まだ何もやってない(2009.6.13)
” 富士には月見草がよく似合う・・・・ ” 誰が言った言葉か しっとーや?
私の兄が、30年前に私に問いかけた。
人間失格や、斜陽 あたりは読んでいたが、
その言葉が太宰治の、「富嶽百景」の中に出てくるものだとは知らなかった。
3つ年上の兄は、大学時代に文学部であり、卒論に取り上げたテーマが太宰 治だった。
【 ・・・・なんと言うのか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすっくと立っていた
あの月見草は、よかった。富士には月見草がよく似合う。 (富嶽百景より)
】
その問いかけ以来、今までに10冊ほど太宰治を読んだ。
40歳になろうとする前の若さで、彗星のごとく逝ってしまった、
天才で、努力家で、苦悩に活きた作家の作品を。
ある東北の旧制高校で、初めて講演をした太宰治は、
講演の後、文学の好きな学生たちと雑談をしていて、
作家になった理由を、『 他に何をしても駄目だったから 』 と答えると、
一人の学生が 「 じゃあ僕なんか有望だ。何をしても駄目だから 」 と
調子に乗って話すと、太宰は真顔になって 『 君はまだ何もしてないじゃないか
』
と言ったという。
季節が梅雨も伴って、最近、急激に、春から夏へ変わろうとしている。
身体中がだるく、何もやる気が起こらず、倦怠感の中で、
あの好きな釣りにさえ、出かけて行かずに今日はこうして駄エッセイを書いている。
すると、太宰の声がした。
『 倦怠感の中で というが、冗談じゃあない。君はまだ何もしてないじゃないか!
海へ行きたまえ! 海へ! 』
そうだ、明日、釣りに行こう っと。
いつも、ここに落ち着くワンパターン!
(逸話は、ある新聞記事から借用させてもらいました。)