その他断片 (2010年〜2015年)

様々な音源、映像などをここで紹介します。なおここで述べられている情報の一部につきましては、間接的なものであり、その真正性につき完全な裏付けはとれていないので、ご注意ください。


NHL Winter Classic 2010 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. National Anthem (Star Spangled Banner)


収録: 2010年1月1日 Fenway Park, Boston



NHL (The National Hockey League)の試合は、米国では屋内で行われるのが通常であるが、2008年より毎年1月1日に屋外で行われる試合「Winter Classic」が始まった。1回目のニューヨーク、2回目のシカゴに続く3回目は、ボストンのフェンウェイパークで開催され、地元チームのボストン・ブルインズとフィラデルフィア・フライヤーズが対戦した。ダニエル・パウダーによるカナダ国歌斉唱の後JTが登場、アメリカ国歌「Star Spangled Banner」を歌った。スポーツ・イベントの開会式への参加は、野球(2004、2007 ワールドシリーズ)、テニス(2005 全米オープン)、バスケットボール(2008 NBAファイナル)に続くもの。ちなみに試合は2対1でボストンが勝ったそうだ。


Today Show 2010 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar
Carole King : Vocal, Piano
Lee Sklar : Bass

1. Something In The Way She Moves
2. Will You Still Love Me Tommorow [Carole King, Gerry Goffin]

収録: 2010年1月20日 New York


Troubadour Reunion Tour の宣伝のために、朝7時30分(東部時間)から始まるNBCテレビの「Today」に出演。この番組は4時間もあるそうで、キャロルとジェイムスの二人は番組の前半と後半に登場。彼らが目当てで観ていた人は、途中間延びして大変だったようだ。男性司会者の紹介により、照明付きのスタジオでJTが1.「Something In The Way She Moves」を歌う。音響面のセッティングミスがあったようで、とても酷いサウンドで大変残念。コーラスの部分でキャロルがハーモニーを付ける。二人がこの曲を一緒に歌うケースは、今までなかったはずで、これは美味しい映像だ。キャロルの笑顔の魅力は、年老いても変わらないね!途中 Kathie Lee とHoda Kotbという二人の女性によるインタビュー(彼女達がしゃべりまくっていて面白くない)の後、再びスタジオで 2.「Will You Still Love Me Tommorow」を演奏する。音響面では、前の曲よりベターかなと思うが、それでもリー・スクラーのベースは全く聞こえない。ここではジェイムスがコーラス部分でハーモニーをつけている。

二人の映像ということで、期待が大きかった分、セッティングや構成に問題あり、がっかりの内容。

[2022年2月作成]


Late Show With David Letterman 2010 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar
Carole King : Vocal, Piano (1), Tamborine (2)
Sid McGinnis (Probably) : E. Guitar
Felicia Collins : E. Guitar
Paul Shaffer : Keyboards
Lee Sklar : Bass
Anton Fig (Probably): Drums
Bruce Kapler : Sax
Al Cheznovitz : Trumpet
Tom Malone : Trombone


1. (You Make Feel Like A) Natural Woman [Gerry Goffin, Carole King, Jerry Wexler]
2. How Sweet it Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

David Letterman : Host

放送: 2010年1月20日 New York


夜11時30分(東部時間)から始まるCBSテレビの「Late Show With David Letterman」に出演。二人は番組の最後に登場してCBSオーケストラをバックに1. 2.をメドレー歌う。時間の関係で止むを得なかったと思われるが、各曲の演奏時間が短いので物足りない。それでも同じ日の「Today」よりも音は良く、見所いっぱいの映像だ。1.「(You Make Me Like A) Natural Woman」は、昔二人が一緒に演奏していた頃の共演の音源はないので、今回JTがつけるギターとハーモニー・ボーカルは初めての共演となる。2.「How Sweet it Is (To Be Loved By You) 」では、キャロルはピアノをポール・シェファーに任せ、タンブリンを叩きながらバックボーカルを担当する。この曲は、通常コンサート終盤の盛り上がった所で演奏するので、今回のようなスタジオでの短い演奏時間では、不完全燃焼この上もないのであるが、エンディングでキャロルがソロで歌うシーンを観ただけで、すべてを許したくなる。

この映像では、バックバンドの姿はほとんど映らないが、上記の番組のレギュラー・メンバーで間違いないと思う。唯一異なるのは、最後のシーンでリー・スクラーの髭面が写ることで、この曲の時だけウィル・リーに代わってベースを弾いたようだ。

もっとじっくり演奏してくれればよかったの
に!


 
 
 
82nd Academy Awards 2010 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. In My Life [John Lennon, Paul McCartney]


収録: 2010年3月7日 Kodak Theatre, Hollywood, Los Angeles



第82回アカデミー賞は、ジェイムス・キャメロン監督とキャスリン・ビグロー監督の元夫婦対決となったが、後者の「ハートロッカー」が女性監督として初の作品賞をはじめ多くの賞を獲得した。「アバター」は興行的に大成功しているし、アメリカ人にとって、より切実な問題を取り扱っている作品のほうが評価される点では妥当な線だろう。その他サンドラ・ブロック初の主演女優賞などの話題もあった。

JTは、その年に亡くなった映画関係者を偲ぶコーナーに、サプライズで登場した。デミー・ムーアのスピーチの後に、ギターを抱えたJTが登場、ビートルズの「In My Life」を歌う。演奏中に故人のポートレイトと代表作の断片がスクリーンに映し出される。ジェニファー・ジョーンズ、マイケル・ジャクソンといった俳優や監督の他に、プロデューサー、脚本家、カメラマン等の裏方の人達も対象となっているところは、いかにもアメリカらしい。後日、一部の人々がファラ・フォーセットがここに含まれなかった事で不満を述べたという。彼女は主にテレビ番組で活躍したために、対象外になったものと思われるが、このコーナーについては、このようなクレームが毎年出るらしい。

JTはギター1本の弾き語りで、曲の雰囲気を再現している。歌詞については「Rubber Soul」に収められた原曲と異なる部分がある。


Song To Soul 2010 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar
Carole King : Vocal, Piano
Andrea Zoon : Violin
Larry Goldings (Probably) : Keyboards
Danny Kootch : E. Guitar
Lee Sklar : Bass
Russ Kunkel : Drums

1. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King ]

放送: 2010年3月17日 BS-TBS


「Song To Soul」は、BS-TBSが毎週水曜日午後11時放送の東西の名曲を特集する番組だ。2010年3月17日の放送では、「You've Got A Friend」が取り上げられ、そこにはJTとキャロル・キングのインタビュー、2007年トルバトゥ−ルにおける同曲の演奏シーン(断片 2010年5月発売予定のDVD映像 E15のものと思われる)の他、リユオンツアーのために3月に行ったリハーサルの模様を観ることができた。スタジオはリラックスした雰囲気で、1.「Up On The Roof」を二人で交互に歌う。バックバンドのアレンジは、JTがいつも演奏しているものに近いが、キャロルが歌う部分ではキーを変えるので、少し違和感がある。エンディングで聴かれる二人のハーモニー・ボーカルが感動的だ。コーラス隊でアーノルド・マックラーとケイト・マーコウィッツの姿も見える。キーボード奏者はアップの映像がないので誰か判らないが、恐らくラリー・ゴールディングだろう


 
Ellen Show 2010 (映像) 
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar
Carole King : Vocal, Piano
Lee Sklar : Bass
Russ Kunkel : Conga

1. You've Got A Friend [Carole King]

収録: 2010年5月18日 Carifornia


エレン・デジェネレス(1958- )は、コメディアン、女優、そしてトークショーのホストとしてアメリカでは大変な人気がある人だ。最初はスタンドアップ・コメディーと呼ばれる舞台上のコメディー・トークで売り出し、1990年代には彼女は何本かの映画に主演したが、成功したのは「Ellen Show」というコメディーTVシリーズだった。2003年以降続いているトークショウの司会で頑張っている。

上記の紹介は、JTが2007年11月15日に出演した映像の記事で書いたもの。2010年のJTは、Troubadour Reunion Tourの宣伝のため、キャロル・キングと出演し、二人で 1.「You've Got A Friend」を歌った。キャロルのピアノの音が大きくフィチャーされ、ラス・カンケルがコンガをたたいている。二人は交互にリードを取り、キャロルがかなりメロディーを崩して歌う部分もある。曲が終わった後、エレンがインタビューするが、彼女は「二人の音楽を聴いて育った」と言い、番組で二人と一緒に話をすることに感動している様子が見て取れる。



  
 Today Show 2010 (映像) 
 
James Taylor : Vocal (1,2), Back Vocal (3), A. Guitar
Carole King : Vocal (1,3), Piano
Robbie Kondor : Keyboards
Danny Kootch : E. Guitar
Lee Sklar : Bass
Russ Kunkel : Drums
Arnol McCuller: Back Vocal (3)
Kate Markowitz: Back Vocal (3)
Andrea Zoon : Violin (1), Back Vocal (3)

1. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
2. Your Smiling Face
3. Where You Lead [Carole King, Toni Stern]

収録: 2010年6月18日 Rokefeller Center Plaza, New York

 

NBC放送の朝7時の番組「Today」のコンサート・シリーズへの出演で、ミッドタウン5番街にあるロックフェラー・センタの広場というオープン・スペースでの収録。当時JTとキャロルは東海岸のコンサート・ツアーの最中で、6月15〜16日のニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンと、6月19〜20日のマサチューセッツ州ボストンのTD ガーデンとの合間の出演。

1. 「Up On The Roof」は、キャロルとJTが交互に歌うが、変わる際にキーが変わるので、落ち着きがない感じだ。それでもエンディングでは、JTがメロディーを歌い、キャロルはハーモニーを付け感動的。2.「Your Smiling Face」でキャロルは楽しそうにピアノを弾いている。3.「Where You Lead」は、「Tapestry」1971 C3の頃は、ウーマンリブの風潮の中で「貴方について行くわ」という内容の歌詞が男性に従属的であるという批判を受けたが、その後世の中が変わって、男女同権が普通になった現在において再評価された曲だ。まさに対等の立場から自信を持って歌っている感じだ。「If you live in New York City」という歌詞のくだりではオーディエンスから歓声が起きる。

生き生きとしたキャロルの笑顔が誠に印象的な印象だ。

New Yorker Festival 2010 (映像)  
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Secret O' Life
2. Carolina In My Mind
3. Never Die Young

放送: 2010年10月1日 SIR Stage 37, New York
 

ニューヨーカー・フェスティバルは、文芸誌「ニューヨーカー」が、毎年開催するコンサート・作家などの対談・講演などからなるカルチャー・イベント。2010年のコンサートは、ヨーヨー・マやジェイムス・テイラーが出演した。会場はマンハッタンのミッドウェストにある、SIR Stage 37というイベントスペース。JTは壇上で高椅子に座って弾き語る。 彼は、1.Secret O' Life」を「日曜日の朝二日酔いで家の階段に座ってきたときに、一気に浮かんできたもので、後から手は加えていない」と紹介している。2.「Carolina In My Mind」では、一度歌い終わった後に「With a holy host of others standing 'round me」の一節をもう一度繰り返し、これはザ・ビートルズのことを示唆しているという。3.「Never Die Young」は、いつもより少しゆっくりめの演奏。


John Lennon Legacy 2010 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. In My Life [Lennon, McCartney]

放送: 2010年12月4日 BBC New Channel


1980年12月8日、ジョン・レノンがミューヨークのダコタ・アパートの前で、マーク・デビッド・チャップマンに射殺されてから30年が経った。BBCニュース・チャンネルは12月4日に「John Lennon Legacy」という25分の番組を放送し、そのなかでヨーコ・オノ、ショーン・レノン、ボノ、JT等のインタビューが挿入された。JTのインタビューは、彼がアルバム「Covers」を録音したマサチューセッツ州ワシントンにある「The Barn」の屋内で行われた。放送に使われた映像は、撮影されたインタビューのほんの一部だったが、BBC America が上記の放送とは別に23分におよぶインタビューの全てを公開したので、その全てを観ることができた。JTはアップル・レコードと契約したミュージシャンとして、当時のビートルズと接した体験や、彼らが現代文化に及ぼした影響、そしてジョンが解散後のソロ活動で成し遂げたこと。そして彼の死後もそれらが不滅であることを語っている。

その中でJTは、犯行の前日、72丁目の地下鉄駅でチャップマンから話しかけられたことにつき、以下の通り語っている「The guy had sort of pinned me to the wall and was glistening with maniacal sweat and talking some freak speak about what he was going to do and his stuff with how John was interested, and he was going to get in touch with John Lennon」。 また犯行時、JTはダコタ・アパートのすぐ近くに住んでいて、ピーター・アッシャーの奥さんと電話で話している最中に5発の銃声を聞き、その20分後にジョンが撃たれた事を知ったと語っている。

番組の最後に、JTが弾き語りで 1.「In My Life」を歌う。歌の最中に彼のコメントが重なるが、演奏自体は最後まで続けられる。どちらかと言えば、ポール・マッカ-トニーと親しいとされるJTがジョン・レノンについて語り、彼に捧げて歌った映像で、淡々とした話の中から、ジョンに対する尊敬の念を感じ取ることができる。


33rd Kennedy Center Honors 2010 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar
Mavis Staples : Vocal
Unknown : Back Band


1. Let It Be [Lennon, McCartney]
2. Hey Jude (Ending Chorus Only) [Lennon, McCartney]

収録: 2010年12月5日 Kennedy Center Opera House, Washington DC
放送: 2010年12月28日 CBS TV


The J. F. Knnedy Center Of Performing Artsは1971年に設立され、ワシントンを本拠地としてあらゆるジャンルのパフォーミング・アーツの振興を目的として活動している。1978年より毎年12月に「The Kennedy Center Honors」として、舞台芸術のアーティスト5〜6人を表彰するセレモニーを実施。近年は派手で大掛かりなショーになり、2時間のスペシャル番組が放送されている。2010年はポール・マッカートニー、カントリー音楽のマール・ハガード、テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー等が表彰され、12月5日ケネディ・センター・オペラ・ホウスで式典が開催、その模様は12月28日にCBSが全国放送した。実は、ケネディ・センターは、2002年にポールを表彰しようとしたが、彼は事情(親類の結婚式への出席)があって、どうしても式典に出席できないと断り、その際はポール・サイモンが表彰を受けた経緯がある。ちなみにJTはそのセレモニーに登場して歌っている(「2000年代の部」参照)。従って今回の表彰は8年ぶりということになる。

ポールの音楽を称えるためのショウが始まり、まずノーダウトが登場。グウェン・ステファニーが「Hello Goodbye」と「Penny Lane」をメドレーで元気に歌う。次にフー・ファイターズのデイブ・グロールとノラ・ジョーンズという豪華な顔合わせで「Maybe I'm Amazed」が歌われる。そしてエアロスミスのスティーブン・タイラーが出てきて、「She Came Through The Bathroom Window」、「Golden Slumber」、「Carry That Weight」、「The End」からなる「Abbey Road Medley」を歌う。この頃心身の不調が伝えられ、エアロスミスから追放されるのではと噂されていた彼が、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる。続いてJTが登場、弾き語りで「Let It Be」を歌う。そして、バンドがフィルインすると同時に、彼の紹介によりメイビス・ステイプルが出てきて残りを歌う。彼女は1939年生まれで、ザ・ステイプル・シンガーズのリードボーカリストとして活躍した他にソロアルバムも発表、ソウル、ゴスペルの分野で大御所的な存在となっている人で、「Let It Be」は、彼女にとってぴったりの曲だ。JTはその間、ギター演奏に徹し、最後の部分でコーラスに加わる。客席のショットでダイアナ・ロスの姿が見える。そしてメドレーで「Hey Jude」のエンディング・コーラスに移る。大編成の合唱隊をバックに、メイビスとスティーブンがエキサイティングな掛け合いを披露し、ゲスト全員が登場しフィナーレとなる。立ち上がったオーディエンスが振るペンライトの洪水のなかで繰り広げられるパフォーマンスは高揚感いっぱいで、仕組まれたものではあるが何度観ても感動的。ここでのJTはゲストの一人として振る舞っており、目立つパフォーマンスはない。そして2階の貴賓席からそれらの模様を見つめるポールの横には、オバマ大統領夫妻とオプラ・ウィンフリー、そして湾岸戦争で活躍したパウエル元統合参謀本部議長の姿も見える。ポールの後ろに座っている女性は、彼の恋人のナンシー・シェベル(ニューヨークの公共交通を管理する都市交通局の幹部)で、その後2011年5月に二人は婚約を発表した。

JTは、スティーブン・タイラーとメイビス・ステイプルの間に挟まれて、損な役回りを演じているような気もするが、それでもここでの歌い手は彼しか考えられないと納得できる内容であり、アメリカ音楽界におけるJTの存在感の重さを感じさせるものだ。


Mr. Sunshine 2011 (映像)

James Taylor : Vocal, A. Guitar
Allison Janney : Vocal
Unknown : Keyboards

1. A Song For You [Leon Russell]

放送: 2011年3月16日 ABC TV


米ABC放送の 「Mr. Sunshine」は、2011年2月から始まった番組で、男女6人組のシチュエーション・コメディー「Friends」で人気を博したマシュー・ペリーがサンシャイン・センターというスポーツ・アリーナのマネージャーの役を演じている。そしてパワフルで魅力的であるが、自分勝手で気まぐれなボス(アリーナのオーナー)の役として、「The West Wing」でホワイトハウスのスタッフを演じ高い評価を得たアリソン・ジェニーが共演している。3月16日に放送されたシリーズ1の第6回目にJTがゲスト出演、その一部を観ることができた。

