P10 The Time Has Come (2007) (Box Set) Sanctuary (Castle)
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Bert Jansch: Guitar, Banjo, Dulcimer, Vocal
John Renbourn : Guitar, Sitar, Hamonica, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Glockenspiel, Piano, Vocal
David Munrow Ensembre (The Early Music Consort) (CD4-5)
Christopher Hogwood: Keyboards
David Munrow: Corna Muse
James Tyler: Krummhorn
Oliver Brookes: Krummhorn
James Bowman: Vocal
[CD-1: Studio 1967-1969]
1. Mirage (P2)
2. Waltz (P2)
3.Poison [Bert Jansch] (1967 Aug.) From the band's first studio session S6 S23 S33 S36 S36
4. Travelling Song (O4 Non-album Single)
5. Forty-Eight - John Renbourn (R5)
6. Koan (Alternate Take) [James Sullivan] Outtake of P2 (Take 1) P2
7. In Your Mind (P9) (Previously released in monoral)
8. Sovay (P9) (Previously released in monoral)
9. In Time (P3)
10. Sweet Child (P3)
11. The Tree They Do Grow High (Alternate Take) (P3 2001 Remasterd CD)
12. Moon Dog (P3)
13. Light Flight (P4)
14. Once I Had A Sweetheart (P4)
15. I Saw An Angel (O4 Non-album Single)
16. Springtime Promises (P4)
17. Cold Mountain (O4 Non-album Single)
18. Train Song (P4)
19. Hunting Song (P8, P9)
[CD-2: Studio 1970-1973]
1. Lord Franklin (P5)
2. Jack Orion (P5 Instrumental Edit)
3. Cruel Sister (P5).
4. Helping Hand (P6)
5. Faro Annie - John Renbourn (R7)
6. Reflection (Alternate Take) [Trad. Arranged by Pantangle] Outtake of
P6 (Take 4) P6 P11 P11 O6
7. So Clear (aka John's Song) [Pentangle] Outtake of P6 (Take 11) P6 P11 P11
8. The Snows (P7)
9. Jump Baby Jump (P7)
10. Yarrow - Bert Jansch (S8)
11. Tam Lin [Pentangle] (1971) From The Film 「Tam Lin」 P23
12. The Best Part Of You [Pentangle] (1971) From The Film 「Tam Lin」 P23
13. Green Willow - John Renbourn (R8)
14. Once I Had A Sweetheart (P4)
[CD-3: Live At The Royal Festival Hall June 29 1968 All Tracks P3]
1. Waltz (2001 Remastered CD)
2. Way Behind The Sun (2001 Remastered CD)
3. The Time Has Come
4. Let No Man Steal Your Thyme (2001 Remastered CD)
5. So Early In The Spring
6. Hear My Call (2001 Remastered CD)
7. No More My Lord
8. Three Dances
a Bransle Gay
b La Rotta
c The Earl Of Salisbury
9. Market Song
10. Bruton Town
11. A Woman Like You
12. No Exit
13. Haitian Fight Song
14. Goodbye Pork-Pie Hat
15. Bells (2001 Remastered CD)
16. John Donne Song (2001 Remastered CD)
17. Watch The Stars
18. Turn Your Money Green
19. Travelling Song (2001 Remastered CD)
[CD-4: Live, TV & Film 1970-1973]
1. Pentangling [Pentangle] (1970 Mar.) Aberdeen Music Hall P2 P20 P21
2. Sally Go Round The Roses [Phil Spector] (1970 May) Granada TV 「The Two
Brewers」 P4 P4 P4 P9
3. Sarabande [Bach, Arranged by Renbourn] (1970 May) Granada TV 「The Two
Brewers」
4. Sally Free And Easy [Cyril Tawney] (1970 May) Granada TV 「The Two Brewers」
S36 S36 P7 P19 P20 P21 P22 O27
5. Wondrous Love [Trad. Arranged by Pentangle] (1971 Apr.) LWT 「Journey
Into Love」
(With The David Munrow Ensemble) P11
6. Sweet Child [Pentangle] (1971 Apr.) LWT 「Journey Into Love」 P3 P9 P21
7. Willy O' Winsbury [Trad. Arranged by Renbourn] (1971 Jun.) Granada TV
「Set Of Six」 P7 P18 P22 O6 O27
8. Rain And Snow [Trad. Arranged by Pentangle] (1971 Jun.) Granada TV 「Set
Of Six」 P6 P11
9. No Love Is Sorrow [Pentangle] (1971 Jun.) Granada TV 「Set Of Six」 P7 P8 O6
10. Wedding Dress (1973 Jan.) (O6 RTBF (Belgian) TV)
11. The Furniture Store (1972) [Pentangle] From The Film 「Christian The
Lion」 P24
12. Christian The Lion (1972) [Pentangle] From The Film 「Christian The
Lion」 P24
13. Reflection (1973 Jan.) (O6 RTBF (Belgian) TV)
14. People On The Highway(1973 Jan.) (O6 RTBF (Belgian) TV)
[Souce]
P2: Pentangle 「Pentangle」 (1968)
P3: Pentangle 「Sweet Child」 (1968)
P4: Pentangle 「Basket Of Light」 (1969)
P5: Pentangle 「Cruel Sister」 (1970)
P6: Pentangle 「Reflection」 (1971)
P7: Pentangle 「Solomon's Seal」 (1972)
P8: Pentangle 「Live At BBC」(2004)
P9: Pentangle 「The Lost Broadcasts 1968-1972」 (2004)
O4: Pentangle 「People On The Highway」 (1992)
O6: Pentangle 「Captured Live」 (2003)
S8: Bert Jansch 「Moonshine」 (1973)
R5: John Renbourn 「Sir John Alot ......」 (1968)
R7: John Renbourn 「Faro Annie」 (1971)
R8: John Renbourn 「Lost Sessions」 (1996)
注) CD-3 11.12.は P21、 CD-4 11. 12.は P22 を参照のこと
赤字は未発表曲、青字は従来と異なるフォーマットで発表されるもの。
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待望のボックスセットだ! 2007年2月BBC Radio2で放送された「Folk Awards」でのライフタイム・アチーブメント・アワーズの受賞に続き、3月の本セットの発売。再評価の機運が大いに高まるものと思われる。
馴染みコリン・ハーパー氏が監修した本セットは、同氏のホームページによると、当初の計画では上記の未発表曲以外に以下のトラックを収録する予定だった。
A. Market Song (1967) From the band's first studio session
B. I've Got A Feeling (1967) From the band's first studio session
C. Bruton Town (Take 1) (1968) From outtake of P2
D. I Loved A Lass (1968) (P9 Previously released in monoral)
E. Wondrous Love (1971) From outtake of P6
F. Pentangling (1968) From NRK TV (Norway)
G. Light Flight (1970) From Isle Of Wright Festival
H. Will The Circle Be Unbroken? (1970) From Isle Of Wright Festival
最終版は、上記の曲がオミットされた代わりに、CD1に 1、CD2に14、が加えられ、CD1では曲順の一部変更、CD2では、「Christian
The Lion」からのトラック2曲がCD4の 11,12に移され、曲順も変更された。その結果この手のボックスセットとしては、未発表・レアトラックが少ないものとなり、CD4の中にスタジオ録音のトラックが入り込むなど、構成的にみてもバランスを欠いたものになったと思う。これらの未発表トラックが直前になってはずされた経緯について、正確な事情は分からないが、雑誌「ストレンジデイズ」2007年8月号におけるジャッキー・マクシーのインタビューにあるとおり、ペンタングルのメンバーがその内容に不満を持ち、相談のうえ収録に同意しなかったものと推測される。例えば、1970年のワイト島のフェスティバルは、他のアーティストの録音が多く残っており、当然ペンタングルのものも存在するわけだが、メンバーの追想によると、そのステージはアーティストを運ぶヘリコプターの騒音に気を取られ、演奏に集中できる状態でなかったようで、「そこでの良い思い出は、ジミ・ヘンドリックスのライブを観れたこと」と言っている位なので、しようがないといったところか?一般的にアーティストと熱心なファンとの間には、一定のギャップがあるようで、それを埋める存在がブートレッグということになる。また本ボックスセットが、熱心なファン向けか、それとも今回を機会に初めてペンタングルを耳にする入門者のためなのか、という想定によって、収録曲の基準が大きく変わるものと思われ、そういう意味でどっちつかずの中途半端な内容になってしまった気がする。批判的な事をいろいろ述べたが、本ボックスセットに対して、否定的なつもりは決してなく、お宝音源がそれなりにしっかり収録されているので、逃すことはできないぞ。
CD1は初期のスタジオ録音を収めたたもので、既にCastleからリマスタリングCDが発売されているものは別として、音質は向上していると思う。でも私が思うに、この手の音楽はやはりアナログのレコード(しかも当時の英国盤)を良質の機材(特に針)で聴くのが一番であり、音の透明感やクリアー度合いが劣っても、当時の時代でしか出せない音があると思うのは、偏見だろうか?
3.「Poison」は、ペンタングル初めてのスタジオ録音というが、バートとジョンが共にエレキギターで演奏しており、ブルース的な色彩が強いものだ。意外な感じがするが、アコースティック楽器使用による新しいトラッド、フォーク音楽というペンタングルのデビュー時の肩書きは、売り込みのためのイメージ作りであったと言える。正式録音としては、後にバートが1969年のソロアルバム「Birthday
Blues」 S6に収録したもので、ここでの演奏はかなり荒っぽい。6.「Koan」は、P2のリイシューCDのボーナストラックとして収録された未発表インストルメンタル曲の別テイクで、P2ではベースソロから始まったが、ここではレンボーンのギターのリフから始まるバージョンだ。曲全体を支配するベースの乗りは前者のほうが良いような気がする。7.
「In Your Mind」、 8.「Sovay」はBBC Radio1のために1968年9月23日に録音された音源で、11月3日の番組「Top
Gear」および後に「Top Of The Pops」でも放送されたもの。当初発表されたP9のモノラルに対し、本セットはステレオというが、左右のトラックが完全に分離しているものではない。その他として、ここではペンタングルのシングル曲(オリジナルアルバム未収録曲)が3曲すべて収録されており、1992年のO4が廃盤となっている今、4.「Travelling
Song」がベスト盤、15.「I Saw An Angel」と17.「Cold Mountain」が、 「Basket Of Light」P4 のリマスターCDのボーナストラックに分かれて収録されていたので、ここでまとまったかたちで収録されたのは、ファンにとっては有難いといえるだろう。ちなみに、19.「Hunting
Song」につき、ボックスセットでは1969年5月12日とあるが、同一録音が収録された P8, P9では8月17日となっており、おそらく後者のほうが正しいと思われる。
CD2は中後期のスタジオ録音からなる。未発表曲の6.「Reflection」(Take4)は、スタジオでの会話から始まる。アルバム収録バージョン(約11分10秒)よりも演奏時間が長く(13分10秒)、ベースのアルコ(弓弾き)によるイントロ部分や間奏のソロもじっくり演奏している。エレキギターを弾いているレンボーンについて、彼のハーモニカ演奏もしっかり入っているので、単なるリハーサル・没テイクではなく、ダビングなどの処理を施した完成版といえるものだ。大きく異なるのは、ジャッキーのボーカルで、オリジナルは本人が多重録音で自分の声を重ねているのに対し、本セットのバージョンでは単独になっていることだ。また間奏におけるテリーの伴奏パターンがかなり異なり、オリジナルでは
8ビートのドラミングを見せるが、本セットのテイクでは4ビートで通し、代わりにバートのギター・リフを前面に出していることだ。またテリーのドラムソロのあたりに聞こえるパーカッションのサウンドも本セットのほうがずっと目立つ。どちらが良いか甲乙つけがたい出来で、素直に別テイクの出現を喜ぶべきだろう。7.「So
Clear」(Take11)は、ジョンのアコギとダニーのベース、そしてテリーのピアノのみからなる録音で、P6に収録されたオリジナル版のような、全編にわたるジョンのエレキギター、間奏部分のテリーのドラムスのオーバーダビングがされていない。その分よりピュアな感じがして、この曲が大好きな私にとっては、めっけものとなった。ちなみに「aka」は「also
known as」の略。本作の目玉の一つである映画「Tam Lin」の音楽についての詳細は、P23を参照して欲しい。11.「Tam Lin」は、現存するフィルムのサウンドトラックから採取した音源を約7分30秒に編集し、音質向上の処理を施したもので、映画では断片的に挿入されていた音楽をうまくつなげている。最初のボーカルパートは、二日酔いになった主人公のタム・リンが、乱痴気騒ぎから逃れて屋敷の外に出歩くシーンに流れ、次のパートはジャネットがムーア(草原の丘)を一人歩くシーン(この直後に二人は運命的な出会いをする)。3番目は教会で二人が出会うシーン。4番目のジャッキーがオーケストラをバックに独唱風に歌うことから始まるパートは、タム・リンがカザレ夫人に好きな人ができたことを打ち明けるシーンで、途中挿入されるストリングスによるパート(アルフレッド・ヒチコック監督の名作「サイコ」におけるシャワー室での殺人のシーンに流れる音楽に似ている)は、夫人の嫉妬に狂った目のクローズアップにおけるもの。本音源におけるオーケストラ・パートはペンタングルのメンバーによるものではなく、本映画の音楽監督が効果音的に付け加えたものだ。映画のサウンドトラックは、通常セリフの部分と、音楽・効果音のふたつからなっており、ここではセリフはカットできても、効果音はそのままというわけだ。なので川の流れの音なども随所に聞こえる。5番目はカザレ夫人の警告を無視して、タム・リンとジャネットが一緒に逃げることを決心するシーン。最後のパートは映画のラストにおけるもので、ジャネットの献身的な愛に阻まれて、タム・リンを死に追いやることができなかったカザレ夫人の怒りのシーンで終わる。思ったよりも音質が良く、編集も大変うまくまとめたと思う。ペンタングルによるインストルメンタルの断片や、シーンの関係で、わずか20秒ほどでカットされてしまう「Name
Of The Games」を除くと、本映画におけるペンタングル音楽のエッセンスは網羅されているといってもいいだろう。12.「The Best
Part Of You」が、突然始まるのは、映画の冒頭における郊外へのドライブのシーンで、登場人物がカーステレオのスイッチを入れたことろで、いきなりこの音楽がかかるためだ。ここではペンタングルのメンバー以外に、ブラスセクション、エレキピアノ、エレキベース(結構カッコイイ!)がオーバーダビングされており、かなりドライブが効いていて、彼らの作品のなかで最もロック的な仕上がりとなっている。映画版の市販のビデオで聴くよりも、遥かに良い音に処理されており、この曲が大好きな私にとって本当にうれしいトラックだ。2.「Jack
Orion」は未発表音源ではなく、 「Cruel Sister」P5 の間奏部分だけを抽出したもの。愛する人を下男に陵辱されたジャック・オライオンの怒りと悲しみという、テーマのある間奏部分での演奏なんだけど、独立したインスト曲として聴くと、また異なる趣きがあって大変興味深い。既存の曲のボーカル部分をカットした事については批判する人もいると思うけど、このケースはアイデアの勝利だと思う。
CD3は、ペンタングルが1968年6月29日、ロイヤル・フェスティバル・ホールで行った伝説的コンサートの音源で、2枚組みのアルバム「Sweet
Child」 1968 P3 に収められていたものと同じものだ。LP未収録だった未発表曲については、2001年に発売されたリマスタリングCDにボーナストラックとして収められた7曲がすべてのようなので、曲目という意味では、今回のボックスセットに目新しさはない。今回大きく異なるのは、曲間の拍手、曲紹介のアナウンス、開始前のチューニングがカットされ、曲順を全面的に変えたことである。この処理については、音楽誌における本ボックスセットのレビューなどで、いろいろ批判されていたようだが、私はファンとして大変有難い事と評価している。上述のアルバムの1枚目に収録された本ライブ音源は、ヒストリカル・パフォーマンスとしての価値は高く、演奏の水準もかなりのものであったが、オーディエンスの拍手の音量が大きすぎること、曲間のアナウンスや開始前のチューニング・ノイズの時間が多すぎるという大きな欠点があった。それらはライブ録音としてのスリルを味わうためには効果的であるが、音楽として繰り返して聴く分には耳障りになものである。もうひとつのポイントとしてあげたいのが、本音源の演奏についてである。このコンサートがライブ盤製作のために録音されるという前提で、彼らは入念なリハーサルをしたはずであり、その結果としてここでの演奏は、大変に抑制が効いた整然としたものになっている。後年発表されたBBCのラジオ音源を聴いて、その自由奔放な表現の迸りを耳にして唖然とした記憶がある。私が言いたいのは、これらの演奏はライブとしての臨場感よりも、普通の音楽として何度も聴き込むことにより楽しむほうが向いているということだ。いままで音楽以外のノイズが気になったために、あまり聴いていなかった本音源が、今回のフォーマットによりじっくり聴けるようになったことに私は感謝したい。そういう意味で接すれば、「Sweet
