターンの中から”選んで買う”、建設会社や工務店に予算やおおまかな間取りの条件をつけ任せる方法が多いと思います。Nさんの家づくりの特殊さは、設計者は決まりかけたけれど、大きな家になる可能性があったにもかかわらず、全般的な請負工事には不慣れな親戚の大工さんに頼まねばならない事情でした。世に言う”しがらみ”ですが結果はどうなることでしょう。

 既存住宅の解体など、設計が完了し、工事予算が決まり、工事契約の見通しがついてからするものですが「おばあちゃんの意見が変わらぬうちに」とばかり、そうしたことが余り進んでいないうちに早々と解体し遠くの仮住まいに引越ししてしまわれたため、これで計画は絶対後戻りできないことになりました。(→次へ


※「旧約聖書」伝道の書 3-1, 3


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