クリスタル(アリソン・ジェニー)は、過去6回結婚・離婚を経験しており、ビリー(JT)は前夫の一人。クリスタルは、部下のベン(マシュー・ペリー)と一緒に、小さなクラブで彼のステージを観る。彼女は元夫との再会に躊躇するが、ベンに励まされてステージに上がり 1.「A Song For You」を歌いだす。ビリーがギターと歌で合わせ、二人による心が通ったデュエットになる。曲が終わってオーディエンスの喝采を受けた後、二人はキスを交わすが、その後の会話で、ビリーが「君との別れが人生最良の出来事だった」と話し出してから、突如険悪な雰囲気になる。ビリーが「僕のワイフだよ」といって紹介し、遠くから手を振る金髪の女性は、JTの本当の奥さんのキムと思われる。腹を立てて席を立つクリスタルを追いかけるベンが、去り際にビリーに対し「Do you know any Cat Stevens ?」とささやくオチが最高。これまでのJTのテレビ出演と異なり、本人でない役を演じセリフを喋っているところがユニーク。番組全編を観ていないので、その他の場面にも出ているか不明であるが、ソフトで丁寧な感じで辛辣な事を言う、JT独特の喋りの持ち味がしっかり生かされており、マシュー・ペリーのギャグに対する反応もキュートだ。

「A Song For You」はレオン・ラッセルが1970年に発表した同名のソロアルバムが初出で、1972年のカーペンターズの同名のアルバムに収められたバージョンが決定版。しかし、これだけの名曲でありながら、シングルカットされなかったのは不思議。その他アンディ・ウィリアムスやダスティー・スプリングフィールド等のポピュラー歌手、アニタ・オディ、ペギー・リー、カーメン・マクレー等のジャズ歌手、テンプテイションズ、ドニーハザウェイ等のソウル歌手といったように、様々な分野のアーティストがカバーしている。ここではギターとエレキピアノのみのシンプルな伴奏で、二人はメロディーとテンポをかなり崩して歌っている。アリソン・ジェニーのインタビューによると、音域が難しく何度も撮り直したとのこと。


AMC Awards 2011 (映像)

James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar
Zac Brown : Vocal, Electric Guitar
Coy Bowles : Electric Guitar
Clay Cook : Piano
Jimmy DeMartini : Fiddle
John Driskell Hopkins : Bass
Chris Fryar : Drums

1. Colder Weather [Zac Brown, Coy Bowles, Wyatt Durrette, Levi Lowrey]
2. Sweet Baby James

撮影: 2011年4月3日 MGM Grand Garden Arena, Las Vegas


AMC (Academy Of Country Music)は1964年に設立。同協会による授賞式は1966年に始まり、1972年からテレビで放送されるようになり、2000年代以降は大掛かりなものになった。2011年のセレモニーは4月3日 ラスヴェガスで行われ、その模様は全米にテレビ放送された。そこで行われたパフォーマンスにJTがゲスト出演している。

ザック・ブラウン(1978- )はジョージア州生まれで、アトランタの北東にある町ダロネガ(Dahlonega)を本拠地として、2002年にザック・ブラウン・バンドを結成。多くのコンサート出演と自主レーベルからのレコード発売により活動を続け、2008年カントリー・チャートにおいてアルバム、シングルが大ヒットし、全国規模での成功を収めた。「Colder Weather」は、2010年のアルバム「You Get What You Give」からシングルカットされ、本イベント開催当時にヒット中(カントリーチャート1位、全米29位)だった曲。1970年代のカントリーロックの香りに満ちていて、昔のJTが歌っていたとしてもおかしくない感じだ。JTはカウボーイ・ハットを被り、高椅子に腰掛けて出演。最初はザックが歌い、コーラス部分でJTとバンドが加わる。セカンド・ヴァースはJTがリードボーカルを担当し、ブリッジからザックのボーカルに戻って大いに盛り上がる。エンディングでは、ザックのボーカルの背後でJTのアコギが前面に出てくる。そしてメドレーで、JTが突然 2.「Sweet Baby James」を歌い出し、驚いたオーディエンスは大喜び。そこに演奏とコーラスでバンドが加わり、ザックがソロをとるシーンもある。長年一緒に演奏しているバンドらしく、演奏やコーラスに強い連帯感があり、それが観る者(聴く者)に感動を与えてくれるパフォーマンスだ。曲が終わった後、拍手を贈るオーディエンスが映るが、そこにはテイラー・スウィフト、キース・アーバン、ニコール・キッドマン夫妻の姿が見えた。

2.「Sweet Baby James」の演奏はちょっとだけど、JTが参加者、オーディエンス全員から深い愛情と尊敬の念をもって迎えられていることがよくわかる映像だ。カントリー音楽界は保守的な風潮が強く、民主党を支持するJTは難しい立場と思っていたが、あまり関係ないのかな?



September 11 Ceremony 2011 (映像)
 
James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar

1. You Can Close Your Eyes

撮影: 2011年9月11日 "Ground Zero", New York


10年前の2001年9月11日の事は今でもはっきり覚えている。あの時私はヨーロッパに赴任したばかりで、引継ぎの挨拶回りから帰ってきた時に事件の発生を知らされた。そしてその事件は、その後の現地における仕事にも大きな影響を与えることになったのだ。2011年9月11日、各地でセレモニーが開催され、ニューヨークの現場「グラウンド・ゼロ」では、オバマ大統領、ブッシュ前大統領を迎えて行われた。無用な摩擦を避けるために宗教的な要素は除かれて、黙祷や犠牲者の名前の読み上げなどに重点を置いた内容だったという。その中で、ヨーヨー・マ、ポール・サイモン、そしてJTが式場で演奏した。

ヨーヨ・マはチェロでJ. S. バッハの「Sarabande」を独奏。ポール・サイモンは当初予定では「Bridge Over Troubled Water (明日に架ける橋)」を演る予定だったというが、実際は「Sound Of Silence」をつぶやくように歌った。そのいつもと異なる押し殺した感情を籠めた歌い方は、歌詞の意味と合わさって多くの人々に感銘を与えた。JTは、1.「You Can Close Your Eyes」を歌ったが、犠牲者の霊や遺族の心を慰めるような、淡々とした歌唱で、それはそれで印象的なものだった。

オサマ・ビン・ラディンの死亡や中近東の一部の国における政治変革等、近年もいろいろな動きがあるけど、宗教や民族は異なっても、すべての人々が互いに相手を尊重し合っていける平和な世の中になるよう、皆で努力するしかないですね。


Target’s Semi-Annual Managers Meeting 2011 (映像)
 
Tony Bennett : Vocal
James Taylor : Voca
Unknown : E. Guitar
Unknown : Piano
Unknown : Bass
Unknown : Drums

1. Put On A Happy Face [Charles Strouse, Lee Adams]

撮影: 2011年9月14日 Target Center, Minneapolis

 
Target Corporatinはミネソタ州ミネアポリスに本拠地を置く小売業者で、「Target」という名前のディスカウント・ショップは、ウォルマートに継ぐ全米2位の規模を誇る。ターゲットセンターは同社がスポンサーとなった地元のイベント会場で、収容人員は20,500人。9月14日に全米のマネジャーを集めたセミ・アニュアル・ミーティングが同会場で開催され、そこにゲストとして、ウィロー・スミス、テイラー・スウィフト、アリソン・クラウス、ビヨンセ・ノウルズ、そしてJTとトニー・ベネットが出演した。ターゲットのお店でのCDの売り上げがかなりの影響力があることを示しており、上記のアーティストの一部は同社のコマーシャルに出演している。

トニー・ベネットは9月11日に「Duets II」を発売したばかりで、その宣伝も兼ねて出演したんじゃないかな?といっても歌った曲は2006年発売の前作「Duets」に収録されていたJTとのデュエット 1.「Put On A Happy Face」(曲についての詳細はC84をご参照ください)だったりするのが面白いね。携帯で録られた映像なので質としては良くないが、会場の雰囲気は分るし、音源としてそこそこ聴くことができる。映像はイントロが終わったところから始まる点が残念だったが、トニーとJTが楽しそうに歌っている様が観れるだけでもうれしい。間奏部分ではJTがスキャット・ボーカルを聞かせてくれる。



Baron Fund's 20th Annual Investment Conference 2011 (映像) 
  James Taylor: Vocal, Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Arnold McCuller, Kim Taylor : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Fiddle (2,3,6,10)
Owen Young : Cello (4,5,6,7,8,9)

1. Secret O' Life
2. Copperline
3. Carolina In My Mind
4. Only One
5. Shower The People
6. Sweet Baby James
7. You've Got A Friend [Carole King]
8. Something In The Way She Moves
9. Fire And Rain
10. Mexico
11. How Sweeet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
12. You Can Close Your Eyes

撮影: 2011年11月4日 Metropolitan Opera House, Lincoln Center, New York

注: 曲順は不明


Ron Baronが1982年に設立したBaron Capital Group Inc.は、70万人の出資者による180億ドルの巨大ファンドを運用。彼等が投資家を招いて開催する年次総会は、超有名なミュージシャンが予告なしに出演するのが話題で、過去にはダイアナ・ロス、エルトン・ジョン、ジョン・メレンキャンプ、ライオネル・リッチー、シェリル・クロウ、ジョン・ボンジョビ、ポール・サイモン、スティービー・ワンダー等が姿を見せている。2011年の会議は、ニューヨークのリンカーン・センターにあるメトロポリタン・オペラ・ハウスで開催され、JTとスティングが出演した。

1.「Secret O' Life」は、ラリー・ゴールディングス(ピアノ)とJTの二人による演奏。オーディエンスによる撮影はステージ近くからで、手振れはあるがクローズアップで見苦しさはなく、音もしっかり捉えられている。2.「Copperline」は、アンドレア・ゾ−ンのバイオリンが加わり、JTは1.と同じく椅子に腰掛けながら歌う。少人数の演奏なので、バイオリンが奏でる音の艶やかさが際立っている。4.から9.までは、アーノルド・マックラーと奥さんのキム・テイラーが加わるが、演奏の一部のみ観ることができた。ここでチェロを弾いている人は、ボストン交響楽団のソリストでJTのコンサートで客演することが多いオーウェン・ヤング。10.「Mexico」では、アーノルドはカウベルを叩き、アンドレアは間奏でバイオリンを弾く。ドラムス、ベース、エレキギターがない伴奏は、いつもと全く異なる雰囲気で、室内楽的な味わいがある。 それは 11.「How Sweeet It Is」でも同じで、ラリーのピアノが頑張り、JTのギターもよく聴こえる。ここからJTは立ち上がって歌い、皆の顔からは笑みがこぼれるリラックスした演奏だ。アンコールでの12.「You Can Close Your Eyes」は、JTの横に立つキムが彼を見つめながら歌う様がとても印象的。

当日の演奏曲目は不明であるが、イベントへのゲスト出演ということで、ミニコンサートだったと思われる。実際の曲順はわからないが、JTやバンドメンバーの立ち居振る舞いからして、仮に上記の順番とした。

小編成のバンドによる、プライベート・コンサートの雰囲気がとても面白い映像。


 
In Performance At The White House Country 2011 (映像)  
 
James Taylor : A. Guitar, Vocal, Cameo Vocal (3)
Arnold McCullar, Andres Zonn, Kim Taylor : Back Vocal (1,2)
Kris Kristofferson : A. Guita, Vocal (3)
Band Perry, Alison Krauss, Lyle Lovett, Lauren Alaina, Dierks Bentley, Mickey, Darius Rucker : Cameo Vocal (3)
Unkonwn : Back Band (E. Guitar, A. Guitar, Steel Guitar, Fiddle, Keyboards, Bass, Drums)

1. Riding On The Railroad
2. Whichita Lineman [Jim Webb]
3. Me And Bobby McGee [Fred Foster, Kris Kristofferson]


撮影: 2011年11月21日 White House, East Room, Washington D.C.
放送: 2011年11月23日 PBS


ホワイトハウスがアメリカ音楽のセレブレイションとして行うイベントで、過去にモータウン、ジャズ、ブロードウェイを開催、今回はカントリー特集だった。カントリー音楽界は、アメリカ中西部、南部で人気があり、保守的な傾向が強く共和党寄り、あるいは民主党を指示しないアーティストが多いので、メインストリームではなく、カントリー以外の音楽もカバーするリベラルな人達が招かれた。11月21日のイベントはホワイトハウスのホームページからストリームでネット放映され、その後23日にPBSネットワークでテレビ放送された。

ホワイトハウスのイーストルームに設営されたステージで、オバマ大統領夫妻をはじめとするオーディエンスを前にアーティストが各1〜2曲ずつ歌う。バックバンドは、ナッシュビルのベテランミュージシャン達と思われる。JTは愛用のカウボーイハットを被って登場、1.「Riding On The Railroad」を歌う。途中でアーノルド、アンドレア、奥様のキム(ケイトが出てこないけど、どうしちゃったんだろう?)がステージに上がりバックコーラスを歌う。2.「Whichita Lineman」は、この曲もJTがステージに登場するシーンから始まるので、これらの曲は連続して演奏されたものではないようだ。いずれもJTのレパートリーの中ではカントリー色の強い曲。

フィナーレは、クリス・クリストファーソンの3.「Me And Bobby McGee」だ。この曲は1969年ロジャー・ミラーの歌が初出で、本人は1971年のアルバムに収録、一般的には一時恋人だったこともあるジャニス・ジョップリンの歌で全米1位を獲得した。自由と愛の狭間に悩む男女の旅を描いたもので、クリスはフェデリコ・フェリーニ監督のイタリア映画「道」 にヒントを得たと言っており、その後製作されたロードムービーのテーマ曲にもなった。最初はクリスが歌い、途中でアーティスト全員が登場(JTはキムと手をつないでステージに上がる)、ファースト・ヴァースの終わりでバンド・ペリー(男性2人、女1人の兄弟による若手バンド)が加わる。コーラスは全員の合唱から、アリソン・クラウス→ ライル・ラボット(1957- 広い音楽性を誇るシンガー・ソング・ライター)→ ロウレン・アライナ(1994- スター発掘のテレビ番組で優勝してデビューした若手歌手)→ ディレクス・ベントリー(1975- グラミー賞に多数ノミネートされた中堅シンガー)の順で一節ずつ歌う。セカンド・ヴァースは、クリスの後、ミッキー(近くレコードデビュー予定の新人歌手)→ ライル・ラボット→ バンド・ペリーが歌い継ぎ、2回目のコーラスでは、全員の合唱の後、ロウレン・アライナ→ ダリウス・ルッカー(1966- Hootie & The Blowfishのメンバーからソロに転向したアーティスト)→JT → ディレクス・ベントリーと回って終わる。JTは、「Buddy, that was good enough for me」というフレーズを楽しそうに歌っている。

他のパフォーマンスでは、アリソン・クラウスの「When You Say Nothing At All」(キース・ホワイトリー 1988年のヒットで、彼女が1995年にリバイバル・ヒットさせた曲)や、ライル・ラボットとアーノルド・マックラーのデュエットによるウィリー・ネルソンの「Funny How Time Slip Away」が印象的。オバマ大統領夫妻を前にライル・ラボットと互角に歌うアーノルドが大変格好良く、今回のパフォーマンスで大いに売り出したと思う。そういえば彼は、2012年は自己の音楽活動を重視するためJTのコンサートツアーには参加しないそうで、自己のキャリアの勝負を賭けているようだ。


Speak Now Tour 2011 [With Taylor Swift] (映像)  
  Taylor Swift : A. Guitar, Vocal
James Taylor : A. Guitar, Vocal (1)
Unknown : Back Band (A. Guitar, E. Guitar, Mandolin, Keyboards, Bass, Drums, Back Voca)l

1. Fire And Rain
2. Fifteen [Taylor Swift]
 
撮影: 2011年11月22日 Madison Square Garden, New York


テイラー・スウィフト(1989- )は、2000年代に最も成功した若手女性シンガーだ。彼女の3枚目のアルバム「Speak Now」のためのプロモーション・ツアーは2011年2月11日のシンガポールから始まり、2月13日には大阪、16, 17日は東京と日本公演もあった。ツアーはアジア、ヨーロッパ、アメリカと続き、2011年は11月22日のニューヨーク、マディソン・スクウェア・ガーデンがファイナルとなった。ステージ中央にセットされたソファに座った白いドレス姿のテイラー嬢は、母親との会話で、自分が大好きな歌はジェイムス・テイラーの「Fire And Rain」だと言ったら、彼女から「あなたの名前は彼にちなんでつけたのよ!」と言われて初めて知ったというエピソードを紹介。そして「Magical, magical thing happen」という言葉の後に、ジェイムス・テイラーがサプライズ・ゲストとして大歓声に迎えられてステージに登場、ソファに座った二人は 1.「Fire And Rain」を歌う。最初はJT、次にテイラー嬢が歌い、コーラスではJTがハモリを入れる、そして後半のヴァースは交互に歌う。歌い終わった後のテイラー嬢の感極まった表情・仕草がいかにも本音っぽくて大変印象的。その後でバックバンドがソファの背後に集まり、2009年9月に発売され全米23位を記録したテイラー嬢のヒット曲(アルバム「Fearless」 2008 に収録) 2. 「Fifteen」を歌う。オーディエンスの大合唱の中、JTは大人しくギターを弾いている。そして大盛況のなか、フィナーレでJTも登場、テイラー嬢、バンドの連中と一緒にお礼の挨拶をする。

