めぐみちゃんの涙(2008.3.5)


 行き付けの店で一杯やって、二次会にこれもまた行き付けのスナックへ行った。
いつものメンバーの、MYさん、MTさん、今日はTMさんも一緒だ。
こじんまりとした、上品なスナックで「Miss You」というお店である。
可憐なママさんと、もうひとり可愛いめぐみちゃんという女性の二人でやっている。

私らは、このお店のカラオケで、よく昔懐かしい童謡を歌う。
その日も、よく歌った。
ママさんは某音楽関係の大学を出ているので、歌がとても上手で、
私らが、次この曲を歌うのでハモッてねとお願いすると、
持ち前の音楽的センスで、きっちりと私らを楽しい音楽の世界に誘ってくれる。

♪ 里の秋 ♪
♪ 四季の歌 ♪
♪ ふるさと ♪
♪ 花 ♪
♪ うみ ♪
・・・・・・・などなど、懐かしい童謡は数知れない。

MYさんが、♪ ゆりかごの歌 ♪ を歌いだした。
♪ ゆ〜りかごのう〜たを、カナリアが歌うよ〜・・・・ ♪

めぐみちゃんが私に聞いた
『 ねぇ、ね、”ねんねこ”ってどういう意味?』
 「 よい子でおねむり っていう意味の、あやし言葉だよ 」と教えてあげた。
『 ふ〜〜ん 』

めぐみちゃんは、日本に来て10年になる中国人であり、日本語はペラペラでありながら、
とても研究熱心な女性である。

次に、♪ かあさんの歌 ♪ のイントロが流れ出したとき、
「 ねえ、めぐみちゃんは、お母さん元気でいるの 」って私が聞いたら、
『 うん、元気でいるよ 』 って

♪ かあ〜さんは夜なべをして てぶく〜ろ編んでくれた〜・・・・
     ふるさ〜との便りはと〜ど〜く、いろりのにおいがした・・・・ ♪

MTさんが、1番の歌詞を歌い終わったとき、めぐみちゃんの目に涙がにじんでいた。
そして、めぐみちゃんはそっとトイレに行った。

私達は、随分前から知っていた。
めぐみちゃんは、5日後に何年振りかで、約一週間ふるさと上海に里帰りするのだ。

MYさんが、
「これ、めぐみちゃんに餞別として渡しといて」と言って、
カウンターの下からそっと私の手に大枚1枚を握らせた。
さすが、MYさんである。
私も、その時ちょうど餞別を渡そうと思っていたところである。
MYさんに負けちゃあなんねぇぞとばかり、大枚1枚を追加して、
半紙にくるんで、「御餞別(旅する人へ)」と書いて、そっとめぐみちゃんに渡した。
めぐみちゃんは、それを胸に抱き、小さく「
ありがとう」と言ってまたも涙ぐんだ。



わずか、一週間だけど親孝行しておいでね!めぐみちゃん!
また、下手な童謡を歌いに来るよ。


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