Toronto Air Canada Centre [Carole King & James Taylor]  2010  
   
James Taylor: Vocal, Acoustic Guitar
Carole King : Vocal, Piano
Danny Kootch: Electric Guitar, Acoustic Guitar (13)
Robbie Kondor : Keyboards, Accordion, Harmonica
Russ Kunkel: Drums
Leland Sklar: Bass

Arnold McCuller : Back Vocal
Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin

[Set 1]
1. Blossom 
2. So Far Away [Carole King]
3. Machine Gun Kelly [Danny Kortchmar]
4. Carolina In My Mind  
5. Way Out Yonder [Carole King]
6. Smackwater Jack [Gerry Goffin, Carole King]
7. Country Road
8. Sweet Seasons [Carole King, Toni Stern] 
9. Mexico
10. Song Of Long Ago [Carole King]
11. Long Ago And Far Away
12. Beautiful [Carole King]
13. Shower The People
14. (You Make Me Feel Like) A Natural Woman [Gerry Goffin, Carole King、Jerry Wexler]

[Set 2]
15. Where You Lead [Carole King, Toni Stern] 
16. Crying In The Rain [Carole King, Howard Greenfield]
17. Your Smiling Face
18. Sweet Baby James
19. Jazzman [Carole King, David Palmer]
20. Will You Love Me Tomorrow ? [Carole King, Gerry Goffin]  
21. Steamroller
22. It's Too Late [Carole King, Toni Stern] 
23. Fire And Rain  
24. I Feel The Earth Move [Carole King]  
25. You've Got A Friend  [Carole King]  

[Uncore]
26. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]  
27. How Sweet It Is (To Be Love By You) [Holland, Dozier, Holland]
28. You Can Close Your Eyes


収録: 2010年5月28日、Toronto Air Canada Centre, Ontario, Canada

 
 
ロスアンゼルスにあるナイトクラブ、トルバドゥールの開業50周年記念のイベントとして2007年に行われたリユニオン・コンサートは、ごく一部の人しか観ることができず、ファンはテレビニュースやオーディエンス・ショットによる断片的な映像を観るしかなかった。その後、二人による「Troubadour Renion Tour」の2010年実施まで長い期間がかかったのは、JT、キャロルそしてバンドメンバーのスケジュール調整のためと思われ、2007年のコンサートのCD・DVDが2010年になったのも、ツアー宣伝のため実施直前まで発売を控えたものと推測される。ファンにとっては待ちに待ったイベントで、3月26日のオーストラリア、メルボルンを最初に、ニュージーランド、東京を回り、アメリカでは、西部→中南部→東部→中南部→西部の順に実施され、7月20日のカリフォルニア州アナハイムのコンサートが最後となった。JTによると、翌年以降もヨーロッパ・ツアーを企画しようとしたが、キャロルの「ツアーはもうたくさん」とのことで断念したという。

本コンサートはカナダで行われた唯一のもので、その前はミシガン州オウバン・ヒル、後はオハイオ州コロンバスというように、五大湖周辺部を回っていた頃のものだ。コンサートの多くは、スポーツイベントを行う巨大なアリーナを使用(本コンサートが行われたトロント・エア・カナダ・センターもアイスホッケー、バスケットボールの試合会場)、360度のオーディエンスが等しく楽しめるように、回転式のステージ設営がなされたようだ。そして上には巨大なモニタースクリーンが設置され、カメラマン撮影による各プレイヤーのクローズアップを楽しむこともできた。本映像は、専らそのモニター映像を収録したもので、多少の手振れやピンボケはあるし、音質的にも演奏中に近くの観客の話し声が聞こえたり、イマイチの面もあるけど、本ツアーのオーディエンス映像として楽しむには十分なレベルであると思う。

最初の曲 1.「Blossom」では、カメラの位置が未設定のため、激しく手振れする。ここでは実際のステージを撮影しているが、遠くの席からなのでピンボケになっている。JTは、ドレッドノートサイズのオルソンを弾き、黒いドレスのキャロルのピアノとリーランド・スクラーのベースが伴奏を付けている。2.「So Far Away」からは、ステージ情報の巨大スクリーンの撮影になり、カメラはほぼ固定されるため、安定するがピントの甘さは残る。この曲では、エンディングが珍しくJTがアコギでソロを取っている。歌い終わって、オーディエンスの大きな拍手に応えるキャロルの笑顔が素晴らしい。ここでバンドメンバーの紹介があり、JTがオルゴールを取りだしてリーランド・スクラーの誕生日を祝っている。3.「Machine Gun Kelly」からコーラス隊が加わり、ダニー・クーチのエレキギターとアンドレアのバイオリンが活躍する。コーラス隊と一緒に淡々と歌われる 4.「Carolina In My Mind」に続く、ゴスペル調の5.「Way Out Yonder」は、キャロルのソウルフルなボーカルが聴きもの。オリジナル録音ではメリー・クレイトンが歌っていた「sunshine gold」という部分は、ケイト・マーコウィッツが担当している。ここでロビー・コンドウ(プロデューサー、作曲家、アレンジャー、キーボード奏者で、キャロルの次女シェリー・ゴフィンの夫)が紹介され、キャロルは彼にピアノを任せて、マーチンD-35を弾きながら 6.「Smackwater Jack」を陽気に歌う。間奏のソロはダニーのギター。音は決して良くなく、リーランドのベースラインもオフ気味ではあるが、ちゃんと聞こえる。7.「Country Road」で、キャロルはピアノに戻り、ロビーはシンセサイザー、オルガンを担当。2007年のリユニオン・コンサートでは、この曲を初期のシンプルなアレンジで演奏していたが、ここではブレイクでのJTのボーカルとドラムスの掛け合い(その間キャロルはステージを駆け回っている)や、エンディングでのアンドレアのバイオリン・ソロなど、近年のJTバンドのサウンドになっている。8.「Sweet Seasons」からは、昔二人が共演していた頃にはまだなかった曲の演奏となる。間奏ではロビーのシンセがホーンセクションのアレンジを再現している。カメラのピントもこのあたりになると矯正されて、かなり良い感じになっている。オーディトリウム・サイズのオルソンに持ち替え、シャツの袖をまくりあげたあげたJTが「Mexico」を歌う。間奏の木琴のサウンドはロビーのシンセがカバーしている。JTが椅子に座った後、キャロルが「当時は互いに似た曲を作っていたわ」として、11.「Long Ago And Far Away」を歌い、曲が終わったところで切れ目なく、キーを変えJTによる 11.「Long Ago And Far Away」に続く。12. 「Beautiful」を始める前、カメラを動かしたために手振れが起きている。13.「Shower The People」では、ロビーがピアノを担当し、キャロルはコーラス隊と一緒に並んで、バックで歌っている。エンディングのアドリブソロは、いつもの通りアーノルドが担当し、大喝采を浴びている。コーラス隊の紹介の後、キャロルが立ったまま 14.「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」を歌う。コーラスパートの「You make me feel .......」をオーディエンスに歌わせ、キャロル、コーラス隊(JTも歌っている)の熱唱もあって大いに盛り上がる。特にステージを歩きまわって皆で歌っていることを体現させ、間奏ではダニーのギターとスキャットで掛け合いする、キャロルの説得力あるパフォーマンスが最高!