複数のオーディエンスが撮影したいろんな映像で観ることができた。


 
Comfort And Joy - Greeting From JT 2011 (映像)  
 
James Taylor : A. Guitar

1. God Rest Ye Merry Gentlemen [Traditional]

インターネット放映: 2011年12月
 

JTがクリスマスの挨拶としてリリースしたインターネット映像。1.「God Rest Ye Merry Gentlemen」は、1988年に出版された作者不明のクリスマスキャロルで、JTは、エオリアンモードによる旋律をギターのインストルメンタルにアレンジしている。ギターにはフィンガーボードの上、サウンドホールの中などいろんなアングルから撮影できるカメラが取り付けられ、JTの右手、左手の動きをつぶさに見ることができる。そして最後にJTが「Comfort And Joy, Merry Christmas」と言って終わる。

2011年、彼が自己のホームページ上で始めたギターレッスンの映像と同じセッティングで撮影されたものであるが、本映像はHPおよび一般には公開されず、JTが発信するニュースレターに添付されたリンクからのみという限定公開で観ることができた。

リンクは以下のとおりであるが、期間限定と思われるため、興味のある方はお早めにどうぞ。

http://www.youtube.com/watch?v=VB99GGAc5uU


 
34th Kennedy Center Honors 2011 (映像) 
 
[Piano Quintet]
Emannuel Ax : Piano
Jaine Laredo : Viola
Pamera Frank : Violin
Lynn Chang : Violin
Sharon Robinson : Cello

[Apparachian/Bluegrass]
Edgar Meyer : Bass
Stewart Duncan : Violin
Chris Thile : Mandolin

[Silk Road Ensembre]
Christina Pato : Gaita (Spanish Bagpipe)
Wu Tong : Sheng
Nicholas Cords : Violin
Colin Jacobsen : Violin
Eric Jacobsen : Cello
Jeffrey Beecher : Bass
Haruka Fujii : Percussion
Shane Shanahan : Percussion

[Finale]
James Taylor : Vocal, A. Guitar
Kim Taylor : Back Vocal
Joyce Garrett Youth Choir : Choir

John Williams : Conductor
Rob Mathes : Arranger
Stephen Colbert : Presentation

1. Piano Quintet in E-Flat Major, Op44: 1Allegro [Schumann]
2. Atta Boy [Duncan, Meyer, Thile]
3. Turceasca [Sapo Perapaskero[
4. Here Comes The Sun [George Harrison]

注: JTは1〜3は非参加

収録: 2011年12月4日 Kennedy Center Opera House, Washington DC
放送: 2011年12月27日 CBS TV

 

2011年の第34回 「The Kennedy Center Honors」は、チェロ奏者のヨーヨー・マ、ジャズ・サックス奏者のソニー・ロリンズ、ブロードウェイ歌手のバーバラ・クック、歌手のニール・ダイアモンド、女優のメリル・ストリーブが表彰され、12月4日ケネディ・センター・オペラ・ホウスで開催された式典にJTがゲスト出演、その模様は12月27日CBSテレビで放送された。

ヨーヨー・マへのトリビュートは、クラシックのジャンルを飛び越え、様々な音楽を融合させてきた彼の「音楽の橋渡し役」の側面に焦点をあて、「Yo-Yo Ma's Playground」というテーマで製作された。まず政治ネタを得意とするコメディアン、テレビ司会者、作家のスティーヴン・コルベールが、ユーモアたっぷりのプレゼンテーションを行う。彼は「Colbert Report」というバリバリの保守派の人物を演じて茶化すテレビ番組で人気がある。JTはその後2012年1月19日の同番組にサプライズ出演し、「Carolina In My Mind」をデュエットしている。彼の紹介によりヨーヨー・マのプロフィールをまとめた映像が流される。そこでは5歳の時にケネディ大統領の前でチェロを弾いたエピソードも紹介されている。そして、彼がゲストとして登場した子供番組「セサミ・ストリート」のマペット、エルモによるスピーチの後、クラシックのピアノ・カルテットによる 1.「ピアノ五重奏曲変ホ長調作品44」の第1楽章の演奏から始まる。これはシューマンが1842年に作曲し、彼の室内楽の最高傑作といわれる作品だ。演奏している 5人は、いずれもトップクラスの演奏家で、ヨーヨー・マとの馴染みが深い人達。ほぼ途切れなく、アパラチアン・ブルーグラスの部として、エドガー・メイヤー、スチュアート・ダンカン、クリス・タイルの3人による 2.「Atta Boy」に移る。これは2011年ヨーヨー・マ・前述の3人と共演したアルバム「The Goat Rodeo Sessions」に入っていた曲で、ここではチェロ抜きの演奏になっている。「マンドリンのパガニーニ」と言われるクリス・タイルのプレイが凄い。そういえば、彼はヨーヨー・マのアルバム「Songs Of Joy & Peace」 2008 C89にも参加していたね。次のシルクロード・アンサンブルは、ヨーヨー・マが1998年に立ち上げた「シルクロード・プロジェクト」 (シルクロードの民族音楽を発掘し、現代の音楽との融合によって、音の文化遺産を世界に発信するために設立) を母体とするグループ。東西の伝統的音楽と現代音楽との関りを探求する音楽家の集合体で、そのほとんどは、アメリカ・マサチューセッツにあるタングルウッド音楽センターでのワークショップに集まった人達という。彼らは、西洋クラシック音楽、東洋の民謡に加えて、オリジナル曲などを含む多彩な演奏活動を世界各地で行っている。「トゥルチェースカ」は、ジプシー音楽を連想させるエキゾチックな曲で、日本人メンバーの藤井はるかは世界的に有名な打楽器・マリンバ奏者。スペインのバグパイプ奏者、クリスティナ・パトゥ(「Songs Of Joy & Peace」にも参加していた)、シェン(邦楽における笙に相当)を吹く中国人ウー・トンなどのソロが素晴らしく、各ミュージシャンの名手ぶりが伝わる熱演。

ここで指揮者のジョン・ウィリアムスが登場し、前述の3者を融合したフィナーレになる。この音楽をアレンジしたロブ・マテスは、アレンジャー、プロデューサとして売れっ子の人で、セリーヌ・ディオン、クリス・ボッティ、ルチアーノ・パヴァロッティ、カーリー・サイモン、マライア・キャリー、ロッド・ステュアート、アヴリル・ラヴィーン、スティング等多くの作品を手掛けており、本セレモニーの音楽監督でもある。今回の作業ではプロデューサーから予算をもらい、ニューヨーク交響楽団のメンバーの協力を得てデモテープを作成し、各アーティストに送ったという。そして曲の途中で、大声援のなかJTが登場し、4.「Here Comes The Sun」を歌い始めることで、それまでの演奏が同曲の変奏曲であったことがわかる。奏でられる音の厚み・豊かさは素晴らしく、凄い高揚感でJTはいつになくエモーショナルな歌い回しをみせる。「Songs Of Joy & Peace」でヨーヨー・マが弾いていたチェロのパートは、エリック・ヤコブセンとシャロン・ロビンソンが半分づつ弾いており、その音色は感動的。途中3人のバックコーラス隊が映るが、手前の女性はJTの奥様キムで、他の男女二人は本イベントのハウスバンドの人達であるが、誰かは分からない。ブリッジの「Sun, sun, sun」というパートでは、若者によるコーラス隊が姿を現わし、ゴスペル風に盛り上がる。彼らは地元のコーラス隊で、ジョイス・ギャレットの指導のもと、多くの賞を獲得した合唱団だそうだ。時間制限のためか少し物足りない感じで終わってしまうが、本当に贅沢で、人々の心がこもったパフォーマンスとなった。曲が終わった後にちらっと写る男性は、前述のステファン・コルベールだ。演奏中に、他のアーティストのトリビュートで登場したアン・ハサウェイ、ライオネル・リッチー、ハービー・ハンコック等の客席の姿がちらっと映し出される。

当のヨーヨー・マ本人は、オバマ大統領夫妻、他のゲスト等と一緒に2階の主賓席で鑑賞。その豊かな反応の動作が気取らない彼らしく、印象的。



 
Colbert Report 2012 (映像) 
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar
Stephen Colbert : Vocal


1. Carolina In My Mind

放送: 2012年1月19日 Seison 7 Episode 171

  

スティーヴン・コルベール(1964-  、ステファン、コルベア、コルベルトとも呼ばれる)は、コメディアン、俳優、作家で、2005年から続くテレビ番組「Colbert Report」は、番組中の自分自身を共和党の絶対信奉者、ガチガチの保守派の人物に設定して演じることで、逆説的に彼らの主張のおかしさを浮き彫りにして皮肉る事を売り物にしている。そのスタイルは筋金入りで、2006年ホワイトハウスで行われた記者クラブの晩餐会に招待された際、そこでジョ−ジ・ブッシュ大統領(当時)の目の前で16分にわたるスピーチを行い、政権およびマスメディアを強烈に皮肉ったことで大いに話題となった。大統領が出席する晩餐会のプレゼンテイターとして彼を招待した人が血迷ったのか、意図的だったのか、または自分達(保守派)に対する皮肉を面白いと思って笑い飛ばす度量の広さなのか、とにかくアメリカという国は面白い。民主党と自民党という互いの主張の相違点が不鮮明で、自分の党が政権を取ることしか考えていないような日本の政治では全く考えられない世界がアメリカにはあり、だからこそ彼のような政治ネタのパロディーが受けるのだろう。それにしても、彼のプレゼンテーション・スキルは素晴らしく、そのレベルの高さがいかにも本物っぽいパロディーを生み出しているのだ。

2011年から始まった共和党の大統領予備選挙に名乗りを上げた、ジョージア州アトランタ出身の政治家、実業家、コラムニストのハーマン・ケイン(1945- )は、当初保守的な主張が支持を集めて注目を浴びたが、後にプライベートの中傷報道が相次ぎ、2011年12月に指名争いから撤退した。その後ステファン・コルベールは、2012年1月21日に行われるサウスカロライナ州の共和党大統領候補指名の予備選挙のため、同州の人達にケイン氏への投票を呼びかけたキャンペーンを行った。そこには、ケイン氏本人がコルベールと一緒に同州での集会に参加し、その結果有権者の1%に相当する6324人が実際の予備選挙の動向に関係がなくなった同氏に投票したという。撤退後とはいえ、実際の候補者だった人を魚にして茶化すのはともかく、ケイン氏本人がその企画に乗るというのは、日本人の感覚では考えられない凄い事だ。真意は不明なんだけど、政策面での争いとは異なる次元の中傷合戦で嫌気がさしたケイン氏が、皮肉をこめて関与したのかな?

このようなケイン氏のためにキャンペーンの中、1月19日放送の「Colbert Report」で、コルベールがカロライナについて言及し、「Recently some folks ask about, 'Stephen, why haven't you gone down to South Carolina sooner' , 'Well, someway I never left, you see, I've gone to Carolina in my mind, right James ?」と言ったところでアコギのイントロが始まり、カメラがコルベールの右に座ってギターを弾くJTを映し出し、二人が 1.「Carolina In My Mind」を歌う。コーラス部分でJTはハーモニーを担当。ファースト・ヴァースはJTのリード、セカンドはコルベールがソロを取る。サードはジェイムスでブリッジはコルベールが歌う。歌っている間に挿入されるコルベールとケインの映像には、キャンペーンの模様、ピザ(ケイン氏はピザチェーンのオーナー)、保守派の銃への愛着、信仰心の厚さ、南部カルチャーのパロディーが織り込まれ、オーディエンスはギャアギャア笑っている。冗談で使われているとはいえ、コルベ−ルは、以前にアーティストとのコラボでシングルを出した事もあり、歌唱力は非常に高い。JTによる他のアーティストとのデュエットの中でも、かなり高水準に位置することができる出来栄えである。

コメディー、パロディーは、そのもののクオリティーが高いことで、はじめて面白いものになるということの見本のような映像。

[2022年4月追記]
「アメリカの政治家は度量が広い」といったが、あの世界はどこに行ってしまったのだろう?現在の共和党と民主党の争いを見ていると、民主主義の将来につき暗澹たる思いになる........


Supermax Rai 2 Radio 2012 (音源・映像) 
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar
Stefano Cenci : Vocal (5)
Unknown : Back Vocal (4)
Unknown : Electric Guitar (4,5,6)
Unknown : Electric Piano (4,5,6)
Unknown : Bass (4,5,6)
Unknown : Drums (4,5,6)

1. Carolina In My Mind
2. Sweet Baby James
3. Something In The Way She Moves
4. You've Got A Friend [Carole King]
5. Shower The People (部分)
6. Don't Let Me Be Lonely Tonight


放送: 2012年1月20日 Rai 2 Radio, Roma


3月からのツアーのプロモーションのためにイタリアに訪問、記者会見を行ったり、ラジオやテレビに出演した。本ラジオ番組はその最初の出演でローマのラジオ局Rai 2の番組「Social Club」に出演したもの。イタリア語のアナウンサーが早口でまくしたてた後、JTへのインタビューが始まる。イタリア語による質問に対し、通訳を通じてJTが答えるが、騒がしいイタリア語が混じるので何を言っているかよくわからない。しばらくしてギターをつまびく音がして、1.「Carolina In My Mind」が始まる。何故かJTは歌いにくそうで、声もかすれ気味で、あまり調子が良くなさそうだ。映像版で観る場合はあまり気にならないので、録音のせいかもしれない。曲が終わると、スタジオにいるオーディエンスから拍手が起きる。インタビューでオバマ大統領のことを聞かれ、「彼が大統領でほっとしている。多くの困難を引き継いだので、すぐには解決できない。再選されることを願っている」と答えている。2.「Sweet Baby James」も同じ感じで、珍しいことに途中でギターの演奏が詰まったりする。JTは、「アップル・レコードのオ-ディションでジョージとポールの前で演奏した」と紹介して、3.「Something In The Way She Moves」を歌う。最後の曲 4.「You've Got A Friend」では、エレキギター、エレキピアノ、ベース、とドラムスによる軽い伴奏がつく。

クルーが撮影したものと思われる映像を観ることができた。JTは、1.「Carolina In My Mind」を歌っていて、彼の背後には4.「You've Got A Friend」で伴奏を務めるミュージシャン達が控えている。リハーサル風景の映像もあり、それではJTは「Walking Man」のギターパートを弾いてサウンドチェックしている。

それにしても、イタリアのラジオはかしましいね。

[2012年10月追記]
5.「Shower The People」と 6.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」の映像を観ることができた。資料によると、番組のハウスバンドがバックを担当しているそうだ。5.「Shower The People」の映像は途中から始まるが、Stefano Cenci という人がリードボーカルの一部を担当し、コーラスパートを英語とイタリア語で歌っているのが珍しい。 6.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」は、リハーサルのシーンが挿入される映像で、JTは歌、ギターとも自由な感じで演奏している。



 
Che Tempo Che Fa  Rai3 TV  2012 (映像)  
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Sweet Baby James
2. Fire And Rain
3. You've Got A Friend [Carole King] (部分)

放送: 2012年1月22日 Rai 3 TV, Roma

 

JTはカウボーイハットを被って登場。綺麗な色のセットを背景に椅子に座って弾き語りで歌う。20日ほどではないが、JTの声は本調子でないようだ。ここでも彼は2.「Fire And Rain」で、ギター演奏をとちっている。どうしたのかな?最後は3.「You've Got A Friend」のショートバージョンとのことであるが、私は観た映像は50秒足らずの部分的なものだった。


Deejay Chiama Italia, Milan  2012 (映像)   
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Sweet Baby James
2. Carolina In My Mind

放送: 2012年1月23日 Deejay, Milan


JTは23日、ミラノのラジオ番組に出演。その模様をインターネットで観ることができた。司会者はLinusと Nicola Savinoの二人で通訳はNikki、そしてイタリアのグループ、エリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼ(その他映像の部「Night Express」 1997参照)のキーボード奏者 Sergio Conforti (通称 Roccoe Tanica)がゲスト出演した。インタビューでロッコは「JTのギターを聴きながらピアノを習った」と話している。アップルレコードでのオーディションとデビューの話になり、彼の「Something In The Way She Moves」を聴いたジョージがインスパイアされて「Something」を作曲したエピソードでは、JTは「自分もビートルズから多くを学んだからね」と返している。いつもの曲の由来についての説明の後、1.「Sweet Baby James」を歌う。22日までの演奏に比べて、声は相変わらずかすれ気味であるがリラックスした出来で、体調が回復したからと思える。ここで「Covers」から「On Broadway」がかかり、その間スタッフがスタジオでオフの会話をする間、手持ち無沙汰なJTはCDの音楽に合わせてギターを弾いているのが面白い(収録風景の映像ということで観ることができる場面)。ホームページでのギターレッスンの話題 「多くの人が私のスタイルで教えているので、自分もやってみようと思った」、イタリアでの縁について、1997年のエリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼとのツアーおよびテレビ出演(上述)の話が出た後、ギターのイントロがいつもとほんの少し異なる 2.「Carolina In My Mind」を歌う。オバマ大統領から「Medal Of Arts」を受賞したこと、ホワイトハウスで演奏したこと、最初の奥さんカーリー・サイモンはステージ恐怖症で一緒にコンサートをする、1995年にマーサ・ヴィンヤードでのチャリティー・コンサートで彼女と共演したこと、4人の子供のこと、ベンとサリーはミュージシャンで、サリーは前述のエリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼのツアーに参加したことが語られ、番組は終了する。