Child」を持っている人でも、単なる重複でないといえると思う。曲順の変更についても同じで、オリジナルLPに収録されなかった7曲を、2001年発売のリマスタリングCDのように、単に後にくっ付けるだけでは、全く効果がないのは明らかだ。オリジナル盤の司会者のアナウンス、聴衆の拍手、そして「Market
Song」の出だしがあまりにも鮮やかなため、ここだけは残して欲しい気もしたが、製作者の意図は、オリジナル「ライブ盤」の呪縛を完全に解き放ち、純粋な音楽として楽しめるものにする事にあったと思われるので、そういう意味で考えると本作での曲順のラディカルな変更は納得がゆくものである。ここではバートやジョンによりアナウンスやチューニング・ノイズは完全にカットされたが、聴衆の拍手は音量を落とし、時間を短くした調整した上で一部残されており、それらは以下の曲の後で聞こえる。
トラック 2, 3, 6, 10, 11, 12 (フェイドアウトで少しだけ聞こえる), 13(実際は14が始まる前のフェイドイン),14,15,17,18,19
ということで、拍手はそこそこ残っているが、音量・長さとも控えめで気にならない程度となり、特に 8.「Three Dances」でレンボーンの短いインスト演奏が終わる都度に聞かされる、大音量の拍手と曲解説にうんざりしていた私には喜ばしいことだったのである。もちろん初めての人には、オリジナルの「Sweet
Child」版を是非聴いて欲しいが、ペンタングルの音楽を楽しみたいファンには、このボックスセット版をお勧めする次第である。
CD4は、未発表ライブ音源特集ということで、ファン期待の一枚だ。そういう意味で、1970年アバディーンのライブ、19分36秒におよぶ 1.「Pentangling」は本セットのベストトラックのひとつだ。いつもよりスローなテンポで演奏されるテーマ、全体的に荒っぽい感じはするが、迸るような奔放なインプロヴィゼイションが凄まじい。このトラックを聴いて、エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャーベイカーのライブ名盤
「Wheels Of Fire」 1968 を思い出してしまった。ここで間奏で頑張るのがダニーのベースで、時には一人で、時にはテリーのドラムスをバックに縦横無尽に弾きまくる。途中マイルス・デイビスの名曲「So
What」(1959年のアルバム「Kind Of Blue」収録)や、「Haitian Fight Song」の一節も飛び出す。再びバンドが加わった後もブルースのジャムセッション風のパートがあったり、凄い飛ばし方だ。録音の関係で、バートのギターがオフ気味なのが残念であるが、その分ジョンのエレキギターがはっきり聞こえ、その演奏の妙をたっぷり楽しむことができる。
2.「Sally Go Round The Roses」、3.「Salabande」、4.「Sally Free And Easy」は、演奏・録音ともに最高で、ロンドンにあるパブ「The
Two Brewers」での生演奏を収録したものという。特にジョンのソロアルバム収録のインスト曲を演奏した3.は珍しい。文句なし本作におけるお宝音源だ。2.3.におけるリズムセクションの凄さには改めて感嘆してしまう。古い聖歌
5.「Wondrous Love」で共演したデビッド・マンロウ(1942-1976)は、クラシック音楽の側からのアプローチにより、イギリスの古典音楽を学術的なものにとどまらない、楽しめる音楽として現代に蘇らせた立役者の一人で、教育者としても活躍した人だった。私はイギリス古典音楽・トラッドはあまり詳しくないが、ペンタングルがそういう人と共演した音源が残っていたことは、その方面では極めて画期的な事だったようだ。6.「Sweet
Child」も快演。グラナダTVにおける別音源 7.「Willy O' Winsbury」、8.「Rain And Snow」、9.「No Love
Is Sorrow」でもバンドの調子は良かったようで、リズム隊が跳ねていて、バートとジャッキーのボーカル、レンボーンのソロも最高。録音も申し分なし。テレビ用の音源というけど、映像は残っていないのかな?
9.でのレンボーンは、アコギでソロを取っている。10.「Wedding Dress」と、13.「Reflection」、14.「People
On The Highway」は同じ音源なのに、何故12.を間に入れたのか、製作者の意図が理解できない。4枚目は未発表音源とあるが、これらの3曲については、過去に「Captured
Live」O6 として映像で発表されたものだ。といっても本作に収録された3曲の音質は映像版よりも遥かに良いので、重複感はない。映像版ではメンバー間の確執が見え見えで、ギスギスした雰囲気が嫌だったのに対し、音源だけになると、同じものでも気にせずに聴けるのは意外だった。ただこのセッションの時に不調だったレンボーンは、演奏にはほとんど加わっていない。映画のサウンドトラック録音である 11.「The
Furniture Store」 12. 「Christian The Lion」が、ライブ音源のCD4に収録されているのは、何とも収まりが悪い気がするが、収録時間の関係からそうしたものと推測される。これらのトラックについての詳細は、P24を参照して欲しい。11.は主人公であるビル・トラヴァースが、子供ライオンのクリスチャンとの出会いの場となる家具屋に行くシーンで流れる、シタールを使用した中近東風音楽。12.は「Tam
Lin」と同じく、各シーンに流れる音楽を編集でつないだもの。最初のパートはクリスチャンが教会の庭で放されて戯れるシーン、次の「People On
The Highway」のメロディーをジャッキーがハミングするパートは、クリスチャンが海辺で遊ぶシーンの他、数箇所で使用される。ジャッキーのボーカルによるテーマは、クリスチャンが車に乗って郊外に引っ越すシーンで歌われる。次のインストルメンタルは、映画の随所で挿入される短時間の演奏のひとつ。続いてジャッキーの歌によるテーマ(ケニアで仲間を見つけた)内容。続いてバートのハミングのギターによる、喜びを表す演奏。そして不安を表すインスト(ライオンの仲間とのお見合いのシーンで、喧嘩の唸り声が入る)。最後にジャッキーのボーカルによる結びのテーマといった構成。実際は、映画のかなりの部分で、彼らが画面を観ながら演奏したというインストが使われており、編集により本トラックに収められたのは、そのうちのごく一部である。しかしこれらは断片であり、独立した演奏・楽曲として聴くものではないので、しかたがないだろう。
本ボックスセットにはブックレットが付いており、コリン・ハーパー氏執筆によるペンタングルの記事は、量・質ともに本1冊分に足る内容の濃いもの。メンバーや関係者からのインタビューも豊富で、いままで資料が少なかったペンタングルの当時の活動状況を知ることが出来る貴重な資料だ。またそこには本人が集めたと思われる、雑誌の切り抜き記事や写真、チラシ、コンサートのチケットなどがクリップ的に貼り付けられており、その量には圧倒される。
以上のとおり述べた。私なりに十分に楽しんだし、ボックスセットというものは、一般向けなのか、熱心なファン向けなのかという対象の絞り込みが難しい商品であるとも感じたが、本作を手にして、皆それぞれに感じ受け止めるものと思われるので、私の考えを押しつけるつもりは毛頭ありません。少しでも参考になればよいと思っています。
本ボックスセットの発売、および2007年2月のラジオ番組 「BBC Radio2 Folk Awards」でのリユニオンなどをきっかけとして再評価の機運が高まり、2008年6月29日に同じ場所で、再結成ペンタングルによる40周年記念コンサートが開催され、さらに7〜8月に英国内12の都市でコンサートが行われた。そしてバートとジョンの死後2008年に、その際のライブ「Finale」P20が発売された。
[2007年12月作成]
[2018年1月追記]
2017年、CD-4の7〜9の映像をインターネットで観ることができた。「その他の音源・映像」の「Set Of Six」1972を参照ください。
[2022年3月追記]
2019年、CD-4の2〜4の映像 (サンプル)をインターネットでで観ることができた。「その他の音源・映像」の「From The Two Brewers」1970を参照ください。
[2022年3月追記]
2019年、CD-4の5,6の映像をインターネットで観ることができた。「その他の音源・映像」の「Journey Into Love」1971を参照ください。また、5.「Wonderous Love」で共演したデビッド・マンロウ・アンサンブル(The Early Music Consort)のパーソネルが分かったので追記しました。
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P11 The Albums (2017) (Box Set) Cherry Red |
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Bert Jansch: Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar, Harmnica, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal
[The Pentangle: Bonus Track]
1. Koan [Take 2] P2 Bonus Track, Feb 1968
2. The Wheel P2 Bonus Track, Feb 1968
3. Veronica (The Casbah) P2 Bonus Track, Feb 1968
4. Bruton Town [Take3] P2 Bonus Track, Feb 1968
5. Hear My Call [Alt. Take] P2 Bonus Track, Feb 1968
6. Way Behind The Sun [Alt. Take] P2 Bonus Track, Feb 1968
7. Way Behind The Sun [Instrumental] P2 Bonus Track, Feb 1968
8. Bruton Twon [Take 5] (Previously Unreleased) Feb 1968 S36 P2 P2 P3
P9 P11 P13 P16 P19 P20 P21 P21 P21 P21 P22 P22
9. Koan [Take 1] P10, Feb 1968
10. Travelling Song [Single] O4, Feb 1968
11. Posion P10, Aug 1967
12. I've Got A Feeling (Previously Unreleased) Aug 1967 S10 S36 P3 P8 P9
P12 P20 P21 P21 P21 P21 P22 O27
13. Market Song (Previously Unreleased) Aug 1967 P3 P20 P21
注:3は、本作では「The Casbah」というタイトルになっていますが、バートのデビュー・アルバムではミスにより「Veronica」と表示されており、それが定着にているので、ここではあえて「Veronica」の表記にしました。
[Sweet Child: Bonus Track]
14. Hole In The Coal [Alt. Take] P3 Bonus Track, Aug 1968
15. The Trees They Do Grow High [Alt. Take] P3 Bonus Track, Aug 1968
16. Haitian Fight Song [Studio Take] P3 Bonus Track, Aug 1968
17. In Time [Alt. Take] P3 Bonus Track, Aug 1968
18. A Woman Like You (Previously Unreleased Mix) Nov 1968 S6 S23 S27 S32
S36 S36 P3 P13
19. I've Got A Woman (Previously Unreleased Mix) Nov 1968 S6 S36
20. I Am Lonely (Previously Unreleased Mix) Nov 1968 S1 S6 S18 P9 P9
21. Poison S6 Nov 1968
22. Blues S6 Nox 1968
23. Sally Go Round The Roses [Alt. Take #2] P4 Jun And Aug 1969
24. Moondog [Full Band Version] (Previously Unreleased) P3 P9
[Busket Of Light: Bonus Track]
25. Sally Go Around The Rosess [Alt. Take #1] P4 Jun, Aug 1969
26. Cold Mountain [Single B-Side] O4 1969
27. I Saw An Angel [Single B-Side] O4 1969
28. House Carpenter [Live] (Previously Unreleased) 1970 P4 P8 P9 P20
29. Light Flight [Live] (Previously Unreleased) 1970 P4 P8 P8 P9 P20 P21 P21 P21 P21 P22
30. Pentangling (Live) P10 1970
[Cruel Sister : Bonus Track]
31. Will The Circle Be Unbroken ? [Take 1] (Previously Unreleased) March
16, 1971 P6 P9 P11 P20 O6
32. Rain And Snow [Take 2] (Previously Unreleased) March 17,1971 P6 P10
33. Omie Wise [Take 2] (Previously Unreleased) March 16,17,1971 S30 P6
34. John's Song (allas So Clear) [Take 7](Previously Unreleased) March
31,1971 P6 P10 P11
35. Reflection [Olympic Studio Take 1] (Previously Unreleased) March, 1971
P6 P10 P11 O6
36. When I Get Home [Alt. Vocal] (Previously Unreleased) March 16, 1971 S10
P6 P11
[Reflection : Bonus Track]
37. Shake Shake Mama [From 「Farro Annie」 1971 by John Renbourn]
38. Kokomo Blues [From 「Farro Annie」 1971 by John Renbourn]
39. Faro Annie [From 「Farro Annie」 1971 by John Renbourn]
40. Back On The Road Again [From 「Farro Annie」 1971 by John Renbourn]
41. Will The Circle Be Unbroken [Alt. Vocal] (Previously Unreleased) March
16, 1971 P6 P9 P11 P20 O6
42. Reflection [Command Studio Take1](Previously Unreleased) March 19,
1971 P6 P10 P11 O6
43. John's Song (allas So Clear) [Take 5, Fuzz Guitar] (Previously Unreleased)
March 24,1971 P6 P10 P11
44. Wonderous Love (Previously Unreleased) March 16, 1971 P10
[Solomon's Seal : Bonus Track]
45. When I Get Home [Live At Guildford Civic Hall] (Previously Unreleased)
Nov 10, 1972 S10 P6 P11
46. She Moved Through The Fair [Live At Guildford Civic Hall] (Previously
Unreleased) Nov 10, 1972 S28 S29 S33 S36 S36 P15 P22 O29
47. Train Song [Live At Guildford Civic Hall] (Previously Unreleased) Nov
10, 1972 S1 S36 S36 P4 P8 P9 P21 P21 P22
注:黒字は既発のもので、[ ]の後の番号は、それらが収録されたアルバムを指している。
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グループ結成50年を記念して、発売された初期ペンタングルのボックスセット。トランスアトランティックの5枚とリプリーズからの1枚が、見開きも再現したオリジナ・デザインの紙ジャケット仕様で、分厚い解説書と一緒に箱に収まってる。以下、未発表曲の解説をおこないます。
[The Pentangle: Bonus Track]
3曲が未発表。8.「Bruton Town (Take 5)」は、P2のボーナストラックに入っていたTake3とほぼ同じ内容で、ジャッキーが一人で歌っている。異なるのはジョンによる間奏のギターソロで、スタジオ録音だけあって、予め十分に練り上げたものと思われるため基本的な構成は同じであるが、細部につき両者の差異を楽しむことができる。12.「I've
Got A Feeling」、13.「Market Song」は、「The Time Has Come」 P10 収録の11.「Poison」と同じく、グループとして初めての録音というが、ジョン、バートは共にエレキギターを弾き、ジャッキーのボーカルも緊張のせいか固くエッジがあり、特に12.はテンポが早く落ち着きがない。ペンタングルの良さを全部とったらこうなるといった感じで、後年録音されたアルバム収録バージョンのほうが遥かに出来が良い。これらは歴史的意義がある最初期の録音と言うべきだろう。
[Sweet Child : Bonus Track]
5曲が未発表またはリミックス。18.「A Woman Like You」は、バートのソロアルバム「Birthday Blues」1969 S6と同じ録音であるが、オリジナルと異なり、フェイドアウトせずに最後まで続く約20秒長いバージョン。その分エンディングにおけるバートの絶妙なギタープレイを楽しめる。19.「I've Got A Woman」、20.「I Am Lonley」も同じアルバムからで、ここではレイ・ワーレイのサックス、フルードのオバーダビングがカットされ、ドラムスとベースとのトリオ演奏(前者)、バートの弾き語り(後者)となっている。ここでのバージョンのほうが、バートのボーカルとギターをより集中して聴くことができるようだ。24.「Moon Dog」は本ボックスセットの目玉のひとつ。「Sweet Child」1968 P3ではテリー・コックスのハンド・ドラムとボーカルのみだったが、これはジャッキーのボーカルによるフルバンドバージョンだ!音質に難があるP9のライブでしか聴くことができなかったバンド演奏が、スタジオ録音で聞けるとは、素晴らしい。コリン・ハーパーの解説によると録音に問題があっため未発表になったそうだが、ちょっと荒っぽい音質だけど十分聞けるぞ。
[Basket Of Light : Bonus Truck]
2曲が未発表。28〜30は1970年アバディーンでのライブで、録音は3月26日と4月4日のふたつの説があるとのこと。30.はもうひとつのボックスセット「The
Time Has Come」 2007 P10に収められている。28.「House Carpente」rは、バートのバンジョーとジョンのシタールが響き渡る。何故かバートのボーカルがオフ気味。30.「Light
Flight」は、ベースとドラムスのリズムセクションが俄然押している。特にテリーの繊細なスネアドラムとシンバルのプレイが素晴らしい。ペンタングルがリズムセクションあってのバンドであることがよくわかる好演。最後にジャッキーが大きく咳をしているのが珍しい(コロナの時代では嫌われそう?)
