海へ (2016.1.5)


 速いもので、平成28年。 新年になった。

新年になる前、つまり年の瀬も押し詰まった頃、ふと思い立って海へ向かった。

毎日夕方になると、私はウォーキングに出る。
時間的には、1時間30分前後のウォーキングである。
家の近くの、白川河川敷を歩くのである。
常日頃何も運動していないので、これが唯一の運動と思い込んでいる。

ところがその日は、天気も良かったせいか
ふとウォーキングのコースを変えて、海へ向かおうと思ったのだ。
無性に、あの懐かしい “潮の香り” に触れてみたくなったのだ。

午後の早い時間だったが、歩いて海へ向かうとかなり遠い。
そこで、家にある唯一の自転車(ママチャリ)でサイクリングとしゃれ込んだ。

家の近くを流れる一級河川、白川の堤防道路を
ひたすら河口へ向けて走り出した。
1時間も走っただろうか。
好天の風が心地よい。


【 白川の堤防道路と、白川。 随分と河口に近くなったところで撮った写真。】

大きな川になると、あちこちに河口堰が築かれているが、
このあたりは河口に近いため、川面の高さイコール、有明海の海面となる。

ゆっくりとだが、自転車を走らせ、だんだんと海(有明海)に近くなってくると、
あの懐かしい、“潮の香り” がしてくる。

 “ いい香りだ、海は近いぞ、さあ、急ごう! ” とばかり、
ペダルを踏む足にも力が入る。

子供の頃から青春時代を過ごした、私の郷里、長崎では、
家の部屋の窓を開けると、眼下に “鶴の港” と呼ばれる長崎港が見えた。
かすかではあるが、長崎の街いたるところに “潮の香り” がしていた。

さあ、やっと白川河口に到着した。


【 白川河口。 有明海。 遠く左手に見えるのは 島原半島の “雲仙岳” である。 】

心地よく吹く向かい風を押して、ペダルを踏む事 一時間強。
 “ キター! 海だぁ! ” と、叫んでしまった。

しばし、自転車を停め、
海を仰ぎ、潮の香りを楽しんだ。
残念ながら、その時間帯は最干潮の時間帯だった。
これがもし、満潮だったらあたり一面の海水だったろうなあ、、、、と、その光景を想像してみた。

海の景色は、干潮時より満潮時の方がいい。
雪景色と同じで、真っ白い雪が、きれいな海水が、全てもものを覆い隠してくれるからだ。


熊本市内を流れる、白川の左岸を、ひたすら海へ向かって来たが。
河口へ着いても、その堤防道路は続いていて、
海沿いを、さらに海路口の方へ走ってみた。

海沿いに、熊本市水産振興センターという建物があって、
そこでしばらく海を眺めていた。
遠浅の海の波打ち際は、どんどんと潮が満ちてくるのがわかる。

波打ち際へ行ってみたが、一面のヘドロのようなガタである。
拳くらいの大きさの石を投げてみたら、ドボッと音をたててガタにめり込んだ。
水際まで裸足で行ける、白砂青松のような浜はないものか。

少し悲しくなって、
そろそろ帰ろうと、これまで来た道を引き返した。
帰り道は、来た時とは逆で少しの追い風となり
ペダルをこぐ足が少し楽になった。

海へ、、、
でも、海はよかった! 潮の香りだけは変わっていない。
潮の香りだけを、土産に持って帰ろう。


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