「Night Express」 1997の映像が残っている、エリオ・エ・レ・ストーリエ・テーゼの話が出てくるのが面白い。


  
Ospite di R101 2012 (映像)   
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Something In The Way She Moves
2. You've Got A Friend [Carole King]

放送: 2012年1月23日


JTは、ミラノのラジオ局 R101放送のFedelico l'Olandeseの番組に出演した際の映像。アップルのオーディションの話で、DJの「ビートルズの中で最も好きな人は?」という問いに「ポール・マッカートニー」と答える。DJが「ジョン・レノンは偉大な音楽家だけど、人間的には難しい人だからね」と罠をかけると、JTはすかさず 「いやいや、ジョン・レノンは友好的で素晴らしい人だったけど、音楽的にはポールのほうが合うんだ」と切り返しているのが面白い。歌はアップルのオーディションで歌った 1.「Something In The Way She Moves」と、2.「You've Got A Friend」のショート・バージョン。


Rockol Interview  2012 (映像)   
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Something In The Way She Moves

放送: 2012年1月24日


イタリアのロック雑誌 Rockolが行ったインタビューの映像。JTは、3月のイタリア・ツアーは、スティーブ・ガッド、ジミー・ジョンソン、ラリー・ゴールディングスという小編成のバックで、小さな会場で行うと話す。1.「Something In The Way She Moves」の弾き語りシーンの一部が入り、今回は奥さんと二人の子供も連れてきてイタリアを見せる、旅行をしながら友人と合いコンサートを行うのは素晴らしいと話す。話の間に1.の演奏が挿入され、「来年のこの頃に新曲によるアルバムを発売するつもりで、今年の秋にレコーディングする予定だ」と語っている。

上記のインタビュー以外の映像として、1.「Something In The Way She Moves」を通しで演奏しているもの、本番終了後のユーモラスなものもある。


Repubblica TV Live On The Music Corner  2012 (映像)    
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Carolina In My Mind
2. Jerusalem [William Blake, Sir Charles Huber Parry] (部分)
3. Mexico
4. You've Got A Friend
5. Blues (部分)

放送: 2012年2月7日


La Repubblica はイタリアの大手新聞社で、同社によるニュース専門のテレビが Repubblica TVである。JTは、本棚に囲まれた部屋のコーナーに設けられた席に座り、インタビューに答えながら弾き語りをする。1.「Carolina In My Mind」は前後に曲の由来を述べながら歌われる。ギターについての質問に、JTはギターを弾きながら、「ギターテクニックは自分が書く曲に基づくもので、フィンガーピッキング・スタイルで、常に親指でベースラインを弾き、ピアノのように演奏する」と答えている。「学生の時に弾いていた曲」と言って、2.「Jerusalem」をインストルメンタルで弾く。JTは、作者をウィリアム・ブレイクとマーチン・ルーサーと説明しているが、正しくは、1916年にサー・ヒューバート・パリーが18世紀のイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの詩に曲をつけた聖歌で、イギリス人にとって国歌に近い思い入れがある曲。「バンド演奏のために作ったので、一人で演奏すると薄っぺらく (thin)になるけど」と断ったうえで歌われる 3.「Mexico」は、リズミカルな原曲をカバーするクリエイティブなギター伴奏を楽しむことができる。最後の曲としてJTは、4.「You've Got A Friend」について「イタリアで演奏するとオーディエンスが歌い出したのでビックリした」と話し、ショートバージョンを演奏。エンドタイトルが流れるシーンで、短いブルースのインストルメンタルを弾いて終わる。


 
Radio Capital Whatever  2012 (音源 & 映像)     
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Something In The Way She Moves
2. Up On The Roof [Carole King, Gerry Goffin]
3. Shower The People
4. Secret O' Life

Luca De Gennaro : Host

放送: 2012年2月21日


Radio Capitalというイタリアのラジオ局のWhateverという番組に出演。インタビューに答えながら弾き語りを披露している。そのうちJTが歌うシーンについては、映像で観ることもできた。デビューのきっかけになったアップルでのオーディションのエピソードを、いつもより詳しく話した後、そこで歌った曲として、1.「Something In The Way She Moves」をファースト・ヴァースのみ歌う。 JTは、「ポールは気に入って契約してくれて、ジョージは家に帰って曲を書いた」と話し、ジョージ・ハリソンがこの曲をもとに「Something」を作った事を話すが、すぐに「'I Feel Fine' というフレーズはビートルズの曲からとったものだからね!」と付け加えている。次にクラシックとして、2.「Up On The Roof」を歌う。JTがこの曲を弾き語りで演奏することは大変珍しい。いつもはバンドの音に隠れているJTのギタープレイが楽しめる逸品。さらに一人ではあまりやらない曲で、3.「Shower The People」を歌う。3月に行われるイタリア・ツアーは、当初はキャロル・キングと一緒にやろうと思ったが、彼女が「共演コンサートはもう十分。楽しいうちに止めたい」と断ったこと、ツアーに奥さんと双子の子供を同行させて一緒にイタリアを回ること、今回のバンドメンバーは、ドラムスがスティーブ・ガッド、ベースがジミー・ジョンソン、そしてピアノは初めがジェフ・ベプコ、ミラノからラリー・ゴールディングスに交代すると述べている。4.「Secret O' Life」の後、JTは新曲があり、イタリアのコンサートで少し演奏するつもりであること、今年中に録音して来年にアルバムを発表するつもりだと話している。

この番組でのJTの歌は、すべてショートバージョンとなっていが、弾き語りでは珍しい曲をやっており、インタビューに対するJTの答えもいつもよりも突っ込んだ内容で、楽しい内容となっている



 
Panariello non Esiste  2012 (映像)      
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar
Unknown : Orchestra

1. You've Got A Friend [Carole King]

Giorgio Panariello : Host

放送: 2012年3月6日
 

JTのイタリアツアーは、3月6日ナポリからスタートしたが、その直前にイタリアの民放テレビ「Canale 5」の番組「Panariello non Esiste」にゲスト出演した。ホストのジョルジオ・パナリエロは、歌手、映画監督など多彩な活動をしている人のようだが、インターネットの資料がすべてイタリア語なので、よくわからなかった。巨大なナイトクラブのような会場(セット?)のオーディエンスを前に、大編成のオーケストラをバックにJTが「You've Got A Friend」を歌う。特筆すべきは、オーケストラのアレンジで、いままでのどの演奏と異なるユニークなもので、この場のために用意されたもののようだ。JTの歌にオブリガードをつけるフュリューゲル・ホーン奏者がいい感じ。

いつになくゴージャスな演奏が楽しめる。


 
In The Studio  2012 (音源)       
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar

1. Carolina In My Mind

Redbeard : Host

放送: 2012年6月5日


テキサス州ダラス・フォートワースを本拠地とする、ZZ Topのような長いあごひげがトレードマークのディスクジョッキー、レッドベアードがホストを務めるラジオ番組「In The Studio」は、全国ネットで放送され、その後はホームページでその模様を聴くことができる。2012年6月5日日の放送にJtが登場、アルバム「Sweet Baby James」1970 A2 から「Dad Loves His Work」1981 A11までの期間につき、代表曲を流しながらインタビューに答えている。約58分の放送時間のなかで、レコードからの曲は、「Country Road」、「Sweet Baby James」、「Fire And Rain」、「You've Got A Friend」、「Don't Let Me Be Lonely Tonight」、「How Sweet It Is」、「Mexico」、「Your Smiling Face」、「Her Town Two」。インタビューは各曲にかかるエピソードが中心で、いままで繰り返し言われてきたもので目新しい内容はない。JTが弾き語りで 1.「Carolina In My Mind」を歌って番組が終わる。


  
Tanglewood Shed, Lenox, MA (With Taylor Swift) 2012 (映像) 
 
James Taylor: Vocal, Harmony Vocal (1,2), Guitar
Taylor Swift: Vocal (1,2,3), Guitar (1,2)
Kim Taylor : Harmony Vocal (5), Back Vocal (4)
Dean Parks : E. Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Synthesizer
Lou Marini Jr.: Sax, Flute (2)

Jim Gilstrap, David Lasley, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin


1. Ours [Taylor Swift]
2. Love Songs [Taylor Swift]
3. Fire And Rain
4. Twist [Hank Ballard]
5. You Can Close Your Eyes

収録: 2012年7月2日 Tanglewood Shed, Lenox, Massachusetts

 

JTは毎年の恒例行事として、独立記念日の前後に地元タングルウッドでコンサートを行うが、2012年はゲストにテイラー・スウィフトが登場した。この年はコンサートの音源が出回らなかったが、数曲につき動画を観ることができた。

現在 (2023年)人気絶頂のテイラー・スウィフトは、この当時カントリー音楽界から一般向けへの転身を図っていた時期にあたる。大成功を収めた2011年の「Speak Now Tour」の11月22日、ニューヨーク・マディソン・スクウェア・ガーデンでの公演で、JTがゲスト出演して彼女の作品「Fifteen」と「Fire And Rain」を二人で歌い、大いに話題となった。彼女の名前がJTから取られた事を語り、憧れの人と共演できたことの感激ぶりが印象的だったが、本コンサートでは落ち着いた感じで、自分の夢をクリアして成長する一人の女性の姿を見ることができる。

当日のセットリストによると、彼女はファーストセットの終盤 「Sweet Baby James」の後に登場し、3曲歌っている。1.「Ours」は 2011年12月にシングル盤で発売され、カントリー・チャートで1位、全米13位を記録した曲で、アルバムには「Speak Now」 デラックス版のDisc2に収録された。二台のギターのみによる演奏で、コーラスパートでJTがハーモニーをつける。オーディエンスは大喜び。2.「Love Songs」は、 2枚目のアルバム「Fearless」2008 からシングルカットされ、全米第4位の大ヒットとなった曲。ここではバンドが演奏に加わっている。私がみた映像はブレまくりで質が悪かったが、音は問題なかった。映像からアンドレアがバイオリンを、ルウ・マリニがフルートを演奏しているのがわかる。3.「Fire And Rain」は、JTがファースト・ヴァースを歌い終わった所で、大歓声ととも登場した彼女がセカンド・ヴァースを歌い、コーラスでJTがハーモニーをつける。サード・ヴァースは交替で歌っている。彼女の歌は自然な情感が籠っていて、その後の大成功を十分予想できるだけの天性の才能を感じさせるものだ。

4.「The Twist」はアンコールでの演奏。ハンク・バラード作曲で、チャビー・チェッカー1960年のシングルで全米1位の大ヒットとなった名曲を楽しそうに演奏している。奥さんのキム・テイラーがバック・ボーカルに加わり、双子の息子がステージ脇で踊っているのが写る。そして最後は奥さんのハーモニー・ボーカルとコーラス隊とで 5.「You Can Close Your Eyes」 をしっとり歌って、コンサートの幕を閉じている。

最後の挨拶で、ギタリストがマイケル・ランドウではなくディーン・パークス、バック・ボーカルがアーノルド・マックラーでなく、ジム・ギルストラップであることが確認できた。2012年夏のツアーはこのメンバーだったようだ。

3曲だけであるが、テイラー・スウィフトの魅力が十分に発揮されたステージ。

[2023年4月作成]

Obama Fund Raiser With Michelle Obama, Pittsfield, MA 2012 (映像)   
 
James Taylor: Vocal, Guitar, Hamonica (5)
Jeff Bebko : Piano (4,6,7), Accordion (2,3,5)
Owen Young : Cello (1,2,3,6,7) 
Kate Markowitz, Caroline Taylor: Back Vocal (3,5,6,7)

1. The Water Is Wide [Traditional] (部分)
2. Sweet Baby James
3. Something In The Way She Moves
4. Country Road (部分)
5. (I'm A) Roadrunner [Edward Holland Jr., Lamont Dozier, Brian Holland]
6. Shower The People
7. You've Got A Friend [Carole King]

収録: 2012年8月3日 Colonial Theater, Pisttsfield, Massachusetts

 

JTはミシュル夫人とともに、大統領選挙運動のための資金集めのイベントに参加。場所は「One Man Band」2007 E14を撮影したマサチューセッツ州ピッツフィールドにあるコロニアル・シアターだ。

上記の正確な曲順は不明で、1,4は1分前後の部分のみ観ることができた。ジェフ・ベプコがアコーディオンを弾く姿を見ることができるのが面白く、5.「(I'm A) Roadrunner]では、カラオケをバックにJTはギターを置いてハーモニカを吹きながら歌っている。ミシェル夫人の演説の映像も観たが、ご主人に勝るとも劣らない演説上手で、9月の民主党大会で絶賛を浴びたのがよくわかる。


Carolina Fest Sound Check  2012 (映像)      
 
James Taylor: Vocal, Guitar
Jeff Bebko : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Chad Wakerman : Drums
Owen Young : Cello
Kate Markowitz, Andrea Zonn, Caroline Taylor: Back Voca

1. Something In The Way She Moves
2. You've Got A Friend [Carole King]

収録: 2012年9月3日 Carolina Fest, Main Stage, Charlotte, North Carolina


2012年ノースキャロライナ州シャルロッテで行われた民主党大会の前夜祭として開催されたストリート・フェスティバルで、シャルロッテの中心地 Tryron Streetに設置されたメインステージでJTのコンサートが行われた。本映像はその模様で、メンバーはカジュアルな服装で演奏に臨んでいる。1.「Something In The Way She Moves」のオーディエンスショットは、JTとバンドの姿が柱の影に隠れていて、実質的に音声のみで楽しめる。2.「You've Got A Friend」の演奏時から風が大変強く、背景の街路樹の揺れ方が尋常でなくなる。おまけに演奏の途中で雨が降りだしたようで、ステージは屋根があるため、アーティストは気にしながらも演奏を続けているが、傘をさすオーディエンスもいる。奥さんのキムは、右足にギブスをはめているが、ハイキングで怪我したとのこと。

その後、風雨が激しくなり、コンサートは中止になってしまったそうだ。

雨を気にしながら演奏するメンバーの様が面白い映像。


Democratic National Convention  2012 (映像) 
 
James Taylor: Vocal, Guitar
Jeff Bebko : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Chad Wakerman : Drums
Owen Young : Cello
Kate Markowitz, Andrea Zonn, Caroline Taylor: Back Vocal

[Sound Check]
1.Carolina In My Mind

[Main]
2. Carolina In My Mind
3. You've Got A Friend [Carole King]
4. How Sweet (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

収録: 2012年9月6日 Time Warner Cable Arena, Charlotte, North Carolina


James Taylor: Vocal, Guitar
Caroline Taylor: Back Vocal

5. You Can Close Your Eyes

収録: 2012年9月6日 場所不明


2012年11月の大統領選挙に向け、民主党は現職のオバマ氏を候補に指名、ノースキャロライナ州シャルロッテで行われた民主党大会の模様は全米に放送された。JTはオバマが指名受諾演説を行う最終日の9月6日に出演したが、当日は悪天候のため、会場が当初予定されていたBank Of America Stadium (フットボール競技場 7万4千人収容)からTime Warner Cable Arena (バスケットボール競技場 2万人収容)に急遽変更されるという波乱含みの開催となった。サウンドチェックの映像は、オーディエンス・ショットにしては画質が良すぎなので、クルーの試し撮りと思われる。バンド連中は、みなくだけた格好で、JTはハンチング帽に眼鏡をかけている。JTによる「ピアノ、チェロの音を大きくして」の指示の後に、1.「Carolina In My Mind」が始まる。リハーサルとはいえ手抜きのない演奏で、終了後見ていたスタッフから大きな拍手が起きる。本番は異なるテレビ局の撮影によるふたつの映像があり、違うアングルで同じパフォーマンスを楽しめるというおまけがついた。PBSによる撮影は、バックバンドのショットも含めたクローズアップが中心であるのに対し、もうひとつは遠くからのショットも入るが、クローズアップはJTの姿が中心で、他のプレイヤーの顔をあまり見せない撮影で、かなり個性が異なる出来。

2.「Carolina In My Mind」は、JTが父親の仕事のために若き日を過ごしたノースキャロライナを歌った、正にご当地ソング。オーディエンスはしんみりと聴き入っている。ドラムスのチャド・ワッカーマンはここ数年、スティーヴ・ガッドが出れないときに参加している人で、フランク・ザッパ、バーバラ・ストレイサンド、アラン・ホールズワース、スティーヴ・ヴァイ、アルバート・リー、ジョー・サンプルなど、ジャズ、ロックのセッションで活躍している。チェロのオーウェン・ヤングはJTのコンサートの常連で、ボストン交響楽団のソリスト。3.「You've Got A Friend」では、彼のチェロが気持ちよく鳴り響く。4.「How Sweet (To Be Loved By You)」ではオーウェン・ヤングがコーラス隊に加わり、ジェフ・ベブコのピアノが頑張っている。本映像で面白いのは、JTの語りで、最初に自分が座る椅子を見て、「椅子を見るとイラつかないかい?私は座るから大丈夫だよ」と言う。これは共和党大会のゲストで登場したクリント・イーストウッドが行った、誰も座っていない椅子を相手にオバマを批判したスピーチを皮肉ったもの。また2.「Carolina In My Mind」が終わった後で、「皆が言っていることが解せないよ。私は年老いた白人の男性だけど、オバマを愛している」と言い、オーディエンスの喝采を浴びている。

5.「You Can Close Your Eyes」は小さなスペースでの演奏で、資金集めのためのミーティングか、イベントスタッフのための慰労のために歌われたものと思われる。資料では演奏日・場所の情報がないが、キャロラインのドレスは上記のコンヴェンションのものと同じなので、同一日と推定した。近年コンサート等で披露される夫婦によるデュエットだ。

政府による景気回復などの諸施策が成果を上げられない状況のなかで、オバマ陣営は前回の選挙の時のような熱狂はなく、それを激しく批判する共和党のロムニー候補に追い上げられ、苦戦しているという。JTの本大会および一連のイベントへの参加は、危機感を募らせた彼がオバマ氏全面支持の姿勢を今までになく強くアピールしている。JTが民主党のイメージそのものになったことを体現するイベントだ。 

余談であるが、「Late Night With Jimmy Fallon」で、ブルース・スプリングスティーン、ニール・ヤング等の器用な物まねを見せるジミー・ファロンが、「Fire And Rain」の替え歌で「Romney & Bain」という政治的ネタを歌っている。彼自身が弾くギター(さすがにJTのフィンガーピッキングまでは真似できなかったようで、コードストローク奏法であるが本当に弾いている)が、JTと同じオルソン・モデルであることが、マニアックだね!