20分の休憩の後、セカンドセットは 15.「Where You Lead」から始まる。イントロでは映像に手振れがあるが、すぐに落ち着く。キャロルは「But if you wanna live in New York City」という歌詞の地名を「Ontario」に変えて歌い、オーディエンスは歓声をあげて反応する。16.「Crying In The Rain」は、二人は椅子に座って寄り添ってのデュエットで、JTは「この曲が好きだったけど、長い間キャロルの作品とは知らなかった」と紹介している。アンドレアのバイオリンがスウィートだ。JTは、「コンサートの企画でセットリストを作ったら7時間になっちゃったよ!」と話した後、リクエスト・コーナーと称して17.「Your Smiling Face」を歌う。本コンサートツアーでの演奏曲はほとんど同じなんだけど、この部分だけ頻繁に曲が変わったようだ。バックでガッツを込めてピアノを弾くキャロルがいいね!18.「Sweet Baby James」は、JTの弾き語りから始まり、途中からバンドがフィルインして、コーラス部分でキャロルがハーモニーを付ける。ロビー・コンドウはアコーディオンを弾いている。19.「Jazzman」は、ダニーのギターが弾けまくる。ここではコーラス隊はステージ上を歩きまわり、時にはキャロルのピアノ椅子の端に座って歌う。20.「Will You Love Me Tomorrow ? 」は、キャロルの歌にJTがハーモニーを付ける。21. 「Steamroller」は、JTはテレキャスターに持ち替え、間奏ではブルースハープ・ソロを聴かせてくれる。続くソロはロビーのオルガン、ダニーのエレキギターだ。一転してクールなムードの 22.「It's Too Late」は、間奏でキャロルがピアノでソロを取るのが面白い。間奏のダニーのギターソロは毎回全く異なる内容なのが楽しみ。23.「Fire And Rain」のピアノは、やはりキャロルの力強いプレイが最高ですね。キャロルが立って歌う 24.「I Feel The Earth Move」で会場が盛り上がった余韻を残して始まる 25.「You've Got A Friend」は、最初JT、次にキャロルがリードを取る。エンディングで、キャロルがアドリブでカナダのオーディエンスにお礼を述べる。

アンコールの 26.「Up On The Roof」は、最初のヴァースとブリッジをキャロルが自身のアレンジで、残りをJTがキーを変えて彼のアレンジで歌う。27.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」は、ロビーのクロマチック・ハーモニカ・ソロが聴きもの。終了後バンドとコーラス隊が円陣を組んでから、オーディエンスにお礼の挨拶をする。ステージに残ったJTとキャロルは、椅子に座って並んで、最後の曲 28.「You Can Close Your Eyes」を歌う。この曲にハーモニーを付けた女性歌手はたくさんいるが、エモーショナルな面ではキャロルが一番かな?
 
ということで、「Troubadour Reunion Tour」がどんなものだったかを視覚的に楽しめる映像。


 
 Spring Tour With Special Guest Ben Taylor 2011  
 
James Taylor : Vocal, Guitar
Ben Taylor : Vocal, Guitar
Michael Landau : E. Guitar
Jeff Babko : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Chad Wackerman : Drums
Benjamin Thomas : Keyboards, Percussion
Arnold McCuller, Kate Markowitz : Back Vocal
 
[Brady Theatre, Tulsa OK, Febuary 26]
1. You Can Close Your Eyes
2. Dangerous Girl [Ben Taylor)
3. Angry Blues
4. Carolina In My Mind
5. When I Was A Cowboy [Traditional]
6. Don't Be Sad 'Cause Your Sun Is Down [Stevie Wonder, James Taylor]
7. Nothing I Can Do [Ben Taylor]
8. Sweet Baby James
9. Fire And Rain
10. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

[Morris Performing Arts Center, South Bend IN, March 5]
11. Carolina In My Mind
12. Country Road
13. Nothing I Can Do [Ben Taylor]
14. Sweet Baby James
15. Mexico

[Moran Theatre, Jacksonville FL, March 22]
16. Carolina In My Mind
17. Country Road
18. Something In The Way She Moves
19. Sweet Baby James
20. Up On The Rood [Carole King, Gary Goffin]
21. Fire And Rain

[Progress Energy Center Raleigh Memorial Auditorium, Raleigh NC, March 26]
22. Carolina In My Mind
23. Listening [Ben Taylor]
24. Oh Brother [Ben Taylor]

25. I Was A Fool To Care
26. Not Alone [Ben Taylor]
27. Country Road
28. Don't Be Sad 'Cause Your Sun Is Down [Stevie Wonder, James Taylor]
29. Nothing I Can Do [Ben Taylor]
30. Don't Let Me Be Lonely Tonight
31. October Road
32. Dirty [Ben Taylor]
33. Sweet Baby James
34. Up On The Roof [Carole King, Gary Goffin]
35. Mexico
36. Fire And Rain
37. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]

[Chrysler Hall, Norfolk VA, March 29]
38. Something In The Wa She Moves
39. Carolina In My Mind
40. Your Smiling Face
41. Country Road
42. Don't Let Me Be Lonely Tonight
43. Sweet Baby James
44. Up On The Rood [Carole King, Gary Goffin]
45. Mexico
46. Fire And Rain

[Hershey Theatre, Hershey PA , Aprl 1]
47. You Can Close Your Eyes
48. Next Time Around [Ben Taylor]

 

2011年の春のツアーは、2月26日から4月2日までアメリカ中南部18都市を回るものだったが、スペシャル・ゲストとして長男のベン・テイラーが参加した点で特別なものとなった。コンサートの全貌を捉えた音源・映像は出回らなかったが、観ることができた複数のオーディエンス・ショットからコンサートの様子を窺い知ることができた。以下は初日2月26日タルサのセットリスト。

[1st Set]
You Can Close Your Eyes
Dangerous Girl
Angry Blues
Carolina in My Mind
Listening
You Could Be Mine
(I was a) Fool To Care
Your Smiling Face
You're Not Alone
When I Was A Cowboy
Country Road

[2nd Set]
Your Boyfriend's a Really Nice Guy
Don't Be Sad Cause Your Sun Is Down
Nothing I Can Do
October Road
Dirty
Don't Let Me Be Lonely Tonight
Oh Brothers
Handy Man
America
Mexico

[Encore]
Fire and Rain
How Sweet It Is (to be loved by you)
Next Time Around

以下は、ツアー終盤4月1日ハーシーのセットリスト。

[1st Set]
Something in the Way She Moves
You Can Close Your Eyes
Dangerous Girl
Angry Blues
Carolina In My Mind
Listening
Oh Brothers
I Was a Fool to Care
Your Smiling Face
You're Not Alone
When I Was a Cowboy
Country Road

[2nd Set]
Boyfriend
Steamroller
Americas
Don't Be Sad Cause Your Sun Is Down
Nothing I Can Do
Don't Let Me Be Lonely
October Road
Dirty
Hungry

Sweet Baby James
Up on the Roof
Mexico

[Encore]
Fire & Rain
How Sweet It Is


[オクラホマ州タルサの映像]
ブラディ・シアターは 1914年築の古い建物で、収容人数は4,200名。映像はステージ向かって左のバルコニー席からのもの(1, 5のみ正面後ろからのスマホ等による縦長映像)で、バルコニー席からの撮影は画質・音質が良く、臨場感もたっぷり。1.「You Can Close Your Eyes」は途中から。JTの左にベンが座りハーモニーをつけている。2.「Dangerous Girl」は、アルバム
The Legend of Kung Folk [Part 1 (The Killing Bite)]」 2008に収録されていた。マイケル・ランドウは、この曲と3.「Angry Blues」でギブソンSGをボトルネックで演奏している。ステージ右端でキーボードを弾く見慣れない若者はベンジャミン・トーマスで、ベン・テイラー・バンドのメンバーで、曲によってはパーカッションも担当。JTの曲では演奏しないか、控えめなプレイに終始している。4.「Carolina In My Mind」はベンがセカンド・ヴァースを歌う。5.「When I Was A Cowboy」はレッドベリーで有名な曲で、ジム・クウェスキン・ジャグ・バンドもマリア・マルダーの歌でカバーしていた。ここではJTとベン二人だけの演奏。6.「Don't Be Sad 'Cause Your Sun Is Down」は、切れ目なく 7.「Nothing I Can Do」(2005年のアルバム「Another Run Around The Sun」)に続く。メドレーで演奏されるだけあって、前の曲と雰囲気が似ているが、それなりに良い曲だと思う。8.「Sweet Baby James」は上記のセットリストには載っていないが、この場で歌われた事は間違いないので、他のセットリストから推定して、この曲順に入れた(正確な所は不明)。コーラスでベンがハーモニーを付ける。9.「Fire And Rain」の前、二人がオーディエンスに挨拶してベンが退場、JT一人で歌う。アンコールの 10.「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」では、ベンはギターを持たずに歌い、セカンド・ヴァースではリードを取る。撮影角度の関係でステージ左(ジミージョンソンとジェフ・ベプコ)が見えないが、それ以外は大変よくできた映像だ。