[Cruel Sister : Bonus Track]
アルバム「Cruel Sister」 1970 P5にはアウトテイクは残っていないそうで、ここに収められているボーナストラックは全て「Reflection」
1971 P6 からで、全て未発表。31.「Will The Circle Be Unbroken」は、スタジオでの会話の後に始まるギターのイントロが異なり、テリーのハーモニー・ボーカル、ジョンのハーモニカやエレキギターなしの淡々としたプレイ。32.「Rain
& Snow」はハーモニーボーカル、ベース、ドラムなし(タンバリンのみ)で、その分シタールとバンジョーが目立っている。スタジオの会話とバートの笑い声から始まる
33.「Omie Wise」は公式発表版と比較してジョンのギターが目立たず(ギターのオーバーダビングがなく?)、間奏部分でバートがハミングしている。34.「John's
Song (So Clear)」は、ベースとピアノは入っているが、エレキギターのオーバーダビングがない。その分ジョンのアコギは聴きごたえある。35.「Reflection」はイントロのベース、ボーカル、ハーモニカのオーバーダビングなし。ジョンのエレキギター・ソロはしっかり入っているが違いが顕著。36.「When
I Get Home」は、演奏が同じでバートのボーカルのテイクのみ異なる。オーヴァーダビングなしにより、公式発表盤とはかなり異なったサウンドが楽しめる逸品。
[Reflection : Bonus Track]
未発表・リミックスは4曲。41.「Will The Circle Be Unbroken」は、公式発表ではオーバーダビングのボーカルが使用されたが、これはライブのボーカル。聴く限り、ハーモニー・ボーカルも入っており、余り違いを感じない。42.「Reflection」はテイク1であるが、35とは録音スタジオ違い。面白いのは、ここではジャッキーのボーカルがハミングになってる事で、歌詞が出来上がる前のリハーサル・テイクだろう。ギター、ベース、ドラムスの演奏も含め、それなりの雰囲気がある本作聴きもののひとつ。43.「John's Song (So
Clear)」は、ドラムスとファズトーンのリードギターのオーバーダビングが施されていて、公式発表のクリーンなサウンドとの比較が楽しめる。シェーカー教の讃美歌である
44.「Wondrous Love」は公式未発表曲であるが、P10で放送音源が公開されている。地味な感じで、お蔵入りしたのがわかる出来。
[Solomon's Seal : Bonus Track]
ボーナストラック3曲は、いずれも未発表。1972年の最後のツアーのオーディエンス録音で、音質は当時の基準では悪くない。なかではダニーのベースとジャッキーのボーカルのみによる
46.「She Moved Through The Fair」が貴重。オリジナル・メンバーでの公式録音がなく、グループ解散のためにキャンセルされたリプリーズ・レコードからのセカンド・アルバム用の曲のひとつだったとのこと。この曲の公式録音は、バート主導による後期ペンタングルのアルバム「In
The Round」1986 P15で聴くことができる。47.「Train Song」は、初期の曲の晩年の姿を拝むことができ面白い。
以前買ったCD 6枚分とダブルが、そこそこの数の未発表曲がボーナストラックとして収録され、さらにコリン・ハーパーによる本1冊分に相当する詳細極まりない解説と年表がついたので、ファンには美味しいご馳走となった。
[2022年2月作成]
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P12 Live On The Air 1967 - 1969 (2020) London Calling |
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[Danny Thompson Trio (1〜6) ]
Danny Thompson : Bass
John McLaughlin : Electric Guitar
Tony Roberts : Tenor Sax, Flute
[Pentangle (7〜10, 14〜21) ]
Bert Jansch: Guitar, Vocal
John Renbourn : Guitar, Sitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Glockenspiel
[John Renbourn & Jacqui McShee (11〜13)]
John Renbourn : Guitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
[CD 1]
1. Stratosfunk (Nov. 1967)
2. Mutiny On The Light (Nov. 1967)
3. Mysterianimoso (Nov. 1967)
4. Spectrum Plectrum (Nov. 1967)
5. Eighty One (Nov. 1967)
6. Gotta Go Fishing (Nov. 1967)
7. Sweet Child (Top Gear, 1967 Nov. 3)
8. In Your Mind (Top Of The Pops, 1967 Nov. 22)
9. I Loved A Lass (Top Of The Pops, 1967 Nov. 22)
10. Sovay (Top Of The Pops, 1967 Nov. 22)
[CD 2]
11. Watch The Stars (Night Ride, 1968 Dec 12) S32 S35 S36 P3
12. Can't Keep From Crying Some Time (Night Ride, 1968 Dec 12) S31
13. Every Time When The Sun Goes In (Night Ride, 1968 Dec 12) P9
14. Once I Had A Sweetheart (Top Gear, 1969 May 18)
15. Hunting Song (Top Gear, 1969 May 18)
16. Sally Go Round The Roses (Top Gear, 1969 Jun 13)
17. Bruton Town (With Interview) (Top Gear, 1969 Jun 13)
18. I Got A Feeling (Top Gear, 1969 Jun 29) S10 S36 P3 P8 P9 P11 P20 P21
P21 P21 P21 P22 O27
19. Hunting Song (Top Gear, 1969 Jun 29) P4 P8 P20
20. Cold Mountain (Top Of The Pops, 1969 Jul. 18)
21. I'm Lonely (Top Of The Pops, 1969 Jul. 18)
22. Brian Matthew Interviews Jacqui McShee(Top Of The Pops, 1970 Apr.24)
注: 11. 〜13.はバート非参加
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2020年に発売されたBBC放送の音源集。大半の曲は既発というファン泣かせの一枚。
1.〜6. は、ペンタングル結成前のダニー・トンプソンの名を冠したジャズトリオの演奏で、2003年に「Danny Thompson Trio
Live 1967」というタイトルで公式発表されている。共演者が凄くて、ギターのジョン・マクラフリン(1942年イギリス生まれ)は、当時スタジオ・ミュージシャンとしてジャズ、ロック界で活動中で、1969年に「Extrapolation」という初アルバムを発表した後に渡米。トニー・ウィリアムス(ドラムス)のグループに加わった後、マイルス・デイビスに認められて「In
A Silent Way」 1969、「Bitches Brew」 1970 などの野心作に参加する。その後もマハヴィシュヌ・オーケストラやシャクティ、スーパー・トリオ、チック・コリア(ピアノ)と組んだバンド等の活動により、米国ジャズ界でゆるぎない地位を築いている。本音源は、ジョンのファンにとって無名時代のライブ音源としてコレクターズ・アイテムとなっている。なおダニーとジョンが伴奏した公式盤で、ブルース・シンガーのダフィー・パワー
(バートのアルバム「Birthday Blues」1969 S6にハーモニカでゲスト参加した人)の「Innovations」1971があり、そこではテリー・コックスも参加している。サックスとフルートのトニー・ロバーツは、ペンタングルファンにとって、1970〜80年代のジョン・レンボーン・グループでおなじみの人だ。ジョンのギタープレイが控えめで、リラックスした品格を感じさせる演奏で、これらのトラックを聴いていると、力が抜けて、つい気持ち良くて寝てしまう。
ペンタングルの 7.「Sweet Child」は、資料ではトップギアー1967年11月3日とあるが、2004年に発売された「The Lost Broadcast 1968-1972」 P9 のトップギアー 1968年9月23日と同じ演奏。資料に誤りがあるか、BBCが音源を使い回していたかのいずれかと推定される。音質的には本作のほうがずっと悪いのに加えて、両者に微妙な音程差があり、当時のエアーチェック音源にみられるピッチの狂いがあるようだ(どちらが正確なのか良くわからない)。8.「In Your Mind」、9.「I Loved A Lass」、10.「Sovay」 も P9 1968年9月23日と同じ演奏(音質的にはほぼ変わりなし)。本作ではイントロの演奏にアナウンサーの声が被っているが、P9ではその部分がカットされ唐突に始まっている。音楽鑑賞には声被りは耳障りではあるが、イントロを聴くことができることは、ファンとしてはそれなりに貴重であり、「どっちもどっち」といったところか。
Night Ride 1968年12月12日という3曲はバートは非参加で、公式盤としては初出 (ただし2019年コリン・ハーパー氏によってYoutubeで公開されている)。ジョン・レンボーンとジャッキー・マクシーのデュオは、ジョンの「Another
Monday」1967の世界だ。特に13.「Every Time When The Sun Goes In」は公式録音がなく、他に「The Lost
Broadcast 1968-1972」 P9 のTop Gear 1968年7月2日の録音があるのみ(両者は異なる演奏)。なので音質はイマイチであるが貴重なトラック。
14.「Once I Had A Sweetheart」、 15. 「Hunting Song」は、Top Gear 1969年5月18日とあるが、14.のジャッキーのボーカルが多重録音になっていて、両者をよく聴くと、なんとアルバム「Basket
Of Light」1969 P4 スタジオ録音と同じ演奏であることがわかった。しかもエアーチェックによる音質悪いモノラルなんて... これはひどいですね〜
16. 「Sally Go Round The Roses」、17.「Bruton Town」も、資料ではトップギアー1969年6月31日とあるが、P9のトップギアー
19968年5月21日と同じ演奏。17.では演奏の前にジャッキーへのインタビューが挿入されている。そこで彼女は、2月の渡米がうまくゆき、7月のニューポート・フォーク・フェスティバルに出演することになったこと、同時にカナダでもコンサートの予定があると述べている。なお、いずれもイントロにアナウンスが被っているが、P9の「Sally
Go Round The Roses」のみイントロがカットされずにしっかり入っている。
18.「I Got A Feeling」、19. 「Hunting Song」 (Top Gear 1969年6月29日)は、P9 に同じ演奏はなく、私が知る限り、本作が初出。これらのトラックにはイントロにおけるアナウンサーの被り声はなく、リラックスした演奏が文句なしに素晴らしい。本アルバム一番の値打ちもの!
20. 「Cold Mountain」、21. 「I'm Lonely」は、私が聴く限り、P9のRadio 1 Club, 1969 Jun
19と同じ演奏と思われる(特に21.はバートの弾き語りなので分かりにくい)。これらもイントロにアナウンス声が被り、P9ではその部分がカットされている。
最後に、おまけとしてジャッキー・マクシーのインタビューが収録されている。男性4人とバンド活動することが、如何に大変であるかを楽しそうに語っている。
大半のトラックが既発の発掘盤と重複しているが、既発盤ではカットされて聴くことができないイントロ部分が含まれていたり、数少ない初出の音源の出来が良かったりと、問題はあるが、熱心なファンは見逃せない作品。
[2020年10月作成]
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P13 Live In Oslo 1968 (2017-2021) |
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Bert Jansch : Guitar
John Renbourn : Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson : Bass
Terry Cox : Drums, Percussion
1. The Time Has Come [Ann Briggs] S36 P1 P3 P9 P20
2. Mirage [Pentangle] P2 P20 S14
3. A Woman Like You [Bert Jansch] S6 S23 S27 S32 S36 S36 P3 P11
4. Turn Your Money Green [Furry Lewis] P3 P9
5. Hear My Call [Staple Singers] P2 P2 P3 P9
6. Haitian Fight Song * [C. Mingus] P3 P3
7. Let No Man Steal Your Thyme P2 P3 P9 P20 P21 P21 O5
8. Bells * [Pentangle] P2 P3 O5
9. Bruton Town S36 P2 P2 P3 P9 P11 P16 P19 P20 P21 P21 P21 P21 P22 P22
10. Travelling Song [Pentangle] P3 P9 O4 O5
11. Pentangling [Pentangle] P2 P10 P20 P21
収録: 1968年5月30日 Visefestival i Kroa, Dolphin Club, Oslo
注: 4, 6 はジョン非参加、*はインストルメンタル
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2017〜2021年の間に、様々なレーベル・配信サービスから 「Live In Oslo」、「Oslo University, May '68」、「Oslo 68」、「Oslo Live '68」等のタイトルで出されたものであるが、音源的にはノルウェーのテレビ曲がアーカイブとして公開した「Visefestival i Kroa, Dolphin Club, Oslo」(「その他音源・映像」参照)と同じもの。
出回っているCD・配信は、@ 1968年6月7日放送分の1〜9のうち、9.「Bruton Twon」を除いたもの(9.の映像は最後のヴァースで演奏が途切れるため)、A 9.と 1968年7月19日放送分の 10, 11を含んだもの、の2通りある。Aの 9.については、演奏が途切れた直後にオーディエンスの拍手を被せて、目立たないように細工している。
元の映像は、白黒であるが素晴らしい内容なので、音だけではもったいない気もするが、モノラルだけど音質がとても良いので、映像なしでも十分に楽しめ、音楽に集中するためには、むしろこの方がいいかも..........