  
Obama Campaign Office, Hollywood, Florida  2012 (映像)  
 
James Taylor: Vocal, Guitar

1. Carolina In My Mind
2. You've Got A Friend [Carole King]
3. Slap Leather
4. Sweet Baby James
5. Shower The People

収録: 2012年9月14日 Obama Campagin Office, Hollywood, Florida

 

フロリダ半島の先端近くにある街、ハリウッドのオバマ選挙対策事務所に訪問した際の映像。ここでの37分にわたる長時間映像が公開され、じっくり観ることができた。ここではJTがプレゼンテイションをしながら5曲歌っている。面白いのは、スタッフに手拍子を頼み、それをリズムにして3.「Slap Leather」を歌っている点だ。もともと共和党のレーガン政権の政策を皮肉った歌なので、的を得ているというところか。JTのギターの上手さが光っている。最後にリクエストに応えて「皆でコーラスを歌ってね!」と言って5.「Shower The People」歌い出すが、咳き込んでしまい「最近喋り過ぎだからね」と返し、また話し出す。もともとお喋りな人ではないので、最近の活躍ぶりは昔からは考えられないことだ。エンディングは皆で歌うが、流石にソロによるアドリブボーカルのパートは割愛して終わる。

曲数が多く(珍しい曲もある)、JTのプレゼンもたっぷり楽しめる。映像の状態も良いお勧め映像。


Children's Health Fund 25th Anniversary Concert  2012 (映像)   
 
Paul Simon : Vocal, Guitar (1)
Stevie Wonder : Vocal, Keyboards (1), Harmonica (2)
Aisha Morris : Back Vocal (1)
James Taylor : Back Vocal (1), Vocal, Guitar (2)
Caroline Taylor : Vocal
Sting : Back Vocal (1)
Vince Gill : Back Vocal (1), Vocal (2)
Amy Grant : Vocal (2)
Unknown : Band

1. Love Me Like A Rock [Paul Simon]
2. America The Beautiful [Katharine Lee Bates, Samuel A. Ward]

収録: 2012年10月4日 Radio City Music Hall, New York


ポール・サイモンと小児科医のアーウィン・レデュナー(Irwin Redlener)は、十分な医療を受けることができない子供達のために、1987年 Children's Health Fundを設立した。ポールは資金調達のためにコンサートやオークションを開催してきたが、2012年は設立25周年ということで、ニューヨーク・ラジオ・シティ・ミュージック・ホールで記念コンサートが開催された。1.「Love Me Like A Rock」は、ポール・サイモン 1973年のソロアルバム「There Goes Rhymin' Simon」に収められ、シングルカットされて全米2位を記録した名曲で、オリジナルではディキシー・ハミングバーズのコーラスが最高に格好良かった。JTは、2002年にポールがKennedy Center Honor に出席した際にジョン・メレンキャンプと一緒にこの曲を歌っていたが、ここでのリードボーカルはポールとスティーヴィー・ワンダーが担当。 JTは、スティング、ヴィンス・ギルと一緒に一つのマイクに向かってバックコーラスを付けている。もう一人の男性は、誰か不明。またキーボードを演奏するスティーヴィーの横に立って歌うアイシャ・モリスは、スティーヴィーの娘。ちなみに、名盤「Songs In The Key Of Life」1976 に収録された「Isn't She Lovely」は1975年に生まれた彼女のことを歌った曲(日本語の曲名は「可愛いアイシャ」だったね!)。

2.「America The Beautiful」は、アンコールが終わった後の最後の曲だったようで、ギターを持ったJTが歌いだすが、自分の声が聞こえにくかったらしく、最初は音程が狂い、途中から合わせて歌っている。彼の横でには奥様のキャロライン、エミー・グラントとヴィンス・ギル夫妻、アイシャ・モリスとスティーヴィー・ワンダー親子が立って一緒に歌う。スティーヴィーは途中からハーモニカを演奏するが、これがビューティフル!途中から当日の出演者がステージに登場し、フィナーレとなるが、何故か主役のポールがいない。と思ったら、曲が終わった後に現れて皆にお礼の言葉を述べたていた。

ポール、スティーヴィー、スティング、ヴィンス、JTによる豪華共演。



  
Obama Campaign Office, North Carolina 2012 (映像)    
 
James Taylor : Vocal, Guitar
Caroline Taylor : Back Vocal (1,2,3)

[October 10, Willmington]
1. You've Got A Friend [Carole King]

[October 10, Huntersville]
2. You've Got A Friend [Carole King]

[October 11, Greenboro]
3. Carolina In My Mind

[October 11, Boon]
4. Carolina In My Mind

[Proshot Video]
5. America The Beautiful


JTは奥様のキムと一緒、ノース・キャロライナ州のオバマ・キャンペーン支援のため同州各地のオフィスを訪問し、スタッフを激励した。キャンペーンのためにその模様を収めた映像がインターネットで公開された。南東の海沿いの街ウィルミングトンは、同州の選挙対策本部があるところ。JTはプレゼンテイションで、今回の運動の精神に会った歌として、1.「You've Got A Friend」を歌う。キムがバックボーカルを担当、後半のコーラスでは皆が合唱に加わり、連帯感が高揚する様が伝わってくる。彼らは、その日のうちに中南部のハンターズヴィルに移動したようで、2.「You've Got A Friend」を歌っている。ここでのスタッフは静かめで、キムのバックコーラスが良く聞こえる。翌10月11日は中北部のグリーンズボロで、地元の歌 3.「Carolina In My Mind」を歌い、コーラスでスタッフも一緒に歌っている。最も内陸の北西部の街ブーンでは、キムの姿は見えず、JT一人で、3.「Carolina In My Mind」を歌い大きな拍手を受ける。

今回の一連の訪問についてのプロショットのビデオも公開され、そこではノースキャロライナ州の美しい景色、各地を回るJTとキムの様子、コンサートの断片、そしてインタビューの様子が収録されている。そこではキムの発言が大きくフィーチャーされており、今回の運動における彼女の存在感を裏付けている。JTは、今回の訪問場所につき、最初がWillmington → Chapel Hill → Greenboro → Huntersville → Ashville → 最後に Boonと語っている。最後にスタッフと一緒に 5.「America The Beautiful」を歌っている。

選挙の結果は、残念ながらロミニー50.39%、オバマ48.35%で、接戦の末に負けとなったが、アメリカで同州が南部と北部の境目であることを考えると、選挙の都度、民主党・共和党のどちらになるか微妙な州なのだ。


Country Music Hall Of Fame Induction (Reheasal) 2012 (映像)   
 
James Taylor : Vocal, Guitar
Unknown : Back Band

1. The River [Victoria Show, Garth Brooks]

収録: 2012年10月21日 Country Music Hall Of Fame And Museum, Nashiville


ガース・ブルックス(1962- )は、保守的だったカントリー音楽にシンガー・アンド・ソングライター、フォーク、ロックの要素を取り入れて新しい世界を開き成功した人だ。オクラホマ出身で、1988年ナッシュビルでレコードデビュー、1990年の2作目「No Fences」の大ヒットでスーパスターとなり、カントリーチャートを席捲、1991年の「Roping The Wind」はビルボードのポップチャートでも1位になり、スタジアムなどでの大規模コンサートを実施するなど、従来のカントリー音楽の殻を打ち破り、アメリカで絶大な人気を誇った。2000年代前半は離婚などの私生活のトラブルもあり引退同様となったが、2006年に再婚し活動を再会している。

2012年10月21日、彼のカントリー音楽界殿堂入りのセレモニーがナッシュビルで行われ、JTがゲスト出演した。ガースは、JTが彼のヒーローの一人であることを以前から公言し、「Sweet Baby James」などをコンサートで歌っていたが、今回はJTが彼の作品「The River」を歌っている。1.「The River」は、3枚目のアルバム「Roping The Wind」1991 に収録された曲で、翌1992年にシングルカットされ、カントリーチャートで1位を記録している。人生を川の流れに例えた歌で、滔々と流れる感じのスケールの大きな曲だ。私が観ることができたのは、リハーサルの模様で、打ち合わせの後に演奏を始め、最後まで手を緩めることなく歌いきっており、練習ではあるが曲の良さを十分に掴んだパフォーマンスとなっている。なお本番では、ガースの奥様である歌手のトリシャ・イアーウッドがバックで歌ったというが、このリハーサルではバック・シンガーがはっきり写っていないので、彼女がいたか否かは不明。


In Support Of Elizabeth Warren  2012 (映像)  
 
James Taylor : Vocal, Guitar
Livingston taylor : Vocal (3,4) Guitar (3)
Larry Goldings : Keyboards (1,2,3)
Owen Young : Cello (1,2) 
Kate Markowitz, Caroline Taylor : Back Vocal (2,3,4)
Elizabeth Warren : Back Vocal (4)

1. Fire And Rain
2. Shower The People
3. City Lights [Pat Alger] 
4. America The Beautiful [Katharine Lee Bates, Samuel A. Ward]

収録: 2012年10月24日 Colonial Theater, Pisttsfield, Massachusetts


エリザベス・ウォーレンは、ハーバート大学教授で破産法が専門。彼女は、自己破産になる世帯を分析し、その原因を離婚と失業と医療費負担による貧困とした。そして彼らに無理な借金をさせて消費を煽ったとして、アメリカの金融業界を厳しく批判し、改革を訴えて学問から政治の世界に乗り出した。そして消費者保護の立場からウォールストリートと激しく対決して、彼らに忌み嫌われる存在となった。実際のところ、アメリカにおける失業、破産、生活保護の実態は凄まじく、強者のみが栄え弱者は捨てられる社会の両極化が進んでいるように思われる。そして彼女は、民主党政権において金融改革を推し進めるべく、消費者・金融保護局の初代長官に就任しようとしたが、共和党の強い反発のため見送りとなった。

高い経済成長を維持して国を強くするためには、社会の強い部分を一層伸ばして、弱い部分を切り捨てるのが効果的であることは明らかであるが、それが行き過ぎると貧富の格差が拡大し社会不安を巻き起こすことになる。現在社会はその瀬戸際まできているような感じがする。政府主導により、弱者のために富を再配分することは、多くの不効率とそれに甘える人々を生み出し、自由な競争社会を阻害するという考えも一理ある。しかし、例えばアメリカの医療保険制度の欠陥は、弱者達への出費増になることを嫌う富裕層の気持ちもわかるが、制度改革なしには世の中がもたないほど、ひどいものだったと言える。ただしそのための負担額があまりにも巨額であることが、問題を深刻にしている。また、金融制度改革において、彼女が関わったドッド・フランク法という金融活動を規制する性悪説に立った制度が、銀行の自由な活動を阻害し、甚だしい不効率を生み出すことにより、企業の疲弊と景気悪化を助長させる恐れがあることも事実。強い者が破綻することで、共倒れになるリスクをはらんでいるのだ。アメリカに限らず、ヨーロッパも、そして日本も現代社会は正解のない混沌とした袋小路に入ってしまったようだ。そんな状況の中、エリザベスは、2012年のマサチューセッツ州上院議員選挙に民主党から立候補し、現職の共和党スコット・ブラウン氏を破って初当選を果たした。それにしても、アメリカの選挙戦は候補者がテレビ放送で公開ディベートする等、日本に比べて格段に激烈なものなんだね(口が立つ人が勝ちという感じもするけど)。何はともあれ、彼女の議員としての活動が、アメリカの金融業界を正しい方向に導いてくれることを願うものです。

彼女の選挙運動のひとつとして、8月3日、「One Man Band」2007 E14を撮影したマサチューセッツ州ピッツフィールドにあるコロニアル・シアターで、JTの支援コンサートが開催され、その映像を観ることができた。いつものメンバー(キーボードはラリー・ゴールディングス)が集まり、大きな星条旗をバックに演奏。ステージの右端には手話で歌詞の内容を伝える人の姿も見える。そして大きな歓声の中、弟のリヴィングストン・テイラーが登場し、懐かしい3.「City Lights」(リヴのアルバム「Life Is Good」1988 C48にデュエットバージョンが収録されている)を一緒に歌う。弱者に対する優しい視線を感じさせる歌詞の内容がイベントの趣旨に合っていて、キャロライン、ケイト等と皆でコーラスを歌う部分は感動的だ。 最後と思われる4.「America The Beautiful」は、エリザベスも加わって全員での合唱。

3.「City Lights」での兄弟共演はお宝映像だ。



  
Obama Rally At Nashua, New Hampshire  2012 (映像)  
 
James Taylor: Vocal, Guitar
Bob Mann: E. Guitar
Jimmy Johnson : Bass
Chad Wakerman : Drums
Owen Young : Cello, Percussion
Kate Markowitz, Caroline Taylor: Back Vocal

1. Sweet Baby James
2. Somthing In The Way She Moves
3. You've Got A Friend [Carole King]
4. Carolina In My Mind
5. Fire And Rain
6. Mexico
7. Your Smiling Face
8. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

収録: 2012年10月27日 Elm Street Middle School, Nashua, New Hampshire

注:曲の演奏順序は不明

 

JTは、オバマ氏の大統領選挙を応援するためのコンサートを数多く開催したが、ニューハンプシャーは北部の州のなかでも接戦だったようで、勝利を得るために特に力を入れたものと思われる。同州第2の都市ナシュアでのミニコンサートはバンドを従えた大掛かりなもので、その模様は支持者によりインターネット配信された。エルム・ストリート・ミドルスクール(6〜8年生が通う学校)に設けられた小さな屋外ステージでの演奏で、バックはジミー・ジョンソン(ベース)、(おそらく)チャッド・ワッカーマン(ドラムス)、そして懐かしいボブ・マン(エレキギター)の姿が見える。JTは、曲間に大統領選挙についてのスピーチを入れながら歌い、奥様のキャロラインとケイト・マーコウィッツがバックコーラスに加わる。曲によりボストン交響楽団のソリストであるオーウェン・ヤングがチェロを弾き、6.「Mexico」ではギロ(パーカッション)を担当している。恐らくフィナーレで演奏したものと思われる 8.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」では、双子の息子ヘンリー、ルーファスと若い女性(顔がそっくりなので、キャロラインの連れ子と推測される)が壇上にあがり、皆でコーラスを歌っている。なおコンサートの前、彼らがJTのギターの伴奏で本曲のコーラスパートをリハーサルする映像も観ることができた。

当日は同地でオバマ氏による演説も行われたそうだ。同州の選挙結果は、オバマ氏51.98%、ロムニー氏46.40%で、オバマ氏が勝利を収めた。


The 90th National Christmas Tree Lighting Ceremony  2012 (映像)  
 
James Taylor : Vocal (1,2,5)
Kenneth "Babyface" Edmonds : Vocal (2)
Colbie Caillat : Vocal (3)
Ledisi Anibade Young : Vocal (3)
Issac Slade : Vocal (3)
Jason Muraz : Vocal (3)
Phillip Phillps : Vocal (4)
Barak Obama : Vocal

Larry Goldings : Piano
US Navy Band Commodores : Orchestra
Unknown : Chorus

1. Winter Wonderland [Felix Bernard, Dick Smith]
2. I'll Be Home For Christmas [Kim Gannon, Walter Kent, Buck Rum]
3. The Christmas Song [Mel Torme, Robert Wells]
4. White Christmas [Irving Berlin]
5. Santa Claus Is Coming To Town [J. Fred Coots, Haven Gillespie]


収録 : 2012年12月6日 ワシントン DC


毎年12月は、ホワイトハウスの前にある公演に大きなクリスマス・ツリーを設けて点灯式を行う習わしとなっている。2012年は、オバマ大統領再選の直後であり、歓喜に満ちた雰囲気で行われたのかなと思ったが、年末に向けての「財政の崖」(年末の減税の期限到来と、債務比率の上限超過による強制的な予算削減という深刻な問題につき、共和党との交渉が難航していることもあり、家族とともに登場した大統領の態度には、クリスマスを祝いながらも、浮かれたムードは全く感じられなかった。その中でセレモニーに招待されたミュージシャン達が、海軍のバンド(ピアノのみJTの伴奏者のラリー・ゴールディングス)をバックにクリスマス・ソングを歌った。