[インディアナ州サウスベンドの映像」
11.「Carolina In My Mind」は、ステージやや左下とやや右上(2階席)からの撮影と2つの映像があり、左からの画像には手振れはあるが、どちらもアップで良質。12.「Country Road」は、JTが歌うサード・ヴァースからの映像だけど、後半の二人の掛け合いが楽しめる。13.「Nothing I Can Do」は、約1分40秒の断片。 14.「Sweet Baby James」、15.「Mexico」はいずれも完奏。

[フロリダ州ジャクソンヴィルの映像]
アップではあるが、カメラの前の観客の頭が画面をブロックしており、特にステージ左のベンの姿が見えにくい場面もある。曲的には、他の映像でも観れるJTの代表曲しかないので、ここでの説明は省略した。

[ノースキャロライナ州ラレイの映像]
23.「Listening」は2012年のアルバム・タイトル曲で、コーラス部分JTのバックボーカルが加わる。24.「Oh Brothe」も「Listening」 2012 からの曲。これら2曲は途中から始まるのが残念。25.「I Was A Fool To Care」は、JTのライブ・レパートリーとしては比較的珍しい曲。26.「Not Alone」はアルバム「Listening」2012 からで、有難い完奏版。ここでもJTがバックボーカルで参加。27.「Country Road」は、セカンド・ヴァースを歌うベンをじっくり拝むことができる完奏版。ベンは本ツアーでオルソンの他に小型のギターを弾いているが、これはロンドン在住の日本人ルシアー、奥村健治氏の作品。ベンがイギリス滞在中にある種のエクササイズを受けたところ、そのインストラクターが奥村氏のパートナーだった縁で知り合い、見せられたギターを気に入って購入したという。ヘッドストックに施された丸いインレイは、ケイト・テイラーと当時のJTのガールフレンドが考案したテイラー家の家紋で、ベンの体にはそのタトゥーがあるそうだ。本映像でJTの背後に位置してドラムを叩くチャド・ワッカーマン(1960- )は、ジャズ、フュージョン、ロックと幅広い分野で活躍する人で、フランク・ザッパのバンドで名を上げた後、多くのセッションに参加。特にアラン・ホールズワースのバンドでは、ベースのジミー・ジョンソンと組んで鉄壁のリズムセクションを組んだ人だ。ここでは控えめで堅実なプレイに徹している。30.「Don't Let Me Be Lonely Tonight」は、JTが一人でしっとりと歌い、エンディングのジェフ・ベブコのエレキピアノ・ソロ(姿は映らないけど)が聴きもの。31. 「October Road」は、いつもの通りアーノルドはハーモニーを付け、ベンはギター伴奏に専念。32.「Dirty」は、レゲエ調のリズムによる曲で、アルバム「Listening」2012 から。JTはコーラスパートのバックボーカルの他に、ソロで歌うパートもある。33. 「Sweet Baby James」は、イントロがカットされている。34.「Up On The Rood」は、ベンがファースト・ヴァースを歌う他、コーラスではJTと一緒に歌う。 ラレイの映像は、ほとんどがJTとベンのアップで、時々手振れが入るが、画質・音質ともに良い出来。曲数が多く、ベンの曲も多く含み、大半が完奏版であるのが有難い。36.「Fire And Rain」、37.「How Sweet It Is」は同じ日に撮影されたもうひとつの映像で、画質が暗めで落ち着いた色調のもの。後者は途中から始まる不完全版であるが、少し遠くからステージ全景を撮影しており、もうひとつの映像では観ることができないジェフ・ベブコやマイケル・ランドウ、ベンジャミン・トーマスがしっかり写っており、両者の映像を合わせることで当日のコンサートの模様をイメージすることができる。


[ヴージニア州ノーフォークの映像]
暗めで落ち着いた感じの映像(44.「Mexico」のみ別者による遠方からの撮影)。本ツアーでの 38.「Something In The Wa She Moves」、40.「Your Smiling Face」が観れるのはここだけであるが、曲目では特筆するべきものはない。ステージの下から見上げるようなアングルで撮影したもので、ほとんどがJTとベンのアップ。イントロなどで一部の曲にカットはあるが、画面・音ともに十分楽しめるクオリティー。

[ペンシルヴァニア州ハーシーの映像]
遠くからのピンボケ気味の映像であるが、他の場所にはないベンの曲48.「Next Time Around」(アルバム「Listening」2012 から)が貴重。

まとまった形での音源・映像が残されなかったので残念であるが、当時のセットリストを元に、上記のオーディエンス映像をまとめて観ることにより、コンサートの様子を疑似体験できる。

[2015年11月作成]


 
 James Tylor At Carnegie Hall A Gala Celebrating 120 Years Of Carnegie Hall 2011
 
James Taylor: Acoustic Guitar, Vocal
Michael Landau: Electric Guitar, Acoustic Guitar
Larry Goldings: Piano, Organ, Keyboards
Jimmy Johnson: Electric Bass
Chad Wackerman: Drums
Bashiri Johnson: Percussion
Walt Fowler: Horns
Lou Marini Jr.: Horns

Andrea Zone: Back Vocal, Fiddle
Kate Markowitz: Back Vocal
Arnold McCuller: Back Vocal

Brian Whitted : Piano (9)
Peter Martin: Piano (7)
Ernie Collins: Upright Bass (3, 7, 9, 10, 11, 12,14), Tuba (4)
Brandon Ridenour: Piccolo Trumpet (15)

Steve Martin: Five St. Banjo (3, 14, 16), Vocal (14)
Vince Bruce: Rope (4)
Members Of The Tanglewood Festival Chorus: Chorus (6, 16, 17)
Dianne Reeves: Vocal (7)
Kevin Pollak: Talk (8)
Bette Midler: Vocal (9)
Barbara Cook: Vocal (10, 11, 12)
Sting: Vocal (15, 16, 17)
Young People's Chorus Of New York City: Chorus (17)
Kim Taylor: Harmony Vocal (18)

Charles Floyd: Music Director, Vocal Arragements

1. There's No Business Like Show Business [Irving Berlin]
2. The Frozen Man
3. Foggy Mountain Breakdown (Instrumental) [Earl Scruggs] Steve Martin
4. When I Was A Cowboy [Huddie Ledbetter, Alan Lomax, John A. Lomax] Vince Bruce
5. Sweey Baby James
6. My Traveling Star
7. Don't Explain [Billie Holiday, Arthur Herzog Jr.] Dianne Reeves
8. Lenny Bruce Midnight Concert At Carnegie Hall, Kevin Pollak
9. Pirate Jenny [Kurt Weill, Marc Blitzstein (After Bertolt Brecht)] Bette Midler
10. Nashville Nightingale [George Gershwin, Irving Caesar] Barbra Cook
11. Here's To Life [Artir Butler, Phyllis Molinary] Barbara Cook
12. Not While I'm Around [Stephen Sondheim] Barbara Cook & James Taylor
13. Carolina In My Mind
14. Jubilation Day [Steve Martin] Steve Martin
15. Penny Lane [Paul McCartney, John Lennon] Sting
16. How Sweet It Is (To Be Loved My You) [Brian Holland, Lamont Dozier, Eddie Hollad Jr.]
17. Shower The People
18. You Can Close Your Eyes With Kim Taylor
19. Over The Rainbow [Harrold Arlen, Yip Harburg]

収録:  2011年4月12日 Carnegie Hall, New York
Youtube公開: 2021年7月2日

注: 7, 8, 9, 10, 11は、JT非参加

  