[2022年4月作成]
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P14 Open The Door (1985) PLANE LP88377 (独) |
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Bert Jansch : Vocal, Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Mike Piggott : Violin, Guitar
Terry Cox : Drums, Percussion, Vocal
Danny Thompson : Double Bass
John & Rick Chelew : Producer
Jerry Boys : Engineer
Keith Morris, Stanley Rowin : Photo
Susan Marsh : Design
[Side A]
1. Open The Door
2. Dragonfly P22
3. Mother Earth [M. Nascimento] S14 S16 S17
4. Child Of The Winter P22
5. The Dolphin *
[Side B]
6. Lost Love [Jansch] S13 S19
7. Sad Lady
8. Taste Of Love P22 P22 P22
9. Yarrow [Trad.] S8 P19 P22 O22
10. Street Song
注) 上の写真は米国オリジナル盤(Varrick VR-017)
中・下の写真はCD再発盤
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あっと驚く12年ぶりの再結成アルバム。レコード屋で見つけた時は夢中になって買いましたね、ハイ。ただし残念ながらジョン・レンボーンの名前はなく、その代わりに「A
Rare Conundrum」1977 S13 でお馴染みのマイク・ピゴーがクレジットされている。まずはオリジナル・メンバーによるペンタングルの再結成ツアーから始まり、すぐにレンボーンが抜けて本作のメンバーになったらしい。マイク・ピゴーはアコースティックやエレキ・ギターの他バイオリンを担当しており、そのプレイはいままでのペンタングルにない音。他はオリジナル・メンバーであるが、裏表紙の写真を見ると過ぎ去った歳月というものを感じさせる。バートは太り、ダニーは禿げ、テリーやジャッキーもオジサンとオバサンという感じで、何だか感無量というところであろうか。
サウンド的にはさすがに落ち着いたもので、変に流行を追うこともせず我が道を行くといった感じ。ただしサウンドから感じられる感性は完全に製作当時の「現在」であり、そういう意味で昔のグループの再結成といっても、ナツメロやあの栄光をもう一度というようなものとは一線を画している。シンセポップ全盛だった流行の先端でないかもしれないが「その時の生きた音楽」であることには間違いがない。といっても表面的なサウンドだけで新旧のレッテルを付けたがる人々にとっては過去のものに聞こえるかもしれない。
本作におけるトラッドはバートの「Moonshine」1973 S8 にも収録された9.「Yarrow」1曲のみで、オリジナル中心のサウンドである。最初の曲
1.「Open The Door」は12年のブランクを破るのに相応しく神秘的な雰囲気のある曲。2.「Dragonfly」はペンタングルお得意の変拍子の曲でマイク・ピゴーのバイオリンソロが印象的。3.「Mother
Earth」は過去のバートの作品では誤った作者名で表示されていたが、本作ではブラジルのシンガー・アンド・ソングライターの巨人ミルトン・ナシメントスの作品と正しくクレジットされた。彼はポール・サイモンやジェイムス・テイラーとセッションしたり、ライブ・アンダー・ザ・スカイのために来日したことがあるので、帽子をかぶりナイロン弦のギターを弾きながら歌う姿を覚えている人も少なくないだろう。本作ではグループ演奏版ということで、ハーモニー・ボーカルを入れテンポを落としてじっくり演奏している。4.「Child
Of The Winter」は静けさと透明感溢れる美しいメロディーの曲でジャッキーが丁寧に歌う。5.「The Dolphin」はグループ演奏によるインスト。波の静かな入江で静かに泳ぐイルカの姿を連想させる爽やかな曲。ここではバートが珍しく丁寧に弾いており悪くない。後半で聴かれるマイク・ピゴーのギターの音は4.と同様、本当にきれいで素晴らしい艶のある音。
6.「Lost Love」はブルース調のカッコイイ曲で、ジャッキーがハーモニー・ボーカルを付け、マイク・ピゴーが渋くて味があるエレキ・ギターを聞かせる。7.「Sad
Lady」も2.同様、変拍子の曲でこういう曲におけるテリーのドラムスは相変わらずうまい。8.「Taste Of Love」は典型的なバート・スタイルの曲。マイク・ピゴーのエレキギターの音はフェンダー・ストラトキャスターそのものの音でほれぼれとする。唯一のトラッド9.「Yarrow」はジャッキーのボーカル。恋人のために戦って命を落とす若者の悲劇で、アレンジは「Moonshine」S8
と余り変わらない。10.「Street Song」はジャズ調の曲でテリー好みの曲想とおもわれる。マイク・ピゴーのバイオリン、ダニーのダブル・ベース、テリーのドラムが頑張り、最後のテーマに戻って終わる。
バートのギターやリズム・セクションも全体的におとなしく、ジャッキーやバートのボーカルも落ち着いた感じの地味ではあるが気品あふれる作品である。なおこの作品は発売された国によりジャケットのデザインが異なり、数種類のバージョンがある。
[2022年4月追記]
ブラジル音楽を探求する機会があり、その中でミルトン・ナシメントの音楽を集中的に聴いた。ブラジルの大地と自然感じさせる偉大な音楽・歌声で、アメリカのジャズ・ミュージシャンと組み、デオダード編曲で製作された傑作「Courage」
1969で世界的な名声を確立した。彼がチコ・ブアルキと共作した「O Cio da Terra」(直訳すると「大地の熱」)」 1976 (アルバム「Geraes」収録)が、3.「Mother
Earth」のオリジナルだ。
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P15 In The Round (1986) PLANE LP88505 (独)
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Bert Jansch : Vocal, Guitar, Banjo (1)
Jacqui McShee : Vocal
Mike Piggott : Violin, Guitar, Mandolin, Vocal
Terry Cox : Drums, DX7, Percussion, Vocal
Nigel Portman Smith: Bass, DX7, Fender Rhodes, Piano, Accordion, Vocal
Pam Mcshee: Lead Vocal (9), Backing Vocal (1)
Doug Beveridge, Pentangle: Producer
Roger Wake: Engineer
Archie: Sleeve Design, Artwork
[Side A]
1. Play The Game [McShee, Portman Smith]
2. The Open Sea [Jansch]
3. She Moved Through The Fair [Trad.] S28 S29 S33 S36 S36 P11 P22 O29
4. Set Me Free (When The Night Is Over) [Cox]
5. Come To Me Baby [Jansch, Portman Smith]
6. Sunday Morning Blues [McShee, Pigott, Jansch] P22
[Side B]
7. Chase The Devil Away [Cox]
8. The Saturday Movie [Jansch]
9. Suil Agrar [Trad.]
10. Circle The Moon [Jansch, Portman Smith] P22
11. Let Me Be [Jansch]
歌詞付き
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2枚目で早くもメンバー・チェンジで、ベースのダニーが抜けてしまった。その代わりにバートの「Thirteen Down」 S16でお馴染みのナイジェル・ポートマン・スミスが加入。彼はその後もペンタングルの作品に参加し、正確なプレイとサウンド・クリエイティングで後期ペンタングルのサウンドの屋台骨となる。ペンタングルのサウンドを決定付けていたダニーのウッドベースの太く豪快な生音は、ナイジェルのうねりのあるフレットレス・ベースのエレキ・サウンドに代わった。また彼のキーボード演奏は、従来は鍵盤楽器と縁のなかったペンタングルに新しい音色をもたらした。バンドの個性という面では初期の方が強烈であるが、このサウンドも決して悪くはなく前作よりもダイナミックでパワーと厚みのある音となった。本作はペンタングル作品としては珍しく、オリジナル曲についてメンバー全員の共作とはなっていない。その分曲毎に作者の個性がはっきり現れていて興味深い。
1.「Play The Game」はペンタングルとしてはポップな出来で、バートのバンジョーやマイクのエレキギターをはじめとする伴奏陣の一体感が素晴らしく、うねりのある心地よいサウンドである。2.「The
Open Sea」は人生の荒波に乗り出す若者を励ますバートらしい曲だがナイジェルのベースの重低音とマイクのアコギギター・ソロがとても良い。3.「She
Moved Through The Fair」はトラッドで、初期の演奏とは異なるパワフルなアレンジに驚く。4.「Set Me Free (When
The Night Is Over)」ではピアノによるイントロにはっとするが違和感はない。この手のストイックな歌詞とジャズ的なサウンドがテリーの好みであることがよくわかる曲である。ナイジェルによるフェンダー・ローズ・ピアノが大活躍。
5.「Come To Me Baby」はバートの1970年代の「L A. Turnaround」 1974 S9 や「Santa Barbara
Honeymoon」 1975 S11 に近いサウンド。6.「Sunday Morning Blues」は2台のギターのリフとベースの絡みがカッコイイ、ファンク・ブルース調の曲。
7.「Chase The Devil Away」はテリー好みのジャズ・チューンでイントロはハービーハンコックの名曲「処女航海」に似ている。ここでもリズムを刻むピアノとチョッパー気味のフレットレス・ベースとフェンダー・ローズ・ピアノの音がとても印象的で、個人的には私好みのサウンド。それにしてもナイジェル・ポートマン・スミスの頑張りはすごく、彼の加入の大きさを感じさせる。8.「The
Saturday Movie」は映画館での物思いを歌にしたもので、ジョン・ウェインの名や西部劇のシーン等が出てくると映画好きの私はにんまりとしてしまう。9.「Suil
Agrar」は旅に出たまま戻らない恋人を求めて嘆く娘の歌で、ジャッキーの妹のパム・マクシーがリード・ボーカルを担当している。彼女はジャッキーがペンタングルに加入する以前に一緒に歌っていた人で、その声はジャッキーの癖をなくした感じ。彼女は1.のバッキング・ボーカルにも参加している。(レコードの中袋には彼女らしい写真が掲載されている。)10.「Circle
The Moon」は夜の静けさがしみ込むような美しい曲で昔のペンタングルの透明感を思い起こさせる。11.「Let Me Be」はエレキギターのオブリガードによるハードな音作り。
前作とはうって変わってパワフルな出来上がりで、テリーのドラムもいつになくハードな音。綿密に計算されたアレンジで各楽器の質の高いインタープレイが印象的な作品。ペンタングルとして初めてのエレキベースやキーボードの使用による厚みのあるサウンドが、後期ペンタングルのスタイルとなってゆく。人生への思いを綴った深みのある歌詞と合わせて、正に大人にしか出来ない音楽がここにあるのだ。
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P16 So Early In The Spring (1989) PLANE CD88649 (独)
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Bert Jansch : Vocal, Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Rod Clements : Guitar, Mandolin
Gerry Conway : Drums, Percussion
Nigel Portman Smith: Bass, Keyboards
Tony Roberts : Flute, Whistle (2,3)
Nigel Portman Smith, Pentangle : Producer
Ulli Hetscher : Executive Producer
John Aycock : Engineer
Peter Bucker: Cover
1. Eminstra *
2. So Early In The Spring [Trad.] P3 P22
3. The Blacksmith [Trad.]
4. Reynardine [Trad.] S7 S33 P9 P19
5. Lucky Black Cat
6. Bramble Briar [Trad.] S36 P2 P2 P3 P9 P11 P13 P19 P20 P21 P21 P21
P21 P22 P22
7. Lassie Gathering Nuts [Trad.] P22 P22
8. Gaea P22
9. The Baron Of Brackley [Trad.]
歌詞付き
写真上: ドイツ盤オリジナルジャケット
写真下: 1990年代にイギリスで発売された再発盤ジャケット
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再編ペンタングルの3枚目で、オリジナル・メンバーはバートとジャッキーのふたりだけとなった。テリー・コックスとマイク・ピゴーが抜けゲリー・コンウェイとロッド・クレメンツ (1947- ) が加入した。ロッドはバートのソロ作品「A Rare Conundrum」 S13 と「Leather Launderette」 S22 の2作に参加したお馴染みの元リンデスファーンの創立メンバー。ゲリーはサンディー・デニーのバンド、フォーザリンゲイやリチャード・トンプソンのバンドにいた人。ふたりとも多少泥臭い音楽性を持っており、初期ペンタングルのストリング・バンド的な音は影をひそめ、バンドのサウンドがよりロック的になった。特にゲリーのシンプルでパワフルなドラミングは、テリーの繊細でジャズ的なスタイルとは全く異なり、バンドのサウンドに大きな変化をもたらした。
オリジナルは3曲。1.「Eminstra」はナイジェルのキーボードとベース、ゲリーのドラムスのリズム・セクションが大活躍するインスト物。5.「Lucky
Black Cat」はバートの作風がはっきり表れた曲で、ロッドのスライド・エレキギターが楽しめる。8.「Gaea」は本作で唯一の変拍子によるジャズ調の曲。本作は9曲中6曲がトラッドである。といっても従来よりもロック的なアレンジが施されているものが多い。2.「So
Early In The Spring」は、「Sweet Child」1969 P3 のライブにおけるジャッキーの無伴奏ソロが印象的な作品であったが、今回はナイジェルのベースの重低音とキーボードとゲリーのエコーをきかせたドラムスが音の壁を作り、ゲストのトニー・ロバーツのフルートが大活躍する重厚な作品となった。トニー・ロバーツはジョン・レンボーンの作品に参加している学者風マルチ・インストメンタリスト。3.「The
Blacksmith」は不実な男に騙された娘の歌で、ビートがきいたロック調の仕上げ。ロッドのスライド・ギターが頑張っている。「L.A. Turnaround」
1974 S9 収録のものとは同名異曲。4.「Reynardine」でのバートのギターは「Rosemary Lane」1971 S7での演奏の面影が少しだけ残っている。バートとジャッキーのダブル・リードボーカルとトニーの笛が良い出来。この曲はキツネの妖怪が娘を口説く(アイルランドの英雄とイングランドの婦人との悲恋の暗喩であるという説もある)歌で、ジョン・レンボーン・グループの「A
Maid In Bedlam」1977 でもジョンとジャッキーによる印象的な歌が聴かれる。6.「Bramble Briar」は以前「Bruton
Town」と言うタイトルで「Pentangle」1968 P2や「Sweet Child」1969 P3 に収録されていたもので、残酷な兄達に恋人を殺された娘がその事を夢枕で知る悲惨な話だが、歌詞は10番と12番が追加されている。ボーカルやギターは前回とほぼ同じアレンジであるが、ゲリーのドラムと娘の怒りと悲しみを表現するロッドのエレキギターが力強いサウンドを作り上げた。7.「Lassie
Gathering Nuts」は3人の男が娘を誘惑する話で、「一人目は唇を奪い、二人目は娘のベルトに手をかけ、三人目が彼女になにをしたのかここでは言えないが....」というちょっとエッチな歌なのであるが、静かなアレンジと魅力的で美しいメロディー、丁寧に歌うジャッキーのボーカルによって、デカメロンの世界の様に素朴で牧歌的な出来上がりとなった。9.「The
Baron Of Brackley」はスコットランド方言がきつい歌詞で、当時の領地や家畜をめぐる人々の争いを描いたもの。
バートのギターは控え目だがバンドの音に溶け込んで要所要所を締めている。初期のような鬼気せまるギターのリフはないが、余裕ある「受けの演奏」といえよう。華やかなバートのギターを期待する人は、肩透かしを食らうかもしれないが、それだけ他のメンバーとのバランスがよくとれた、まとまりがある演奏という事ができよう。
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P17 Think Of Tomorrow (1991) Green Linnet GlCD3057 |
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Bert Jansch: Vocal, Guitar
Jacqui McShee: Vocal
Peter Kirtley: Guitar, Vocal
Gerry Conway: Drums, Percussion
Nigel Portman Smith: Bass, Keyboards
Frank Wulff: Flute, Whistles (4,8)