JTはトリで登場し、1.「Winter Wonderland」を歌う。ここでのアレンジは「A Christmas Album」 A18, 「James Taylor at Christmas」 A19のもとと全く同じデイブ・グルーシンによるもので、間奏ではラリーのピアノがソロをとる。次にJTが「We'd like to dedicate this next song, to the families and love ones, of our brave man and woman, serving us around the world, tonight」とアナウンスして 2.「 I'll Be Home For Christmas」を歌いだす。この曲は戦地の兵士が国の家族あてにあてた心情を描いた歌であることを考えると、JTのアナウンスが腹落ちする。オリジナルは1943年にビング・クロスビーが歌っている。ファースト・ヴァースを歌い終わったJTの紹介により登場するベイビーフェイス(1959- )は、シンガー、ソングライター、プロデューサーとして活躍、1990年に Boys II Men 「End Of The Road」 1992、マドンナの「Take A Bow」1994、エリック・クラプトンの「Change The World」 (プロデュースのみ)1996等、作曲、製作面でメガヒットを連発して不動の地位を築いた人だ。彼がセカンドヴァースを歌い終わった後、メドレーでコルビー・カイラット(1985- )が「The Christmas Song」を歌い出す。この曲は、ジャズシンガーのメル・トーメが作曲し、ナット・キング・コールの歌で有名になり、とても多くの人々が歌っているゴージャスなスタンダードだ。彼女はカリフォルニア生まれで、マイスペースでの自作曲の発表が評判を呼び、2007年にメイジャーレーベルのデビューを果たしている。次は、デンバーのロックバンド、ザ・フライのリードボーカル、アイザック・スレイド(1981- )の番だ。ブリッジを歌うのはジャズ・シンガーのレディシで、2000年にアルバムデビュー、2007年にメイジャーから発表したアルバムでグラミー賞を受賞した実力派だ。ここで曲が 4.「White Christmas」になり、黒人のコーラスグループが歌い、その後で2012年のアメリカン・アイドルで優勝したフィリップ・フィリップスがJTの隣でしっとりと歌い、最後は全員での合唱となる。ここでオバマ一家がステージに上り、フィナーレは大統領が音頭をとって、皆で 5.「Santa Claus Is Coming To Town」を歌う。セレモニーの司会者であるナイジェル・パトリック・ハリス(1973- 俳優、歌手、監督、プロデューサー、奇術師の肩書きを持つ多彩な人)や、ゲストのリコ・ロドリゲス(テレビドラマ「Modern Family」の子役俳優)の姿が見える。大統領のとなりに奥様のミシェルと一緒に立つ二人の娘(1998年生まれのマリア、2001年生まれのナスターシャ)の健康で利発そうな姿が印象的。

2012年は世界中で悩みが多い年でした。2013年は良い年になるといいですね!


 
Luncheon of The National Press Club  2012 (映像)  
 
James Taylor : Guitar, Vocal
Kim Taylor : Vocal (7)

1. Something In The Way She Moves
2. Carolina In My Mind
3. Line 'Em Up
4. Slap Leather
5. America The Beautiful [Katharine Lee Bates, Samuel A. Ward]
6. Sweet Baby James
7. You Can Close Your Eyes

収録: 2012年12月7日 National Press Club, Washington


ナショナル・プレス・クラブは、1908年に設立されたジャーナリストの親睦団体で、恒例行事として内外の著名人を昼食会に招き、講演およびインタビューを行っており、ワシントンを訪れた歴代の日本の総理大臣も招待されている。JTはホワイトハウスにおけるクリスマス・ツリーの点灯式に参加した翌日に招かれたもので、約70分にわたって彼が語り、演奏した映像を観ることができた。

まずクラブの会長であるテレサ・ウェーナー(Theresa Werner)がJTの経歴を紹介、特に近年のオバマ政権を支持する活動について詳しく触れている。その後JTが話しをするが、会の趣旨から政治に係る内容が多いものとなっている。まず自己紹介代わりに、自分の曲で初めて聴くに耐える作品として、アップル・レコードのオーディションでビートルズのメンバー(ポールとジョージ)を前に歌ったという 1.「Something In The Way She Moves」を歌う。ここではボーカルのメロディーを崩して、自由な感じの歌唱になっている。気に入ったポールは契約にサインしてくれ、ジョージは家に帰って曲を書いた(「Something」のこと)と言って皆を笑わせるが、「私もビートルズの曲からたくさん拝借しているからね」と言って許容の意を表している。次に2012年の大統領選挙でオバマが再選されたことの喜びを述べた後、ノースキャロライナでの若い頃の政治に係る思い出を述べ、民主党支持の背景に触れている。4年前の大統領選挙では、同州でオバマが勝利を収めたが、今年の選挙ではJTがキャンペーンを行ったが勝てなかったので、残念だったとのこと。そして8年間のブッシュ・チェイニー政権に失望したことを表明する。ただし、国のバランスを保つためには、リーズナブルな話しができる強い保守党が必要であるとも述べている。これはティーパーティーなどの極端な保守派の台頭により、昔のような対話ができなくなってきていることへの危惧がある。ここで選挙運動で多く歌った曲として2.「Carolina In My Mind」を演奏するが、時間の関係でファースト・ヴァースだけでブリッジに移るショート・バージョンになっている。

「政治的な歌は少ししかないけど」といって歌い出す 3.「Line 'Em Up」は、ファースト・ヴァースとコーラスを終えたところでストップし、ワンマン・バンドでお馴染みのリチャード・ニクソンの歩き方のエピソードを語る。次にレーガン政権について書いた曲として4.「Slap Leather」を歌う。ここでのアコギの伴奏はクリエイティブで、ギター1本でよくやるなあといった感じ。歌詞にはアラブ世界をあまりに単純化する考えへの皮肉が込められているとのこと。そして、最近の選挙運動はは金がかかりすぎる、選挙のあり方を変えるべき、投票日は休日にしてより多くの人々が投票できるようにすべきと説いている。奥さんのキムについて、彼女が子供の頃、家に飾ってあったFDR(フランクリン・ルーズベルト、民主党出身の第32代大統領)の写真を自分のおじいさんのものと思い込んでいたというエピソードを述べ、彼女の民主党支持のルーツを紹介する。スピーチの最後として 5. 「America The Beautiful」を歌う。選挙運動中にかなり演奏し慣れてきたようで、ギターの伴奏もなめらかになってきている。

ここでQ&Aのコーナーとなり、自分自身は政治に携わらないのかという質問に「私の経歴では完敗だね、支援だけでいい」と答えて皆を笑わせているが、これは彼の若い頃の麻薬中毒の前歴を示唆した発言。その後、JTは以下のとおり回答している。財政の崖は何とか越えてもらいたいが、オバマ大統領にはあまり妥協して欲しくない。民主党を応援することで、共和党を支持する友人には許してもらうしかない。ここで話題が音楽の事に移り、今まで歌った印象深いデュエットの相手は、マーク・ノップラー、アリソン・クラウス、リンダ・ロンシュタット、キャロル・キング、ジョニ・ミッチェル。いつかやってみたい人はハリー・ベラフォンテ。最初に弾いたギター曲は「Keep On Truckin' Mama」と言い、ちらっと弾いてみせる。影響を受けたギタースタイルはマール・トラヴィスとして、ウォーキングベースを弾く。「Handy Man」は、アルバム録音で時間が余ったため、ダニー・クーチがやってみようと言い出したもの。ここで 6.「Sweet Baby James」をとても崩した感じで歌う。途中で中断するが、延長OKの指示をもらい、また歌い始める。影響を受けたアーティストは、ライ・クーダー、トム・ラッシュ、ザ・ビートルズ。現在のポップスについてすべて好きではなく、家では奥様の趣味でクラシック音楽が流れていることが多い。テイラー・スウィフトは名前も含めて好き。スティーブン・スピルバーグ監督の新作「Lincoln」で、ジョン・ウィリアムスがJTを主役に推薦してくれたというエピソード。カーリー・サイモンの「You're So Vain」のモデルは誰?というお馴染みの質問には、「ウォーレン・ビューティーだと思う」。現在はターンパイクがボストンから先に伸びたけど、 歌詞を変えると語呂が合わなくなるねといって皆を笑わせる。そして最後の曲ということで、壇上に座っていた奥様のキム(彼女は冒頭でボストン・シンフォニーの報道担当者だったと紹介されている)と一緒に 7.「You Can Close Your Eyes」を歌って、終了する。

JTの政治、音楽そしてジャーナリズムに対する思いがよく出た映像だ。


 
Obama Inaugural Ceremony 2013  (映像)  
 
James Taylor : Guitar, Vocal

1. America The Beautiful [Katharine Lee Bates, Samuel A. Ward]

収録: 2013年1月21日 Washington DC


2013年1月21日、オバマ大統領 2期目の就任式が連邦議会前の広場で行われた。広間に集まった100万人は、彼が聖書に手を載せて宣誓する様を見守った。与野党の対立、貧富の格差の拡大といった状況のなかで、財政赤字や銃規制など山積みの難問に直面する大統領は、演説のなかで党派を超えたアメリカの団結を訴えた。4年前の熱狂的・祝祭的な雰囲気は影をひそめ、ピリッとした感じが漂うセレモニーとなった。

JTは、ギターの弾き語りで 1.「America The Beautiful」を歌った。こういう場で、何回もやってきた曲なので、大分こなれた感じで、厳寒と大観衆の前という厳しい環境のなかでも難なくこなしている。2002年「アメリカン・アイドル」の第1シーズンで優勝し、アメリカン・
ドリームを手にしたケリー・クラークソンは、「My Country, 'Tis Of Thee」を熱唱。ビヨンセは「National Anthem (Star Spangled Banner)」を歌ったが、口パクということで多くの人々から批判を浴びてしまった。


 
Birthday Message To Yamaha 2013  (映像)   
   
James Taylor : Guitar

1. Happy Birthday To You [Patty Hill, Mildred J. Hill]

 
2013年1月25日、カリフォルニア州アナハイムのThe Hyperion Theater で行われたヤマハ創業125周年記念コンサート「Live Around the World Dealer Concert」では、サラ・マクラクラン、アース・ウィンド・アンド・ファイアー等が演奏したが、なかでもエルトン・ジョンのピアノ演奏のデータが各地の会場に設置された自動ピアノに同時配信されて話題となった。JTは、このイベントのためにビデオレターを作成し、2月に彼のユーチューブ・サイトで公開された。そこでは、簡単なお祝いの言葉の後で、ヤマハギターで 1.「Happy Birthday To You」のインストメンタルを披露している。ライ・クーダー風の軽妙なアレンジで、途中少し詰まるのが、ご愛嬌。

JTは、1980年代の後半の一時期、ヤマハのカスタム・モデルを使用しており、その模様は公式映像「Live At Boston Colonial Theatre」1988 A5や同年の「Never Die Young」のプロモビデオで観ることができる。その後彼は一貫してオルソン・ギターを使用するようになるが、本メッセージを送ったのは、コンサートのサウンド機材なとで縁があるためだろう。


Sean Collier Memorial Service 2013  (映像)    
   
James Taylor : Guitar
MTI Symphony Orchestra (1)
MTI A Cappela Ensembels (2)

1. The Water Is Wide [Traditionall]
2. Shower The People

収録: 2013年4月24日、Briggs Field, MTI, Boston


2013年4月15日、ボストン・マラソンの最中に発生した爆破事件は、3名の死者と282人の負傷者を出した。捜査の結果監視カメラの映像などから犯人が特定され、18日に2人の容疑者の写真と映像が公開され、全国に指名手配された。同日の夜、容疑者は逃亡を図る際にマサチューセッツ工科大学の警備警官ショーン・コリアー氏を射殺、銃撃戦の後にひとりが射殺され、もうひとりは逮捕された。アメリカ国内の大規模テロ事件としては2001年の同時多発テロ以来で、アメリカおよび世界に大きな衝撃を与え、その後、事件の被害者の支援のための資金集め、およびボストンおよびアメリカ市民の鼓舞のため、2013年5月31日に同地のTD Garden (バスケットボール、アイスホッケーの競技場)でBoston Strongというチャリティー・コンサートが開催された(「その他映像」参照)。本映像は4月24日、それに先だって行われた殉職警官ショーン・コリアー氏の追悼式のものである。

2時間30分におよび公式映像は、参列者の入場から始まり、スコットランド、アイルランド風の警察による儀式、棺の入場、教会関係者の祈り、警察関係者の弔辞と進行する。次に紹介なしでJTが登場し、弾き語りで 1.「The Water Is Wide」を厳かに歌い、セカンド・ヴァースから本セレモニーで音楽を担当するMTI(マサチューセッツ工科大学)管弦楽団が加わる。その後、彼の兄弟、マサチューセッツ州上院議員のエリザベス・ウォーレン、バイデン副大統領の演説があり、JTが再登場、MTIアカペラ・アンサンブルを従えて 2.「Shower The People」を歌う。その後牧師のミサ、ストッコランドのバグパイプによる「Amazing Grace」の演奏があって、参列者の退場・閉会となる。

JTの部分のみでなく、全部を観れることにより、アメリカ社会における儀式のあり方がよくわかる映像となった。


 
Carole King The Library Of Congress Gershwin Prize In Performance At The White House 2013(映像&音源)     
 
Carolr King : Vocal, Piano
James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar
Danny Kortchmar : Electric Guitar
Dillon Kondor : Electric Guitar
Robbie Kondor : Keyboards, Musical Director
Leon Pendarvis : Keyboards
Bob Glaub : Bass
Russell Kunkel : Drums
Valerie Naranjo : Percussion
Kiku Collins : Trumpet, Fluegelhorn
Crispin Cioe : Sax, Co-Musical Director
Kate Markowitz, Valerie Pinkston, Milton Vann : Back Vocal

Billy Joel, Gloria Estefan, Trisha Yearwood, Emile Sande, Jesse McCartney : Vocal

1.「Beautiful」  Carole King
2.「Will You Love Me Tomorrow」 Trisha Yearwood, Gloria Estefan & Emile Sande
 *
3.「Up On The Roof」  James Taylor

4.「It's Too Late」  Gloria Estefan 

5.「So Far Away」  Trisha Yearwood
6.「The Loco-Motion」 Billy Joel 

7.「Cryin' In The Rain」 James Taylor & Billy Joel

8.「Home Again」  Jesse McCartney
9.「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」 Emile Sande 

10.「Jazzman」 Carole King
11.「I Believe In Loving You」 Carole King 

12.「I Feel The Earth Move」  Carole King
13.「You've Got a Friend」 Carole King, James Taylor & Full Cast * 

注: 「*」は画像も出回っているもの
   赤字がJT参加曲

収録: 2013年5月22日 White House

 

The Library of Congress(米国議会図書館)による「The Library of Congress Gershwin Prize for Popular Song」は、ポピュラー音楽の作曲家・演奏家を対象とした賞だ。2007年のポール・サイモンを最初にスティーヴィ−・ワンダー、ポール・マッカートニー、バート・バカラックとハルデビッドが続き、2013年はキャロル・キング(以下「CK」)が受賞した。そのお祝いのためホワイトハウスで行われたトリビュート・コンサートの映像。その模様はアメリカのケーブル・テレビ局で放送され、ウェブサイトからストリーミングで配信されたが、著作権の関係で残念ながら日本からは観ることができなかった。しかしその一部を観ることができ、さらに全編の音源を聴くことができた。

キャピー・マグアー氏(Cappy McGarr, The Board Of Trustees Of The John F. Kennedy Center For The Performing Art)によるイントロダクションの後、CKが登場して自ら「Beautiful」を歌い、次にトリーシャ・イアウッド、グロリア・エステファン、エミリー・サンデーが「Will You Love Me Tomorrow」を披露する。異なるバックグラウンドを持った3人の女性歌手が並んで、簡単な振りを付けながら踊り、楽しそうに歌う様は、CKの音楽が持つ普遍性を体現している。バックバンドはCKに縁のある人達が多く参加。ロビー・コンドウはCKの次女シェリー・ゴフィンの旦那で、彼女のツアーやJTとのリユオンツアーにも参加している。ギターのディロン・ゴフィンはコンドウ夫妻の息子で、CKの孫になる。キーボードのレオン・ペンダヴィスは、1980年代より長らくサタデイ・ナイト・ライヴのハウスバンドのメンバーだった人。ボブ・グラウブ、ヴァレリー・ナランジョは売れっ子のセッション・ミュージシャン。美人トランペット奏者のキク・コリンズは、ジャズ、ポップ、R&Bなど広い分野で活躍する人で、ビヨンセ、マイケル・ボルトン等のバックをつとめている。オリエンタルな容貌とキクという名前の通り、母親は日本人とのこと。サックスのクリスピン・シオーは、ジェームス・ブラウン、レイ・チャールズ、ローリング・ストーンズのバックで活躍する人で、2010年にサム・ムーア(サム&デイブの片割れ)のコンサートで来日している。ここでは共同音楽監督も担当。 ダニー・クーチ、ラス・カンケルは説明不要。バック・ボーカルのケイト・マーコウィッツは、JTの常連バンドから。ヴァレリー・ピンクストンは、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのサックス奏者スコット・マイヨの奥さんで、数多くのアーティストのアルバムに参加している。