音楽の殿堂カーネギーホールの設立120周年を記念したイベントのひとつで、豪華なゲストの参加を得て、フォーク(ブルーグラスを含む)、ジャズ、ブロードウェイ、ポップスなど多様なジャンルのアーティストのコンサートを積極的に開催した歴史を総括し、さらにJT自身の同ホールでのコンサート・デビュー40周年を組み合わせた内容となっている。本映像は、長らくユーチューブで一部の曲についてのオーディエンス・ショットを観れるのみであったが、10年後の2021年7月になって、カーネギーホールがほぼ全貌をユーチューブに公開したため、プロショットで観ることができた。

ステージに登場したJTは、弾き語りで 1.「There's No Business Like Show Business (ショウほど素敵な商売はない)」を歌い始める。この曲はアーヴィング・バーリンが 1946年のミュージカル「アニーよ銃を取れ」のために書いた曲で、1950年の映画では、射撃の上手い田舎娘アニーが旅回りの一座に誘われるシーンで歌われていた。その後1954年に同タイトルの映画 (マリリン・モンローが脇役として出演した映画としても有名)が制作され、そこではエセル・マーマンが歌っていた。まさに本コンサートの趣旨にピッタリのオープニングだ。ステージ背後の白い壁にプロジェクターで投影された芸人たちの写真のコラージュが素晴らしい。JTはヴァース(導入部分)から丁寧に歌い、途中からピアノが加わり、後半からリズムセクションが入る。10年後に発表された「American Standard」の雰囲気そのもので、唯一の違いは、伴奏パートナーがギターのジョン・ピザレリでなく、ピアノのラリー・ゴールディングスであること。ここでJTは、当ホールに出演した人々はそれぞれのジャンルにおける探求者であったと述べ、同じ探求者として南極に行った父に言及、そして同地から図らずも戻るはめになった男の話として 2.「The Frozen Man」を歌う。

次にJTは同ホールにおけるフォーク音楽、ハリー・べラフォンテ(JTが会場に居る本人を紹介する)、ピート・シーガーとバンジョーについて話した後に、バンジョー奏者の友人としてスティーブ・マーチン(1945- )を紹介する。彼は、スタンドアップ・コメディーで名声を確立した後、映画・執筆にも手を広げた才人。私個人としては、キャスリーン・ターナーと共演した 1983年の「The Man With Two Brains (二つの頭脳を持つ男)」が、ハチャメチャで面白かったな〜。そして2000年代以降は、スタンドアップ・コメディーで小道具として使っていた5弦バンジョーの演奏にも注力し、アルバム製作やコンサート活動を行っている。彼はブルーグラスとして初めて本ホールの舞台に立ち、ライブアルバムを発表したフラット・アンド・スクラッグスの代表作である3.「Foggy Mountain Breakdown」を演奏する。ウッドベースを弾くアーニー・コリンズは、ブロードウェイ、ビッグバンド・ジャズの世界で、ベース、チューバ、トロンボーン奏者として活躍する人。スティーブの鮮やかなプレイは言うまでもないが、アコギを持ったマイケル・ランドウが見事なフラットピックのソロを弾くのに驚いてしまった。どんなスタイルもこなす、この人の引き出しは本当に深い。そしてJTはいつものフィンガーピッキングで楽しそうに弾いている。そしてアンドレア・ゾーンも手慣れた感じで、フィドルのソロを聞かせてくれる。

ブルースのコーナーでは、ルイジアナ州の刑務所で見いだされ、同ホールでコンサートを開くまで認められたレッドベリーの話になり、JTは愛用のカウボーイハットを被って、レッドベリーが1946年に発表した 4. 「When I Was A Cowboy」を歌う。実は、この曲はJTが1980年代後半のコンサートで歌っていたもの。アーノルド・マックラーがハーモニーを付け、アーニー・コリンズはチューバを吹き、マイケル・ランドウはスライドギター、パーカッションのバシリ・ジョンソンはジャグバンドで使用するウォッシング・ボードを演奏している。彼はニューヨークを拠点として、数多くのセッションに参加しており、JTの共演は、2002年の AOL@Sessions (「その他映像」参照)や、2015年10月14日ホワイトハウスでオバマ大統領夫妻列席で行われた「A Celebration Of American Creativity」(Various Artists、JTは2曲参加) などがある。演奏中に舞台の右端で、超人的なカウボーイの投げ縄芸を披露するのはヴィンス・ブルース。彼はイギリス生まれの英国人でありながら、本芸をマスターして全米のロデオ大会やショーで活躍している人。そして自然な流れで 5.「Sweey Baby James」に移ってゆく。次にボストン・ポップスやポストン交響楽団でコーラスを担当するタングルウッド・フェスティバル・コーラスが招かれ、6.「My Traveling Star」を歌う。JTの右後ろでじっとしている人は、本コンサートの指揮者・音楽監督であるチャールズ・フロイド。

ジャズのコーナーでは、JTはジャズボーカル界の重鎮ダイアン・リーヴスを紹介し、彼女はビリー・ホリデイ1944年の作品 7. 「Don't Explain」をエモーショナルに歌う。ここでは交代したピアニストのみの伴奏で、JTは非参加。その後スティーブ・マーチンが再登場し、同ホールにおけるレニー・ブルース(1925-1966) の「Midnight Concert」について語り、コメディアンのケヴィン・ポラックがその再現をする。日本人である私にはわかりにくい部分であるが、政治・宗教・性・人権・貧困などのタブーを破った語りで、その後のアメリカの表現の自由に大きな影響を与えたという。続くブロードウェイのコーナーではベッド・ミドラー(1945- )が登場し 9.「Pirate Jenny」を歌う。この曲は、ドイツのブレトルト・ブレヒト(1898〜1956) が書き、カート・ウェイルが作曲した音楽劇「三文オペラ」(「マック・ザ・ナイフ」が有名)で歌われた曲で、マルク・ブリッツスタインが英語の訳詞を担当した。登場人物が宴会の最中に歌う曲で、酷使されているホテルのメイドが、実は海賊の首領で、襲ってきた海賊船の砲撃で街は焼き払われ、彼女を虐げた男たちは処刑されるという妄想的な内容の歌だ。ここでもピアニストが変わり、ベッドは演劇的な感じで巧みに歌う。

次に登場するのが、ブロードウェイの歌曲を歌わせたらピカイチというバーバラ・クック(1927-2017)。登場する際に流れるメロディーは「Till There Was You」で、彼女の主演で一世を風靡しミュージカル「Music Man」 1957で彼女の代名詞となった曲。日本では、1963年にザ・ビートルズがポールのボーカルでカバーしたことで有名になった。また1960年の映画「アパートの鍵貸します」(ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン主演、ビリー・ワイルダー監督)で、主役男性(ジャック)が女性(シャーリー)を観劇に誘うのがこの作品だった(結局すっぽかされてしまうのだが......)。彼女の登場で、場内の雰囲気が一変するのが明らかで、彼女が当地で如何にに尊敬されていたかがよくわかる。最初に歌うのが 10.「Nashville Nightingale」で、ジョージ・ガーシュウィンが1923年のミュージカル「Nifties Of 1923」のために書いた曲。続く11.「Here's To Life」は、シャーリー・ホーンが1992年に歌った曲で、歌詞とメロディー、そして歌唱の全てが素晴らしく感動的だ。ここでJTが加わり、本コンサートのハイライトと言える 12.「Not While I'm Around」を二人で歌う。これはスティーヴン・ソンドハイムが書いたミュージカル「スウィーニー・トッド」1979からの曲だ。19世紀のロンドンを舞台とした殺人鬼の伝説に基づく話で、理髪師が客の喉を掻き切って地下室に落とし、共犯の女が死体を解体してその肉をパイに混ぜて売りさばくというホラー。女に育てられた孤児が、理髪師の行為に疑念を抱き、女に対し「何があっても僕が貴女を守る」と歌い、女が当惑する歌で、2007年のティム・バートンによる映画化でそのシーンを観ることができる。歌い終わった後、女が持っていた財布が以前殺された人のものであったことに気が付き、孤児が驚く様が切ない。バーバラ、JTのやりとりは、とても繊細で心を揺さぶるものがある。これは間違いなくお宝映像と言える。

