神話を訪ねて(第12回)諏訪大社 上社(長野県諏訪市・茅野市)

最近は、どうも怠慢すぎる。昨年の夏休みのことを今ごろアップしています。前回の諏訪大社下社に続きまして、信州(長野県)の諏訪大社(すわたいしゃ)の上社(本宮・前宮)をご紹介します。

諏訪大社の概略は、前回の下社の回でお話ししましたが、諏訪大社といいますのは、長野県下諏訪町にある下社の秋宮・春宮と長野県諏訪市にある上社の「本宮」と茅野市にある「前宮」という南北の広範囲に二社づつある計四社とその他の摂末社の総称なのです。三市町に股がるスケールの大きさは伊勢神宮にも匹敵するものです。

信州へのひとり旅の一日目は、下諏訪町の下社の秋宮から春宮までを歩いて回りました。その日は、JR上諏訪駅の諏訪温泉の「浜の湯」という宿に泊まりました。ここは、本格的な温泉ホテルなのですが、特別シングルルームがあって、部屋のせまいのだけがまんすれば、ビジネスホテル並みの金額で泊まれ、そして豪華な大浴場、露天風呂も一般客と同様に利用でき、断然、お得で大満足でした。おすすめです。

さて、翌日は、上諏訪駅から、地元のかりんちゃんバスというのを使って、上社に行こうと考えました。上諏訪からは、だいぶ遠いのですが、本当は茅野駅からバスだと、それぞれ10分ほどで行けるようです。(ただし、バスの本数は少ないようなので要注意)まず、かりんちゃんバスで、本宮の手前でバスを降り、そこから県道を歩いて先に前宮に向かいました。おそらく徒歩で20分くらいだと思いますが、真夏の信州の暑さはこたえました。結局、前宮と本宮を往復したわけですが。

県道から前宮への入口には、大きな看板があるので、すぐにわかります。少し行くと大鳥居と大きな狛犬が出迎えてくれるのですが、本殿はさらに200mほど緩やかな丘を登った場所にあります。「前宮」という名前からも察しがつきましたが、この場所が、最初に諏訪大神が御出現された場所だそうです。室町時代までは、大祝(「おおほうり」と読む。諏訪大神の後裔とされる生神。中世には武士化して諏訪氏となる。)の居殿などが軒をつらねていたとのことですが、現在は、小さな御本殿がひっそりと丘の上の真ん中に鎮座しています。諏訪大社の他の三社に比べると、小さな社殿ではありますが、緑に囲まれた静かな広場にある御本殿の脇からは、岩清水の清流が轟々と音を出して流れ出ており、とても神聖な場所であるように感じました。水はとても冷たくてきれいでした。もちろん、ここにも、下社同様に、四本の御柱の巨木が御社殿を囲むようにそびえ立っていました。

ここから、また歩いて本宮へ向かいました。本宮は東参道から入りました。入るとすぐに、二の柱が見え、その横に1829年(文政12年)に建立された見事な建築美を誇る入口御門があります。そこをくぐると、70mもの長さがある布橋(ぬのばし)と呼ばれる回廊を歩いて、御社殿に向かいます。この布橋は、明治維新までは、上社の大祝(おおほうり)だけが通れた所で、その時に布を敷いていたのでその名がついているのだそうです。布橋は、ちょうど本宮の境内の真ん中を東西に横断するように配置されているのですが、私はこの布橋がたいへん気に入りました。布橋の中はちょっと薄暗いのですが、そこから外を見ると、苔むした境内の緑が鮮やかに映え、陰と陽のコントラストによって、絵画的な美しく趣のある風景が演出されているのです。感動的な情景でした。

さて、布橋を出て、御社殿に向かいます。一般の参拝は、御社殿の前にある参拝所で行います。参拝所の奥に、1838年に建立された「諏訪造り」と呼ばれる、御本殿のない拝殿と幣殿だけの独特な形式の社殿が見えます。下社に比べると、小さな拝殿ですが、かつての建物は、極彩色の立派なものだったようです。1582年に武田信玄の子勝頼追討のため諏訪入りした織田信長の軍勢の焼き討ちにより灰燼に帰しました。勝頼の軍勢を滅ぼした後、信長は、半年の間、本宮隣の法華寺(現存)に陣をしき論功行賞を行ったということです。この場で、明智光秀が信長に他の武将の面前で辱めをうけた(今で言えば、パワハラか。)ことが、本能寺の変につながったというのが、歴史の定説のようです。

さて、二日間に渡り、諏訪大社の四社を訪ね歩きました。下社の春宮、秋宮はほぼ同じ時代に建ち、様式もほぼ同じものでしたが、上社の二社は、それぞれ個性があり、下社とは全く違った様式ですし、前宮と本宮もまったく違った印象を持つものでした。諏訪大神を祀った最も古いものは、おそらく前宮の場所にあった大祝の御社殿であったかもしれません。四社の中では確かに最も厳かな神聖な場所という感じがしました。社殿の建築の美しさは、下社の二社が素晴らしい。しかし、本宮の布橋から見る境内の美しさは、他の三社にはまた無いものでした。

