大黒ラーメン(2012.11.19)


 仕事(お客様対応)で、昼前に会社を出た。
問題事項も一段落し、お客様宅を出たのが13時ごろとなった。

昼飯でも食ってから会社へ戻ろうと、適当な食堂が近くにないか思いをめぐらせた。
ある、ある、ある、あるじゃないか、会社への帰り道に、
あの美味しい “大黒ラーメン” 屋が!!

迷わず車を走らせ、ラーメン屋の駐車場に車を止め、
店の暖簾をくぐり、店内へ。
13時過ぎというのに、店内は満員だ。
さすがに全国区だけあるなあ、 “大黒ラーメン” は・・・・と思いながら、
店内で立って待っていたら、カウンターに一つだけ空きがあり、
 『こちらへどうぞ!』と、 女性従業員に案内された。

その女性従業員にも見覚えがある。
もう10年近く前の話し、私の職場はこの大黒ラーメン屋さんの近くにあったのだ。
ほんでもって、ラーメン好きのオイラは、ほぼ毎日、昼飯はこの
大黒ラーメン屋さんに通ったものだ。


当時は、大将と、その奥さんらしき人と、
その息子さんらしき若大将と、
今日席に案内してくれた女性と4人で “大黒ラーメン”屋をされていて、
もうその頃から、美味しいという評判で他県からのお客もたくさん来ていた。
今みたいに立派な店舗に改装する前の話しで、店内はまだ狭かった。
カウンターに5、6人座れて、小上がりの座敷に小さなテーブルが2つあるだけだった。
若大将は、カブ号に乗って、昼時はもっぱら出前をやっていた。

懐かしいなあぁ・・と思いながら、
 「ラーメンと、おにぎり1個!」 と、注文した。
有名店にありがちな、愛想の無い態度はこれっぽっちもなく、
 『はい!かしこまりました。』 と、実に爽快な受け答え。
“ああ、10年前と少しも変わっていない・・・” と、嬉しくなった。

 『おまちどうさまでしたー!』
キターーー!


【 黒亭のラーメンにも似た、“大黒ラーメン” なのだ。】

10年前と変わらない、実に豚骨のスープも麺も私好みの味だ。
あっという間に、スープ一滴残さず、完食。

あー、うまかった!とばかり、レジで勘定を払っていると、
厨房の中で、頭に白いタオルを巻いて、懸命にラーメンを作っている人と目が合った。

おー!あの時の若大将じゃあないか!
若大将は、ツツーっと私の方に来て、ペコリと頭を下げた。
もう十年もたつのに、私の事を覚えてくれていたのだ。
実に嬉しかったね、アッシは。
そして言った。
 「こんなに、頭が禿げてしまった私を、よく覚えとったですねぇ。 や、どうも!」」 と、
それだけ言って、アッシはそそくさと店を出た。

なぜって、たくさんのお客さんで混雑してんのに、
 「ひさしぶりねぇ、大将はお元気ですか? おかみさんは?・・・・」 などと、
世間話しをして、若大将のじゃまをしちゃあいけねえ。
ただ、この10年で風貌も随分と変わった、このアッシの顔を覚えててくれたって事が、
うれしくって、うれしくって。

暖簾をくぐって、外に出たアッシは、
 「久し振りに、うまか ラーメンば、くうたぁーーー」 と、叫んだ。

ほぼ毎日、昼食時に通っていた私は、カウンターに座り
「ほんと、ここのラーメンはうまいですね。日本全国から
 お客さんが来るくらいだから、すごいよね!」 と大将に言っていた。
近くで仲間と酒飲んだ後も、〆に大黒ラーメンを食って帰っていたくらいだ。
そのたび、美味い、美味いと褒めると、人のよさそうな大将は、ニコニコしながら
「いやあぁ、まだまだ勉強が足りません・・・」と、実に謙虚だったのを思い出す。
その傍で、少し体格のよかったおカミさんも、おしどり夫婦のように餃子を焼いたりしていたっけ。

思った。 ほんとうに大将と、おかみさんは元気にしておられるのだろうかと。


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