ここで一息つく感じで、彼が当ホール最初のコンサート(1971年)で歌ったという 13.「Carolina In My Mind」が披露された後、バンドメンバーの紹介があり、スティーヴ・マーチンが再登場して、彼がSteve Martin & The Sreep Canyon Rangersの名義で発表したアルバム「Rare Bird Alert」 2011に収録された彼のオリジナル14.「Jubilation Day」をバンジョーを弾きながら歌う。そして1964年にザ・ビートルズが同ホールで演奏した話が出て、スティングが登場し15.「Penny Lane」を歌う。間奏のピッコロ・トランペットは、カナダ人のブランデン・ライドナウアーが吹いている。ここでタングルウッド・フェスティバル・コーラスが再登場して16.「How Sweet It Is (To Be Loved My You)」が歌われる。ユニークなのは、曲のイントロとエンディングで、スティーブのバンジョーの独奏が入ること、スティングがセカンド・ヴァースを歌っている(!)ことだ。この後クリントン大統領が登場し、若手音楽家育成のために同ホールが設立したMusic Instituteへの賛辞と協力要請のプレゼンテーションを行う。そしてコンサートはフィナーレに突入し、17.「Shower The People」が始める。曲の途中で会場の通路に子供たち(Young People's Chorus Of New York City)が現れ、大合唱になる。なおエンディングのボーカルは、スティングといつものアーノルド・マッカラーが分け合っている。そしてゲストが退場した後、JTの奥様キムが登場し、二人で18.「You Can Close Your Eyes」をしっとりと歌う。これで終わりかなと思ったら、ピアニストを除く伴奏者が退席して、最後に「このホールの賛歌」として19.「Over The Rainbow」が歌われる。感動的....。最後のクレジットの表示で流れるのは、「American Standard」 2020 A23の追加曲として発表された同曲だ。

自己のレパートリーと、同ホールにゆかりのある豪華ゲストの参加による様々なジャンルの音楽を組み合わせて、カーネギーホールへのお祝いを構成したユニークなコンサートとなった。


[追記 1 2021年8月]
Youtubeでは、本映像は題名に「Full Concert」と記載されたが、実際は一部の曲がカットされている。視聴者から指摘があったようで、しばらく後にその文言は削除された。カットされた曲は以下のとおり。

[ Medley: @ Some Of These Days, A After You've Gone, B My Yiddishe Momme By Bette Midler (2. と3. の間)]

20世紀前半で最も人気が高かったエンターテイナーの一人、ソフィー・タッカーが歌った曲のメドレーで、作者および発表年は @ Shelton Brooks 1926年、A Turner Layton, Henry Creamer 1927年、B Jack Yellen, Lew Pollack 1925年。@Aはその後多くのジャズ奏者がカバーしたが、個人的にはジャンゴ・ライハルト @1935年、A1936年(歌付き !)の録音が最高。Bはロシア生まれのユダヤ系移民だった彼女が歌い、母親に対する愛に満ちた普遍的な内容で大ヒットした。後にコニー・フランシス、トム・ジョーンズ、ニール・セダカ等がカバーしている。古い歌のカバーを十八番とするベットが活き活きと歌う様が、断片ではあるがオーディエンスショットによるYoutube映像で見ることができる。

[ Sweet Blindness (Laura Nyro) By Bette Midler (12. と13. の間)]

ニューヨークに縁の深いローラ・ニーロの代表作のひとつで、1968年のアルバム「Eli And The Thirteenth Confession」に収録され、ザ・フィフス・ディメンションにより全米13位のヒットを記録した。これもYoutubeでオーディエンスショットの断片を観ることができる。

いずれも、観る限りにおいて、かなり良い出来のように思われ、何故割愛されたかは不明。

[2021年8月作成]

[追記 2 2021年8月]
Youtubeで、3, 4, 12, 14のスタジオ・リハーサルの模様を観ることができる。特に4.では、ヴィンス・ブルースからやり方を教えてもらったJTが、投げ縄を試してみるシーンが面白い。

[追記 3 2021年8月]
約1週間後の4月20日に、同ホールで彼の曲を主体としたコンサートが開催され、そこにはロバートクレイ、アリソン・クラウス、ジェリー・ダグラス、ダニー・クーチ、トニーベネットがゲストで登場した。

 
Jacob's Pavilion, Cleveland 2012  
 


James Taylor: Vocal, Guitar
Dean Parks : E. Guitar, A. Guitar, Pedal Steel Guitar
Larry Goldings : Keyboards
Jimmy Johnson : Bass
Steve Gadd : Drums
Luis Conte : Percussion
Walt Fowler : Trumpet, Frugelhorn, Synthesizer
Lou Marini Jr.: Sax, Flute

Jim Gilstrap, David Lasley, Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin

[First Set]
1. Hey Mister, That's Me Up On The Jukebox
2. That's Why I'm Here  
3. Carolina In My Mind
4. Country Road  
5. The Frozen Man
6. Handy Man [Otis Blackwell, Jimmy Jones]    
7. Little More Time With You  
8. Steamroller Blues
9. Slap Leather   
10. Sweet Baby James
11. Fire And Rain
12. Sun On The Moon

[Second Set]
13. One Man Parade  
14. Lighthouse
15. Anywhere Like Heaven
16. (I'm A) Roadrunner [Edward Holland Jr., Lamont Dozier, Brian Holland] 
17. Mexico
18. Another Day
19. Secret O' Life 
20. Your Smiling Face
21. Shower The People  
22. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
23. You've Got A Friend  [Carole King] 
24. The Twist  [Hank Ballard]
24. You Can Close Your Eyes  

収録: 2012年7月9日 Jacob's Pavilion, Cleveland, Ohio



ジャコブズ・パビリオンは、オハイオ州クリーブランドのエリー湖に注ぐカヤホガ川河口の港湾施設を再開発した地域にある野外劇場で、収容人員は約5千人。オーディエンス撮影で、画像のほとんどがJTのクローズアップであり、彼の後ろにいるルイス・コンティ以外のメンバーはほとんど写らないので動画としては単調であるが、手振れが少ない良い画質で音質もまあまあなので、それなりに楽しむことができる。また当日の演奏曲が全て収録されており(セットリスト資料より確認済)、公演全貌の映像として有難い。

本コンサートは、2012年6〜7月に行われたフルバンドによる北アメリカツアーの模様を捉えたもので、バックバンドに常連でない人がいるのがユニーク。ギタリストのディーン・パークス(1947- )は、西海岸で活躍したセッション・ミュージシャンで、最近はナッシュビルでの仕事が多いそうだ。特にリズム・ギターの評判が高く、スティーリー・ダンの傑作「Aja」1977でのラリー・カールトン(リードギター)とのコラボレイションは、語り草になっている。他にクルセイダーズ、マイケル・ジャクソン、バーバラ・ストレイサンドなど無数のセッションに参加。ユーミン、矢野顕子など日本のアーティストのアルバムにも多く参加しており、テレビや映画音楽の仕事も多い。ただしJTとの縁は少なく、2006年の「A Musicares Person Of The Year Tribute Honoring James Taylor」のバックバンドでエレキギターとアコースティックギターを弾いている位だ。セッション参加作品の共演では、「Bill LaBounty」1982 C37、「Crosby/Nash」2004 C82等がある。本コンサートでも派手なギターソロはなく、堅実なサポートに徹しており、ペダル・スティール・ギターの腕前も披露している。アーノルド・マックラーの代役ジム・ギルストラップ(1946- )は、テキサス州ピッツバーグ出身のセッション・ボーカリストで、クィンシー・ジョーンズ、 ボズ・スキャッグスのセッションに参加。最も有名なものは、スティーヴィー・ワンダーの「Talking Book」 1972で、シングルカットされて全米1位となった「You're A Sunshine Of My Life」では、冒頭の1節を単独で歌っている(ちなみに彼に続いて歌う女性はラニ・グローブスで、彼女はJTのアルバム「Never Die Young」1988 A13に参加している)。彼自身の作品では、1975のR&Bヒット「Swing Your Daddy」などがある。代役らしく控えめなパフォーマンスだ。

