15円・・・・(2008.10.22)

 行きつけの店での出来事である。
10名も座れば満席となる、カウンターしかないお店。

仲間と楽しく飲んでいた私の隣に、後から入ってきたMさんが座った。
このMさんとは1〜2回、この店で会ったことはあるのだが、
特に親しいという間柄ではないので、これまでも話しをしたことはない。

少し話しをしてみると、どこかで既に一杯やってきたらしく陽気な人だ。
酒飲んだら、妙にたばこが吸いたくなる。

  
  【 酒飲んだら、吸いたくなるよね・・・タバコ 】

Mさんも同様らしく、ママさんにタバコは置いてないか聞いたが、置いてない。
カウンターが直角に折れた端の方に座っていた別のお客さん二人が、タバコを吸っていた。
ママさんは、Mさんを代弁し、そのうちの一人に、1本頂戴できないかと聞いてくれた。

酒飲みというのは一般的に、太っ腹な人が多いものである。

どうぞ、どうぞとばかり、今開けたばかりらしいタバコを箱ごと、ママさんに渡した。
ママさんは橋渡しをする格好で、そのタバコをMさんに渡した。

Mさんは、すみませんと言って1本だけタバコを取り出した後、
箱とセロファンの間に、何故かしら15円を押し込もうとしている。
何で15円なのか私は一瞬考えた。
タバコ1箱
が、200円だった時代から、私の時は止まっている。
そうか!今じゃあ1箱20本入りで300円なので、1本15円ということか。

それを見た私は、少し呆れたというか驚いてこう言った。
 「 そんなこたあぁ、止めたほうがいいですよ。
   相手に失礼だし、どうかしたら怒り出すかもしれませんよ。
  お互い、いい気持ちで酔っているんだし、タバコを切らした人に
   どうぞって、おっしゃってるんだから、
  ありがとうございますと言って頂戴すれば、よかとじゃあなかですかあ 」 と。

しかし、Mさんは聞かない。
15円が入ったタバコを返してもらった持ち主は、その15円にすぐ気が付いた。
怒りこそしなかったが、上半身を大げさに折り曲げ、いわゆる「ガクッ!」といった仕草をした。

 「 ほうーら、見てみらんですか、あきれとっなっですよ 」 と私はMさんに言った。

Mさんいわく、
 『 私は、働き出して40年。人からおごってもらったことは一度も無かとです 』

ウーーム、相当な堅物である。
今は出向しておられるらしいが、市役所か、県庁関係の人らしい。
私は、思った。
こんな方が、仕事でもきっちりとしてしていたら、
今朝もテレビニュースでやっていた裏金問題などは、発生するはずが無いと・・・・・・・・

実は、私もMさんと一緒に、ちゃっかり1本タダで頂いたタバコに火をつけ、
焼酎の水割りを、グイッとばかり飲み干した。


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