国つ神(私は、アマテラス系の子孫である天皇家が日本を支配する前に日本に長く住んでいた土着の縄文人を象徴する神であると考えます。)であるオオクニヌシの息子タケミナカタは、この信州の広大な山岳地帯に昔から住んでいた縄文人、あるいはヤマトタケルの東征により、山に追われたエゾと呼ばれた人々が厚く信仰してきた神であったに違いありません。

さて、古事記の話は、ここまで。旅の楽しみは、他にもあります。大自然に囲まれ、当然に水がきれいな諏訪市は、銘酒「真澄」で有名な酒どころ。地元では、酒蔵見学の観光ルートとして「上諏訪街道呑み歩き」というルートを作って、ホームページも立ち上げています。http://www.nomiaruki.com/ 私も、真澄の宮坂醸造が経営する蔵元ショップを訪問して、真澄のとっくりなどをお土産に買いました。また、翌日は、霧ヶ峰高原をトレッキングしましたが、八島ヶ原湿原の美しさに魅了されました。

信州よいとこ一度はおいで。 (訪問日 2012年8月18日)

社名

諏訪大社下社(すわたいしゃ しもしゃ)秋宮・春宮(あきみや・はるみや)

→ 諏訪大社 オフィシャルサイト 

鎮座地

前宮 長野県茅野市宮川2030番地  JR中央本線 茅野駅から バス8分 ※本数少ない

本宮 長野県諏訪市中洲宮山1番地 JR中央本線 茅野駅から バス12分 ※本数少ない

                       上諏訪駅から バス40分 ※かりんちゃんバス

御祭神

建御名方神 (たけみなかたのかみ)

八坂刀売神 (やさかとめのかみ)

「日本の神話 古事記」第4話 第3章 タカミカズチ

御由緒

信濃国一之宮諏訪大社は、昭和21年迄官弊大社諏訪大社と称しておりましたが、同23年に現在の社号に改称しております。諏訪大社は諏訪湖の南北に二社ずつ四カ所に分かれて鎮座する、独特の形を持ったお宮です。

御祭神の建御名方神は、大国主神(大国さま)の御子神で、妃神が八坂刀売神、八重事代主神(えびすさま)は、御兄神に当たります。

御鎮座の年代について、詳しく知ることはできませんが、「古事記」その他の書物から推定して少なくも千五、六百年から二千年前と言われており、我国で最古の神社の一つに数えることができます。北は北海道から南は九州鹿児島県に至る全国に勧請された御分社の数は壱万有余にも達し、その総本社であり、昔から諏訪大明神、諏訪南宮法性上下大明神、又はお諏訪さまと親しまれ、雨や風、水の守り神として竜神の信仰も古く、国土開発、農耕生産、開運招福、交通安全の守護神として篤く崇敬され、特に歴代の朝廷をはじめ武門武将からは勝負の神、軍さ神として崇められ日本第一大軍神、又は東関第一の軍さ神として称えられて来ております。

※参拝者用リーフレット「諏訪大社」(100円)より抜粋

諏訪大社 上社(前宮・本宮)の見所紹介

(写真をクリックすると拡大します。)

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上社(前宮)への入り口

県道茅野岡谷線神宮前交差点

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上社(前宮)手水舎

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上社(前宮)巨大な狛犬

本殿はまだ100m先です。

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上社(前宮)

内御玉殿(うちみたまでん)

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上社(前宮)本殿

内御玉殿から200m登った所にある

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上社(前宮)

本殿 由緒書

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上社(前宮)本殿

昭和7年に伊勢神宮の古材を使用

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上社(前宮)本殿

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上社(前宮)二の御柱

奥に見えるのが三の御柱

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上社(前宮)

本殿の左奥側から轟々と湧き水が

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上社(前宮)本殿

二の御柱

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上社(前宮) 本殿

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上社(前宮)

一の御柱

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上社(前宮)

本殿に向かって左後方の小高い場所は、諏訪大神と御神陵といわれる。

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上社(前宮)大鳥居

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上社(本宮)東参道

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上社(本宮)

東参道側 大鳥居

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上社(本宮)

二の御柱と入口御門

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上社(本宮)

二の御柱と入口御門(1829年建立)

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上社(本宮)布橋

入口御門を入り、70mの布橋という回廊を通ります。ここから見る苔むした境内が美しい!

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上社(本宮)

布橋から見る勅使殿

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上社(本宮) 神楽殿

1827年の建立。中の大太鼓(直径   1.8m)は江戸時代のもの。

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上社(本宮)

布橋から見る茅葺きの西御宝殿

諏訪大神の御神輿を納める。

上社(本宮)

奥に見えるのが一般の参拝所

上社(本宮)参拝所

参拝所の奥に御社殿がある。

上社(本宮) 御社殿

本殿をもたない拝殿と幣殿だけの諏訪造りといわれる独特の形態をもつ。

上社(本宮)参拝所

上社(本宮)

左が宝物殿・右が授与所

上社(本宮)神楽殿

本宮の中では、最も大きな建築物

上社(本宮)

北参道から御社殿方向

上社(本宮)

北参道 大鳥居

蔵元ショップ セラ真澄(諏訪市)

信州の銘酒「真澄」の蔵元「宮坂醸造」の経営するショップを訪問。

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