コンサートは、懐かしい 1.「Hey Mister, That's Me Up On The Jukebox」から始まる。屋根付きの野外ステージの背景には青空が見える。最初はカメラのセッティングが定まっていないようで、手振れが激しいがそのうちに落ち着く。途中からバンドとコーラスが加わるが、映像のほとんどはJTのクローズアップ(および背後に位置するルイス・コンティ)で、一瞬だけペダル・スティールを弾くディーン・パークスが映る。2.「That's Why I'm Here」では、コーラス隊4人の姿を少しだけ観ることができる。アップルでのレコーディングのお馴染みエピソードを語った後、3.「Carolina In My Mind」が歌われる。ディーンはペダル・スティールを弾いている。ディーンの紹介のシーンでは、カメラが弾いてステージ全景が見える。その後もJTのクローズアップが中心で、たまにカメラが動いて他のプレイヤーが映る感じ。 4.「
Country Road」の出だしでは、背後にいるルイスが目薬をさしているのが見える。間奏のギターソロはディーンのクローズアップが、エンディングではフィドルを弾くアンドレア・ゾーンが映る。スティーブ・ガッドの紹介が終わり、アンドレアにかかろうとした時、大きな汽笛の音が聞こえ、皆大笑い。JTは「Ahoy !」と反応し、プレイヤー達が同じ音を出して囃したてる様が面白い。JTが 5.「The Frozen Man」の由来を説明中に、先ほど汽笛を発した船「Pathfinder」が出航したようで、演奏の間に巨大な船体がステージ背景を動いてゆくのが見える。北極で遭難した船乗りを歌った曲なので、因縁めいた感じがするが、あまりに出来過ぎているので、確信犯でやっているのかも............  

6.「Handy Man」のディーンのエレキギターのプレイは、他のギタリストと異なるもので、聴いていてとても興味深い。ここでもコーラス隊のクローズアップがある。7.「Little More Time With You」では、間奏でアルトサックス・ソロを披露するルウ・マリニが映る。JTは8. 「Steamroller Blues」で水色のテレキャスターに持ち替える。間奏ソロはウォルト・ファウアーのフリューゲルホーンとラリー・ゴールデンのオルガン、ディーンのエレキギターの順。そしてメドレーで 9.「Slap Leather」に続く。ここでの間奏ソロはラリーのピアノだ。アコギに戻ったJTの10.「Sweet Baby James」は、ラリーの(恐らく)足こぎオルガンとディーンのペダル・スティールに囲まれての演奏。11.「Fire And Rain」の後半では、スティーブ独特のハイハットのプレイを聴くことができる。JTはファーストセット最後の曲と言って、セットリストの板をオーディエンスに見せて、12.「Sun On The Moon」を歌う。

セカンドセットになると、日は落ちて空は真っ暗になっている。 13.「One Man Parade」を歌うJTはハンチング帽をかぶっている。後半のソロはルウのフルートとウォルトのフリューゲルホーン。 15.「Anywhere Like Heaven」は、「ラスヴェガスを初めて訪れたときに作った」と紹介される。間奏ではラリーのピアノに続いてディーンのペダル・スティールのソロが聴ける。ジュニア・ウォーカー1966年のR&B ヒット16.「 (I'm A) Roadrunner」でのJTは、ギターを置いてハーモニカを吹きながらの歌唱。17.「Mexico」でのディーンは、前半はアコギ、後半はエレキギターを弾いている。サルサ調のエンディングでは、ルイス・コンティが頑張っていますね。18. 「Another Day」、19.「Secret O' Life」はメドレーでの演奏。終盤にかかり、20.「Your Smiling Face」、21.「Shower The People」という代表曲が並ぶ。アーノルドがいないので、後者のエンディングのソロボーカルはJT本人がとっている。コーラス隊、ブラスセクションが活躍し、ルウの間奏ソロが入る 22.「How Sweet It Is」の後アンコールとなり、23.「You've Got A Friend」をオーディエンスと一緒に歌い、続けてチェビー・チェッカー1960年のヒット「The Twist」を楽しそうに演奏している。最後はコーラス隊を従えた24.「You Can Close Your Eyes」で、しっとりとした雰囲気でコンサートが終了する。  

珍しいバンドメンバーによる、ステージの模様が楽しめる。



 
 
 Boston Strong Concert   2013
 
James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Carole King : Piano (1,2,5,6,7), Vocal
Jimmy Buffett : Guitar (8), Vocal (8)
Michael Landou : Electric Guitar
Robbie Kondor : Keyboards, Piano (3,4,8,9)
Jimmy Johnson : Bass  
Steve Gadd : Drums
Eric Darken : Percussion

Mac McAnally : Guitar (3,4,9), Back Vocal (3,4,8,9)
Kate Markowitz : Back Vocal
Andrea Zonn : Back Vocal, Violin (1,7)
Kim Taylor : Back Vocal


1. Sweet Baby James 
2. So Far Away [Carole King]
3. Shower The People
4. How Sweet It Is (To Be Love By You) [Holland, Dozier, Holland]
5. Will You Still Love Me Tomorrow [Gerry Goffin, Carole King]
6. Sweet Seasons [Carole King, Toni Stern] 
7. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
8. You've Got A Friend  [Carole King]  
9. Mexico

収録: 2013年5月31日、TD Garden, Boston
放送: 2013年6月29日、WCVB TV

 

2013年4月15日、ボストン・マラソンの最中に発生した爆破事件は、3名の死者と282人の負傷者を出した。捜査の結果監視カメラの映像などから犯人が特定され、18日に2人の犯人のうち1人を射殺、1人を逮捕したが、その前にマサチューセッツ工科大学の警備警官が犯人に射殺された。アメリカ国内の大規模テロ事件としては2001年の同時多発テロ以来で、アメリカおよび世界に大きな衝撃を与えた。本コンサートは、事件の被害者の支援のための資金集め、およびボストンおよびアメリカ市民の鼓舞のため、2013年5月31日に同地のTD Garden (バスケットボール、アイスホッケーの競技場)で開催されたチャリティー・コンサートで、その模様は6月29日WCVBテレビから全米に放送され、一連の収益はThe One Fund Bostonに寄付された。出演者は、ボストン、エクストリーム、J. ガイルズ・バンド、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック、ジミー・バフェット、エアロスミス等で、JTはキャロル・キングと一緒に参加した。

