N家では「奥さんが家づくりの牽引をした」の巻 I

 建て替えをする前のNさんの家の南には、小公園といえる程の大木が混在する林があり、長年日照と室内の採光の妨げになっていました(昼でも新聞を読むのに電灯の光が必要な程)。また、おじいちゃん(Nさんの父)が車椅子生活だったため、アプローチから玄関へ、玄関から部屋中を車椅子で移動できるようにしたい希望もありました(足腰に衰えが目立つようになったおばあちゃんの近い将来と、遠くには自分たちの将来も考えて)。さらに来客を迎えるための部屋が一つだったため、その共有スペースをべぐって世代間で住み分けが難しい場面が多くありました。

 若い世代の間で家の建て替えの話しがもち上がった時、それまでどちらかというと共有スペースを支配していた姑であるおばあちゃんは言いました。「家を建て替えるなんて、私が死んでからにしてちょうだい!」。Nさんより、嫁の立場であった奥さんの方がさまざまな事情からして、この計画に熱心だったため、姑に言い返しました。「そんならおばあちゃんいつ死んでくれるの」と。嫁にそんなふうに言い返されるとは思ってもみなかったおばあちゃんは「そんなことわかるわけないでしょう」といいました。

 おばあちゃんの生死に、この計画の運命が支配されるようでは、このまま我慢の生活が続くというわけで、奥さんは再度いいました「そんなら、いつ建て替えが出来るか全く予定が立たないじゃない」。

 家を建てるということは、家族の間でこんな率直な会話があるものです。決断力があり、オープンな性格の奥さんはそんなやりとりを話してくれましたが、2人のご婦人の関係が後のプランづくりに大変役立ちました。設計者になど、その他微妙な問題など解るわけがないのですから。結局若い人たちの力と熱意が勝り、しまいにはおばあちゃんを説得して、Nさんの家の計画は進み出しました。(→次へ


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