dB(デシベル)について(2001.7.7)
インターネットにアクセスする通信回線のひとつに、ADSLがある。
このADSLは、回線の線路損失により通信速度が大きく左右される。
「線路損失が35dBまでのところしか提供できません」とあった。
35dB(デシベル)とは、どんなものなのか?
という極めて基本的な疑問を、何人かの方にメールしてみた。
鹿児島県に在住の、プロフェッサーT氏から以下のような、わかりやすい、温かみのある返事が届いた。
T氏とは、以前一緒の職場でお世話になり、私にとっては、たいへん尊敬もしていたし、余りある薫陶をいただいた方でもある。
先日、長年の会社勤めをリタイアされ、現在は悠悠自適の生活をされ、まさに晴耕雨読の境遇と推察する。
窮窮困惑、晴釣雨遊の私など、人生を3回繰り返してもT氏のレベルには到達できないと思ってしまう。
電波高校(現、熊本電波高専)を卒業されたT氏は、たいへん苦学されたのだろう、
「いやーー、あの頃はみんな頭のいい、向学心にもえた、
貧乏人のせがればかりが、寮に入っていて、
夜中勉強していて、腹がへって腹がへって、
それでもみんな貧乏だったから、30円のうどんすら食えなかった」
と、言われたことを私は妙に覚えている。
そんなT氏からいただいたメール。
あまりにも素晴らしいメールなので、以下、そのまま紹介したい。
私のような無学な者にも、無理なく分かるようにと、
T氏ならではの温かい心配りが伝わってくる。
【 dB(デシベル)とは何ぞや! 】
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ごあいさつの部分、省略
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デシベルの話
1. デシベルとはエネルギー等のように対数的に増減する量をあらわす単位として便利なものです。
2.
電気エネルギーもそのとおりです。アンペア、ボルト、ワットという単位は対数的に変化する
エネルギーを表すのには向いていません。
2アンペアは1アンペアの2倍のエネルギー量になります。
3. ところで豊臣秀吉とその家来のソロリシンザエモンの逸話があります。
あるとき手柄を立てたシンザエモンに秀吉は「ソチの望みをなんでもかなえてやろう」
といったそうです。そこでシンザエモンはそれでは、今日「米粒1個」をいただきたいそして明日はその倍、
明後日はまたその倍としてこれを30日間下さい。といったそうです。秀吉はそれくらいたやすいことだと
いうことで承知したそうです。ところがこの計算とんでもないことになります。
?2n(nを1から30まで)=1+2+4+8+16+…………・230
ところで2の30乗はどのくらいになるでしょうか。
ここで対数が出てきます。
log230=30log2=30×0.3010=9.03となります。
(log2=0.3010ですから)
この対数の低は10ですから「109.03」となります。
したがって109よりほんの少し大きいということになります。
108=1億ですから10億とちょっととなります。
4.
現実の問題にもどって考えてみましょう。
1Km伝送すると2分の一になるケーブルがあったとします。
このケーブルで10Km伝送するとどのようになるでしょう。
1Km先で1/2、2Km先で1/4、3Km先で1/8となりますから
1/210=1/1024といことになります。
それでは10Km先では1024分の1になりますというのは現実的ではないし、計算も大変です。そこで対数を使うのです。
対数には色々なメリットがあります。
@ 大きな数字、小さな数字を取り扱いやすくなる。
A 掛け算が足し算、割り算が引き算になる。
勿論人間は、掛け算や割り算より、足し算掛け算のほうが計算しやすい
B 人間の感覚(五感)は対数的に変化するという心理学上の法則があります。(これをウエバー・フェヒナーの法則といいます。)すなわち光や痛さなどは対数に比例するといことです。砂糖を2倍入れても人間は2倍甘いとは感じないということです。
実際、騒音量、星の何等星、マグニチュードなどどれもそのエネルギー量を対数であらわしています。
次にデシベルの話に移ります。
デシベルはデシ+ベルです。デシとは10分の1ということです。1リットルの10分の1が1デシリットルということです。
ベルはあの有名な電話の発明者の名前から来た単位です。すなわち対数であらわすとでも思ってください。
それではなぜベルの前にデシをつけたかといいますと、これまでに何度も書いてきましたが2倍ということが「log2=0.3010ということで「0点」をいちいちつけなければならない不便さがあるということです。10分の1を単位とすれば3.01ということで直感的に扱いやすくなります。
デシベルには絶対デシベルと相対デシベルがあります。
絶対デシベルはある地点のエネルギー量を現すものです。相対デシベルはエネルギー量がある地点からどのように変化したかを表すものです。
絶対デシベルはdBm(弱電の場合)、またはdBk(強電の場合)となりmはミリ(1000分の1)をkはキロ(1000倍)を一般的に使います。
すなわち弱電では(我々の分野)1mWを0dBmと決めています。一方相対デシベルには後ろのmやkは付きません。
次にw(ワット)は電力の単位です。電流や電圧ではどのようになるでしょうか。
P(電力)=I2R P=E2/Rという公式があります。
これをデシベルであらわすと
10logP=10logI2R=2×10logIRとなります
同様に10logE2/R=2×10logE/Rとなります。したがって電流や電圧であらわすときには20logが電力のときには10logがつくということです。
なお相対デシベルではマイナスのdBは減衰、プラスのdBは増幅といっています。すなわち−10dBを10デシベルの減衰または減衰量10dBといいます。
お尋ねの35デシベルの減衰とは
35/3.01=約12ですから212分の1の電力すなわち4000分の1の電力になるということです。
以上がわたくしの知っていることです。