1. JR東海道本線

  豊橋〜岐阜間では JR東海道本線名古屋鉄道(名古屋本線)とが接近して
走っています。明治時代にできた国家的幹線と、後発の名鉄本線とが、ローカル
輸送において互いに覇を競う興味ある区間です。まず、そのルートから比較して
みましょう。

  1. JR東海道本線のルート 下図 黒線

  東海道本線は、静岡県浜名湖の南部を渡った先で愛知県に入り、向きを北西に変えて豊橋
(とよはし)、名古屋、岐阜(ぎふ)へと向かいます 。
  愛知県・岐阜県にかけて岡崎(おかざき)平野(三河平野ともいう)や濃尾(のうび)平野が拡がってい
ます。豊橋〜岡崎(おかざき)間で五井(ごい)山地を避けて南に迂回しているほかは概して線形が良
く、さしたる勾配もなくて列車はしごく快調に走ります。停車駅間隔の比較的長い新快速などに
乗ると、最高速度(120 km/h)を維持する時間が結構長いです。
  この点、名鉄のほうはきついカーブが随所にあり、速度を制限されるところが多いのは残念で
す。
 
名古屋付近のJR東海道本線(黒線)

  長い直線が続くところは、まず岡崎の先、矢作川橋梁から逢妻(あいづま)までの 16 km (ただし
途中、西岡崎−安城間に軽い曲がりあり)、次いで大府から熱田の手前までの 14 km、さらに
名古屋の先、清洲(きよす)から木曽川駅手前までの 14 km です。ちなみに、我が国SLのスピード
記録は、この先の木曽川橋梁付近で出されたものです(C62、129 km/h)。
  なお地図上では直線であっても、実際に乗ってみると、構内配線の都合、橋梁の付け替え、
路盤の拡張などにより、左右にシフトするところは随所にあります。

  豊橋〜岐阜間は、同区間を本線とする名鉄との激しい競争下にあります。東海道本線はか
なり昔に幹線鉄道として敷設されたため線形に無理がなく、到達時間では優位にありながら、
市街地と離れたところに作られた駅もあって これまではローカル客を名鉄に取られがちでした
(例えば岡崎、鳴海)。しかし、JR沿線も市街化が進んできたことと、新駅の開設、ローカル列車
の増発および高速化により、利用客は着実に増加しています。ただ、東海道本線名古屋地区
は単純な複線であり、長距離旅客列車や貨物列車と“同居”しているという悩みがあります。京
浜、京阪神地区のように複々線または別線にはまだなっていません。

  2. 豊橋からJR東海道本線を下り方向にたどります:―
豊橋(とよはし)市は愛知県東部の大都市です。
←豊橋駅平成14. 1 Asは第二次大戦後いち早く いわゆる“民衆駅”として駅ビルを設けた駅で、JR東海道本線・飯田線・東海道新幹線が発着し、名鉄本線のターミナルにもなっています。
駅の外に豊橋鉄道渥美線(あつみせん)のターミナル新豊橋駅があります。また、歩行者デッキの下からは豊橋鉄道市内線が出ています。
豊橋を出ると、左に東海道新幹線、右に名鉄+飯田線(共用)が並びます。新幹線はほどなく離れていきます。
←豊川(とよがわ)放水路鉄橋平成14. 3 As過ぎると左カーブして名鉄とも離れます。

この橋の先の右手に、名鉄本線と飯田線とを別ける分岐点(平井信号所)が見えます。両者とも複線なので、上り線・下り線が立体交差になっています。
みかん畑が広がる三河大塚(みかわおおつか)の下り寄りで、左手から現れた新幹線と斜めに交差しますが、面白いことにここでは新顔の新幹線が 古株の東海道本線の下をくぐります
交差すると間もなく両線ともトンネルに入ります。写真はトンネルに入る新幹線列車を東海道本線の車窓から撮ったものです成14. 2 As。このトンネルは弾丸列車構想により戦前に掘られ、新幹線ができるまでは在来線が使用していました。

蒲郡竹島 蒲郡市観光協会HPから
←蒲郡(がまごおり)付近で、左側に 波静かな三河湾と竹島が望まれます。これよりあと、東海道本線終点の神戸付近まで近くに海の見えるところはありません。
蒲郡から左側に並ぶ高架鉄道は名鉄蒲郡線です。

