白井 昭 プロフィール


Steam Locomotive Lover -- Akira Shirai

 1927(昭和2)年,愛知県岡崎市に生まれる.幼年期より吉田(現在の豊橋)と神宮前との間を愛知電気鉄道(現在の名鉄名古屋本線)の特急でよく往復していたのがきっかけで鉄道に興味を持つようになった.また,当時から古典の蒸気機関車や客車に対して尊敬の念を抱いていた. 

 旧制豊橋中学校(現在の愛知県立時習館高等学校)を卒業後,1944(昭和19)年,名古屋工業大学の前身である名古屋工業専門学校の機械科に入学(第40期),ボイラーについて学び理解を深めた.

 名古屋工業専門学校を卒業後の1948(昭和23)年,名古屋鉄道株式会社に入社,車両部,教育センターを経て企画課長,運転課長等を歴任した.
 その間,7000形電車「パノラマカー」の企画・製作に関係した.
 このパノラマカーに注ぎ込まれた先進的な技術,思想は登場以来35年を経た今日でも新鮮さを失っていない.また,最新の車両と比較しても全く遜色の無いものである.これは,当時の鉄道友の会名古屋支部会員の意見を参考に,「乗る楽しさ」を鉄道車両に盛り込んだ上で,スピードと安全性,そして快適さを追求した結果である.パノラマカーが後の鉄道車両に与えた影響は計り知れない.そのパノラマカーは現在でも名鉄の主力車両の1つとして活躍している. 

 また,東京モノレール100系,300系の設計にも携わった.東京モノレールの仕事は名鉄での仕事と兼務で行われたため,名古屋と東京との間を飛行機で往復する日々が続いた.現在では100系,300系共に全車廃車されているが,現在の東京モノレールの繁栄ぶりやその後の新交通システムに与えた影響から考えて,この仕事の意味は非常に大きかったと言える.

 1969(昭和44)年,大井川鐵道株式会社へ移った.大井川鐵道では1970(昭和45)年7月,西濃鉄道(岐阜県大垣市)にて入れ替え用として使用されていた蒸気機関車,2109号を大井川鐵道に引き取り,動態保存を開始し日本の保存鉄道の先駆けとなった(2109号その後静態保存となったが,1992年より再び動態保存とすべく修復を行い,1993年夏,大井川鐵道にて本線試運転を行った後,日本工業大学へ寄贈された). 1971(昭和46)年,イギリスへ渡り鉄道保存のノウハウを学ぶ.その後,コッペルを始めとした蒸気機関車の収集,C11227,C11312,C5644,C108、C11190(2001(平成13)年から修復開始)の動態保存を実施するとともに1976(昭和51)年から金谷−千頭間で蒸気機関車の本線運転を行っている.現在では多客時には3両の蒸気機関車とオハ35をはじめとした旧型客車がフル稼働している.また,歴史的にも貴重な電車,客車,設備について保存すると共に営業に使用している.

 日本ナショナルトラストの活動にも積極的に協力しており,C12164の他,スハフ43型などの客車3両も大井川鐵道にて保存している. また,大井川鐵道での経験を大いに生かして,国鉄山口線におけるC571の本線運転開始のサポート,日本各地で活躍している蒸気機関車のメンテナンス,機関士の養成等,技術的なアドバイスも行っている.

 海外の鉄道とも活発に交流を行っており,スイス・BRIENZ−ROTHORN鉄道台湾・阿里山鉄道(世界3大森林鉄道の1つ)と大井川鐵道との間で国際姉妹か縁組も行われた.
 動態保存のC5644は1941(昭和16)年,旧日本軍の南方進出に備えてタイ・ビルマ方面へ送られたもので,1979(昭和54)年,ディーゼル化で廃車の運命をたどるところであったものを,保存のためにタイ国鉄より大井川鐵道に里帰りさせた.

 大井川鐵道井川線では,長島ダム建設による水没区間の代替線として1991(平成3)年,日本で唯一のアプト式鉄道(約1.5km)を開業させた.この事業ではED90形アプト式電気機関車およびアプト式区間,井川線付替区間の計画から完成までの全事業の中心となって活躍した.
 これらの活動を中心として,地域の観光事業に対する協力,海外の鉄道との交流,文化保存などを進めるとともに,鉄道技術の発展,文化保存に寄与している.
 1995(平成7)年には運輸大臣から交通文化の向上に貢献した人に贈られる「交通文化賞」を受賞した.

 1994(平成6)年に大井川鐵道副社長・技師長から,同社の保守部門を担当する大鉄技術サービスの社長に就任,2000(平成12)年からは大井川鐵道株式会社顧問を務めている.また,産業考古学会幹事,鉄道友の会参与を務めている.さらに地域団体の役員も担っている.また中部産業遺産研究会の会員でもあり,産業遺産研究や地域の鉄道の活性化などのプロジェクトに積極的に関わっている。

 2001(平成13)からは、C11190の復活へ向けて2年半の期間と5千万円の費用を要する大プロジェクトの実現に向けて奔走している。

 会社経営者として,鉄道技術者として,そして鉄道ファンとして国内,海外を問わず精力的に活動している.


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Last Update : Nov/24/2001