Pentangle: Producer
Stefan Wulff: Engineer
Kieran Jansch: Cover
1. O'er The Lonely Mountain P22
2. Baby Now It's Over
3. Share A Dream
4. The Storyteller (Paddy's Song)
5. Meat On The Bone P19
6. Ever Yes, Ever No O27
7. Straight Ahead *
8. The Toss Of Golden Hair [Trad.]
9. The Lark In The Clear Air [Trad. Additional Words by Pentangle]
10. The Bonny Boy [Trad.] S36 P3 P3 P9 P19 O27
11. Colour My Paintbook P22 O27
歌詞付き
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1991年のこの作品は、アコースティックな音を強調した余裕のあるゆったりした出来上がりとなった。エレキベースやエレキギターが使われながらも、その音はアコースティック・ギターの音をかき消すことのない暖かみのあるもので、ゲリーのドラムスも生音で録音されている。今回は3曲を除いてすべてオリジナル作品。メンバー交代でロッド・クレメンツが抜け、バートの「Sketches」1990
S23のメンバーだったピーター・カートレイがギターを担当した。ジャッケット内部の写真を見るとナイジェルがすごくデブになっているのに驚いてしまった。自分も気をつけねば....といってももう遅いか。ちなみにジャケットのデザインはヒザーとの子供であるキーラン・ジャンシュによる。
1.「O'er The Lonely Mountain」は人間の欲望と自然破壊を歌った歌詞で、おおらかなメロディーと余裕のある演奏によるメッセージ・ソング。ピーターのスティール・ギターを思わせる抑制のきいたギター・ソロが絶品。2.「Baby
Now It's Over」は本作では唯一のバートのボーカル曲で、長年のパートナー、シャルロットとの愛の終わりと再出発の歌。シリアスな歌詞の割りにゆったりとしたメロディーで、抑えられた悲しみが深みを与えている。3.「Share
A Dream」のゴスペル調ピアノはペンタングルとしては珍しいサウンド。ジャッキーが自然と調和した自由を歌う心洗われる作品。4.「The Storyteller
(Paddy's Song)」は3拍子の軽やかなメロディーで、美しいメロディーに乗って、伝承の語り手と過ごした素晴らしい時が歌われ、現代のトラッドを思わせ印象的。5.「Meat
On The Bone」はピートによるちょっとダークな曲で、さわやかな曲の多い本作のなかでワサビのような存在。6.「Ever Yes, Ever
No」はとても印象的で個性的なメロディーと愛の逡巡を描いた深みのある歌詞が素晴らしい佳曲で、ボーカルはジャッキー。ピーターのエレキギターが美しい。1990年の初期ペンタングルのリユニオン・ライブでのバージョン(「Anniversary」
1990 O27 に収録)ではバートの弾き語りだった。7.「Straight Ahead」はゲリーの軽快なドラムスにのって二人のアコースティック・ギターが歌うインスト物。
8.〜10.の3曲はトラッド。8.「The Toss Of Golden Hair」は静かなアレンジのラブソングで、フランク・ウルフのフルート・ソロが入る。9.「The
Lark In The Clear Air」は、惚れ惚れするとても美しいメロディーの曲。10.「The Bonny Boy」は「The Tree
They Grow So High」として「Sweet Child」1969 P3 に収録され、1990年の初期ペンタングルのリユニオン・ライブ
O27でも演奏された作品。政略結婚で自分よりもはるかに若い少年を夫とした娘の話で、夫は早死し娘は生まれた子供の成長に望みをかけるという陰影のある印象的な話で、以前はしっとりしたアレンジであったが、今回はリズムをがらっと変えて軽快なテンポで歌われエレキ・ギターのソロがフィーチャーされる。
最後の曲 11.「Colour My Paintbook」は「Anniversary」 O26 にバートの「Sketches」 1990 S23
のアウトテイク・バージョンが収録されている曲で、ここでの演奏はアップテンンポで非常に明るいもの。ナイジェルのフェンダー・ローズ・ピアノをフィーチャーしたリズミックなバッキングで、ジャッキーがボーカルを担当。シンプルな歌詞が素晴らしい。
比較的軽めの心地良いアコースティックなアレンジとシンプルでさわやかな歌詞がうまくマッチし、とても聴きやすいサウンドになった。ボーカルはジャッキーが大活躍し、他はバートとピーターのボーカルが1曲づつのみである。ペンタングルとしては軽い音作りでありながら重量感において遜色が感じられないのは、曲の良さと経験豊かな各メンバーの筋金入りの演奏力と余裕のためであろう。
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P18 One More Road (1993) Permanent PERM CD 11 |
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Bert Jansch: Vocal, Guitar, Banjo
Jacqui McShee: Vocal
Peter Kirtley: Guitar, Vocal
Gerry Conway: Drums, Percussion
Nigel Portman Smith: Bass, Keyboards
Mike Piggott: Violin (4,6,8)
Paul Brennan: Whistle (6)
Ian Vincentini/ Denis Macbeth: Cover Concept And Artwork
1. Travelling Solo P19
2. Oxford City [Trad.]
3. Endless Sky P22
4. The Lily Of The West [Trad.] S27 S29 S33 S34 S36 S36
5. One More Road
6. High Germany [Trad.] P7
7. Hey, Hey Soldier
8. Willy Of Winsbury [Trad.] P7 P10 P22 O6 O27
9. Somali
10. Manuel
11. Are You Going To Scarborough Fair [Trad.] S25
歌詞つき
写真上: オリジナル盤ジャケット
写真下: 再発盤 (「Live 1994」と2枚組 2007年発売)
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再結成後ペンタングルとしては珍しく前作と同じメンバーによる録音であるが、バート参加のスタジオ録音としては最後の作品となった。前作同様アコースティックな響きを大切にした音作りだ。1曲1曲が丁寧にアレンジされており全体の印象としては
9.を除き地味だが、トラッド主体の作品であるのでそんなものだろう。演奏面ではギターのピーター・カートレイが光っている。この人の弾くリード・ギターのビブラート、ミュート等の微妙なコントロールは特筆すべきもので。アコースティック、エレクトリック共にとても味のある繊細で美しいプレイを聴かせてくれる。またゲストとして久しぶりにマイク・ピゴーのバイオリンが聴ける。
まずトラッドの解説から。2.「Oxford City」は嫉妬のために恋人に毒入りワインを飲ませて心中する船乗りの話で、最初は静かであるが娘がワインを飲んだあたりからハードなギターと切れ味鋭いドラムスがフューチャーされ一気に盛り上がる。4.「The
Lily Of The West」はジョーン・バエズやピーター・ポール・アンド・マリーの演奏が有名なアメリカン・トラッドでボブ・ディランの録音もある。「西部のユリ」フローラに裏切られ嫉妬のあまり相手を刺し殺してしまい、裁判にかけられ死刑になる西部の男の物語がバートのボーカルで歌われる。マイク・ピゴーのバイオリンが良い。6.「High
Germany」は南ドイツでの悲惨な戦争に赴く男と残された女の話で「Solomon's Seal」1972 P7 の素朴なバージョンに比較して今回はリズムやバイオリンが入った賑やかな出来上がり。8.「Willy
Of Winsbury」も「Solomon's Seal」1972 P7 のバージョンではダルシマーの響きが印象的なアレンジであったが、ピアノ1台の伴奏から始まり次第に盛り上がってゆく今回の録音も面白い。王様の娘の恋人になった若者が、貴族への取立てを断わり彼女と一緒に自由な暮らしへ旅立つ一種のカタルシスを感じる話。11.「Are
You Going To Scarborough Fair」はサイモン・アンド・ガーファンクルの演奏によってあまりにも有名な曲だが、ペンタングルとして初めて録音。ボブ・ディランが「Girl
From North Country Fair」で借用した歌詞は、呪術的で底知れぬ深みと味わいがあり、メロディーもご存じの通り一度聞いたら忘れないもので、何度聴いても飽きない傑作。数あるトラッドのながでもベストのものであることは間違いない。ここではバートのボーカルで淡々と演奏している。このアルバムが(バートが在籍した)ペンタングル最後のスタジオ録音盤となったが、その最後にこの曲をもってきた事は、バートの並々ならぬ思いが込められているように思える。
オリジナルは6曲。1.「Travelling Solo」はピーターのアコースティック・ギターが抜群の冴えを見せる。3.「Endless Sky」はピーターがメインの曲で他の曲と異なる個性を見せ、ちょっとハスキーでシニカルな彼のボーカルが聴ける。5.「One
More Road」は哀愁あるメロディーが印象的で、ピーターのエレキギター・ソロが渋い。7.「Hey, Hey Soldier」は反戦歌であるが、1960年代末期を感じさせる懐かしいメロディーで明るく歌われる不思議な雰囲気の曲。ボーカルはバートとジャッキーのデュエット。9.「Somali」はアフリカン・リズムを強調した今までのペンタングルにない音。ゲリーのドラムスとパーカッションとピーターのエレキ・ギターのサポートが最高で、途中のナイジェルのフレットレス・ベースのソロもきまっている。それらが打ち出すリズムにのってバートとジャッキーが掛け合いのボーカルを聴かせる。タイトルの通り内戦により泥沼状態にあるソマリアのことを歌ったもの。10.「Manuel」は静かな曲でピーターのギターが聴き物。
オリジナル曲については自然と人生、生と死がテーマとなっており、歌詞の内容は抽象的なものが多い。その雰囲気はトラッドの歌詞が持つシンプルな奥深さに現代的な知性と感覚をミックスさせた感じ。全体的に強烈さに欠けるが、出来上がりとしては水準をいっていると思う。
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P19 Live 1994 (1994) Hiper Tension Music HYCD 200 152 |
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Bert Jansch : Vocal, Guitar
Jacqui McShee : Vocal
Peter Kirtley : Guitar, Vocal
Gerry Conway : Drums, Percussion
Nigel Portman Smith : Bass
Pentangle : Producer
Kieran Jansch : Cover Design
1. Bramble Briar [Trad.] S36 P2 P2 P3 P9 P11 P13 P16 P20 P21 P21 P21
P21 P22 P22
2. Sally Free And Easy [Cyril Tawney] S36 S36 P7 P10 P20 P21 P22 O27
3. Kingfisher S14 S15 S18 S19 S23 S27 S36 P22 O17
4. Come Back Baby [Snooks Eblin] S1 S5 S14 S18 S27 S29 S33 S36 S36 S36
O13 O20
5. When I Was In My Prime [Trad.] P5
6. Meet On The Bone P17
7. Travelling Solo P18
8. The Bonny Boy [Trad.] S36 P3 P3 P9 P17 O27
9. Chasing Love S25 S36
10. Cruel Sister [Trad.] P5 P20 P21
11. Yarrow [Trad.] S8 P14 P22 O22
12. Reynardine [Trad.] S7 S33 P9 P16
Recorded during 1994 Pentangle tour in Germany.