幸田(こうだ)の手前(東京寄り)で再び新幹線と交差しますが、今度は新幹線が上です。
岡崎(おかざき)を過ぎると緩やかに左カーブして北西向きとなり、矢作川橋梁を渡ります。
←矢作川橋梁上の 313系新快速平成13. 1 As
←三河安城(みかわあんじょう)駅の西寄りでX字状に東海道新幹線とまた交差します平成13 As。三河安城駅は交差地点の東京寄りにあり、同名の新幹線駅と連絡通路でつながっています。
しかし、三河安城駅には東海道本線は普通しか停まらず、他方、新幹線は各停の「こだま」しか停まらないため、新幹線へ/からの乗り換え利用は低調です。この辺りから東京へ出張するさいは、一旦名古屋まで行って 名古屋から「のぞみ」か「ひかり」を利用する人が多いのが実情です。
楽聖宮城道雄先生供養塔」が 刈(かりや)駅の手前南側の線路脇にあります平成16 As
宮城道雄氏は名曲「春の海」などを作曲した盲目の奏琴家でした。昭和31年、列車で西下中、この地で誤ってデッキから転落し亡くなられました。当時の客車のデッキドアーは走行中でも開閉自在でした。たまたま開いていたのかもしれませんね。
←刈谷では名鉄三河線と接続しています平成13. 3 As
大府(おおぶ)が近づくと、JR武豊線が左から接近し、立体交差して 大府駅では東海道上下線の間に入ります。
大府から先は、貨物別線を添設する計画で路盤が広げられ、共和(きょうわ)の先からは複線の線路も敷かれています。しかし貨物線計画が中止となり、レールは錆付いたまま放置されています。
←左の複線が未成貨物線です平成13. 7 As
名古屋市内に入ると急に建物が多くなります。
大高(おおだか)から笠寺(かさでら)まで、右側を新幹線が並走し、
←笠寺駅構内の西寄りで東海道本線を跨いで左に離れます平成16. 3 As
←熱田(あつた)の少し手前で名鉄本線と再会します平成13 As
東海道本線を左手から跨いだ名鉄常滑線(とこなめせん)とともに名鉄電車は「神宮前」駅(熱田神宮の前の意)に停まりますが、東海道本線の熱田駅は数百メートル先(名古屋寄り)に離れています。
←金山(かなやま)JR東海道本線・中央本線、名鉄線、名市交地下鉄の総合駅です平成14. 9 As この写真だけ上り向き

周辺は、名古屋の副都心として発展してきました。写真の高いビルは金山南ビルといい、ボストン美術館、ホテルなどが入っています。
上記の熱田から名古屋駅の先まで名鉄と並行し、しばしばデッドヒートを演じます。

金山で右から寄ってきた中央本線はしばらく並走したのち、名鉄線・東海道本線の下をくぐって左に出ます。

左に東海道新幹線も寄ってきて、新幹線、中央本線、東海道本線、名鉄線と並ぶ4複線の高架で名古屋駅に向かいます平成16. 3 As
名古屋が近づくと 名鉄は急降下して地下駅に入り、新幹線は関西本線・貨物線・あおなみ線を乗り越すため一旦高い位置に上がってまた降ります。
いうまでもなく名古屋市は中部地方最大の都市で、愛知県の県庁所在地でもあります。
名古屋駅は高架駅で広い構内を持ち、新幹線を含む全線がほぼ同一平面に並びます。
駅ビルは建て替えられて平成12年(2000)JRセントラルタワーズという超高層ビルになりました平成15.12 As。東海旅客鉄道JR東海)本社はこの中にあります。

写真は駅の東側「桜通口」(さくらどおりぐち)で、いわば正面です。
新幹線ホームはこちらと反対側の位置にあり、そちらの出入り口は「太閤通口」(たいこうどおりぐち)といいます。新幹線で来名する人を迎えるならそちらのほうが便利です。
加筆
名鉄近鉄の駅は、JR駅東側の南に隣接するビルの地下にあります。地下鉄の駅も正面側(東山線、桜通線)です。

当地にあまり馴染みのない人が名古屋駅で降りて駅の正面(桜通口)に出ると、それが北向きであるかのように思うとおっしゃいます。しかし、実は東向きなのです
東海道本線は全体としては東西に走っていますから山側は北だと思うのも無理はないのですが、名古屋駅付近では線路がほとんど南北なので、名古屋駅の正面(桜通口、JRセントラルタワーズのある側)は実は東を向いているのです。
←名古屋駅を出ると、再び地上に顔を出した名鉄が並びます平成16 As。しかし、間もなく右に離れ、庄内川を渡ってからまた近づいてきて東海道本線の下をくぐって左に離れていきます。

清洲(きよす)の手前で並走してきた新幹線も左に離れていきます。
稲沢(いなざわ)駅手前一帯には広い貨物操車JR貨物稲沢駅)がありますが、今は大幅に縮小されています。
続いてJR貨物愛知機関区があります成16. 3 As
やがて名鉄本線が左から寄ってきて並び、
←尾張一宮(おわりいちのみや)となります平成16. 3 As
ここは名鉄との共同駅で、左側のトンネル状のところが名鉄一宮駅です。両駅は高架下でつながっています。

この先もしばらく名鉄と並走しますが、徐々に離れます。
←木曽川橋梁平成16. 3 Asを渡ってから名鉄が再び近づいてきますが、この先並走箇所はもうありません。
←左に急カーブして岐阜駅に進入します平成16. 3 As
←カーブを曲がると高山本線(単線)が寄ってきて東海道上下線の間に入り、いっしょに岐阜(ぎふ)駅に着きます平成16. 9 As
JR岐阜駅正面(北口)です平成16. 3 As
岐阜市は岐阜県の県庁所在地で、長良川の鵜飼い、金華山の岐阜城、きれいな梅林など、見どころが数々あります。

なお、名鉄岐阜駅は、JR駅から 300 m ほど離れています。


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