老人会のHZ会長さん(2013.12.1)


 HZさんは、U地区老人会の会長をされていた。
私の仕事上のつながりで、これまで何度もHZさんの自宅を訪れた事がある。

ある時は、単にノートパソコンの操作がうまく行かないから・・・とか、
インターネットにうまく繋がらないとか、セキュリティソフトがうまく設定できないとか、そんな理由で。
もう、5年来のお付き合いになるが、10回くらい自宅におじゃましている。

HZさん宅を訪れる度に、裏の畑で育った大根や、白菜、ほうれん草、ねぎなどを、
5合瓶の壱岐の焼酎と共に、お土産にと下さるのである。
いつも頂いてばかりでは申し訳ないと、私も長崎に帰省した折には、
長崎名物のカステラなどをお届けした事もあった。


12月1日(日)の今日、U地区老人会の恒例の集まりで、
我が童謡コーラスグループ “気まぐれーズ” が招待され、童謡コンサートを開催した。
いつも、少し早めに会場に到着すると、既にHZさんは到着され、
会場の準備などされているのが常だった。

ところが今日のコンサートに限って、HZさんの姿が見えない。
コンサートの中で、
 「 実は、私ども “気まぐれーズ” は、前々会長さんのHZさんからの
   お声をかけて頂いたのがきっかけで、こうして何度も呼んでいただいています・・・・
  今日は、HZさんお見えではないようですが・・・・」
と、私がしゃべったので、コンサート終了後、現会長さんが、
言うべきかどうか迷うのですが・・・・・と前置きされ、
 『実は、8月16日に脳梗塞で倒れられて、現在は、K病院に入院されています・・・ 』
と教えてくださった。

正直言って、実は・・の言葉の後に、“亡くなられました” ではなく、“入院中” という言葉を聞いてホッとした。

さっそく、午後、私は何がしかの、お見舞いの品を片手にK病院を訪ねた。

巨大病院の一番奥にある入院病棟で、
HZさんは鼻にチューブを入れたまま、ベッドに横向きに寝ておられ、傍のテレビを見ておられた。
 「いかがですか。」 と声をおかけすると、チラッと私の顔を見られ
   『今日は、(コンサートに行けなくて)ご無礼しました』 と、小さな声でおっしゃって、
また、テレビの方を向いて黙ってしまわれた。

私は、「ゆっくり養生されて・・・・・・・」 とだけしか声をかけられなかった。
そして、そっとその場を離れ病院を後にした。


多分、HZさんが入院されている事に関しては、ごく親しい人のみ知っていることであり、
ご本人も、他言無用と念を押されていたのではないだろうか。

私もそうだが、自分が老いやつれて病気でベッドに横たわる姿を、
誰にも見せたくはないし、家族にさえ見せたくはないと、そう思われていたのではないだろうか。

私は、たいへん失礼な事をしたのかもしれない。
後悔をしながらも、帰り道でふと思った事には、
時間というものは、誰の上にも確実に過ぎて行き、
HZさんに再び、あのニコニコ顔で、私たちのコンサートを聴いて頂ける事はないのかもしれない。
淋しい気持ちで、ふとそう思った。


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