フットボールのクォータバックとして活躍したダグ・フルーティー(Doug Flutie)、スポーツキャスターのクリス・バーマン(Chis Berman)に紹介され、JT,Cとバンドが登場、1.「Sweet Baby James」を演奏する。最初はペダルスティール・エフェクトのギターを伴う弾き語りで、コーラスではCKがハーモニーをつける。セカンドヴァースからはバンドが加わり、アンドレアがバイオリン、リユニオン・ツアーでも参加していたロビー・コンドがアコーディオン(またはシンセサイザー)を弾いている。歌詞の「Stockbridge to Boston」という部分では大きな歓声が起きる。2.「So Far Away」でのCKの歌声はかすれ気味であるが、何度聴いてもジ〜ンとくる曲だ。ジミー・ジョンソンのベースがオリジナル録音に忠実なランに徹し、JTのアコギの音もしっかり聴こえるので、伴奏も含めて聴きごたえ十分。3. 「Shower The People」で、CKはコーラス隊と並んでバックで歌う。その中にはJTの奥様のキムもいる。そしてJTの左後ろで歌う髭もじゃの男性はマック・マクナリーだ。彼はカントリー音楽界で活躍する人で、シンガー・ソングライターとして自己のアルバムを発表する他に、セッション・ギタリスト、プロデューサー活動している。ここでの参加は、彼がジミー・バフェットのバンド「Coral Reefer Band」のメンバーという縁だからだろう。エンディングのソロはJT自身が担当。4.「How Sweet It Is」では、CKを含むシンガー達はステージの前面で歌い、間奏はロビー・コンドーとマイケル・ランドウ。スモールセットということで、いつもに比べてさっぱりしたエンディングだ。コンガを叩いているのはエリック・ダーケンで、彼もカントリー音楽界で活躍するセッション・ミュージシャンであり、ジミー・バフェットのバンドメンバーだ。しっとりとした 5.「Will You Still Love Me Tomorrow」、明るい6.「Sweet Seasons」とCKの曲が続き、 7.「Up On The Roof」、8.「You've Got A Friend」はふたりのデュエットとなる。リユニオン・ツアーとバックバンドの顔ぶれが異なるので、リズムセクションとリードギターのグルーヴ感の違いを楽しむことができるのが、本コンサートのミソのひとつだ。8.「You've Got A Friend」では、最初に歌うCKが間違えて2番目の歌詞を歌ってしまうが、顔色も変えずに乗り切っているのはさすが。ここでおCKは退場。

9.「Mexico」は、ジミー・バフェットとの繋ぎで演奏され、最初はジミーが、次にジェイムスがリードをとる。二人の共演は、レコードではあったが、ライブに接するのは初めてだ。この後ジミー・バフェットが彼のバンドメンバー2人(マック・マクナリー、エリック・ダーケン)、JTバンドをバックに3曲歌う。コンサートのトリはエアロスミスで、フィナーレでは皆と一緒にJTとキムも登場するが、ステージに立っているだけで歌わない。ビートルズの「Come Together」で、スティーブン・タイラーがジミー・バフェットと一緒に歌う異色の取り合わせがある。

2010年のリユニオン・ツアー以来、3年ぶりの共演。



Mormon Tabernacle Choir Concert   2013 (映像 & 音源)   



James Taylor : Acoustic Guitar, Vocal
Charles Floyd : Piano
Jimmy Johnson : Bass
Nick Halley : Drums, Percussion

Mack Wilberg : Conductor
Mormon Tabernacle Choir : Chorus (2,8,9,10
Utah Symphony Orchestra : Orchestra (1,3,4,5,6,10

1. Carolina In My Mind
2. Lonesome Road
3. Fire And Rain
4. Getting To Know You [Richard Rogers, Oscar Hammerstein]
5. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
6. The Water Is Wide [Traditional]
7. Secret O' Life
8. Shed A Little Light
9. Traveling Star
10. Shower The People
11. You've Got A Friend [Carole King]
12. Sweet Baby James
13. You Can Close Your Eyes


収録: 2013年9月6〜7日、Salt Lake Tabernacle, Temple Square, Salt Lake City, Utah


[テレビ放送版]

Mormon Tabernacle Choir : Chorus (14,15,17,19,20,21,24,26)
Richard Elliott : Pipe Organ

14. Saints Bound For Heaven [American Folk Hymn] (Mormon Tabernacle Choir)
15. Down To The River To Pray [American Folk Hymn] (Mormon Tabernacle Choir)

16. Up On The Roof [Gerry Goffin, Carole King]
17. Lonesome Road
18. The Water Is Wide [Traditional]
19. When The Saint Marchin' In [African American Spiritual] (Mormon Tabernacle Choir)
20. He's Got The Whole World In His Hand [African American Spiritual] (Mormon Tabernacle Choir)

21. Shed A Little Light
22. You Can Close Your Eyes
23. I Got Rythmn [George Gershuwin] (Richard Elliott)
24. Seventy Six Trombone [Merredith Willson] (Mormon Tabernacle Choir)
25. You've Got A Friend [Carole King]
26. Shower The People


放送: 2013年4月16日、5月30, 31日 BYUTV


モルモン・タベルナクル・クワイヤはソルトレイク・シティを本拠地とするモルモン教の合唱団。360人からなるメンバーはすべてボランティアで、交通費なども自己負担、運営費用はコンサートやCDの売り上げで賄っているそうだ。以前に同合唱団と共演した指揮者のジョン・ウィリアムスが大きな感銘を受けて、JTに共演を勧めたらしい。会場のソルトレイク・タベルナクルは、モルモン教の神殿があるテンプル・スクエア内にある巨大なホールで、ステージ上の人間の姿から、そのとてつもない大きさが見てとれる。

コンサートはマック・ウィルバーグが指揮する地元のユタ交響楽団によるファンファーレから始まり、合唱団による歌の後にJTが登場してオーケストとの共演による 1.「Carolina In My Mind」を歌う。オケのアレンジは以前にタングルウッドのボストンポップスのものと同じもののようだ。ここでのリズムセクションは、ベースのジミー・ジョンソンを除き珍しい顔ぶれだ。ピアノのチャールズ・フロイドは、クラシック界で活躍するピアニスト、指揮者、作曲家で、ゴスペルやポピュラー音楽など幅広い音楽をカバーする人。ボストンポップスとの縁も深い。彼は以前、ヨーヨー・マが2008年のアルバム「Songs Of Joy And Peace」C89で、JTと「Here Comes The Sun」を録音した際にチェロのパートを書いたことがある。ドラムスのニック・ハーレイはニューヨーク生まれで、現在はカナダ・ノヴァスコシア州のハリファックスを本拠地に活躍する人で、クラシック、ジャズ、アフリカ音楽などの他、合唱団の監督を務めるなど、多彩な才能を持つ人。2.「Lonesome Road」はJTと合唱団によるアカペラで、360人という大編成による声の厚みが凄い。3.「Fire And Rain」はオーケストラをバックに淡々と演奏される。

ここでJTが退席し、合唱団とオーケストラが2曲演奏した後、彼が再登場して4.「Getting To Know You」を歌う。この曲はロジャース・アンド・ハマースタインによるスタンダード曲で、ブロードウェイ・ミュージカルまたは映画でヒットした「王様と私(King And I)」1956で歌われたもの。映画ではシャム王室の家庭教師に扮したデボラ・カーが王女・王子達を相手に歌い踊った。ここでのJTの歌唱は、聴く者の心をワクワクするオリジナル・バージョンの魅惑を見事に再現している。ちなみに彼は、1991年のチャリティー・オムニバス・アルバム「For Our Children」B21でこの曲をカバーしており、その再演となる。5.「Up On The Roof」、6.「Water Is Wide」はオーケストラとの共演。 7.「Secret O' Life」はバンドのみでの演奏で、ここでのピアノの音は普段と異なる音使いで大変ユニークだ。8.「Shed A Little Light」、9.「Traveling Star」は合唱団の音圧が凄く、会場の反響音もあって、テンポを保つのに苦労している様だ。 10. 「Shower The People」は、コーラスの迫力満点の熱演。アンコールの音源はなく、 11.「You've Got A Friend」は映像の断片のみ。コーラスパートでは、オーディエンスも歌っているのがわかる。最後の12.「Sweet Baby James」は、JTとバンドによる演奏。ここでもチャールズ・フロイドのピアノ伴奏が聴きもの。

今回聴くことができたオーディエンス音源は、アンコールを除く全曲だったが音質がイマイチだし、残響によるテンポのずれも気になる。また映像についても、完奏は少なく断片が多いのが残念。サウンドボードによる良音質で聴いてみたい!