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この頃のペンタングルはイギリス本国よりもヨーロッパ大陸での人気が高く、この作品もドイツの会社から発売されたもので、ドイツ国内のツアーの模様を収録したもの。解説を引用すると「ペンタングルのステージ・ショウの演奏と雰囲気をありのままに収めたもの。ミックスの際にいかなるスタジオ操作も加工も行わず、すべての演奏は真の生演奏である。」
全体的にかなりリラックスした演奏で、特にベース、ドラムの安定したリズムは地味ながらも滔々と流れる大河のようにゆるぎのない基盤を築いており、安心して聴くことができる。それに乗って演奏されるバートのアコースティック・ギターのアルペジオと、本作の聞き物であるピーター・カートレイのピリッしたフェンダー・ストラトキャスター系のリードが、正に大人にしかできない音楽をクリエイトしている。
レパートリーは初期のころから演奏しているトラッドと最近発表されたオリジナル曲が中心で、初期のオリジナルは意識的に避けている様だ。1.「Bramble
Briar」は初期の「Bruton Town」とほぼ同じで「So Early In The Spring」1988 P16に収録。歌詞が少し変わった以外は初期のものとサウンド的にほぼ同じ。ただしピートのギターが曲に全く新しい息吹を吹き込んでいる。2.「Sally
Free And Easy」はベースとドラムがオリジナル録音と異なるため、別の個性を持った曲に生まれ変わった。
3.「Kingfisher」は何度も録音され、「Skethes」1990 S23では歌詞付きのバージョンまで発表されたバートお気に入りの名曲。「Kingfisher」は鳥のカワセミのこと。バートが1979年に製作した、水鳥を特集したインスメンタル・アルバム「Avocet」
1979 S15 が初出だ。4.「Come Back Baby」は「Nicola」1967 S5がオリジナルのレパートリーで、ピートと二人で息の合ったブルースを披露している。5.「When
I Was In My Prime」はオリジナルと同じくジャッキーの独唱。ピーンと張り詰めた雰囲気のなかで彼女の声の震えがすみずみまでにしみわたる様はライブならではのもの。
6.「Meet On The Bone」はピートのボーカルによるちょっとダークな感じの曲。彼の繊細で控えめだが時にギラッとした輝きをみせるギターワークは本当に素晴らしく、バートとの相性も最高。7.「Travelling
Solo」はスタジオ録音とほぼ同じ。8.「The Bonny Boy」はアップテンポで演奏されるが、初期の「The Tree They Do
Grow High」と呼ばれたころのゆったりしたサウンドも良いかな。
9.「Chasing Love」はバートの「Acoustic Routes」1993 S25に収録されていた綺麗な曲で、ここではバートの伴奏とジャッキーのボーカルにピートのリードギターが加わり、良い出来。11.「Yarrow」におけるジャッキーは珍しく激しい声で歌っており、リズム隊とエレキギターも頑張って初期にはないハードなサウンドを出している。その盛り上がりは最後の曲
12.「Reynardine」にも持続され、バートとジャッキーの掛け合い、およびハーモニー・ボーカルでフィナーレを飾っている。
本作には曲目やアレンジ、演奏メンバー等の点で新しいものがないため、はっとする様なスリルや新鮮さはないが、曲と演奏の良さ、何よりも気心が知れたメンバーと聴衆によるなごやかな雰囲気がリスナーをリラックスさせてくれる作品である。
なお、この作品を最後にバートはペンタングルから脱退。その後は、ジャッキーがメインとなり、「About Thyme」 1995、「Passe Avant」
1998、「At The Little Theatre」 2000、「Feoffees' Lands」 2005、「Live In Concert
1996-2011」 2011のアルバムを発表した。
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P20 Finale An Evening With Pentangle 2016 Topic TXCD824D |
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Bert Jansch: Guitar, Banjo (9,19), Vocal
John Renbourn : Guitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Glockenspiel
[CD 1]
1. Let No Man Sreal Your Thyme P2 P3 P9 P13 P21 P21 O5
2. Light Flight P4 P8 P8 P9 P11 P21 P21 P21 P21 P22
3. Mirage P2 P13 S14
4. Hunting Song P4 P8 P8 P12
5. Once I Had A Sweetheart [Traditional] S7 P4
6. Market Song P3 P11 P21
7. In Time P3 P3 P8 O5
8. People On The Highway P7 P8 P21 P21 P22 O6
9. House Carpenter [Traditional] P4 P8 P9 P11
10. Cruel Sister [Traditional] P5 P19 P21
[CD 2]
11. The Time Has Come [Ann Briggs] S36 P1 P3 P9 P13
12. Bruton Town P2 P2 P3 P9 P11 P13 P16 P19 P21 P21 P21 P21 P22 P22 S36
13. A Maid That's Deep In Love [Traditional] P5 P9
14. I've Got A Feeling S10 S36 P3 P8 P11 P12 P21 P21 P21 P21 P22 O27
15. The Snows S36 P7 P21
16. Goodbye Pork Pie Hat [Mingus] P1 P3
17. No More My Lord [Traditional] P3 P9
18. Sally Free And Easy [Tawney] S36 S36 P7 P10 P19 P21 P22 O27
19. Wedding Dress [Traditional] P6 O6
20. Pentangling P2 P10 P13 P21
21. Will The Circle Be Unbroken [Traditional] P6 P9 P11 P11 O6
Recorded during 2008 Pentangle tour in England
St. David's Hall, Cardiff July 1: 1, 10, 21
The Lyceum, London July 7: 2, 3, 5, 7, 8, 12, 13, 14, 18, 20
The Harrogate International Centre, Harrogate July 10: 4
The Sage, Gateshead July 12: 6
Liverpool Philharmonic Hall July 14: 9
The Manchester Place Theatre July 9 : 11, 17, 19
The Oxford New Theatre July 6: 15
The Glasgow Royal Concert Hall July 13: 16
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メンバー全員が健在で、ジョン、バートとジャッキーは共演実績ありということで、以前からペンタングルのリユニオンのアイデアはあったが、ベースのダニーが忙しい事に加えて、一番の障害は、ドラムスのテリー・コックスが現役を引退し、長年ミノルカ島でレストランを経営していることだった。前回の演奏が1982年(1990年の演奏の際、彼は交通事故のため参加できず、O27参照)なので、20年以上のブランクがあったことになる。きっかけはBBC
Radio2 フォーク・アワーズで、表彰会場での生演奏の打診を受けて2007年2月に出演し見事なパフォーマンスを見せたこと、そしてその前後に出されたボックスセット「The
Time Has Come」P10 の好評をうけて、本格的なリユニオンの話がまとまったようだ。そして6月29日から7月14日までのイングランド12ヵ所のツアーと、8月14日ウェールズのグリーン・マン・フェスティバルのコンサートが実現した。当時その一部につき音源や動画で視聴することができたが、長らく正式発売されないままだった。そしてバート2011年、ジョン2015年の死後、2016年に本CDが発売された。最初はこの録音は両者の承諾がないまま制作されたのかなと思っていたが、発売元のトピック・レーベルによると、生前のバートが曲目決定とミキシング、ジョンはマスタリングに関わっていたとのこと。
本CDに収められた21曲は13回のコンサートのうち、8ヵ所からのベストトラックを抽出したものだ。上記13ヵ所のセットリストを見たわけではないので断言できないが、各コンサートはほぼ同じ曲順(ただし初回のロンドンのみ1曲目と11曲目が入れ替わっている)で、CDもそれにならっている。ただしツアーで演奏されたが本CDに収められなかった曲として、セカンド・セットの2曲目「No
Love Is Sorrow」、最後から2曲目の「Willy O' Winsbury」、「Rain And Snow」の3曲がある。
演奏内容については「その他音源・映像」の部「Pentangle Reunion Concerts」を参照してほしい。2008年の演奏ということで、バートとしては2009年に肺がんと診断され手術を受ける前ではあるが、1960年代〜1970年代の全盛期と比較するとギタープレイのリズムの乱れや指のもつれが随所にみられ、ボーカルも含めて衰えがあるのは明らか。それでも全盛期があまりに凄かったということで、ファンが音楽として鑑賞して楽しむには十分なレベルであると思う。
ひとつ言いたいのは、本CDは入門者用としては不向きであることで、ペンタングル、バートやジョンの音楽を初めて聴きたい人は全盛期の作品から挑戦してほしい。なお本作は「Finale」というタイトルがついているが、公式盤として最後という意味で、ペンタングルの最後の演奏は2011年となる。
本音源は、2023年にチェリーヒル・レーベルから発売されたボックスセット「Reunions & BBC Sessions」 P21のCD3、CD4に収められた。
[2024年1月作成]
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P21 Reunions, Live & BBC Sessions 1982-2011 (2023) Cherry Red CRTREE4BOX027 |
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Bert Jansch: Guitar, Banjo, Vocal
John Renbourn : Guitar, Vocal
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums
CD1 (Reunion At The BBC)
[Cambridge Folk Festival (BBC World Service) 1982 July-August]
1. Train Song S1 S36 S36 P4 P8 P9 P11 P21 P22
2. If I Had A Lover S16 S36 P21 P21
3. People On The Highway P7 P8 P20 P21 P22 O6
4. Sovay [Trad.] S16 S19 P3 P9 P21 P21 O18
5. Bruton Town [Trad.] S36 P2 P2 P3 P9 P11 P13 P16 P19 P20 P21 P21 P21
P22 P22
6. I've Got A Feeling S10 S36 P3 P8 P11 P12 P20 P21 P21 P21 P22 O27
[Six Fifity-Five Special (BBC2) August 5, 1982]
7. Sovay [Trad.] S16 S19 P3 P9 P21 P21 O18
8. If I Had A Lover S16 S36 P21 P21
[BBC Radio2 Folk Awards (BBC Radio2) Febuary 5, 2007]
9. Bruton Town [Trad.] S36 P2 P2 P3 P9 P11 P13 P16 P19 P20 P21 P21 P21
P22 P22
10. Light Flight P4 P8 P8 P9 P11 P20 P21 P21 P21 P22
(David Attenborough Presents Lifetime Awards To Terry Cox & Bert Jansch)
[Freak Zone (BBC Radio6 Music) April 27, 2008]
11. Let No Man Sreal Your Thyme P2 P3 P9 P13 P20 P21 O5
12. Light Flight P4 P8 P8 P9 P11 P20 P21 P21 P21 P22
13. Market Song P3 P11 P20
14. I've Got A Feeling S10 S36 P3 P8 P11 P12 P20 P21 P21 P21 P22 O27
[Later With Jools Holland (BBC2) Apri 29, May 2, 2008]
15. Let No Man Sreal Your Thyme P2 P3 P9 P13 P20 P21 O5
16. Light Flight P4 P8 P8 P9 P11 P20 P21 P21 P21 P22
17. I've Got A Feeling S10 S36 P3 P8 P11 P12 P20 P21 P21 P21 P22 O27
[Cambridge Folk Festival Highlights (BBC Radio2) August 2, 2011]
18. Bruton Town [Trad.] S36 P2 P2 P3 P9 P11 P13 P16 P19 P20 P21 P21 P21
P22 P22
CD2 (Live In Italy)
[Thiene December 10, 1982]
19. Bruton Town [Trad.] S36 P2 P2 P3 P9 P11 P13 P16 P19 P20 P21 P21 P21
P22 P22
20. People On The Highway P7 P8 P20 P21 P22 O6
21. Light Flight P4 P8 P8 P9 P11 P20 P21 P21 P21 P22
22. Ragtime Tune (John Renbourn Solo)
[Teatro Orfeo, Milan December 9, 1982]
23. A Bold Young Farmer (Jacque McShee Solo)
24. Train Song S1 S36 S36 P4 P8 P9 P11 P21 P22
25. If I Had A Lover S16 S36 P21 P21
26. Open Up The Watergate [Bert Jansch] S9
27. Blackwaterside [Trad.] S4 S18 S18 S25 S27 S33 S36 S36 S36 O11 O16 O42
28. Sovay [Trad.] S16 S19 P3 P9 P21 P21 O18
29. Sweet Child P3 P9 P10
(Band Intros)
30. Pentangling P2 P10 P13 P20
31. I've Got A Feeling S10 S36 P3 P8 P11 P12 P20 P21 P21 P21 P22 O27
32. Cruel Sister [Trad.] P5 P19 P20
33. Sally Free And Easy [Tawney] S36 S36 P7 P10 P19 P20 P22 O27
34.Moonshine [Jansch] S8 S23 S36 S36 S36 O40
CD3 & CD4
「Finale An Evening With Pentangle 2016」と同内容 (P20参照)
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Cherry Red Recordsから発売された4枚組CDボックスセットで、1枚目が1982年、2007〜2008年、2011年のペンタングル再結成に係るBBC放送音源、2枚目が1982年のイタリア・ツアーの音源、3・4枚目が2008年のイギリス・ツアーの音源という内容。3・4枚目は2016年発売の「Finale」P20と同一内容なので、本ディスコグラフィーの対象外とした。
CD1 (ペンタングル再結成に係るBBC放送音源)
[Cambridge Folk Festival (BBC World Service) 1982 July-August]
イタリアでのツアーの好条件のオファーを受け、約10年振りに再結成されたペンタングルは、最初のギグとして1982年7月30日から8月1日までの期間で開催された第18回ケンブリッジ・フォーク・フェスティバルに出演した。バートは「Heartbreak」S18、
ジョンは「Live In America (John Renbourn Group)」の頃にあたる。ただし、テリー・コックスが直前の自動車事故により怪我をしたため、本ステージはドラムス抜きの4人による演奏となった。以前より「If
I Had A Lover」、「People On The Highway」、「Sovay」の音源が出回っていたが、2023年11月発売の本CDボックスセットで同コンサートの演奏6曲が公式発売となった。ドラムス無しのためいつもと異なる感じになっているが、ガッツが入った演奏で、やる気満々の素晴らしいパフォーマンスだ。なお
5.「Bruton Town」についてはYouTubeでBBC2テレビの映像を観ることができる(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[Six Fifity-Five Special (BBC2) August 5, 1982]
BBCテレビ制作の「Six Fifty Five Special」の映像はケンブリッジ・フォーク・フェスティバル出演後に撮影されたもので、テリー・コックスの怪我のため、ここでもドラムス抜きの4人での演奏。なおこの2曲については、 YouTubeでBBC2テレビの映像を観ることができる(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[BBC Radio2 Folk Awards (BBC Radio2) Febuary 5, 2007]
BBC Radio2は特番で年間顕著な活躍をしたミュージシャンを「Folk Awards」として表彰しており、第8回目の2007年2月、ペンタングルが「Lifetime
Achievements Awards」を受賞。その席で5人としては25年ぶりの再会セッションが実現した(デロール・アダムス65歳誕生日記念コンサート
1990 O27はテリー抜きの4人だったため)。ここでのバートとジョンのギターはグループ現役当時と比べると、正確性・切れ味で見劣りがしてしまうが、それでも感動的。曲が終わると、プレゼンターとしてサー・デビッド・アッテンボロー(俳優、監督のサー・リチャード・アッテンボローの弟)が登場し、彼のスピーチの後に賞が授与され、ペンタングルを代表してテリーとバートが謝辞を述べる(詳細は「その他音源・映像」参照)。
なおこの番組でのリユニオンおよびボックスセットの発売などをきっかけとして再評価の機運が高まり、2008年の40周年記念コンサートと英国の各都市での12回のコンサートが実現し、バートとジョンの死後の2016年にその時のライブ「Finale」P20が発売された。
[Freak Zone (BBC Radio6 Music) April 27, 2008]
上記の曲は2008年のペンタングルのリニオン・ツアー開始前の4月27日に録音され、ツアー終了後の6月8日にBBC6 Music の番組 「Stuart
Maconie's Freak Zone」で放送された。ラジオ放送用のスタジオライブという、オーディエンス、カメラがない状況で、落ち着いた感じの演奏となっている。曲間のコメントや紹介無しで、切れ目なく演奏が続く。
13.「Market Song」におけるバートの枯れた声を聴くと、40年という月日の重さを感じ、感慨深いものがある。録音・演奏の両面において、ペンタングル・リユニオン音源の決定版(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[Later With Jools Holland (BBC2) Apri 29, May 2, 2008]
ジュールズ・ホランドがホストを務める人気テレビ番組「Later」へ出演。ペンタングルによる本番組への出演は4月29日(15.「Let No Man
Steal Your Thyme」)と5月2日(16.「Light Flight」、17.「I've Got A Feeling」)の2回であるが、会場セッティングおよびメンバーの服装が同じなので、同時に収録し異なる日に放送したもの(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[Cambridge Folk Festival Highlights (BBC Radio2) August 2, 2011]
2011年のペンタングル・リユニオンとして企画された3つのコンサートの2番目。バートは2ヵ月後の10月5日に亡くなるため、余命僅かであることが分かっていたものと推測される。本コンサートについてはオーディエンス・ショットの映像が出回っていて、「Hunting
Song」、「Cruel Sister」、「Soho」の3曲を観ることができたが、「Bruton Town」について本作で音源として聴くことができた。ただしイントロ部分がカットされていて、ジャッキーの歌から始まるようになっている。おそらくBBCの放送音源ということで、イントロ部分はアナウンサーの言葉が被っていたため、止む無くカットしたものと推測される。なお「Cambridge
Folk Festival 2011」というタイトルのオムニバスDVDが2012年にイギリスで発売されており、そこにはペンタングルの「Bruton
Town」が収められているとのことであるが、私は未視聴(詳細は「その他音源・映像」参照)。
CD2 (1982年のイタリア・ツアーの音源)
[Thiene December 10, 1982]
グループを解散してメンバーが自分の道を歩みだしてから10年後、イタリアでのツアーのオファーが好条件だったため、全員承諾したという。しかしリハーサルの段階でテリーが交通事故に合い、そのため最初のギグとして予定されていたイギリスのフォーク・フェスティバルの出演は4人となった。しかし12月のイタリアのツアーには、テリーが車椅子で復帰、5人全員によるリユニオンが実現した。本音源はその模様を捉えた貴重なものであり、過去から現在に至るペンタングルのミッシング・リンクを補うものである。
イタリア北部の小さな町ティエーネでのコンサートを録音したもので、以前から出回ってる16曲のうちの最初の4曲にあたる。テープの録音スピードに問題があったようで、演奏が本来より速くなり、その結果音も高くなっていることは明らかだ。ここでの演奏曲をオリジナルと比較して聴くとよくわかる。また速くなった結果、レンボーンのソロ曲が人間では不可能な早弾きとなってしまっている。私は編集ソフトを使ってピッチを遅く調整したものを聴いている。公式発売である本作で、この問題が是正されなかったことは非常に残念だ。まあ最初の4曲だけでよかったとするべきか。
4曲目のジョンのソロ演奏 22. 「Ragtime Tune」は、正しくは彼が当時のコンサートで演奏していたマール・トラヴィスの「Cannoball
Rag」だ。この曲はソロアルバムには入らず、正式録音は、2005年に発売されたジョンのベスト盤「Master Anthology Of Fingerstyle
Guitar Vol.1 Nobody's Fault But Mine」に収められた(詳細は「その他音源・映像」参照)。。
[Teatro Orfeo, Milan December 9, 1982]
上記ティエーネの前日に行われたミラノでのライブ録音。前日とほぼ同じ演奏曲目で、出回っている音源のうち5曲目以降を収録。音響機材に問題があったようで、ジーというノイズがするが、各楽器はクリアーに録音されている。23.「A
Bold Young Farmer」はジャッキーが無伴奏で歌う曲で、ジョン・レンボーン・グループの「The Enchanted Garden」
1980 に収められていた。イントロでダニーのベースソロが入る 25.「If I Had A Lover」は、バートのソロアルバム「Thirteen
Down」 1979 S16でジャッキーがゲストで歌っていた曲。従ってペンタングルとしての演奏はここだけという貴重な音源。26.「Open Up
The Watergate」はバートのソロアルバム「L.A. Turnaround」1974 S9からの曲で、30年近くも経った後に、ペンタングル
5人による演奏を聴けるなんで、感慨無量。個性的なリズムセクション、ジョンのオブリガード、そしてジャッキーのハーモニー・ボーカルにより、ペンタングル・サウンドそのものに仕上がっており、本音源での聴き所のひとつとなった。元の音源ではその後にあったバートの弾き語りによる「One
Scotch, One Burbon」は、本作では何故かカットされている。27.「Blackwaterside」はバートとダニーの二人演奏で、ダニーの骨太プレイが素晴らしい。メンバー紹介の後に、バンドの演奏力のショーケースである大作
30. 「Pentangling」が始まる。「この曲はどうなってゆくか分からない」というバートの紹介のとおり、インプロヴィゼイションが気の赴くまま延々と続く。31.「I've
Got A Feeling」はダニーのベースソロがフィーチャーされる、よりジャジーな演奏で、良い出来。33.「Moonshine」はバートによるソロアルバム1973
S8 のタイトル曲で、ペンタングルによる演奏は初めて。ジョンのギター、ジャッキーのハーモニー・ボーカルもしっかり入った感動の1曲!!
