Mさんのカッポ酒(2004.1.26)


渥美清さんが亡くなって、もうシリーズは途切れてしまったが、「フーテンの寅」という松竹映画があった。
シネマの最多シリーズとして、確かギネスブックにも載ったのではなかったか。
ある評論家が言った。
『「フーテンの寅」という映画の中には、日本人が忘れかけた大切なものがある』 と。

行きつけの店で、友人のMさんがカッポ酒をふるまってくれるという嬉しい知らせを聞いた。
よっしゃー、絶対行くど! と私は心の中で即座に思った。
Mさんは土日を利用し、兄さんと一緒に、ふるさとである水俣の山から青竹を切ってきたのであった。
青竹、備長炭、竹炭、七輪、さらには、カッポ酒のつまみにと、鱧のすり身、イカの一夜干し、太刀魚のみりん干しなどなど、
カッポ酒に最も合うだろうと思われる格好のつまみまで揃えて持ってきてくれた。

Mさんは午後4時頃から行きつけの店で準備をするという。
行きつけの店のママさんからの情報だ。
私は、居ても立ってもいられなくなり、即座に行きつけの店にかけつけた。
年休とはこんな時のために取るものだ。

七輪、青竹等をリュックに背負い、Mさんは行きつけの店にやってきた。
とき、あたかも午後4時。 以下、詳細は省略。


【カッポ酒を入れる青竹。これに酒を入れ、七輪で焦げる寸前まであぶるのである】


  
【青竹で、オチョコまで作成して持ってきていただいた。Mさんの力作である。
口当たりが滑らかなようにと、目の細かいノコギリで切ってある。
こういうものこそ、気配りというに値する。】



【細めの青竹に、焼く前の鱧のすり身が・・・・最高級の竹輪である。
少し緑に見えるのは三つ葉を混ぜてあるためで、竹輪として焼けたあとの香りがまたたまらない。!!】

ご存知のとおり、ご馳走とは、おいしいものを求めて走り回るという意味である。
その夜の、カッポ酒、つまみは、まぎれもなくMさんがこしらえたご馳走であった。

「おいしかろ? おいしかろ?」 と聞きながら、Mさんは
ろくにカッポ酒も飲まず、鱧の竹輪も食べずに、ひたすら店に来た人のために料理するのでした。
間違いなく、Mさんはいい人であり、まさに現代の寅さんなのである。
こんな寅さんの良さがわからない人がいたとしたら、私はその人を軽蔑する。

次回は、餃子大会をしよう! と、Mさんがニコニコして言った。
そしたら店のママさんが、『Kさんと、Aさん(中国からの留学生)も呼ばんといけんね!』 と言って微笑んだ。
グテングテンに酔っ払った私は、ママさんのその言葉を聞いた後、記憶があいまいになってしまった。


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