[2014年4月追記]
指揮者の名前を訂正、最後の曲として13.「You Can Close Your Eyes」を追加しました。

[テレビ放送版について]
約6か月後に、ソルトレイク・シティにあるブリガム・ヤング大学が運営するBYU Televisionが本コンサートの模様を放送した。番組としては、モルモン・タベルナクル・クワイヤが主人公で、JTは招かれたゲストととしての位置づけになっている。まずクワイヤがアメリカに古くから伝わる聖歌を2曲歌ってからJTが登場する。番組では、JTの歌曲は編集により最初の2曲(1,3) がカットされ、16.「Up On The Roof」から始まる。何はともあれ、鮮明な画像、良い音質で楽しめるんだから文句はなしだね。 次に2曲目の17.「Lonesome Road」となる。JTは、リハーサルでの感動を「It's really coming to its own」と述べており、クワイヤの分厚いコーラスは気高い雰囲気を醸し出している。 18.「The Water Is Wide」はオーケストラとの共演。JTが退席後、クワイヤがアフリカン・アメリカン・スピリチュアルを2曲歌い、再登場したJTが 21.「Shed A Little Light」を歌う。JT、バンド、クワイヤの3者がテンポを合わせるのに苦労しているのがわかるが、これだけ大きなステージで演っているので、1秒=360mという音速のずれが出ていると思われるので、しようがないか..........。弾き語りによる 22.「You Can Close Your Eyes」は、本番組で初めて観る(聴く)ことができたが、始める前にJTが「Another lullaby」と紹介しているため、実際には12.「Sweet Baby James」に続くアンコール曲として演奏されたものと思われる。JTが歌詞の「I still love you」と歌ったところで、女性ファンが大きな声で「I love you」と叫び、JTと待機中のオーケストラの連中が一瞬ギクッとするが、すぐに微笑みに変わるシーンが面白い。それにしても、JTがいつも最後に演奏する曲をこの順番にもってくる編集者の意図の理解に苦しむ。23.「I Got Rhythm」は、巨大なパイプオルガンを両手・両足を駆使して演奏する様がダイナミックにに捉えられており、見応えがある。クワイヤによる24.「Seventy Six Trombone」(ブロードウェイ・ミュージカル「Music Man」の挿入歌)の後、JTによるアンコールの25.「You've Got A Friend」、クワイヤと一緒の26.「Shower The People」となり、盛り上がって番組は終わる。

JTの曲順が編集により変更されたため、不自然な感はあるが、良質な映像と音で楽しめるだけでも満足すべきだろう。

[2017年5月追記]

2017年5月、モルモン・タベルナクル・クワイヤとゲストミュージシャンとの共演を収めたCD「Mormon Tabernacle Choir & Friends」B47が発売され、上記パフォーマンスのうちLonesome Road」が収録された。


 
Cynthia Woods Mitchell Pavilion, The Woodlands, Texas   2014 (映像)


James Taylor: Acoustic Guitar, Vocal
Michael Landau: Electric Guitar, Nylon-String Guitar
Larry Goldings: Piano, Organ, Keyboards
Jimmy Johnson: Electric Bass
Steve Gadd: Drums
Louis Conte: Percussion
Walt Fowler: Trumpet, Keybords
Lou Marini Jr.: Horns
Andrea Zone: Back Vocal, Fiddle
Kate Markowitz: Back Vocal
David Lasley: Back Vocal
Arnold McCuller: Back Vocal
Kim Taylor: Back Vocal (21,22,23)
Henry Taylor: Back Vocal (21,22)


[Set 1]
1. Something In The Way She Moves
2. Today, Today, Today
3. Lo And Behold
4. Everyday [Norman Petty, Charles Hardin]
5. Country Road
6. Millworker
7. Never Die Young
8. Carolina In My Mind
9. One More Go Round
10. Sweet Baby James
11. You've Got A Friend [Caroke King]

[Set 2]
12. Stretch Of The Highway
13. You And I
14. Handy Man [Otis Blackwell, Jimmy Jones]
15. Hour That The Morning Comes
16. Steamroller
17. Only One
18. Fire And Rain
19. Up On The Roof [Jerry Goffin, Carole King]
20. Mexico
21. Your Smiling Face

[Encore]
22. How Sweet It Is (To Be Loved By You) [Holland, Dozier, Holland]
23. Shower The People
24. Wild Mountain Thyme [Traditional]

収録: 2014年6月14日 Cynthia Woods Michell Pavilion, The Woodlands, Texas


ザ・ウッドランドは、テキサス州南東部にある人口10万人の大きな郊外開発地で、開発初年の1974年にコンサート会場が建設され、開発者の奥さんの名前シンシア・ウッズ・ミッチェルの名前が付けられた。観客スペースは、6千人収容の屋根付き座席と、8千人収容の芝生からなる。本映像は、JT2014年の北米ツアーにおけるライブのオーディエンス・ショット。ステージに向かってやや左から撮影されたもので、画質はクリアーかつ手振れが少ないため、見やすい映像になっている。ただしほとんどがJTの姿のみ(ルイス・コンティは彼の後ろにいたので、彼もたっぷり観れるけど)で、たまにカメラが引いてバンドの姿が見える程度なので、ちょっと単調かな。音質面はまあまあといった感じで、リバーブが強すぎて音のクリアさに欠けるのが残念。私が観たのは各曲独立した映像だったが、セットリストのサイトで調べたところ、コンサート全曲であることがわかった。従って本映像はJT 2014年北米ツアーのフルセットである。

3.「Lo And Behold」は、ルイス・コンティのボンゴが目立ち、ブラスセクションが入るファンキーな音作り。6.「Millworker」では、JTとジミー・ジョンソンが向かい合ってイントロを弾く様が観れる。8.「Carolina In My Mind」の「Hey babe, the sky is on fire」の歌詞のくだりで、会場の外で音がして、JTがその方向に目をやり、オーディエンスが歓声を上げる場面があるが、おそらく会場の外で花火を上げたのではないかと思われる。ライブでの演奏が珍しい「New Moon Shine」 1991 A14からの 9.「One More Go Round」では、ステージ右に移るためにJTの後ろを横切るコーラス隊の4人の姿と、マイケル・ランドウのギターソロをが見える。11.「You've Got A Friend」を演奏する前、休憩の予告をする際に、JTがセットリストを取り上げて 「ここに休憩と書いてあるから」と言ってオーディエンスを笑わせるが、そこに書いてある曲目を見ると、本映像が当日演奏された全曲であることが改めて確認できる。

セカンドセットのオープニング曲 12.「Stretch Of The Highway」は、バックバンドの長いイントロの途中からフェイドイン。ここではバンドの全景を観ることができる。13.「You And I」では、JTはギターを置き、イントロで指揮を取っている。15. 「Hour That The Morning Comes」ではブラスセクションのフィーチャーが新鮮な感じで、マイケル・ランドウのギターソロが最高!16.「Steamroller」では、トランペットのウォルト・ファウアー、オルガンのラリー・ゴールディングス、ギターのマイケル・ランドウのソリスト達のアップが写る。19.「Mexico」では、ブラスセクションがテンガロン・ハットを被ってマリアッチ風に吹いたり、エンディングはサルサ風になりルイス・コンティが頑張っている。

アンコールの 22.「How Sweet It Is」は、コーラス隊が前面に出てきて歌い、間奏ではルウ・マリニが前に出てアルトサックス・ソロを披露する。曲の終わりにバンド全景が写り、コーラス隊に奥さんと息子が加わっているのが見える。そして最後にR&B調のアップテンポの演奏となり、アーノルドのアドリブ・ボーカルが入る。23.「Shower The People」のエンディングで、ソロを取るアーノルドが写し出され、その横にいるキムとヘンリー(この頃はまだ若い)の二人の姿もはっきり見えた。最後の曲 24.「Wild Mountain Thyme」では、JTの後ろにキム、ケイト、アンドレアの女性コーラス隊が立ち、しっとりとしたハーモニーを聞かせてくれる。最後に全員が手を繋いで挨拶して終わり。

色々文句をつけたが、画質が良く、手振れもないので、それなりに楽しめた。

[2023年1月作成]

[2023年4月追記]
すみません。本稿作成の際、誤って18.「Fire And Rain」の記入を漏らしていましたので、修正しました。