演奏自体は荒っぽさもあるが、総じて良い出来だと思う。ただし本コンサートを含むイタリアツアーについてのバートのコメント「Some of it was
good, some of it was great, but we weren't enjoying the tour, and we weren't
creative」 (コリン・ハーパー著「Dazzling Stranger」より)にある通り、当時ジョン・レンボーンはダーリントン大学への入学を決めており、ペンタングルとしての演奏活動にそれほど情熱がなかったはず。さらにバートとジョンの音楽志向に大きな隔たりがあり、新しい作品を創る余地がなかったものと思われる。その後ジョンは、1983年のオーストラリアやドイツでのコンサートの後に脱退、バートの「A
Rare Conundrum」 1977 S13に参加したマイク・ピゴー(ギター、バイオリン)が後任者として加入することになる。新しいラインアップにおいて、創造的であろうとするバートの思いは生かされたようで、1985年に発表されたアルバム「Open
The Door」 P14は、全く新しいサウンドで新生ペンタングルと呼ぶに相応しいものだった(詳細は「その他音源・映像」参照)。
[2024年7月作成]
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P23 Tam Lin (1971) (映画) Republic Entertainment Inc |
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Directed by: Roddy McDowall
Acted by: Eva Gardner (カザレ夫人)
Ian McShane (タム・リン)
Stephanie Beacham (ジャネット)
Music Composed and Conducted by: Stanley Myers
Songs Composed and Played by: The Pentangle
Bert Jansch: Guitar
John Renbourn : Guitar, Sitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Back Vocal
1. The Best Part Of You
2. Tam Lin (断片)
3. Name Of The Game (断片)
4. Tam Lin (断片)
5. Tam Lin (断片)
6. Instrumental (断片)
7. Instrumental (断片
8. Tam Lin (断片)
日本未公開 (日本語字幕付ビデオなし)
106分(冒頭のロディ・マクドウォールの紹介、約18分を含む)
録音: 1969年12月
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ペンタングルが音楽を担当した映画。このイギリス映画は、「The Ballad Of Tam Lin」、「Devil's Widow」、「Devil's
Woman」とも呼ばれ、名優ロディ・マクドウォール(1928-1998)唯一の監督作品で、ハリウッドの大女優エヴァ・ガードナーが主演。1968年に製作されたが公開は1971年だった。製作後に映画会社が倒産し、版権の譲渡先が作品の真価を理解しなかったためか、公開時は全く不評で失敗作とされた。その後所有権が転々とする間にフィルムは行方不明となり、人々はこの作品のことを忘れ、監督の手元に残った35ミリフィルムが唯一の存在の証となる。25年後、マーチン・スコセッシ監督(「タクシー・ドライバー」、「ニューヨーク・ニューヨーク」、「ラスト・ワルツ」、「恋に落ちたら」、「カジノ」など作品多数。ロバート・デ・ニーロ主演の作品が多い)等により本作が再評価され、彼らの努力により著作権上の問題が解決、発掘・修復のうえ再公開され、1998年にビデオ化されたもの。
ロディ・マクドウォール出演の作品で一番思い出深いものは、ジョン・フォード監督の哀愁溢れる「わが谷は緑なりき (How Green Was My
Valley)」1941年だろう。炭鉱町の人々の生活を描き、涙なしには見れない作品だった。その後は「猿の惑星」1968年のコーネリアス教授の役が有名だ。エヴァ・ガードナー (1922-1990)はハリウッド史上最も美しかった女優の一人で、自信を持てない性格のせいかキャリアは比較的地味に終わったが、「ショーボート」1951年、クラーク・ゲーブルと共演した「モガンボ」1953年、ハンフリー・ボガートとの「裸足の伯爵夫人」1954年、「北京の55日」1963年あたりが代表作。特に「裸足の伯爵夫人」では、貧しい裸足のダンサーから映画女優になり、伯爵夫人にまで上りつめるが、最後は非業の死を遂げる女性を熱演。シニカルな映画監督役のボガードの味わい深い演技、脚本も担当したジョセフ・マンキーウィッツ監督の技量もあり、素晴らしい作品となった。情熱と気品、知性と野生を兼ね備え、匂い立つような美貌と豪華なボディーが素晴らしい。この作品の彼女は40代の後半で、美しさのみならず、悪魔のような嫉妬、老いの醜さの面を見事に演じている。
ストーリーは、スコットランドに古くから伝わる有名な伝承物語がベースで、ロバート・バーンズやチャイルド氏が集めたバラッド集に収められている。いろいろなヴァージョンがあるようだが基本的な内容は以下のとおり。
昔タム・リンという名の青年がいた。彼はある日馬から落ちたため、妖精の女王によって妖精の姿に変えられてしまう。ジャネットという女性がタムリンに出会い恋に落ちる。彼女は妊娠するが、彼は女王が力を保つために7年毎に必要な生贄にされる運命にある。彼は元の姿に戻るために、「パレードで僕を馬から引きずり降ろし、抱きしめて絶対に離さないように」と、彼女に協力を頼む。パレードの日、ジャネットがその通りにすると、妖精の女王が彼を渡すまいとして、様々な魔法をかけるす。タム・リンは、トカゲ、カエル、ヘビなど、ジャネットが嫌がりそうな物に姿を変えたが、彼女は、彼を抱きしめ続けた。女王は最後に彼を火ダルマにしたがジャネットは彼を離さなかった。女王は、とうとう彼のことを諦めた。魔法は解け、タム・リンは元の青年の姿に戻ることができた。
ここでは舞台を現代に移し、妖精の女王を金持ちの未亡人、取り巻きの妖精達をデカダンなモッズ(ヒッピー)の集団に置き換えている。中世の香りと現代的なゲーム感覚の人間模様が交じり合って、時代感覚が曖昧となって、観る者をファンタジーの世界に迷いこませる設定が新鮮だ。最初は未亡人のカザレ夫人と若い愛人タム・リンの愛のシーンから始まり、取り巻きの若い男女を連れて、4台の車でロンドンを抜け出しスコットランドの別宅に向かう高速道路のシーンで、クレジットタイトルが表示され、車のラジオからの音楽としてペンタングルの1.「The
Best Part Of You」が流れる。「Light Flight」 P4、「Reflection」 P6のようなメロディーで、テリー・コックスが中心になって作曲されたのではないかと推測されるモダンな感じの軽快な曲。本作の底流に流れる人間模様のゲームが歌詞のテーマで、バックにブラスやエレキピアノが加わり、ペンタングルっぽくないロックバンドの音作りだ。といってもドラムスにはテリー独特のタッチがあるし、R&B調のリードギターはやはりレンボーンだ。彼が録音したギター演奏のなかで、最もロックしている曲。当時のグループでいうと、ジャズっぽいスタイルで人気があったブラッド・スウェット・アンド・ティアーズの音に似ているかな? この曲のサウンドとスコットランドへのドライブのシーンが、観る者を物語の世界へ誘うゲイトウェイとなっている。
美しい自然に囲まれたスコットランドの館で、彼等は享楽の日々を送る。そこで酒びたりの愛欲の生活を送るタム・リンは、小犬を届けにきたジャネットに出会う。演じるのは新進女優ステファニー・ビーチャムだ。彼女はその後マーロン・ブランドと「妖精たちの森」1971年で、愛欲でドロドロした主役を演じるが、女優としては大成しなかった。ある日、二日酔いのタム・リンが散歩にでかけた時、2.が流れる。「Tam
Lin」はトラッドとしてサンディー・デニーが歌うフェアポート・コンベンションのヴァージョンが有名(1969年の作品「Liege & Liet」に収録)だが、ペンタングルでの演奏の歌詞は、この曲の通常のバージョンとはかなり異なる。曲が流れるシーンと歌詞の内容がピッタリ合っていることから、この映画のために改作されているものと思われる。シタールによる演奏は、「Basket
Of Light」P4を思い起こさせる。家を出たジャネットがスコットランドのムーア(草山)を歩き、二人は小川のほとりで偶然出会う。音楽が語り部の役割を担っていて、全く異なる人生を送っていた二人を結びつける触媒のような効果がある。タム・リンが持っていたドン・ペリニオンの瓶を叩き割ると音楽が止み、二人が電撃的に恋に落ちる様が静止画像のカット割りで表現され、おとぎ話的な展開にシュールな効果を付与している。
夫人は、その後タム・リンの心変わりを敏感に感じとる。取り巻き連中によるパーティーのシーンで、3.「Name Of The Game」がダンス音楽として流れるが、残念ながら20秒ほどで中断してしまう。いかにもテリー好みで、ジャッキーと一緒に歌われるこの曲は、その後ペンタングルのファンの間で幻の未発表曲として噂されたが、2004年に発売された未発表放送音源集「The
Lost Broadcast」P9で、ラジオ番組におけるスタジオライブのバージョンが初収録された。曲の後に行われる運勢当てゲームで、超能力を持った女性がタム・リンの秘密を知り狼狽する。それを見て気づくのが、キャラクターレスな取り巻き集団のなかで、唯一富への野心を持ち、タム・リンの後釜を狙う青年だ。タム・リンはジャネットの父親が牧師を勤める教会で彼女に再会(ここで4.「Tam
Lin」が流れる)し、彼は夫人と別れる決心をして、ジャネットと逢瀬を重ねる。彼は意を決して夫人の部屋に行き(ジャッキーの独唱5.「Tam Lin」)、別れ話を持ち出すが夫人は認めない。逆に彼女の執事に呼ばれて、過去の愛人がみな事故死していること知らされて愕然とする。囚われの身であることを悟った彼は何としてでも夫人から逃げ出そうとし、彼女は悪魔のように怒り狂うが、彼に一週間の猶予を与える。ジャネットは妊娠して悩んでいたが、タム・リンと再会して一緒に暮らす決心をする(ここで5.「Tam
Lin」が流れる)。二人は隠れるが、執事に見つかってしまい、タム・リンは拉致されてスコットランドの館に連れ戻される。取り巻き連中と後釜を狙う青年の悪意ある視線のなかで薬を飲まされた彼は、殺人ゲームの被害者として「殺される」という強烈な暗示をかけられ、恐怖と錯乱のなか家を逃げ出しマンハンティングの人々に追われる。探しにきたジャネットが合流して、車に乗り危険な暴走運転を繰り広げるが、車のキーを引き抜いて止めようとする彼女の機転で九死に一生を得る。錯乱状態のまま沼地を逃げ惑うタム・リンを人々が追いかける。薬の幻覚作用で、自分が熊や蛇に変身し、身体が炎に包まれ発狂寸前となるが、ジャネットがしっかり抱きしめ離さなかったため助かる。かくして嫉妬と復讐に燃えた夫人の策略は失敗し、彼女は後釜に居座った青年と海外に飛び立つ。最後に夫人の怒りに燃えた狂気の目がアップになり、8.「Tam
Lin」が流れて映画は終わる。本作においてペンタングルの歌と演奏が聴ける部分はそれほど多くなく、大半のバックはスタンレー・メイヤーズ(「ディア・ハンター」の音楽が有名)による古典風の音楽が流れている。しかし彼等の曲はストーリー・テラー役として重要なシーンで挿入されているので、それなりに印象的。ちなみに上述の歌の他に、インストルメンタルの短い断片を2つほど聴くことができる。
トラッドの背景を知らない人には、出来損ないのホラー映画に思えるかもしれない。一般的には評価の低い作品だが、観る人によっては奥の深い大変魅力的な作品。伝承の世界が好きな人にはお勧め。私個人の感想としては、人間関係を鋭く捉えた脚本、印象的な演出、深みのある撮影、俳優の演技のレベルは高いと思う。でも何と言っても、この作品を支配しているのは主演であるエヴァ・ガードナーの圧倒的な存在感だろう。本作は、再評価の後はカルト・クラシックスの仲間入りを果たしている。当時サウンドトラック・レコードは発売されておらず、フィルム自体が所在不明になる位なのだから、ペンタングルの演奏のマスターテープなんて残っていないんだろうな〜。いつかある日突然発掘されることを期待したいですね。現在日本語字幕付きのビデオは発売されておらず、海外のネットショップで入手可能。DVD化はされていないようだ。
2007年に発売されたれたペンタングルのボックスセット「The Time Has Come 1967-1973」P10 に、生き残ったフィルムのサウンドトラックから録音された1.と、2.