続いてJTが登場し、キャロルへの賛辞を述べた後、3.「Up On The Roof」を歌う。いつものJTバンドとは異なる伴奏、特にホーンセクションの響きが新鮮でいい感じ。グロリア・エステファン(1957- )はキューバ生まれで、革命後アメリカに渡りマイアミで育つ。後に夫となるエミリオ・エステファンと出会い結成した「マイアミ・サウンド・マシーン」で大成功、その後数多くのヒット曲を生み出し、アメリカを代表する女性シンガーになった。4.「It's Too Late」のラテン・フレーバーは彼女にピッタリで、しっとりと歌っている。間奏のギターソロはディロン・コンドウ、ダニー・クーチの順で、いつもよりアグレッシブなプレイが楽しめる。トリーシャ・イアウッド(1964- )はカントリー音楽界の大スターで、3番目のご主人はガース・ブルックス。 5.「So Far Away」の情感溢れる歌唱が心に染み入ってくる。次にビリー・ジョエルが登場して、ピアノを弾きながら賑やかなロックンロール 6.「The Loco-Motion」を歌う。ここでJTが再登場し二人で
7.「Cryin' In The Rain」をデュエット。この曲のJTの相棒として、彼はアート・ガーファンクル、キャロル・キング、エルヴィス・コステロに続き4人目となる。私が知る限り、音源・映像で残っているものとしては、JTとビリー・ジョエル初めての共演。8.「Home Again」を歌うジェシー・マッカートニー(1987- )は子役・声優として活躍していた人で、歌手としてのデビューは2000年。プロデューサーとしても有能な人のようだ。エミリー・サンデー(1987- )はイギリス・スコットランド生まれで、父はザンビア人、母はイギリス人。若い頃から音楽的才能を発揮したが、本格的な活動は大学を卒業してから開始、現在売り出し中の若手歌手だ。彼女が歌う 9.「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」 を聴くと、ソウルフルなエモーションと理知の絶妙な調和がこの人の魅力であることがわかる。 

ここでオバマ大統領とCKによるスピーチが入り、CKは感情が解き放たれたかのように 10.「Jazzman」を歌い、クリスピン・シオーのサックスが頑張る。 11.「I Believe In Loving You」 は、ハル・デビッドと1999年に書いた曲であるが未発表になっていたもの。彼は前年ガーシュウィン賞を受けたが健康問題で出席できず、9月に亡くなっている。CKは彼のことを思い、昔共作したことを思い出してデモテープを探し出したという。長女のルイーズ・ゴフィンのプロデュースにより録音され、本コンサートの前日2013年5月21日にインターネット配信でシングル・リリースされた。シンプルかつストレートな内容の曲で、1999年当時何故ボツになったか理解に苦しむほどいい曲だと思う。12.「I Feel The Earth Move」で盛り上がった後、最後は定番のJTとのデュエット
13.「You've Got a Friend」。CKは途中で、ピアノを弾くのを止めてJTに寄り添って一緒に歌う。曲はいったん終わるが、演奏が再開して当日のゲスト・ミュージシャンが登場、合唱によるフィナーレとなる。最後にオバマ大統領夫妻がステージに上がり、彼の締めの言葉でコンサートが終了する。

ゲストシンガーの歌唱の素晴らしさはもちろんであるが、バックの演奏が最高。本当に暖かく良い雰囲気のコンサートだ。


World Series Game2 2013  (映像)    
 
James Taylor : Vocal, A. Guitar1
Kim Taylor : Vocal (2)
Henry Taylor : Vocal (2)

1. National Anthem (Star Spangled Banner)
2. America The Beautiful

収録: 2013年10月24日 Fenway Park, Boston

 
2013年のワールドシリーズは、ボストン・レッドソックスとセントルイス・カージナルスとの対戦となった。8対1でレッドソックスが大勝した初戦に続き、第2戦もレッドソッススの本拠地であるボストンのフェンウェイ・パークで行われ、JTが国家斉唱で登場した。

まず試合前に国家を歌う場面では、彼一人がグラウンドに立ち、いつもと同じギターの弾き語りでNational Anthem (Star Spangled Banner)」を歌う。歌い出しで、なぜか「Oh beautiful」と始めてしまう。「America The Beautiful」と混同してしまったようだ。すぐに間違いに気がつき、演奏を止めず即座に国家の歌詞の最初「Oh, say can you see」に切り替え、その後も動揺することなく歌い切ったのは流石。でもJTが間違えたということで、ニュースやインターネットでかなりの話題になった。

アメリカのプロ野球の試合では、7回裏は「Seven inning strech」と言われ、ちょっとした休憩時間として皆で「Take Me Out To The Ball Game」を歌う習慣がある。ここではその代わりに、去る4月15日に発生したボストン・マラソン爆破事件のためのセレモニーが行われた。JTは奥様のキム、息子のヘンリー(何故かルーファスは登場せず)、そして試合に招待された犠牲者の家族、負傷者と一緒にグラウンドに立ち、皆で2.「America The Beautiful」を歌う。皆の笑顔が大変
印象的だ。


この試合で、レッドソックスの田沢投手は7回2アウトで登場、打者一人をセカンドゴロに抑え、上原投手はリードされた9回表に登板し、10球で3者凡退に打ち取った。試合は4対2でカージナルスが勝ち、1勝1敗となった。



A Nation Remembers (A Tribute To John F. Kennedy) 2013  (映像)    
 
James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar
Kim Taylor : Back Vocal, Harmony Vocal (7)
Owen Young : Cello
Nick Halley : Percussion, Keyboards
United States Naval Academy Woman's Glee Club : Choir
Cindy Bauchspies : Director Of Choir

1. Sun Singer (Paul Winter)
2. America The Beautiful (United States Naval Academy Woman's Glee Club)
3. Never Die Young
4. Above The Hills Of Time (United States Naval Academy Woman's Glee Club)
5. Icarus (Pal Winter Group)
6. Eternal Father (Naval Hymn) (United States Naval Academy Woman's Glee Club)
7. You Can Close Your Eyes
8. We Shall Overcome (Paul Winter Group)
9. Shower The People (James Taylor, United States Naval Academy Woman's Glee Club)

収録: 2013年11月22日 13:30〜14:30, John F. Kennedy Presidential Library And Museum, Boston

注: 赤字がJT参加曲

 
   



50年前、日本で初めての衛星放送の開始の際、米国からの最初の生放送として、ケネディー大統領が挨拶をするということで、一家そろってテレビを見ていたが、画面に現れたのは別の人で、彼の口から大統領が暗殺されたという報告を聴き、仰天した思い出がある。当時はインターネットがなかった時代で、情報伝達のスピードが段違いに遅かったからこそ、そういう事になったのだろう。2013年11月22日は、この事件から50年経ったということで、アメリカでは各種の行事・イベントが開催され、日本でも娘のキャロライン・ケネディ氏の大使就任の話と合わせて、大きな話題となった。

本映像は、大統領の死後ボストンに設立されたJohn F. Knnedy Presidential Library And Museum が主催した音楽によるトリビュートで、11月22日の命日に海を望むガラス張りのホールから、リアルタイムでホームページから全世界にストリーミングされた。オーディエンスのいない会場で、マサチューセッツ州知事をはじめとするゲスト達が、ケネディの演説の抜粋を読み上げる合間に、参加アーティストが曲を演奏する。ポール・ウィンターは、ケネディ政権当時、ホワイトハウスで公式演奏した初めてのジャズ音楽家であり、今回招かれたのはその縁という。ウォーレン・バーンハート(Warren Bernhardt)のピアノとのデュオ「Sun Singer」、ラルフ・タウナーがポール・ウィンター・コンソート在籍時に作曲した名曲「Icarus」、そして公民権運動の象徴となった「We Shall Overcome」を演奏している。United States Naval Academy Woman's Glee Clubは、1975年に設立された女性合唱団で、海軍の行事の他、世界中の各地でコンサートを開催、CDも発表している。彼女達は第2の国歌「America The Beautiful」、「ロンドンデリーの歌」、「ダニーボーイ」と同じメロディーによるアイルランド民謡の「Above The Hills Of Time」、海軍の聖歌といわれる「Eternal Father」を歌っている。

JTは奥様のキムとボストン交響楽団のチェロ奏者、オーウェン・ヤング、最近一緒に演奏するようになったパーカッション奏者ニック・ハーレイ(ここではキーボードも弾いているようだが、ほとんど目立たない)という少人数でシンプルに演奏している。生放送かつイベントの趣旨もあり、いつもより固めで厳かな雰囲気が漂っている。
3.「Never Die Young」でオーウェンのチェロ、キムのボーカルを聞くのは、今回初めてだ。7.「You Can Close Your Eyes」はキムのハーモニーボーカルとの二人だけの演奏。最後の曲「Shower The People」は合唱団との共演。他の曲では硬い表情だった彼女達は、笑みを浮かべた明るい表情で歌っている。そこからは曲に対する共感が強く感じられ、特にエンディングのコーラスはスピリチュアルな解放感に満ちたもので、数あるこの曲のライブ演奏の中でも筆頭にあげることができる出来だ。

50年間の世の中の移り変わりに思いをめぐらし、自分の人生を振り返り、深い感慨に浸りながら観る映像。

 
 John Kelly In Paris 2015  (映像)
 
James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar

1. You've Got A Friend [Carole King]



2015年1月16日, Hotel de Ville (The City Hall), Paris

 

2015年1月7〜9日、フランスで発生したイスラム過激派テロリスト達による風刺雑誌「シャルリーエブド」のオフィス襲撃、およびユダヤ食品店占拠事件は多くの犠牲者を出し、全世界に大きな衝撃を与えた。直後の1月11日、パリで大規模なデモ行進が行われ、100万人を超える人々が参加して抗議の意を表した。そこにはヨーロッパ各国の政府首脳も参加、イスラエルのネタニアフ首相やパレスチナのアッバス議長の顔もあったが、何故かアメリカ政府関係者は誰もいなかった。その不参加につき大きな批判が巻き起こり、アメリカ政府は判断の間違いを認め、ケリー国務長官をパリに派遣し、遅れながらもアメリカの意を表することとなった。1月16日、ケリー国務長官はエリゼ宮殿でオランド大統領と会った後、パリ市庁舎で、フランス国民に対し哀悼の辞を述べ、アメリカはフランスと共にあると強調した。そしてJTが登場して 1.「You've Got A Friend」を歌った。

JTはギターを持ち椅子にすわったが、事前の段取りが十分でなかったらしく、マイクがひとつしかなかった。そこでJTは、ギターの近くにセットしたマイクに向け、うつむいて歌う羽目になってしまった。途中でケリー国務長官の女性アシスタントが歩み寄って、ハンドマイクをJTに向けたため、無様な格好は後半解消されたが、それでも気まずさ・居心地の悪さは残った。後にアメリカのメディアは、こぞって本イベントを批判したが誤解もあった。報道では「ケリー国務長官がJTを連れてきた」とあるが、JTは今春に予定されているヨーロッパツアーの宣伝で、たまたまパリに滞在していたため、要請されて参加したのが事実であり、このイベントのためにアメリカから同行したものではないことだ。それでも、JTがアメリカの選挙活動などで民主党応援のために歌うのはよいとしても、今回のように外交上の公式行事で、アメリカを代表する立場で歌うには違和感があったようだ。

JT本人としては、この歌を歌うことで、アメリカとフランスは友達であることを表現したかったと思われ、何の悪気もない善意の行いであることは明らかなんだけど、一部の人々から批判・嘲笑を浴びることになってしまったのは残念なことだ。

[2015年1月作成]


 
Tonight Show Starring Jimmy Fallon 2015  (映像)
 
James Taylor: Vocal, A. Guitar
Michael Landou : Electric Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet
Lou Marini Jr. : Alto Sax
Arnold McCuller, Kate Markowitz, Andrea Zonn : Back Vocal

1. Stretch Of The Highway

James Taylor: Vocal
Jimmy Fallon : Vocal
Unknown : Others

2. Two James Taylor's On A Seesaw [Unknown, Probably Jimmy Fallon]


2015年6月8日、 New York, NY

 

ジミー・ファロン (1974- ) はニューヨーク・ブルックリンの生まれ。若いころから音楽・コメディ・演劇に傾倒し、1998年に「Saturday Night Live」のオーディションに合格、物真似で確固たる地位を築いた。その後司会者としての才能も認められ、2009年にコナン・オブライエンが降板した「Late Night With」の後任者となり、2013年ジェイ・レノの後を受けて「Tonight Show」の司会を引き受けた。音楽的才能を駆使した、クリエイティで質の高い物真似が得意な人だ。

JTはニューアルバム発売の1週間前に登場し、レギュラーバンドをバックに新曲 1.「Stretach Of The Highway」を歌った。さらに、彼が「Sweet Baby James」の頃の長髪のJTの扮装をして、同じ恰好をしたJTとシーソウに座って、ぎっこんばったんしながら、2.「Two James Taylor's On A Seesaw」を二人で歌った。コメディ・ソングなんだけど、音楽的には初期のJTそのもので、ナンセンスで可笑しいだけでなく、音楽として聴くことができる内容なのが凄い。おそらくジミーが作曲したものと思われるが、資料の裏付けがないので、ここでは「Unknown」とした。ちなみに「Two Neil Youngs On A Tree Stump」という曲もある。

ジミー・ファロンのパロディ・ソングに参加したJTの歌が楽しめる。

[2023年4月作成]


Live With Kelly & Michael 2015  (映像)   
 
James Taylor: Vocal, A. Guitar
Larry Goldings : Piano
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin (1)

Kelly Napa, Michael Strahan : Host

1. Montana
2. Only One

2015年6月17日、New York, NY

 

ライブ・ウィズ・ケリー・アンド・マイケルは、ケリー・ナパと元アメリカンフットボール選手のマイケル・ストラハンがホストを務める朝のニュース番組。JTは6月15日に発売されたばかりのアルバム「Before This World」のプロモーションのため出演した。

少人数のオーディエンスを入れたスタジオにJTが登場、再前列の人と握手を交わしたあと、インタビューで曲作りのプロセス等の質問に答え、番組中に2曲演奏した。JTのギター、ラリー・ゴールディングスのピアノ、アンドレア・ゾーンのバイオリンとバックボーカルいう小編成で、新曲 1.「Montana」を歌う。そして番組の最後に2.「Only One」を演奏する。この曲は「One Man Band」 2007では演っていなかったし、この小編成で歌うのは珍しく、楽器が少ない分JTが弾くギターもよく聞こえるので面白い。

ギター、ピアノ、バイオリン、バックボーカルのみによる小編成のバンドサウンドが楽しめる。

[2023年4月作成]


Today Show 2015  (映像)  
 
James Taylor: Vocal, A. Guitar
Michael Landou : Electric Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Additional Keyboards
Lou Marini Jr. : Alto Sax
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin

1. Your Smiling face
2. Today, Today, Today
3. Shed A Little Light
4. How Sweet It Is (To Be Loved By You)  [Holland, Dozier, Holland]

2015年6月22日、Rockfeller Plaza, New York, NY

 

NBC放送の朝番組「Today Show」は、有名アーティストによるロックフェラー・プラザ(ミッドタウンの5番街、6番街にあるロックフェラー・センター内の広場)での朝ライブが売り物。5番街での車や通勤中の人々の流れが、そのまま屋外ステージの背景になっている。JTは「Before The World」のプロモーションのため、同作の発売日である6月15日に出演した。

最初の曲 1.「Your Smiling Face」から飛ばしていて、スティーヴ・ガッドのドラムスの乗りの凄さが堪能できる。2. 「Today, Today, Today」は新曲物事の始まりを歌った曲とのことで、発売日のライブに相応しい選曲。3. 「Shed A Little Light」は、椅子に座って、右手でトランペットを吹きながら、左手でキーボードを弾くウォルトの姿が写る。

テレビ放送は上記3曲だったが、オーディエンスへのサービスで、4.「How Sweet It Is」を歌ったオーディエンス・ショットの映像、1.〜3.のリハーサル、サウンドチェックのオーディエンス映像も観ることができた。眼鏡をかけた本番前にアンドレアの姿をはじめとして、メンバーのリラッククスした表情・演奏を楽しめる。

[2022年10月作成]


  
   
Newport Folk Festival 2015  (音源、映像) 
 
James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar
Jon Suters : Upright Bass
Nick Halley : Percussion, Keyboards 
Kate Markowitz, Kim Taylor : Back Vocal

1. Sweet Baby James
2. Something In The Way She Moves
3. Carolina In My Mind
4. Today, Today, Today
5. Fire And Rain
6. You've Got A Friend [Carole King]

2015年7月25日 Fort Adams State Park, Newport, Rhode Island


ロードアイランド州で開催されるニューポート・フォーク・フェスティバルは、1959年から始まり1971年に中断したが、1985年に復活している。JTは「Sweet Baby James」がブレイクする直前の1969年に出演、「Fire And Rain」を歌う映像を観ることができる(ドキュメンタリーDVD 「Troubadours」E23参照)。このステージの最中、アームストロング、オルドリン飛行士が月面に着陸したアナウンスがなされ、大騒ぎになったため彼のステージは短縮された終わってしまったそうだ。45年の時が経った2014年、JTとバンドがヨーロッパツアーのためクィーンメリー II世号で渡欧し、船内でコンサートを行った際に、同フェスティバルの主催者ジョージウェインが乗り合わせ、楽屋での話の中で出演の話が出たとのこと。JTは当初「David B. Thompson」という変名で7月25日3時50分出演予定とされたが、直前にメディアにより飛び入り出演として報道された。

