白川堰のツバメ(2013.5.21)


 人は、自分だけの力では空を飛べない。
鳥であれ、飛行機であれ、広大な大空を自由に飛び回ることのできるものに憧れる。
だからだろう、子供の頃、『将来、何になりたい?』 の質問に、
迷わず 「 パイロット」 と答える子供が多かった。

昨日、いつものように白川沿いの舗道を歩いて帰宅していた夕刻の事だ、
幅50cmくらいの舗道沿いの堤防の上に、鳥のヒナがうずくまっていた。
巣立ち前のヒナが、少し早く巣から落っこちたのかな と思って、
そのヒナに近付くと、何とツバメのヒナだった。
口が大きく何とも愛らしい。

かなり近付いても逃げないので、さらに近付いて
 「 おい、どうした飛べないのか?」 と声をかけながら、
小さな頭のところをなでようとした瞬間、
えっ!あんな小さな身体で! と思うほど元気に、20mほど空高く舞い上がった。


【 ちょうど、これくらいの大きさのツバメだったけど、
 こんなに大切に育てられたツバメではなかった。 】

 「 なーんだ、元気だったんじゃないか 」 と、少し安心し、しばらくそのツバメを眺めていた。
ところが、30秒くらい飛び回った後、力なくまた同じ堤防の上に舞い降りた。

後ろを振り向き、振り向き、帰りかけたのだが、やはり気になって、
そのツバメのところへ戻ってみた。
「 おい、元気か?」 と声をかけて、頭をなでてみたが、今度は飛び立たない。
身体全体を、そっと両手で包んで持ち上げても、バタバタ暴れることもない。
随分弱っているように見えたので、このままでは近くに沢山 居るカラスに食われてしまう・・・・
と思い、背広のポケットにソーっと入れて、連れて帰ることにした。

自然界の掟からいうと、連れて帰るのはご法度だというのは知っている。
しかし、、 “ 義を見てせざるは、勇なきなり”  とばかり連れて帰った。

帰宅するとすぐ、小さなタオルで包んでやり、小さな箱に入れた。
 「疲れてるんだろう、しばらくゆっくり休んだら元気になるさ。
  少し元気が戻ったら、これをお食べ!」 とばかり、
牛乳パンのカケラと、ペットボトルのキャップに水を入れ、目の前に置いた。
何とも、愛らしい目をしている。
しかし、食べようとしないし、水も飲もうとしない。

さてさてアッシも、晩飯!とばかり、居間に下りて行った。
晩飯を食い終わり、ひとっ風呂浴びて、戻ったら。
ツバメは、相変わらず元気がない。
爪楊枝の先に脱脂綿を丸め、ミルクを浸して、飲ませてみようとしたが、
口さえ開かない。

結局、3時間後くらいに何も食べずに、水も飲まずに死んでしまった。
小さなツバメのヒナが、死んで動かなくなると何とも哀れである。
数時間前までは、あんなに空高く舞い上がったのに・・・・・

翌朝、つまり今日なのだが、そのツバメを埋葬した。
昨日の夕刻、連れ帰った地点の近くの、白川河川敷の眺めのいい場所に、
小さな移植ゴテで穴を掘り、埋葬した。

幼い生き物が、天寿を全うせずに死んでしまうのは実に悲しいもんだ。

昨日、あのまま、あの地点にツバメのヒナを放置したままにしておいたら、元気になったのだろうか。
連れ帰る前、少しの間、親ツバメが来はしないかと
キョロキョロしながら待ってはみたけど、何も来なかったしなぁ・・・・・


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