4. 5. 8.を編集したトラックが収録された。
[2022年2月追記]
録音時期につき、ボックスセット「The Albums」 2017 P11の年表から追記しました。
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P24 Christian The Lion (1976) (映画) |
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Directed by: James H. Hill, Bill Travers
Acted by: Bill Travers (ナレイションも担当)
Virginia McKenna (ナレイションも担当)
George Adamson (ナレイションも担当)
Terence Adamson
Anthony Bourke
John Rendall
Music by: The Pentangle
Bert Jansch: Guitar, Vocal
John Renbourn : Electric Guitar, Sitar
Jacqui McShee : Vocal
Danny Thompson: Bass
Terry Cox : Drums, Marima, Back Vocal
1. インスト(ジャッキーのハミング、シタール) 家具屋にて
2. テーマ・ソング (ジャッキーの歌) クレジットタイトル
3. インスト(ジャッキーのハミング) 「クリスチャン」(ライオン)との出会い
4. インスト(ピアノ、エレキギター、ギター) クリスチャンが庭で遊ぶシーン
5. テーマ・ソング (ジャッキーの歌) 郊外への移転
6. インスト(ジャッキーのハミング) 郊外への移転
7. インスト(ジャッキーのハミング) アフリカへの移動の準備
8. インスト(バートのハミング) クリスチャンの愛情表現
9. テーマ・ソング (ジャッキーの歌、ギター) ケニアへの移動
10.インスト(ベース、マリンバ) ナイロビにて
11.インスト(ベース、マリンバ、エレキギター) 住みかへの移動
12.インスト(ギター) ライオン「ボーイ」を連れてくる
13.インスト(ジャッキーのハミング)イギリスの海辺で遊ぶクリスチャンの回想シーン
14.インスト(バートのハミング) ボーイの紹介
15.インスト(ベース、マリンバ) ボーイの怪我の治療
16.インスト(バートのハミング)エイス、ジョンとクリスチャンにじゃれる
17.インスト(エレキギター) ボーイとクリスチャン、子ライオン「カターニア」のお見合い
18.インスト(エレキギター) 3匹が緊張しながらも次第に慣れてゆく
19.インスト(エレキギター) 3匹の共同生活の始まり
20.インスト(ジャッキーのハミング)エースとジョンの帰国
21.テーマ・ソング (ギター) 3匹の野外生活の始まり、野生ライオンの脅威
22.インスト(ギター)3匹の野外生活
23.テーマ・ソング (ジャッキーの歌) 3匹の野外生活
24.インスト(エレキギター) 水辺に潜む危険
25.インスト(ベース、マリンバ) カタリーナの死
26.インスト(ベース、マリンバ) クリスチャンの昼寝
27.インスト(エレキギター) 雌ライオン「ジュマ」「ジェシカ」を連れてくる
28.インスト(バートのハミング) 雌ライオンとの野外生活の始まり
29.インスト(ベース) ジェシカの死
30.インスト(ギター) ボーイの怪我と治療
31.インスト(エレキギター) 新しい雌ライオン「モナ」と「リサ」加わる
32.インスト(エレキギター) 雌ライオンとのお見合い
33.インスト(ギター、ピアノ) 子ライオン「スーパーカブ」加わる
34.インスト(ジャッキーのハミング、エレキギター) 再び野生の生活へ
35.インスト(ベース) ボーイの悲劇
36.インスト(ジャッキーのハミング)ジョージの悲しみ
37.インスト(ベース、マリンバ) エイス、ジョンがクリスチャンに会いにくる
38.インスト(バートのハミング) クリスチャンは二人の事を忘れていなかった
39.インスト(ジャッキーのハミング) 他のライオンも彼等を歓迎する
40.テーマ・ソング (ジャッキーの歌) ライオンとジョージの夕陽のシルエット
41.インスト (ジャッキーのハミング)エンド・タイトル
注 ()内はフィーチャーされる主な楽器を表示しましたので、他にドラムス、ベース、ギター、エレキギターなどが含まれています。
日本未公開 (日本語字幕付ビデオなし)
89分
録音: 1971年〜1972年
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1.はじめに
ペンタングルが音楽を担当したもう1本の映画。都会で生まれ育ったライオンの子供をアフリカの自然に返す実話をドキュメンタリー風に製作したもの。「ドキュメンタリー風」というのは、冒頭のシーンなど明らかな再現シーンがあったり、カット割りで演出効果を出している部分があるため。1966年の映画「野生のエルザ」に関わった人々が多く参加している。フィルムが撮影されたのは1970年前後、サウンドトラックの録音は1971年〜1972年であるのに対し、一般公開がずっと後の1976年になったいきさつはよく分からない。アメリカでは1972年にテレビ放送されたらしい。ペンタングルはテーマのみならず、映画の全編でバックの音楽を担当している。全曲ナレイション絡みで、かつ断片ではあるが、彼らの演奏をたっぷり聞くことができる。この映画を解説するにあたり、まずは「野生のエルザ」とその関係者についての説明が必要なので、以下のとおり記述した。
2.「野生のエルザ」について、アダムソン夫妻、ビル・トラヴァース、ヴァージニア・マッケンナについて
(あらすじ) ケニアで監視官をしていたジョージは妻のジョーイと一緒に親のいないライオンのエルザを育てていたが、大きくなるにつれて人間との共存が難しくなったので、動物園には送らず野生に戻すことにする。野生ライオン社会への順応、狩りの仕方など苦労して慣れさせた後、彼女を野に放つ。1年後、夫妻がその場を訪れると、子供を連れたエルザがやってきて、以前と同じように夫妻に身を擦り付けて来た。彼女は立派なライオンに成長したが、彼らの事を忘れていなかったのだ。
孤児のライオンを育てて野生に戻すという実話を書いてベストセラーとなった本「Born Free」に基づいて製作された映画。本の著者であるジョーイ・アダムソンをヴァージニア・マッケンナ、夫のジョージ・アダムソンをビル・トラヴァースが演じた。この二人の俳優は実際も夫婦で、この作品の撮影を通じてアダムソン夫妻と親しくなり、その後も俳優活動を続けながら動物保護運動に身を投ずることになる。監督のジェームス・H
・ヒルはイギリスのテレビなどでドキュメンタリーを撮っていた人。この感動的な物語は多くの人々の共感を呼び、その野生尊重の考えは、後の動物保護運動に大きな影響を与えた。またジョン・バリー作曲による主題歌はアカデミー賞を受賞した。アダムソン夫妻はその後離婚し、ジョーイも別の場所で同じような活動を営むが、1980年彼女の厳しい指導を恨んだ雇い人に殺されてしまう(その時のニュースを聞いてショックを受けたことを覚えている)。一方ジョージは監察官を辞め、ライオンその他の動物を保護し野生に戻す活動に身を捧げる。その後も象を描いた「野生のポリー(An
Elephant Called Slowly)」1970年、本作「Christian The Lion」1976年を製作。しかし1989年盗賊に捕らえられた仲間を救いに行き、殺されてしまう。しかしその志はBorn
Free Fundとして残され、現在もなお野生動物保護へ多大な貢献をしている。
3. 「クリスチャン・ザ・ライオン」について
本作は「野生のエルザ」の4〜5年後に撮影された作品で、ビル・トラヴァース、ヴァージニア・マッケンナ夫妻は実名で、そしてジョージ・アダムソン本人が重要な役割で登場している。ジョーイ・アダムソンはすでに別行動をとっていたようで、本作には一切登場せず、かわりに弟のテレンス・アダムソンが出ている。前作の主人公だった雌ライオンのエルザは病死したため、この映画には出ていない。
(あらすじ)映画は、郊外からロンドンのチェルシーへ買い物に来たビル・トラヴァース夫妻のシーンから始まる。登場人物のセリフは少な目で、ビル、ヴァージニア、ジョージのナレイションでストーリーは進行する。机を見るためにある家具店に入ったビルは、彼と気づいた二人の店員に呼び止められて、地下室へ案内される。そこで彼が見たものはライオンの子供だった。イギリスの動物園で生まれたライオンがデパート(ハロッズ)のクリスマス商戦で売られていたのだ。そのライオンに惚れ込んだ二人(エイスとジョン、各本人が実名で登場)がお金を工面して買い取り、4ヶ月の間地下室で飼っていたという。運動させる時は車で連れ出し、塀に囲まれて逃げ出せないようになっている教会の庭を借り、クリスチャンと名づけられたライオンを放していたが、だんだん大きくなってきたので、都市での飼育が難しくなってきたという。まずクリスチャンを郊外のビルの家に移し、二人も仕事を辞め近くに住んで世話をする。飼い主に飛びつくクリスチャンの愛情表現がすごい。ケニヤ政府の許可を得てアフリカの野生に戻すことになり、同国にいる友人のジョージ・アダムソンに協力を頼んだ。周到な準備によりライオンはビル、エイスとジョンと一緒に無事ナイロビに到着、そこからは車で目的地に運ぶ。面倒を見ることとなったジョージ・アダムソンは、「野生のエルザ」に出演し、野生化に成功した大人のライオン「ボーイ」、雌の子ライオン「カターニア」を別の地区から連れてきて、クリスチャンと会わせた。3匹はじきに慣れ、一緒に野生生活をするようになったところで、エースとジョンがイギリスに帰国する。野生に戻った3匹はその後もジョージと親交を続けるが、ある日カターニアが行方不明となり、ワニに襲われた事が判明。ジョージは別の場所から同じような境遇で育った雌ライオン2匹を連れてきて「ジェシカ」、「ジェンマ」と名づけるが、ジェシカは野生ライオンに襲われて死亡、ボーイも怪我をする。再び2匹の雌ライオン「モナ」、「リサ」と子ライオン「スーパーカブ」が加わって落ち着きを取り戻すが、ここで悲劇が起こる。ボーイがジョージのアシスタントを襲ったのだ。ジョージはボーイを射殺し、襲われたアシスタントは死亡(このエピソードはジョージの口から淡々と語られる)。落ち込んだジョージを慰めたのはクリスチャンだった。1年後、エースとジョンがクリスチャンに会いにやって来る。クリスチャンは2人の事を覚えていて、大きくなった身体で二人に飛びつく。クリスチャンの家族も彼等を受け入れる。厳しい野生の世界に生きるライオン達のこれからの運命は誰にも分からない、終わりが分かっているのはおとぎ話だけだ。
以上のとおり、感傷のかけらもない非常に厳しい内容の映画だ。わざとらしさはなく、野生の世界に生きることの大変さが淡々と描かれる。それにしても、いつも銃を片手にライオンと行動をともにするジョージ・アダムソンは、哲学者のような崇高さと仙人のような気高さが感じられる。こういう映画の製作に関わった理由は、売名行為などではなく、現地での活動資金の調達のためであったことが今回の調べて初めて分った。偉大な人物だと思う。ちなみに1999年にリチャード・ハリス主演で彼の事を描いた映画「To
Walk With Lions」が製作されている。
4. ペンタングルの音楽について
本作でのペンタングルは、テーマソングとしてジャッキーが歌う「Song Of Christian The Lion」(仮題)が、2, 5, 9,
23, 40のストーリー展開のポイントとなるシーンでフィーチャーされる。歌詞は映画のあらすじに沿ったもので、メロディーはジョセフ・スペンスの「Great
Dreams From Heaven」に似ている。インストでは、ジャッキーのハミングが入る上記13, 20, 34, 39のインストは、「Salomon's
Seal」P7に収録されていた「People On The Highway」のギターリフとメロディーを使用している。その他ジャッキーのハミングの曲
3, 6, 7 は平和・落ち着きを、バートのハミングが入る曲 8 14 16 28 38は喜び・高揚感をテーマとしているようだ。そしてバートのギター、ジョンのエレキギター、ダニーのベ−ス、テリーのマリンバがそれぞれメインとなるインスト曲が随所で演奏される。ベースとマリンバの演奏による曲は、緊張・不安を表現している。35のベースは悲しみの呻きそのもの。17〜19では、ライオンの出会いと慣れるまでの緊張を表現するために不安な感じのベースのリフにレンボーンのエレキギターのソロが展開される。11,
19, 27 は「Reflection」P6 のタイトル曲の雰囲気に近い。 全体的なサウンド的には「Salomon's Seal」P7 に近いので、1971年ごろの録音と推定される。上述のとおり、すべてが断片で、常にナレイションが被さり、曲のみ独立して聞ける部分はあまりない。でもインスト曲はそれなりに楽しめるし、特にジャッキーまたはバートがハミングで歌う曲は十分聞き応えがあるので、ファンの方は満足できるだろう。
5. 最後に
ドキュメンタリー調なので、淡々とした筋書きで劇的な展開に乏しい感じがするが、ライオンが好きな人、ジョージ・アダムソンに興味がある人、自然保護に共鳴する人、そしてペンタングルのファンには面白い作品だろう。この作品もサウンドトラック・レコードは未発売なので、将来発掘されることを期待したい。現在日本語字幕付きのビデオは発売されておらず、海外のネットショップで入手可能。ビデオを納めるパッケージのデザインは、上記の写真以外にいくつかのバージョンがあるようだ。今のところDVD化はされていない。
6. 追記
2007年に発売されたれたペンタングルのボックスセット「The Time Has Come 1967-1973」P10 に、フィルムのサウンドトラックから録音され、1.の家具屋でのシーンにおけるジャッキーのハミングとジョンのシタール演奏、ジャッキーの歌による一連のテーマソング、ジャッキーやバートによるハミングや、ピアノ、マリンバ、ギター、ベースなどによるインストルメンタルの断片が編集されたトラッックが収録された。
(Jさん、ありがとうございました)。
[2011年10月追記]
近年クリスチャンに係るエピソードが話題となり、インターネットで本作の映像を観ることがあるが、別の音楽が添えられているケースが多いようだ。エピソードそのものには影響ないけどね.................
「ライオンのクリスチャン-都会育ちのライオンとアフリカで再会するまで」という本が、2009年早川書房から出版されています。
[2022年2月追記]
録音時期につき、当初資料では1971年とあったが、ボックスセット「The Albums」 2017 P11の年表から1972年という説がでたので、改めました。
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