JTは、大歓声に迎えられてベース、パーカッション奏者、バックコーラス二人と一緒に登場。ニック・ヘイリーは、2013年頃から小編成によるJTのステージでバックを務めている人。ジョン・サターは、私が知る限り今回が初めての登場で、マサチューセッツ州バークシャー(JT一家と同じ地)に住むマルチ奏者で、バンドでギターを弾く他に、セッション・ミュージシャンとしてはベースで活躍している人だ。1.「Sweet Baby James」では、PAの不調のため途中で大きなノイズが入るが、JTは鳴りやむのを待ってからお構いなく演奏を続けている。ジョンは指弾きと弓弾きを使い分けている。2.「Something In The Way She Moves」でもエンディングにノイズが入るが、その後は解決したようだ。画像はJTとニックのアップがほとんどで、後半からコーラスの二人が加わるが、パーカッションのニックが映るのは、3.「Carolina In My Mind」の1シーンのみで、そこでは彼はアイルランドの打楽器であるバウロンを叩いている。4.「Today, Today, Today」は、本ステージ唯一の新曲。5.「Fire And Rain」、6.「You've Got A Friend」とお馴染みの曲が続き、最後に主催者のジョージ・ウェインが登場し、上述の出演に至ったいきさつが語られる。

映像を観ることができたのは、1,2,3,6で、オーディエンス撮影で時々手振れがあるが、ステージ最前列で撮影され、クリアで音質も良い。音源は最初から最後までの通しで聴くことができる。

オーディエンスが大喜びしているのがよくわかり、JTも気持ちよさそうに歌っている。

[2017年6月作成]

 
Grammy Museum Benefit 2015  (映像)  
 
James Taylor : Vocal, Acoustic Guitar
Larry Goldings : Keyboards (2,3,4)

1. Something In The Way She Moves (部分)
2. Secret O' Life
3. Fire And Rain (部分)
4. Sweet Baby James
 
注: 演奏順は不明

2015年9月25日 Clive Davis Theater, Los Angeles


グラミー・ミュージアムは、ロスアンゼルス、クーリブランド、ナッシュビル、ニュージャージーにあるグラミー賞に係る博物館の総称。多くのミュージシャンがその活動を支援するためのコンサートを開催している。JTはロスアンゼルス館の2階にあるクライブ・デイビス・シアター(席数200)で、その教育活動を支援するコンサートを行った。

バンド仲間のラリー・ゴールディングスと二人だけのステージで、弾き語り用の曲を演奏している。演奏前にはお馴染みの曲の由来についての語りが入り、1を除く曲ではラリーが伴奏をつける。2.「Secret O' Life」ではエレキピアノ、3.「Fire And Rain」ではピアノとオルガン、4.「Sweet Baby James」ではオルガンを弾き、ジャズ奏者らしい毎回異なる音の入れ方が面白い。当日はインタビューもあったようだ。


  
A Celebration Of Anerican Creativity 2015  (映像)   
 
James Taylor : Vocal, Guitar
Keb' Mo' : Vocal (6), Guitar (6)

Ira Siegel : Electric Guitar
Robbie Kondor : Piano
Charlie Giordano : Organ (4), Accordion (6)
Kiku Collins : Trumpet (4)
Crispin Cioe : Tenor Sax (4)
Patience Higgins : Tenor Sax (4)
Nathan East : Bass
Shawn Pelton: Drums
Bashiri Johnson : Percussion

Arnold McCuller : Back Voca (4)l
Kate Markowitz : Back Vocal (4)
Catherine Russel : Back Vocal (4)
Kim Taylor : Back Vocal (4)

4. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]
6. I'm So Lonesome I Could Cry [Hank Williams]

収録: 2015年10月14日, The East Room Of The White House, Washington D.C.
放送: 2016年1月8日 PBS TV

 

ジョンソン大統領の時代、1965年に制定された「National Foundation On The Arts And The Humanities Act」 50周年を記念して、ホワイトハウスで開催された記念イベントにJTが参加した。

JTは4曲目に登場し、R&B、カントリー、ラテンを融合したロックン・ロールの創生者バディ・ホリーの4.「Everyday」(作者のチャールズ・ハーディンは彼の本名)を歌う。バックバンドは、いすれも著名なセッション・ミュージシャンで、ロビー・コンドー(ピアノ)は、2010年のJTとキャロル・キングのツアーに参加。バシリ・ジョンソン(パーカッション)は、2002年にJTのバックを務めたことがある。チャーリー・ジョルダーノ(キーボード)は、ブルース・スプリングスティーンのバックバンドのメンバー。キク・コリンズ(トランペット)は、名前の通り日本人とのハーフ。バック・コーラスには、お馴染みのアーノルドとケイト、そして奥様のキムの姿も見える。次のスモーキー・ロビンソンが 5.「My Girl」を歌った後にケブ・モーと再登場し、二人でハンク・ウィリアムス1949年の名曲 6.「I'm So Lonesome I Could Cry」を歌う。ファースト・ヴァースをケブ、セカンドをJT、サードはデュエットでの歌唱。ケブ・モーとの共演は、2006年5月の「etown Live」以来。


とても面白い内容なので、以下セレモニー全体について述べます。

1. America The Beautiful [Katharine Lee Bates, Samuel A. Ward] Keb' Mo'
2. Preachin' The Blues [Beshie Smith]  Queen Latifah
3. Born To Play Guitar [Richard Fleming, Tom Hambridge]  Buddy Guy
4. Everyday (上述)
5. My Guy [Smokey Robinson, Ronald White]  Smokey Robinson
6. I'm So Lonesome I Could Cry (上述)
7. On The Sunny Side Of The Street [Dorothy Fields, Jimmy McHugh]  Esperanza Spalding
8. Save The Children / Mercy Mecy Me [Al Cleveland, Renaldo Benson, Marvin Gaye / Marvin Gaye]  Usher
9. Dear John / Cha Cha Cha [MC Lyte / Freddie Byrd]  MC Lyte
10. Fire On The Bayou [The Meters, Cyril Neville]  Trombone Shorty 


オバマ大統領が、米国の芸術の振興・支援に貢献した上記条例の意義を讃えるスピーチを行い、ケブ・モー (1951- ) が 1.「America The Beautiful」を歌う。ナショナル製フルメタルボディのギターでブルージーに歌い、間奏でスライド・ギターを弾くアレンジには、この曲を異次元に持ち込んだかのようなインパクトがある。本映像の演奏中に、大統領夫妻および招待客が写るが、アメリカ人なら誰か判るんだろうな。以下各ジャンルで象徴的な曲が歌われる。

コメディアンのキャロル・バーネット(1933- ) のスピーチ。その中で、50年前の制定セレモニーでジュリー・アンドリュースと一緒に歌ったエピソードを語っている。次はラッパー、女優のクィーン・ラティファ (1970- ) がトロンボーン・ショーティーと一緒に登場。ブルースの女王ベッシー・スミス (1984-1937)の「Preachin' The Blues」 1927を歌う。ラッパーだけあって、音楽に乗った語りと歌唱は抜群。キャロルが昔は雑音とされたブルース、ソウル、ジャズ等の大衆音楽がホワイトハウスで演奏される意義を語り、ジャーナリスト、批評家、作家のドロシー・パーカー(1893-1967)が書いた詩「Bohemia」を朗読する。

エレクトリック・ブルースを代表してバディ・ガイ (1936- ) が 3.「Born To Play Guitar」を演奏。2015年の同タイトルのアルバムは大ヒットし、グラミー賞(ベスト・ブルース・アルバム)を獲得した。ケブ・モーもギター伴奏で参加。その次はロックン・ロールで、上述 4.「Everyday」。続いてR&Bで、スモーキー・ロビンソン(1949- ) が 5.「My Girl」を歌う。楽しそうに一緒に口ずさむオーディエンスの表情が印象的で、国民から愛されている歌なんだなという実感。JTとケブ・モーによるカントリーの 6.「I'm So Lonesome I Could Cry」(上述)。

ジャズの部で、ベースを持った歌姫エスペランザ・スポルディング(1984- ) の 7.「On The Sunny Side Of The Street」。しなやかで変幻自在の歌唱・ベースプレイは鳥肌もの。アッシャー (1978- )はソウル音楽として、マーヴィン・ゲイ1971年の傑作アルバム「What's Goin' On」から 8.「Save The Children / Mercy Mecy Me」を歌う。エンディングで一緒に登場したトロンボーン・ショーティーが吹くソロが凄い。再登場のクィーン・ラティファの紹介により、ヒップポップ部門としてMC ライト (1970- )が自作の「Dear John/ Cha Cha Cha」を歌う。ホワイトハウスでラップを聴くなんて.........。最後はニューオリンズで、トロンボーン・ショーティー (1986- )が、ザ・ミーターズの10.「Fire On The Bayou」1975を演奏し、エンディングの演奏のままフィナーレとなる。

2023年1月の今から見ると、R&B、ブルース、ソウル音楽が大好きだったオバマ大統領夫妻だからこそできたイベントであり、アメリカの偉大な財産であるこれらの大衆音楽がこのような形で認められ、讃えられるのは、本当に素晴らしいことだ。政府がこのようなお祝いを主導すること自体、当時は幸せな時期だったなあという感慨があるが、その影で取り残され、苦境に陥って現状に不満を持つ人々が多くいたのも事実。それが数年後のトランプ政権の誕生に繋がってゆくのである。その後政府によるこのような文化行事の実施がストップし、バイデン政権に変わった後も、コロナ禍とウクライナ問題でそれどころではない状況が続いている。このようなイベントを皆が心の底から楽しめるような時代は、再びやってくるだろうか? 来て欲しいと祈りたい。

[2023年1月作成]


The 2015 Christmas In Rockfeller Center 2015 (映像)
 
James Taylor : Vocal, Guitar (2)
Chris Botti : Trumpet (1)
Kate Markowitz : Back Vocal (2)
Caroline Taylor : Bac Vocal (2)

1. Winter Wanderland [Felix Bernard, Dick Smith]
2. Snow Time

収録: 2015年12月2日 Rockfeller Center, New York, NY 

 
ニューヨークのクリスマスシーズンは、マンハッタン中心部にあるロックフェラー・センターに巨大なクリスマスツリーを設置し、点灯式を行うことで本格的な幕開けとなる。その模様と著名アーティストによる祝いのコンサートは全米にテレビ中継される。2015年12月2日午後8時より行われたコンサートにJTが参加した。

多くのアーティストが交替で歌うため、楽器やマイクのセッティングのための時間が必要となるが、そのための待ち時間をカットする都合で複数のステージが設けられ、アーティストが変わる毎に舞台も切り替わる設定。JTは5番街に面したビルの屋上のセットで、比較的少人数のオーディエンスを前に演奏し、地上のオーディエンスはスクリーンでその模様を見るようになっていた。

テレビ番組を制作したNBCテレビのアンカー、アル・ロッカーとサヴァンナ・ガスリーによる紹介の後、JTがギターなしで 1.「Winter Wanderland」を歌う。「A Christmas Album」2004 A18、「James Taylor At Christmas」2006 A19で同曲に参加していたトランペッター、クリス・ボッティがトランペットを吹く以外は、カラオケによる演奏。背景となる五番街を隔てた向かいのビルの壁面にはプロジェクション・マッピングで白い雪の結晶が映し出され、また斜め向いにあるセント・パトリック教会の白い建物がライティングで浮き上がり、厳かな雰囲気を醸し出している。

2.「Snow Time」は、6月に発売されたアルバム「Before This World」2015 A22からの新曲。ここではカラオケ以外にJTのギター、ケイトとキャロラインのバックボーカルによる演奏。かなり寒かったようで、皆な防寒服を着こんでいる。

映像で観れたその他の出演者・演奏曲は以下の通り

1. The Young People's Chorus Of New York City
2. Michael Buble : It's Beginning To Look Like Christmas
3. Andy Grammer : Little Drummer Boy
4. James Taylor With Chris Botti : Winter Wanderland
5. The Band Perry : Santa Claus Is Coming To Town
6. Pentatonix : Joy To The World
7. Sting With Chris Botti : Soul Cake (God Rest Ye Merry Gentlemen)
8. Carly Rae Jepsen : Last Christmas
9. Andrea Bocelli : Adeste Fideles (O Come All Ye Faithful)
10. The Rockettes : Line Dance
11. Mary J. Blige : Have Yourself A Merry Little Christmas

最後にニューヨーク市長等によりクリスマスツリー点灯のスイッチが押され、巨大なツリー全体に明かりが灯って番組は終了する。約41分の「Full Concert」の映像を観たが、何故か 2.は含まれていなかった。しかし個別に観た同曲の映像では、1.と同じ二人がテレビカメラに向かって曲の紹介をしっかりしているので、セレモニーの番外編やリハーサルではなく、動画作成の際にカットされたのだろう。しかしテレビ放映は生放送だったのでは? とも思われ、真相は不明。

2023年の12月はウクライナやガザでの戦闘という暗い影がある中でのクリスマスになってしまったが、2015年はコロナ禍が起きる前だし、概ね平和だったんだなと思う次第。

[2023年12月作成]


38th Kennedy Center Honors 2015 (映像)  
 
James Taylor : Vocal, Guitar (1)
Janelle Monae : Vocal (2)
Chilina Kennedy : Vocal (2)
Sara Bareilles : Vocal (2)
Aretha Franklin : Vocal (2)
Unknown : Back Band

1. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
2. I Feel The Earth Move [Carole King]

2015年12月6日 Kennedy Center Opera House, Washington DC

 
The J. F. Knnedy Center Of Performing Artsは1971年に設立され、ワシントンを本拠地としてあらゆるジャンルのパフォーミング・アーツの振興を目的として活動している。1978年より毎年12月に「The Kennedy Center Honors」として、舞台芸術のアーティスト5〜6人を表彰するセレモニーを実施。近年は派手で大掛かりなショーになり、2時間のスペシャル番組が放送されている。2002年のポール・サイモン、2010年のポール・マッカートニー、2011年のヨーヨー・マに続き、2015年のキャロル・キングの部にJTが出演した。他のゲストは、俳優のリタ・モレロ(ウエストサイド物語が有名)、シシー・タイソン、映画監督のジョージ・ルーカス、指揮者の小澤征爾で、司会者は政治色の強いトークショーが得意なスティーヴィン・コルベール、オバマ大統領夫妻が主賓だった。

キャロルのコーナーは最後で、ジョン・ケリー国務長官による導入スピーチの後、キャロルの自伝的ミュージカル「Beautiful」で当時主人公を演じたチリナ・ケネディが登場して、「So Far Away」の弾き語りで少し歌った後、スクリーン映像を背景にキャロルの人生を語り始める。スコット・J. キャンベル演じるジェリー・ゴフィンとの出会いと恋愛の寸劇を経て、ジャネール・モネイ(1985- )がバックコーラスを従えてシュレルズのスタイルで 「Will You Still Love Me Tomorrow」と「One Fine Day」を歌う。彼女は、2007年にアルバム「Metropolis」でデビューした若手シンガー・ソングライターで、その後2016年アカデミー作品賞を受賞した映画「ムーンライト」にも出演している。どちらの曲も時間の制限のためワンコーラスのみであるが、テンポの良い展開のため気にならない。スクリーンにリトル・エヴァが「Locomotion」を歌うシーンが映り、キャロルとジェリーがアルドン音楽出版社で作曲に打ち込む寸劇が入る。そしてニューヨークの古いビルの屋上のセットに腰かけたJTが登場し、1.「Up On The Roof」を歌う。アレンジはいつものJTバンドと同じものだ。

次にサラ・バレリスが登場して、トゥルバドールの外観の映像をバックに「You've Got A Friend」を弾き語りでしっとりと歌う。彼女は2007年のシングル「Love Song」が全米4位の大ヒットを記録したシンガー・ソングライターで、2016年にはミュージカル「Waitress」を作曲して大評判になった人。しっとりした歌唱が素晴らしい。この後チリナの紹介により登場するアレサ・フランクリンは、本イベントのハイライト。彼女の声は、人の心の奥深くに潜むエモーションに直接触れるものがあるようで、ここでの「Natural Woman」は、何度聞いてもつい涙が出てしまう。キャロルは感極まったジェスチャーで応え、会場のオバマ大統領が目の涙(?)を拭う様も映る。

フィナーレの 2.「I Feel The Earth Move」は、最初はスクリーン上のキャロル本人の演奏シーンから始まる。これは1981年テキサス州オースチンにおけるスタジオライブで、翌年「One To One」というタイトルのビデオで発売されたものだ(キャロル・キングのページ参照)。途中スクリーンが引っ込み、ビデオからステージへバンド演奏が巧みに引き継がれ、本日の出演者達が登場して、チリナ・ケネディ、ジャネール・モネイ、JT、サラ・バレリス、そしてアレサ・フランクリンの順に歌い継がれ、最後に皆が歌いだすシーンは凄い高揚感がある。

構成の巧みさにより、短い時間のなかに素晴らしい語りと音楽が凝縮されている。

[2017年6月作成]

[2023年12月作成]
当初、収録日を「12月29日」としましたが、正しくは12月6日だったので、修正しました。